日本看護研究学会雑誌
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27 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 竹内 登美子, 石井 秀宗, 比嘉 肖江
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_15-5_24
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      研究者らが開発したCAIコースウエアの学習履歴を分析することによって,学習者の学習過程を把握し,コースウエアの評価を行うという目的で本研究を行った。分析に当たっては,テスト理論における項目特性曲線の考え方を採用した。
      その結果,本CAIコースウエアは,学習者にとって適切な難易度と有効性を有していることが確認された。マルチメディアCAI学習の特徴の一つである「映像や写真を導入した学習」においては,視覚のみに頼らず,詳細部分については定義や説明などと組み合わせて理解度を高める必要性が確認された。また,「聴覚と視覚を刺激し,これらの刺激を受けて行動すること」を求めた設問では,成績高・中・低群の全てにおいてほぼ100%の正答率が得られ,バーチャルリアリィティを含めたマルチメディアによる教育効果が明らかとなった。しかし,思考負荷の大きい多重解答項目は,応答回数を増やしても正答率はあまり改善されなかった。
  • -郡部に居住する高齢者の聞きとり調査から-
    松本 啓子, 渡辺 文子
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_25-5_30
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      郡部に居住する後期高齢者10名への聞き取り調査から,Successful Agingの意味について帰納法的・質的因子探索型研究を行った。
      Successful Agingの意味としては,【満足】【チャレンジ】【健康】【自負心】【参加】【自己保存】の6カテゴリーが抽出された。語りの中で‘過去も現在も満足している’から【満足】,‘チャレンジ精神旺盛で前向きな言動をする’から【チャレンジ】,‘健康・元気にむけて努力する’から【健康】,‘高い他者評価を得るとともに高い自己評価をしている’から【自負心】,‘社会や人との関わりに意味を見出している’から【参加】,‘満足している今の自分を,努力して維持させたい’から【自己保存】の6カテゴリーであった。郡部に居住する後期高齢者のSuccessful Agingの意味を明らかにしたことは,新たな高齢者像の構築,医療・看護教育における高齢者理解の一端に寄与することができる。
  • -D町の公開講座参加者および幼稚園児保護者の特徴-
    遠藤 和子, 谷口 千絵
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_31-5_37
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,「食生活と健康を考える」展の公開講座参加者と,幼稚園児の保護者を対象に,1.栄養表示に対する関心および活用の実態と問題点を明らかにし,2.栄養表示についての学習ニーズとして知りたい情報や学習の方法について把握することである。方法は自記式質問紙を用い,回収率は66.8%であった。結果は,対象者の9割が栄養表示を活用していた。表示を参考にする食品は,公開講座参加者が加工食品・レトルト食品,園児保護者では市販菓子,飲料の順である。栄養成分は,公開講座参加者はエネルギー,塩分,脂質の順であり,園児保護者はエネルギー,カルシウム,糖質の順に多い。この違いは,抱える健康問題によると考えられた。栄養表示が活かせない理由は,ライフサイクルに応じた所要量と健康問題に関する栄養成分の知識不足,買い物時の環境要因にあった。このため継続した学習へのニーズがあり,保健・医療職など専門家の介入が重要であると考えられた。
  • 大西 みさ, 山口 桂子, 片岡 純
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_39-5_48
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      この研究は,看護概念創出法を用いてHOT患者の受容を説明する概念を創出し,心理過程の特徴を明らかにする目的で行った。対象は,入院中のHOT患者20名で,半構成的面接により調査した。その結果,HOTを受容するまでの過程を説明する12の概念が明らかになった。これらの概念には,HOT導入時期はHOT導入による不安や悲観を伴う衝撃,酸素を必要不可欠と認識することによるHOT実行の決意と一時的な受け入れ,呼吸困難改善目的による酸素療法中断の願望と試行決定,在宅では外出時の注視による予想以上の悲痛体験から受ける心理的打撃,外出時や酸素療法機器に対する不便感や煩わしさ,酸素吸入の効果に対する自己解釈に基づく部分的及び完全HOT中断,再入院以降では呼吸困難体験による現状態の認知と酸素の必要性の再認識,呼吸困難増悪による酸素療法中断へのあきらめと酸素を自己の一部とする価値観の肯定的変化等が含まれた。
  • 赤澤 千春, 奥津 文子, 桂 敏樹, 寺口 佐與子, 一宮 茂子
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_49-5_54
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      生体肝移植術を受けた成人レシピエントの術後精神症状の発症と身体的要因の関係について検討した。
      1997年から2000年までの107名の成人レシピエントの術後精神症状発生状況を調査した。術後精神症状はDSM-Ⅲ-Rにより分類した。身体的要因の項目は肝臓の状態を示すチャイルドの分類をもとにアルブミン・ビリルビン・総タンパクとし,術後経過に影響すると考えられる要因として移植肝の割合・手術時間など,そして免疫抑制剤やステロイド剤の影響の指標として拒絶反応・パルス療法とした。各調査項目についてχ検定とU検定を用いて解析し,有意確立5%以下を有意差ありとした。
      107名中31名(29%)になんらかの術後精神症状がみられた。総タンパクでは術後精神症状発生があったグループでは5.8±0.9g/dlと正常範囲を下回り,術後精神症状発生のないグループとの間で有意差がみられた。他の項目では有意差がみられなかった。
  • -ケアリングに通じるナラティブアプローチと振り返りの分析-
    下村 明子, 松村 三千子, 杉野 文代
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_55-5_64
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,ケアリングにつながる看護教育の在り方のひとつとして,対人関係スキルを高め,患者理解のアプローチとして,講義にNarrative(物語り)を取り入れた。その後患者との関わりを,ロールレタリング(以後RLと略記)によって効果の検証を試みた。その結果学生のアンケートでは,80~90%の学生が肯定的に答えている。RLの記述内容を,グランデッドセオリーを応用した方法で分析した結果,患者をよりイメージすることが可能となり,患者の状況を意味づけし,理解できていた。GibbsのReflective・cycleから分析すると,RLの実践は,患者の状況を記述し,関わりを振り返ることから,患者の病気体験にまつわる感情移入を,体験的に学ぶ場として意図的に提供された。バルマンらのリフレクションスキル,特に自己への気づき(Self-awareness)が明確になり,ケアリングに通じる看護教育として効果があることが示唆された。
  • 別所 遊子, 細谷 たき子, 長谷川 美香, 吉田 幸代, 松木 光子
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_65-5_71
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      訪問看護師が専門職として,妥当な看護目標を設定し,成果を上げるための基礎データを得るために,2道県の13ヶ所の訪問看護ステーションにおける,脳血管疾患後遺症のある利用者76名を対象として,生理的,環境,心理社会的,行動の3領域の27項目について,2ヵ月間の状態変化,予測レベルとその達成状況,および成果に関連するケアの内容を縦断的に分析した。その結果,皮膚症状,血圧値,フケ・垢,汗・し尿の臭いなどが,改善割合が高かったが,いずれも予測した改善割合を下回っていた。服薬,皮膚症状,汗・し尿の臭い,栄養バランス,ケア技術などの6項目は,看護ケアの重点項目としてあげた群では,あげなかった群よりも改善割合が3倍以上高かった。また,これらの項目の重点群では,薬剤の管理,皮膚のケアなどの実施頻度は,非重点群と比較して明らかに高く,ケアが患者・家族の状態の改善に寄与したことを示唆していた。
  • 松嵜 英士
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_73-5_81
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,看護学生の情報活動とそれに伴う「情報活用能力」が「クリティカル・シンキングに対する志向性」,「学習におけるメタ認知的知識・活動」にどのような影響を及ぼしているのかを検討するものである。研究への同意・了解の得られた205名に質問紙調査を実施し,回答に不備のない学生185名について分析した(有効回答率90.2%)。
      その結果,学年の比較では,3年生が1・2年生より情報活用能力, クリティカル・シンキングに対する志向性,学習におけるメタ認知に優れている傾向が示された。また,情報活用能力を伸ばすことがクリティカル・シンキングに対する志向性,学習におけるメタ認知を高めることに効果があることが示された。さらに,情報機器,インターネットをさまざまに利用・活用することが,情報活用能力を高めることにつながっていることも示唆された。
  • -ライフストーリーを読み解く視点から-
    原 祥子
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_83-5_92
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,“いま,ここ”で生きる高齢者を理解することの前提として,高齢者が語るライフストーリーをどのように読み解けばよいのかを,その分析・解釈方法の提示とライフストーリーの記述を通して明らかにすることである。研究協力者は介護老人保健施設を利用しているB氏で,非構造化面接によって得られたライフストーリーの語られた内容と語られ方に着目し,質的・量的な内容分析を行った。
      B氏のライフストーリーは8つの人生時期に区分され,「生の言葉」を活かしつつ筋立てたストーリーを要約して記述した。記述されたストーリーとのつながりをふまえて,現在のあり方として3つのテーマを抽出し,さらにライフストーリーのタイトルを見出した。また,各人生時期の語りの密度やライフストーリーへの聴き手の介入の程度,語り手と聴き手の相互作用のあり方を手がかりにして“いま,ここ”で生きる高齢者を描き出すことができることについて述べた。
  • 久米 翠, 叶谷 由佳, 佐藤 千史
    2004 年 27 巻 5 号 p. 5_93-5_99
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は救命救急センターICU・CCUに入室した患者の不安やストレス等の精神的問題の実態について縦断的に明らかにすること,看護師の患者の不安についての認識を明らかにすることを目的とした。救命救急センターの成人患者と受け持ち看護師各25名を対象に,患者については入室時と入室後1ヶ月の2回の調査を,看護師については入室時の1回の調査を実施し,以下の結果が得られた。
      1)入室後1ヵ月の調査まで終了した患者は14人で,ICU入室後一ヵ月の抑うつ症状やPTSD症状の得点は高得点を示し,抑うつ症状が陽性の者は57.1%, PTSD症状では35.7%であった。2)患者の入室中の不安と看護師が認識している患者の不安は,相関関係を認めなかった。このことから,ICU退室後の患者の精神的フォローを充実させていく必要性があるとともに,患者の不安やストレスに関する研究が進められ患者理解を深めていく必要が示唆された。
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