日本看護研究学会雑誌
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25 巻, 1 号
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  • -さがしもとめる-
    大野 道絵, 阪本 恵子, 白石 聡
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_35-1_43
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      成人型アトピー性皮膚炎を持つ人々は,治療が難しく,慢性の経過をたどるという疾患の特徴から,病院を転々と変え,様々な治療法を試す。 また,正規の医療機関以外の施設または個人により販売される水,入浴剤,石鹸,漢方,健康食品などの民間療法を試す傾向が見られる。 本研究はこれらの対象者の行動について,対象者の経験の過程から,対象者の行動の仮説的モデルを帰納的に構築することを目的とする。
      研究方法は,対象者にインタビューを行い,得られた言葉をデータとして使用し,分析を行った。 対象者は成人型アトピー性皮膚炎を持つ男性7名,女性3名で,半構成的インタビューによりデータを得た。 分析手順は,コード化,コードの修正,カテゴリー化,中核カテゴリーの発見,など8段階を踏んだ。
      分析の結果,対象者の経験の過程から得られた行動モデルは,
      1)アトピー性皮膚炎のとらえ方
      2)願望:治したい
      3)思い:治る・治るかもしれない・治らない・治らないかもしれない
    という3つのカテゴリーから構成され,「さがしもとめる」 という中核となる変数で結びついていた。
  • 浅野 祐子
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_45-1_56
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      看護職のキャリア志向の分布と特徴を見出すために,総合病院に勤務する経験年数5年以上の女性看護職員に自記式質問紙による調査を行なった。 有効回答数は344名(82.5%)であった。 キャリア志向は Schein のキャリア・アンカーを参考とし 「管理・昇進」,「スペシャリスト」,「ジェネラリスト」,「安定性」,「自律・独立」,「他者への奉仕」 の6分類とした。 「スペシャリスト」 志向が32.8%ともっとも多く,自己学習活動にも積極的であったが,組織外での通用性よりは現職場で発揮している能力への評価がキャリア満足と関連しており,組織と結びついたスペシャリストの傾向があった。 16.6%の者が選択した 「ジェネラリスト」 志向は,「スペシャリスト」 志向に比較すると自己学習活動が少なく,仕事内容より労働条件を重視する傾向があり,他施設でも通用するという 「適応性」,「柔軟性」 がキャリア満足と関連していた。
  • 岡田 加奈子, 川田 智恵子, 畑 栄一, 中村 正和
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_57-1_68
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      目的:本研究の目的は,受講した看護学生の 「喫煙に関する授業」 への受けとめともいうべき,授業に対して興味深かった部分と印象,及び受講後の喫煙に対する自己認識を喫煙行動別に明らかにすること,さらにそれを基に授業の改善の方向性を検討することである。 方法:看護学生女子674名を対象に,1994年4~6月に,調査票を用いた集合調査を実施した。 内容は,事前調査(授業前2週間以内)では喫煙行動等,直後調査(授業直後)では,授業に対して興味深かった部分と印象等であった。 結果及び考察:非喫煙者は受動喫煙による苦痛意識が高いが,喫煙を自分の問題としては考えられない者が多かった。 週(1~29本)喫煙者は,自分の問題として考えられた者が多く,本授業が最も適している対象であることが考えられた。 週(30本<)喫煙者は,興味をもてず,おもしろくなかった者が多く,いわゆる認知的不協和の機序により,自己の喫煙行動と共存しえない教育内容が心理的に拒絶されたことが考えられ,授業の改善の方向性が明らかになった。
  • -自己能力評価から-
    木村 留美子, 南家 貴美子, 河田 史宝
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_69-1_76
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      看護婦の体験や経験が看護婦としてのキャリアの発達にどのように影響しているのか,年齢と経験年数から自己能力評価について調査を行った。
    1. 看護研究の学習会の参加者は年代では20歳代(56.2%),経験年数では15年以上(26.2%)の者が最も多かった。
    2. 看護婦の自己能力評価の因子構造として,「協調性」 「確実性」 「企画力」 「論理性」 「物事に挑戦する能力」 の5因子が抽出された。
    3. 自己能力評価因子の年代別比較では 「確実性」 「企画力」 「論理性」 の3因子に有意差を認め,いずれも年代が高いほど因子の得点が高く,自己の能力を高く評価していた。
    4. 自己能力評価因子の経験年数別比較では 「確実性」 「企画力」 「論理性」 「物事に挑戦する能力」 の4因子に有意差を認め,いずれも経験年数が長いほど因子の得点が高く,経験を重ねることによって自己の能力を高く評価していた。
  • 石岡 薫, 工藤 せい子, 冨澤 登志子, 山辺 英彰, 高梨 信吾
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_77-1_85
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      気管支喘息は発作と寛解を繰り返す慢性疾患であり,喘息患者の QOL を評価することは重要である。 また,患者の自己管理も症状のコントロールに必要不可欠であり積極的な自己管理へ向けた援助が必要である。 本研究では喘息患者の QOL を評価し,喘息患者の属性,喘息に関する背景ならびに喘息患者の健康観,自己管理の有無との関連について検討した。 その結果,QOL は重症度と健康観に関連し,重症度は悪化するほど QOL の低下がみられ,喘息患者個々の重症度に応じた QOL の評価が必要であると考えられた。 健康観では,健康が運により支配されているとする人で QOL が有意に高く,このような健康観では現状に身をまかせることで満足感も得られやすいことが考えられた。 また,自己管理の有る患者は無い患者に比較し,健康が自らのコントロール下にあるとする傾向が強く,患者の自主性を高めることは自己管理を確立させるうえで重要であると考えられた。
  • 深田 順子, 鎌倉 やよい, 北池 正, 野尻 雅美
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_87-1_99
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      在宅高齢者に対する嚥下障害のリスクを評価する尺度を開発することを研究目的とした。 尺度は,先行期を除いた老化や疾病による準備・口腔期,咽頭期,食道期の嚥下障害と嚥下障害に続発する誤嚥,誤嚥性肺炎,低栄養から構成され,24項目4段階の尺度を作成した。 項目選定のために施設高齢者81名に構造化面接調査を,妥当性と信頼性の確認のために在宅高齢者658名に自記式調査を行った。 至適基準には 3 oz 水飲みテストを用いた。
      尺度項目は,内容的妥当性の検討によって17項目が選定された。 妥当性は,因子分析によって検討し,誤嚥,咽頭クリアランスの低下,咽頭への送り込み及び咽頭期惹起の障害,食道期の嚥下障害の4因子が抽出された。 信頼性は,内的整合性と再テスト法によって検討し,尺度全体のCronbach'sα係数は0.9で,再テスト法ではr=0.62であった。 Cut-off pointは,ROC曲線から検討した結果4点とし,敏感度は57.1%,特異度は69.6%であった。
      以上より,本尺度17項目は妥当性や信頼性があることが確認された。
  • 國方 弘子, 中嶋 和夫, 高木 永子, 高井 研一
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_101-1_109
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究においては,精神科看護者を対象に,精神科看護領域で展開されているレクリェーション療法の効果の認知構造について明らかにすることを目的とした。 統計解析には,全国97施設において,レクリェーション療法に携わっている看護者730名のデータを用いた。 レクリェーション療法の効果の認知は42の質問項目を用いて把握した。 前記認知に関する因子を探索的因子分析で抽出した。 抽出された 「活動性」 と 「関係性」 の因子を一次因子,「看護独自の効果判断モデル」 を二次因子とする二次因子モデルはデータに十分適合していた。 以上のことから,精神科におけるレクリェーション療法の効果が 「活動性」 と 「関係性」 の側面から評価できる尺度開発の必要性が示唆された。
  • 藤井 千惠, 榊原 久孝
    2002 年 25 巻 1 号 p. 1_111-1_118
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      若年男性の健康状態を明らかにする目的で,地域消防団の団員128名(20~33歳,平均28.9歳)を対象に健康診断と質問紙調査等を実施した。 血清尿酸値7.1mg/dl以上の高尿酸血症が25.8%,BMI 24.3kg/m2以上の過体重が27.3%にみられた。 高尿酸血症群では過体重が多かった(p<0.01)。 多重ロジスティック回帰分析でも,高尿酸血症は過体重と有意な関連が認められた(オッズ比 2.81,95%信頼区間 1.43-5.55,p<0.01)。 また過体重者では,尿酸,総コレステロール,中性脂肪,γ-GTP,収縮期血圧,拡張期血圧の平均値が正常体重者と比べて有意に高く,HDL コレステロールは有意に低い結果が得られた。 高尿酸血症群では,高脂血症,耐糖能異常,高血圧,過体重の4項目における異常項目数も多い傾向があった(p<0.05)。 検査結果に対する関心がない者では高尿酸血症が多く認められた(p<0.05)。 今回の結果,若年男性においても高尿酸血症や過体重の頻度が高く認められ,高尿酸血症は過体重と有意な相関があり,マルチプルリスクファクター症候群の関与が考えられた。 このような若年男性に対する生活習慣病予防のための学習会や個別支援を展開することは,重要な地域保健活動といえる。
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