日本看護研究学会雑誌
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28 巻, 2 号
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  • 静野 友重, 乗松 貞子, 岩田 英信
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_15-2_19
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     市販のマッサージ器を用いた土踏まずとふくらはぎに対するタッピングの下肢浮腫軽減効果を,介護老人福祉施設に入所中の26人の高齢者を対象として検討した。朝と夕方の下肢周径を連続6日間測定し,後半の3日間は夕方の測定後に30分間のタッピングを施行した。
     コントロール期間中の朝の下肢周径は,前日の夕方に比べて平均2㎜短縮したに過ぎなかったが,タッピング期間中は平均8㎜短縮した。
     心疾患の有無,利尿剤服用の有無,移動形態の3つの特性で対象者を分類し,朝の下肢周径の平均値について分析したところ,全ての群においてタッピング期間の下肢周径はコントロール期間に比べて有意に短縮した。
     市販のマッサージ器を用いた土踏まずおよびふくらはぎに対するタッピングは,心疾患の有無,利尿剤服用の有無にかかわらず,高齢者の下肢浮腫を軽減させるための有効な援助方法である。
  • 石井 京子, 藤原 千惠子, 星 和美, 高谷 裕紀子, 河上 智香, 西村 明子, 林田 麗, 彦惣 美穂, 仁尾 かおり, 古賀 智影, ...
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_21-2_30
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,看護師を対象とした職務キャリア尺度の作成,および信頼性と妥当性の検討である。第1調査では,無作為抽出された90名の看護師(回収率87.8%,有効回答率94.9%)を対象として,自由記述による質問紙調査を行い,499のキャリア内容を分析後,62項目を抽出し調査票を作成した。第2調査では,無作為抽出された看護師276名(回収率73.9%,有効回答率99.6%)を対象とし,調査票による質問紙調査を行った。62キャリア項目を因子分析(主因子法,バリマックス回転)した結果,「質の高い看護の実践と追究(α=0.912)」「対人関係の形成と調整(α=0.866)」「自己能力の開発(α=0.802)」「多様な経験の蓄積(α=0.787)」といった43項目・4下位尺度で構成されていることが明らかになった。属性による,交差妥当性がみられたことから,本尺度は信頼性係数も高く,妥当性もあり,看護師の職務キャリア測定尺度として有用であると考える。
  • 平松 知子, 泉 キヨ子
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_31-2_40
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     C型肝炎患者の長期的な予後に注目し,C型肝炎由来のがん患者19名の語りを通して,肝炎診断から現在までに体験した心理と療養行動を明らかにした。患者の語りは,①診断から病院選択まで,②インターフェロン療法選択から終了まで,③インターフェロン療法終了から肝がん発見まで,④肝がん発見以降の4期に大別された。各期毎に心理と療養行動に関連した文章を抽出し,類似性に基づいて分類した。各病期に共通した心理は,医師を信頼しておまかせであり,行動として,定期受診の確実な継続,同病者との情報交換,自分なりに決めた肝庇護対策を継続,入院時は治療に専念するという主体的に病気とともに生きる姿が明らかにされた。しかし,診断時から内容を変えながら予後である肝がんや肝硬変に対する不安と自己管理方法の曖昧さに対する問題を抱えていた。以上から,各期の状態に沿った教育と不安に対する支援に関して看護介入の必要性が示唆された。
  • 佐藤 政枝, 川口 孝泰, 嶋田 寿子, 谷 和子, 中山 昌美
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_41-2_50
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,人工股関節全置換術(THA)後患者の生活実態を把握するために,THA後患者243名を対象に,主に生活様式と①手術後年数,②住居の改造・工夫等との関係性についてアンケート調査を行った。さらにTHA後患者12名への訪問調査を行い,具体的な看護援助の指針を探索した。
     アンケート調査では,手術後「3年以上」群で脱臼の危険性が他群に比べて有意に高く,経年的な観察の必要性が確認された。住居の「改造・工夫あり」群では他群に比べて脱臼の危険性が有意に低く,居住環境の調整が脱臼予防に繋がると判断された。また,訪問調査では,生活様式の「変容あり」事例で道具や動作の工夫がみられたのに対し,「変容なし」事例では教育が得られず脱臼を繰り返していた。
     本研究の結果から,THA後患者への看護援助には,手術前後の生活様式の把握に加えて,対象の居住環境に配慮した個別的な指導が必要であることが示唆された。
  • 森本 美智子, 高井 研一, 中嶋 和夫
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_51-2_58
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,病気関連不安認知尺度の交差妥当性を確認し,入院患者の病気や生活に関する不安認知の精神的健康に及ぼす影響を明らかにするとともに,精神的健康に不安認知のどの因子が最も影響を与えるのかを明らかにすることであった。対象は総合病院に入院している317名の患者で,精神的健康の測定にはGHQ-12を用いた。因果モデルを用いて分析した結果,不安認知と精神的健康の標準化係数は0.487(p<0.01)で,中程度の関連性を認め,不安認知が高いほど精神的な健康度が低下していることが示された。病気関連不安認知の中では目的・価値喪失の因子が精神的健康への影響が強く,目的・価値の喪失に対する不安認知への介入が課題と考えられた。入院生活を送っている患者の精神的な健康維持に対する介入として病気や生活に関する不安認知をアセスメントし,個々の患者が抱える不安認知に介入していくことが必要であることが示唆された。
  • 西田 みゆき, 北島 靖子
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_59-2_65
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,小児看護学実習で,学生の困難感のプロセスと学生自身の行っている対処を明らかにし,今後の小児看護学実習指導への示唆を得ることを目的とした。看護学生21名に対して,小児看護実習で感じた戸惑いや困難について,半構成的質問による面接を行った。その結果,小児看護学実習への学生の困難感のプロセスと学生自身の対処では<実習活動の停滞>を中核概念とする①未知なる子どもと未知なる病児への当惑,②病児との対面の脅威,③援助技術の未遂行による落胆,④複雑な統合と応用というプロセスが抽出され,A. 根気強く継続的な関わりB. 指導者の助言の活用と看護実践の模倣C. 学生同士の励ましによる対処を行っている構造が明らかになった。学生が体験している小児看護学実習への困難感を察知し,繰り返しあきらめずに関わっていくことの重要性を説明し,心理的な援助をすること,モデルを示し一緒に行うこと,学生同士の代理体験を肯定的に捉えたカンファレンスの運営をすることが,小児看護学実習を有効にする一助であることが示唆された。
  • 吾郷(蓑原) 美奈恵, 高野 美喜子, 岸 富美子
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_67-2_72
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究はデイケア通所と入院中の精神障害者の性,年齢,主病名を一致させた各25名を対象に,両群の味覚識別能を明らかにすることを目的とした。調査は対象を管理する各部署の看護師長が全て行ない,調査内容は滴下法を用いた味覚識別能と自記式アンケートによる生活習慣等である。その結果,デイケア通所者の味覚識別能は甘味3.4±1.6,塩味3.1±1.6,酸味4.0±1.6,苦味4.4±1.8で,入院者の味覚識別能は甘味4.4±1.9,塩味3.1±2.0,酸味4.4±2.3,苦味5.4±2.5であった。両群では生活習慣に若干の違いがあったが,甘味,酸味,苦味の味覚識別能においてデイケア通所者は入院者に比し検査平均値が低く敏感に識別しており,甘味で有意差(P<0.05)を認めた。
  • 坪田 恵子, 上野 栄一, 高間 静子
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_73-2_80
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では外来に通院する高血圧症患者の日常生活における自己管理度測定尺度を作成し,妥当性と信頼性について検討した。調査対象は大学病院の外来患者105名とした。文献検討等により高血圧症患者の日常生活における自己管理の概念枠組みを行い,概念枠組みに添って自己管理の程度を測定するための質問紙原案を作成した。因子分析により3因子27項目の因子解が抽出された。各因子は項目内容により,「食事管理因子」「運動管理因子」「ストレス管理因子」と命名した。基準関連妥当性については,高血圧症患者の日常生活における自己管理尺度と概念が近似した2つの既存の尺度との間に有意な相関を確認した。内的整合性を示す信頼性係数αは0.911であった。これらのことから,本尺度は妥当性・信頼性の高い尺度であることが確認できた。
  • ― スキナ法の検証 ―
    大西 みさ, 足立 はるゑ
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_81-2_88
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,入院患者の高齢化に伴いECG電極交換時の皮膚ケアの質向上をめざすものである。研究目的は高齢者のECG電極貼付部位の皮膚ケア方法として考案したスキナ法の有効性を検証することである。スキナ法とはスキナクレンを散布し汚れを乾いたタオルで拭き取る方法である。対象はECGモニターを装着中の入院患者で同意が得られた59名で,従来法とスキナ法を比較し以下の結果を得た。1)スキナ法の電極交換時期は皮膚異常(p<0.002)やかゆみ(p<0.002)が起きない3日目以降が有効である。2)スキナ法は電極交換5日目で季節(冬期)によって皮膚異常やかゆみを起こしやすい傾向を示した。3)スキナ法は高齢者の電極によるアレルギー接触皮膚炎を軽減する保湿効果があり,電極交換時の保清方法に適している。
  • 鈴木 英子, 叶谷 由佳, 北岡(東口) 和代, 佐藤 千史
    2005 年 28 巻 2 号 p. 2_89-2_99
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,大学病院の新卒看護職の職場環境及びアサーティブネスとバーンアウトリスクとの関連を明らかにすることであった。日本の病院要覧に掲載された全大学病院102のうち看護部長から了解の得られた20の病院に2003年4月に就職した1203人の新卒看護職を対象とし同年6月質問紙調査を実施した。多重ロジスティック回帰分析の結果,身体的疲弊感は,過去1年間の家族の重病,リアリティ・ショック,職場満足,仕事量,超過勤務,転職希望,同僚の相談相手とアサーティブネスに,情緒的疲弊感・非人間化では,過去1年間の自分の重病,給与満足,仕事量,超過勤務,転職希望,その他の相談相手とアサーティブネスに,個人的達成感では,臨床領域,過去1年間の家族の重病,配置満足,先輩の相談相手とアサーティブネスと関連していた。低いアサーティブネス得点は,バーンアウトリスク全ての下位尺度の予測因子となる可能性があることが明らかとなった。
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