高齢者の生活の質を高める条件を明らかにするために中高年住民を対象に人生で起こる発達的危機や状況的危機が主観的幸福感に及ぼす影響力を比較検討した。 多変量解析の結果,以下のことが明らかになった。
1. 主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,家の改築等,帰省,配偶者の死,怪我・病気で,いずれも状況的危機であった。
主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,夫婦別居であった。 一方,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,離婚,解雇,会社倒産・合併・再編,妊娠,夫婦喧嘩,親族とのトラブルであった。
2. 性別にみると男性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは帰省,個人的な成功,配偶者の死,怪我・病気,家の改築等で,いずれも状況的危機であった。
主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,昇格等,退職で,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,解雇,転職,離婚であった。
一方,女性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,退職,転職,家の改築等,配偶者の死で退職を除きいずれも状況的危機であった。
主観的幸福感を高める危機は個人的な成功,夫婦別居,転職で,主観的幸福感を低める危機は離婚,退職,配偶者の死,子供の非行,性的障害,親族とのトラブル,会社倒産等,夫婦喧嘩の変化であった。
今回の結果をみると状況的危機は主観的幸福感にネガティブな影響だけでなくポジティブな影響を持つものもあることが明らかになった。
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