健康な青年男女90名について仰臥位2時間持続中の苦痛発現を観察し,訴えを聴取した。そのことと褥瘡好発部位の体圧および皮膚知覚(2点識別距離)を測定し,訴えの出現のしかたと関連づけて検討した。
1. 訴えは比較的早期に出現し,30分までが多く,以後は出現の割合が少なくなる。
2. 下肢や腰背部などの体圧の高い部位の訴えは多いが,体圧の高さと関係ない束縛感による訴えも多い。
3. 訴えの内容は知覚異常(しびれ)が比較的早期に出現し,疼痛は比較的遅く現れる。しかしこれらの訴えはともに他の訴えよりかなり多い。
4. 体圧の高い部位の2点識別距離はいずれも小さく,訴え数との負の相関関係が認められた。
以上のことから,臥位持続時の体位変換時間の決定には,①早期の訴え出現を捉えることが必要である。②しびれ感程度の訴えに注意すること,体圧の高い部位は特に訴えに注意し,中でも踵部などは知覚が鋭敏であり,30分程度でも圧迫部位を変えることが必要で,部位によって変換の時間的相違を考慮することも必要である。苦痛の軽減からみた体位変換は圧迫による影響を少なくすることにもつながっており,訴えを詳細に捉えることが重要である。
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