日本看護研究学会雑誌
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23 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 黒田 裕子, 船山 美和子
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_13-5_23
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      在宅移行期にある虚血性心疾患男性患者113名を対象として生活管理意識の実態と関連要因を調査した。生活管理意識尺度は虚血性心疾患男性12名の半構成的面接法の結果を項目プールとし,構成概念を土台として原案作成を実施,妥当性と信頼性を検討のうえ,最終的に4下位尺度15項目からなる尺度とした。これに自尊感情尺度,抑鬱傾向尺度,そしてデモグラフィック変数を含めて調査した。結果,対象の生活管理意識は一様に高かった。また,壮年期の男性であることや在宅移行期にあることを反映し,不規則な生活を改めようとしていること,感情をコントロールしようとしていること,身体をいたわりながらも少しずつ体力を回復させようとしていることが特徴として見られた。さらに,生活管理意識への影響要因として服薬数の多さと坑血栓剤を服用していることが明らかとなった。その他の関連要因として,合併症の有無,治療法,抑鬱傾向,自尊感情も示唆された。
  • 田中 美智子, 長坂 猛, 辻野 久美子, 木場 冨喜, 須永 清
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_25-5_32
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      21日齢のWistar系雄ラットを2群に分け,それぞれに鉄欠乏食(鉄含有量 約1.85ppm)とコントロール食(鉄含有量 約358ppm)を6週間自由摂取させ,鉄欠乏性貧血が脂質代謝にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。
      鉄欠乏食群の体重はコントロール食群に比して抑制されており,これはエサ摂取量の減少からと考えられた。鉄欠乏食摂取により,ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値はコントロール食群に比して有意な低値を示し,顕著な貧血が認められた。また,血清総タンパク,HDLコレステロールおよび肝臓のタンパク濃度は鉄欠乏食群で有意な減少を認めた。さらに,クエン酸合成酵素及びコハク酸脱水素酵素の活性は鉄欠乏食群では,コントロール食群と比して有意な減少を認めた。鉄欠乏食群の肝臓の病理組織学的所見は,細胞の萎縮と空洞化を認め,脂肪染色により脂肪の沈着が認められた。
      以上のことより,鉄欠乏食摂取による脂肪肝の発生機序は,クエン酸回路の抑制による肝外から流入する脂肪酸のβ―酸化の低下とそれに伴うエステル化(トリグリセライド化)の促進とタンパク不足による超低比重リポタンパクの合成阻害が原因となり,トリグリセライドの肝外への搬出が阻害されている可能性が示唆された。
  • 古瀬 みどり, 熊野 宏昭
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_33-5_42
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      訪問看護ステーション利用者の訪問看護およびホームヘルプのサービス利用要因を探るため,サービス利用状況と介護状況および主介護者の健康関連QOLとの関連について検討した。調査対象は,宮城県在住の74名の訪問看護ステーション利用者の主介護者である。
      看護婦が訪問時に提供するサービスのうち,要介護者に対する日常生活の介助は,要介護者のADLに関連し,介護上の指導や健康問題に関する家族看護は,同居家族がいない介護者,副介護者のいない介護者を中心に行われていた。訪問看護の利用頻度別の介護状況および介護者の健康関連QOLの比較では,有意な差は認められなかった。
      本研究対象者のうち,ホームヘルプ利用者の利用サービス内容は,全員が介護であった。滞在型と24時間巡回型サービスの両方を利用しているのは,介護者が65歳以上の場合のみで,両方のサービスを利用している介護者は,滞在型のみ,24時間巡回型のみを利用している介護者よりも,包括的健康関連QOLの身体的健康度が低かった。
      訪問看護ステーション利用者の訪問看護利用要因として明らかに関連するものは認められなかったが,介護者の年齢と健康状態がホームヘルプサービスの利用要因となっていた。
  • 柴田 しおり, 柴田 真志, 片山 恵, 吉岡 隆之, 平田 雅子
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_43-5_53
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は起き上がり援助法の違いが看護者の生体負担に及ぼす影響を検討することであった。12名の女子大学生を被検者とした。被検者は2つの異なる方法の起き上がり援助を行った。ひとつは一般的にこれまで用いられてきた方法(A法)であり,もうひとつは力学的根拠に基づいて開発された方法(B法)であった。
      起き上がり援助実施時に,酸素摂取量(VO2),心拍数および筋電図(左僧幅筋,左右上腕二頭筋,左大腿直筋および左脊柱起立筋)を測定し生体負担の指標とした。
      VO2および心拍数はA法の方がB法より有意に高かった。A法の右上腕二頭筋および脊柱起立筋の筋電図積分値(iEMG)はB法より有意に高く,一方大腿直筋のiEMGはA法が低値を示した。これらの結果は,B法の方がA法に比べ看護者の生体負担が低いことを示唆している。これは下肢の使用の仕方が大きく影響していると考えられた。
  • 清水 嘉子, 西田 公昭
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_55-5_67
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    This study analyzed the structure of childcare stress by means of questionnaire surveys. It examined the relationships between the structures and the caregivers social situations for childcare. In this study, by means of open questionnaire survey, 169 mothers were asked about situations in which they experienced negative feelings in childcare. By means of a rating scale based of the first survey, 523 mothers were asked how much they experienced childcare stresses.
    Factor analysis showed that 8 structures of stress were found by using and named as follows; 1) Uncontrollable feelings for a child, 2) Negative attitudes to ward childcare, 3) Dissatisfied of husbands childcare, 4) Cognition of insufficient childcare environment, 5) Demands for childcare support, 6) Threat of self identity loss, 7) Apprehension for child development, 8) Poor physical condition Result showed that the factor scores were concerned with caregivers social situations, such as numbers of children, job style, family style, age of the youngest child, and mothers ages.
  • 野々山 未希子
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_69-5_80
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     HIV感染症は,新規抗HIV薬の開発と多剤併用療法の発展,血中ウイルス量測定や抗HIV薬耐性検査の開発により予後が改善され,慢性疾患と定義されるようになった。しかし現状では,HIV感染症を完治することはできず,患者の服薬状況により予後が左右される。当センター受診患者の服薬状況を調査したところ,初診時にアドヒアランス良好であった割合は全体の61%であったが,再診時では81%と上昇した。また初診時・再診時ともに,内服薬剤数の多い患者の方が,内服薬剤数の少ない患者よりもアドヒアランスが高かった。長期的な服薬には,くり返して指導・教育を行うことと,患者本人の治療意欲が強く影響していた。さらに,アドヒアランスを低下させた要因について調査したところ,「薬剤の形態・特質」「副作用」「拒薬」「生活状況と服薬時間の不一致」「自己管理意識の不足」「教育・理解不足」「プライバシー保持」の7項目に分類された。
  • -災害時母親の認知した子どもの状態とニーズを通しての看護職者へのケアニーズ-
    松田 宣子, 新道 幸恵, 高田 昌代
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_81-5_90
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,大震災後母親の認知した子どもの心身状態とその際の子どもへのケア,母親の心理的状態を通して,災害時に必要な子どものケアに対する看護職者へのケアニーズと役割を明らかにすることを目的として取り組んだ。研究対象者は神戸市内で被災にあった幼稚園及び保育所に通っている子どもを持つ母親515名である。研究方法は自己記入式質問紙調査で,項目は被災の状況,避難状況,子どもの心身の状態,母親のPTSD,生活の困難度とである。分析はHALBOW4にて統計的検討を行った。研究結果は回収率72%であった。結論は以下の通りであった。
    1.母親の認知した災害後の子どもの心身の状態が明らかになり,被災直後からの心のケアの必要性をあげていた。
    2.母親のPTSDと子どもの心身の状態との関連が明らかになった。
    3.母親が看護職者に望んでいることは,心のケア,災害直後からの看護,環境への対処法,病気の手当のアドバイス,適切な医療などの情報であった。
  • 石原 磨奈美, 鎌倉 やよい, 一柳 美稚子
    2000 年 23 巻 5 号 p. 5_91-5_98
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は手術室における対人距離の変化を検討することである。被験者は,看護短期大学の女子学生27名であり,大学内の実習室と病院の手術室において,対人距離がStop-distance法によって測定された。対人距離には,立っている被験者に近づく立位対人距離と,ベッドに臥床する被験者に近づく臥床対人距離が含まれた。後者では,A方向(右50度),B方向(右15度),C方向(左50度),D方向(左15度)の4方向から被験者に近づいた。臥床対人距離を実習室と手術室で比較した結果,A,C,D方向で手術室において有意に短かった。さらに,実習室における臥床対人距離では教員による差を認めなかったが,手術室では差を認め,実習指導によって学生と関わりのあった教員においてB,C,D方向で有意に短かった。以上の結果から,手術室では患者は普段よりも短い対人距離を望むことが示唆された。
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