日本看護研究学会雑誌
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19 巻, 4 号
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  • 桂 敏樹, 野尻 雅美, 中野 正孝
    1996 年 19 巻 4 号 p. 4_9-4_18
    発行日: 1996/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      高齢者の生活の質を高める条件を明らかにするために中高年住民を対象に人生で起こる発達的危機や状況的危機が主観的幸福感に及ぼす影響力を比較検討した。 多変量解析の結果,以下のことが明らかになった。
    1. 主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,家の改築等,帰省,配偶者の死,怪我・病気で,いずれも状況的危機であった。
      主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,夫婦別居であった。 一方,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,離婚,解雇,会社倒産・合併・再編,妊娠,夫婦喧嘩,親族とのトラブルであった。
    2. 性別にみると男性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは帰省,個人的な成功,配偶者の死,怪我・病気,家の改築等で,いずれも状況的危機であった。
      主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,昇格等,退職で,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,解雇,転職,離婚であった。
      一方,女性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,退職,転職,家の改築等,配偶者の死で退職を除きいずれも状況的危機であった。
      主観的幸福感を高める危機は個人的な成功,夫婦別居,転職で,主観的幸福感を低める危機は離婚,退職,配偶者の死,子供の非行,性的障害,親族とのトラブル,会社倒産等,夫婦喧嘩の変化であった。
      今回の結果をみると状況的危機は主観的幸福感にネガティブな影響だけでなくポジティブな影響を持つものもあることが明らかになった。
  • 橋口 暢子, 井上 範江, 宮原 晋一
    1996 年 19 巻 4 号 p. 4_19-4_27
    発行日: 1996/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      佐賀医科大学看護学科の病理学教育の一環として,病理肉眼実習を行いその教育効果について検討した。
      実習の目標は①学生が剖検後保存されている症例の臓器を観察して,主な病変を理解する,②その症例の臓器と看護記録を照合させることにより,病変を持った臓器と患者の全体像とを結びつけて考えることができるの2つを設定した。
      実習の評価は実習終了後各学生が提出した「病変を持った臓器と看護記録を見て感じたこと,学んだこと」と題した自由記述のレポートの内容で行った。
      実習に使用した症例は悪性腫瘍5例,循環障害4例,肝疾患1例であった。実習資料としてその症例の剖検記録と患者背景シートを準備した。
      各学生のレポートの評価を行うと,「主病変の観察と理解ができている」が対象学生58名中56名(96.6%),「主病変と他の臓器への影響など系統的に臓器の観察ができている」が19名(32.8%),「臓器の病変と患者の身体的・心理的状態を結びつけて考えることができている」が36名(62.1%),「臓器の病変と患者の生活習慣などを結びつけて考えることができている」が17名(29.3%),「学習したことから看護について考えることができている」が18名(31.0%)であった。
      本実習において,看護の対象である人間の反応を生物学レベルから社会的レベルまで幅広く捉えるために必要な,疾病の基本的理解を促すことができたと思われる。患者背景シートを用いて実習を行ったことが,実習効果を高める大きな要因となった。
  • 吉田 道雄, 内川 洋子, 成田 栄子
    1996 年 19 巻 4 号 p. 4_29-4_42
    発行日: 1996/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究では,看護スタッフに対する看護婦長のリーダーシップ測定尺度を構成するために,看護スタッフから得られた婦長の行動についての行動リストに基づいて項目の集約を行った。
      1. 124項目の看護婦長の行動についての看護スタッフの回答に基づいて因子分析を行った。その結果,「積極的教育・指導」「スタッフ尊重」「患者理解・配慮」「積極的病棟管理」「責任遂行」「対人配慮」の6つの因子が見いだされた。
      2. 看護スタッフの満足度を測定するために18項目の質問を作成し,看護スタッフに対して回答を求めた。リーダーシップ行動と同様に因子分析を行ったところ,「職業満足」「福利厚生・教育満足」「仕事満足」の3つの因子が見いだされた。
      3. 看護婦長のリーダーシップ行動測定尺度の妥当性を検討するために,リーダーシップ行動と看護スタッフの満足度についての関係を分析した。その結果,「職場満足」についてはすべての因子で,「福利厚生・教育満足」では「対人配慮」を除く5つの因子と強い関係が見いだされた。「仕事満足」については,リーダーシップのいずれの因子とも有意な関連は見いだされなかった。この第3の因子については,全体として得点が高く看護婦長の行動によって影響を受けにくかったためではないかと考えられた。
      4. さらに重回帰分析によるリーダーシップ行動と満足度との関係についての検討が行われた。その結果,婦長のリーダーシップ行動が看護スタッフの満足度を十分予測できることが明かになった。
      以上の分析から,本研究で集約された行動リストが看護スタッフに対する婦長のリーダーシップ行動を測定するための尺度として妥当性をもっていることが明かにされた。
  • 久米 和興
    1996 年 19 巻 4 号 p. 4_43-4_51
    発行日: 1996/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      精神分裂病患者は,病職が欠如しているものが多い。病職の欠如はコンプライアンスの障害になる。病職と社会復帰との関係を見た研究は少ない。この研究では病職に基づく社会復帰へのアプローチを発展させるために,病職と人格傾向,作業能力との関連を検討した。対象は,精神病院に入院中の精神分裂病患者65人である。病職と作業能力は5段階で評価された。人格傾向は,MMPIによって評価された。病職をもつ患者の人格傾向の得点は,病職のない患者に比べて,神経症的,精神病的人格傾向において高かった。このことは病職を持つ患者は,自分の病的性格をより自覚しているように思われた。また病職のある患者は,病職の欠如している患者に比べて作業能力が高かった。このことから,病職のある患者は作業療法を維持するために支持的精神療法が,病職の欠如している患者は,作業に参加してもらうために病職を育てる精神療法が必要と思われた。
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