日本数学教育学会誌
Online ISSN : 2434-8619
Print ISSN : 0021-471X
102 巻, 5 号
数学教育 74-3
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
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論説
  • 極限に「到達するか否か」に焦点をあてて
    成田 慎之介
    原稿種別: 論説
    2020 年 102 巻 5 号 p. 4-16
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,極限に「到達するか否か」に関する理解の困難性を克服するための学習指導を提案し,実践を通してその有効性を検証することである.そのためにまず学習指導を構築する視点を導出し,その視点に基づいた授業設計および実践を行った.そして授業のプロトコールを分析し,極限に「到達するか否か」という困難性が克服されたかを検証した.学習指導を構築する視点としては,「極限として捉えている対象」を導出した.そして,放物線下の面積を求める問題を用いた授業を設計し,授業を行った.その結果,極限として捉えている対象を,極限に近づいていく数列の項から極限値そのものへと変容させることによって,困難性を克服することができた.極限として捉えている対象を変容させるためには,極限に近づいていく数列の項と極限値とを明確に区別する活動が重要であることも明らかとなった.また,授業設計にはなかったことであるが,背理法を用いることによって,高校生でもε-N論法の考え方を見出すことができた.

実践研究
  • 数学的活動の遂行に向けた教師の働きかけに着目して
    黒田 大樹
    原稿種別: 実践研究
    2020 年 102 巻 5 号 p. 17-24
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,発展的思考・態度を促す授業モデルの開発を行い,その有効性を検証することである.その目的のために,先行研究及び河合・黒田(2006)の授業実践の分析を行ったところ,数学的活動場面や発展の状況に応じて教材や教師の働きかけを工夫しなければ,主体的に数学的活動過程を遂行することは困難であることが明らかになった.よって,佐藤他(2018)が開発した学習者が発展的に考えることを支援するモデルプレートに示された発展の状況や,学習者の範に着目して,発展的思考・態度を促す授業モデルを開発した.また,このモデルに基づき授業を構成して検証授業を行ったところ,教師が学習者の発展の状況を把握し,その状況に応じた発問を行うことや,学習者同士のやりとりや試行錯誤を生み出し,主体的に学び合い,数学的活動過程を遂行していく様相が見られ,本モデルを用いることに一定の成果が見られた.

特集 数学科におけるデータサイエンス(2)
  • 石橋 一昴
    原稿種別: 特集
    2020 年 102 巻 5 号 p. 25-33
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

     複雑化する現代社会では,時々刻々と変化する情報を正しく評価して意思決定を行うために,「確率は事象についての情報に対して適用される」という認識が求められる.しかしながら現在の数学教育ではそのような認識の育成を意図した指導ができていない.また,そのような認識を発達させるためには,形式的な確率を指導するだけでは不十分であり,公式な用語を導入することなく本質的な認識を促す指導を早期の段階から実施し,それを長期的な展望の下で段階的に発達させていくことを企図する必要がある.この課題意識は,数学的内容に関連する基本的な数学的アイディアを,小学校から高等学校までを一貫して扱うための教材である教授単元の開発と整合的である.そこで本稿では,「確率は事象についての情報に対して適用される」という認識を育むための教授単元の開発を目的とした.結果として,モンティ・ホール問題を題材として,教授単元を開発した.そして,この教授単元を用いた小学校,中学校,高等学校での指導の一例を示した.

  • 統計教育に関する教員アンケートと授業実践を通して
    石綿 健一郎
    原稿種別: 特集
    2020 年 102 巻 5 号 p. 34-42
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

     本研究は,中学校教員対象の統計教育に関するアンケート調査と授業実践や評価テストを基にして,学習指導要領で示された新しい学習内容を指導するにあたっての課題を明らかにするとともに,箱ひげ図の指導のあり方を具体的に提案することをねらいとする.アンケート調査の結果からは新しい学習内容の指導について教員の年代によって理解している内容や不安を持っている内容に差があることが分かった.また実践授業や評価テストの分析の結果から,生徒が箱ひげ図の概要を理解し,複数のデータを比較して傾向を読み取ることができるようになること及び,箱やひげの長さとそこに含まれるデータ数との関係について生じやすい誤解があることを明らかにした.箱ひげ図の学習指導において,導入にドットプロットを扱うこと,箱ひげ図とヒストグラムとの比較を取り入れることを提案した.

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