学生のもつ老人イメージとその形成要因を明らかにするため,今回は生活経験と老人イメージの関連に焦点づけたアンケート調査を行った。対象は,看護短大生および一般女子大生236名である。調査内容はSD法による老人イメージの測定,老人との生活経験,メディア・文化的情報,親の価値観に関する質問項目であり,1991年6月に学生に実施した。その結果,以下の6点が明らかになった。
1. 学生の老人イメージの構造は,因子分析により【評価因子】【活動性因子】【円熟性因子】の3因子が見いだされた。活動因子に示される身体面では,ネガティブに傾いたが,円熟性因子など情緒面ではポジティブ・イメージを示した。
2. 「祖父母」は【評価因子】でポジティブ・イメージであるが,「近所およびテレビの中の老人」のイメージはネガティブに傾き,祖父母以外の老人に対してネガティブなステレオタイプの存在の可能性が示唆された。
3. 老人との会話頻度が高く,また会話内容が密であるほど【評価因子】においてポジティブ・イメージに傾く。祖父母以外の老人も話す機会が多いとポジティブ・イメージであった。単に生活経験の有無だけでなく,老人と接する内容が重要である。
4. 親が祖父母とのつきあいに対して,積極的な姿勢である学生は,【評価因子】においてポジティブ・イメージを示した。親の老人に対する接触,姿勢も学生の老人イメージ形成に重要である。
5. 本の種類によって老人イメージが異なり,描かれている老人像がイメージに反映していると考えられた。読む本の内容が偏らないような働きかけも重要である。
6. パス解析の結果,老人イメージの評価因子を形成する主要な要因は,①「接して印象に残った老人の有無」,②「祖父母との会話頻度」「祖父母とのつきあいに対する親の考え方,④「本の中で印象に残った老人の有無」の順であった。また,「祖父母とのつきあいに対する親の考え方」は老人イメージを形成する重要な緒要因である祖父母との同居や会話頻度などに影響をおよぼす要因として重要であることが示唆された。
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