日本看護研究学会雑誌
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 平 真紀子, 泉 キヨ子, 河村 一海, 加藤 真由美, 丸山 巳奈
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_17-2_28
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      施設内に入院中の転倒経験のある高齢者18名に,印象強く残っている転倒経験について語ってもらい,転倒経験とその後の予防のとらえ方・転倒恐怖の感じ方について明らかにした。 その結果,以下の結論を得た。
    1. 転倒直後の思いとして7割以上 「痛かった」 という転倒時の痛みが印象深く残っており,転倒を痛み体験として捉えていた。
    2. 再転倒を予防するにあたり,「転倒の危険を感じる場所」 「自分の身体状態」 「転倒後の身体と他人への影響」 「他人からの忠告」 が抽出された。 その中でもトイレと風呂場で特に再転倒を意識していた。
    3. 再転倒を予防するための具体的行動として,「何かにつかまる」 「補助具を変える」 「移動動作をゆっくり行う」 「足元に注意する」 という行動をとっていた。
    4. 転倒予防行動をとっていても再転倒の恐怖を7割が訴えていた。 特にトイレや入浴動作時に身体が不安定になり易い場面に恐怖感がみられることが明らかとなった。
  • -自己イメージから-
    木村 留美子, 河田 史宝, 南家 貴美代
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_29-2_35
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究では看護婦の経験がどのように専門職業人の意識に影響を及ぼしているのか,自己概念の一つである自己イメージについて臨床経験年数と年代の関係から調査した。 <br> 学習会への参加者は年代別には20歳代 (21.1%) が最も多く,臨床経験年数別では臨床経験年数15年以上が最も多かった。 自己イメージは 「自主性」 「社交性」 「受容性」 「魅力的」 「繊細さ」 「理性的」 の6因子が示された。 年代別および臨床経験年数別の比較において,「受容性」 因子に有意差を認め,高年齢群で高く,臨床経験年数15年以上に高くなっていた。
  • 塩原 真弓, 佐伯 由香, 井上 都之
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_37-2_47
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      脳外科病棟で経管栄養法を施行中の13例を対象に経鼻胃管,接続管の細菌汚染調査を行い,経管栄養施行時の感染予防について考察した。 経鼻胃管では留置期間に関係なく,管内から Staphylococcus aureus, Streptococcus spp., Pseudomonas aeruginosa などが検出された。 接続管でも同様に管内全体から S. aureus, Pseudomonas spp., Acinetobacter baumannii などが検出されたことから,経鼻胃管,接続管を介しての感染が起こる可能性が考えられた。 また経鼻胃管と接続管からの検出菌種に違いが認められ,細菌の侵入経路が異なることが示唆された。 感染予防のためには,管内の洗い流しを徹底するとともに物品の清潔管理,口腔ケア,鼻腔ケアなどの,清潔保持のための看護ケアを効果的に使うことが必要であろう。
  • -Social Skills Inventory を用いた分析-
    西沢 義子, 阿部 テル子, 工藤 せい子, 花田 久美子, 葛西 敦子
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_49-2_59
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      青年期女子の社会的スキルを測定し,教育背景および生活背景の側面から分析した。 対象者は青森県内の専修校生,短大生,大学生女子533名であった。 社会的スキルの測定にはSSIを用いた。 この尺度は情緒的表現性,情緒的感受性,情緒的コントロール,社会的表現性,社会的感受性,社会的コントロールの6尺度から構成されており,SSIスコアは6つの尺度の合計得点である。 さらに看護学生と他の学生との差異についても分析した。 教育機関別では情緒的感受性,情緒的コントロールとSSIスコアに,出生順位別では社会的コントロールに,祖父母との同居経験別では情緒的表現性に有意差が認められた。 また看護学生の情緒的感受性は養護系より低く,情緒的コントロールは教育系より高かった。 さらに,SSI スコアは情緒的表現性,情緒的感受性,社会的表現性,社会的コントロール尺度と有意な強い相関が認められ,これらのスキルを高めることが社会的スキルの向上につながることが示唆された。
  • 綿貫 恵美子
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_61-2_69
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,国内における看護職の法的責任認識の実態を明らかにする目的から,測定尺度の開発および職業上の法的責任に関する判断基準の解明を行なった。 看護職の法的責任認識をとらえるために,看護職の引責志向性尺度,医療過誤事例における看護職の実際的な法的責任判断を問う質問紙を作成し,首都圏の総合病院の看護職者1,361名に自記式質問紙調査を実施した。 因子分析の結果,引責志向性尺度は 「看護の職責自覚」 「医師への帰責否定」 に関連した妥当性,信頼性のある2因子からなることが明らかとなった。 実際的な法的責任判断は事故状況に強く左右され,看護職は 「自らが看護職一般に必要と考える水準のアセスメント能力を用いた時の事故発生の予見可能性」 「先行する医師の予見義務・内容に関わらない看護職者の主体的な発生予見・回避の必要性」 という2つの基準により,看護職の法的責任の有無および軽重の判断を下している可能性が示唆された。
  • 豊島 由樹子
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_71-2_85
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      脳血管疾患により障害を持ちながら在宅生活をめざす17事例の患者・家族に対して,発症後初めて家庭に戻る外泊を取り上げ,患者と家族がどのような家庭生活を体験したかについて面接を行い,その内容を質的に分析した。
      その結果,1)外泊後,患者は自分で行動できた喜びや自由な生活環境の広がり,実際に生活しての困難,家族・社会との繋がりの取り戻しを体験していた。 2)家族は,初めての在宅生活を体験して介護についての実感を感じると同時に,外泊を通して家族としての結びつきの強まりがみられた。 3)外泊における患者と家族の体験から特徴あるグループとして,家族が目の離せなさを感じたグループ,患者・家族とも在宅での動きの悪さを感じたグループ,家族が回復への期待の強いグループがみられた。
  • -英米におけるナースキャップ廃止議論の背景にあるもの-
    嶌田 理佳, 上野 範子
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_87-2_99
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      アメリカやイギリスでは1990年頃までにほとんどの施設でナースキャップが廃止された。 私服導入を含めたユニフォームの変遷と共に必然的に廃止に至ったと考えられるが,この背景にはナースキャップの表現する看護婦像が専門職のものとしてふさわしいかどうかを議論したフェミニズムの視点もあったと考える。 歴史的に欧米でも女性は主体的に生きることは許されず,一生を男性に捧げるものとされてきたが,看護が伝統的に女性の職業であったために,1960年代まで看護婦は医師や病院経営者ら男性による支配をうけてきた。 その後,女性のみに着用が求められるナースキャップは,差別的であるとの指摘や伝統的女性観を想起させ,新時代の看護婦のイメージとして不適切との主張がナースキャップ廃止に影響を与えたのではないかとみられる。 この論文では英米の文献を参考に看護史と女性史に基づき,ナースキャップの表現する女性性と看護婦像について考察した。
  • 菊池 昭江, 岡本 恵里
    2002 年 25 巻 2 号 p. 2_101-2_109
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,職務における自律性 (看護活動における状況認知,判断,実践に関する力量) と研究活動に対する看護婦の意識や経験,倫理的問題 (看護婦の責任である健康の増進,疾病の予防,健康の回復,苦痛の緩和を遂行できていないと感じる業務上でぶつかる事例) に対する悩みとの関連性を検討することである。 総合病院看護婦381名を対象に質問紙調査を行った結果,以下のことが明らかになった。
    1. 看護婦の職務における自律性は,具体的判断・実践能力,認知能力,緊急時対応能力,抽象的判断能力,自立的判断能力の5因子,研究活動に対する意識はキャリア形成への期待感,研究意欲,研究サポートへの満足感の3因子,倫理的問題への悩みの程度は1因子構造を示した。
    2. 職務経験10年以上の看護婦は,10年未満の者よりもキャリア形成への期待感や研究意欲,倫理的問題に対する悩みの程度が高く,さらに主任や婦長はスタッフよりも研究活動に対する意識や倫理的問題に対する悩みの程度が高かった(p<.05)。
    3. 職務経験10年以上の看護婦は,倫理的問題に対する悩みとキャリア形成への期待感及び研究意欲との間で,役職者では倫理的問題に対する悩みと研究意欲との間で有意な正の相関を示した(p<.05)。
    4. 職務経験10年以上の看護婦では,職務上の自律性が高い者ほど研究活動に対する意識が高く研究活動を肯定的に受け止めていた。 また,職務上の自律性が高い者ほど倫理的問題に対する悩みを強く感じていた。
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