日本看護研究学会雑誌
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29 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 國方 弘子, 茅原 路代, 大森 和子, 神宝 貴子, 岡田 ゆみ
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_37-1_44
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      地域生活をしながら精神科デイケアまたは作業所に通所している統合失調症患者の生活への思いとその影響要因を明らかにすることを目的として,グラウンデッド・セオリー法による質的帰納的研究を行った。結果,《充実感がある》,《病気が安定している》,《自分をこれでいいと思える(自尊心)》,『折り合いをつける』,《自分を受けとめてくれる》,《居場所がある》,《心のよりどころがある》の7個のカテゴリーが抽出された。彼らは《充実感がある》生活を送っていることが見いだされ,『折り合いをつける』ことと《自分をこれでいいと思える(自尊心)》ことは,《充実感がある》生活に至るには必要であり,《病気が安定している》ことは《充実感がある》生活の基盤となっていた。本結果は,在宅生活をする統合失調症患者の生活の質を維持・向上するための看護支援のあり方に寄与できることが示唆された。
  • 安東 由佳子, 片岡 健, 小林 敏生
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_45-1_55
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,バーンアウトを予防するための具体的な介入策を考案するため,共分散構造分析を用いて,神経難病患者のケアに携わる看護師のバーンアウトに影響を及ぼす職場環境ストレッサーを明らかにすることを目的とした。国立系で病床数300以上の総合病院の神経難病病棟に勤務する看護師284名を対象に質問紙調査を実施した。分析の結果,神経難病患者のケアに携わる看護師のバーンアウトに最も強い影響を及ぼす職場環境ストレッサーは,「看護における不全感」であり,次いで「同僚との葛藤」であった。「医師不信」「上司との葛藤」「患者の死体験」は有意な影響を及ぼしていなかった。以上の結果より,看護師が患者支援に伴う気持ちを表出でき,同僚との良好な関係を促進していける職場環境作りがバーンアウトの予防において重要であることが示唆された。
  • 廣瀬 春次
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_57-1_65
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,痴呆患者を在宅介護している家族の非死喪失,介護サポートそれに予期悲嘆の各尺度間の関係を検討した。144人の痴呆の家族介護者に健康尺度を含む4種類の質問紙を配布した。非死喪失は,「能力の喪失」,「家族のきずなの喪失」,「自己の機会の喪失」,「同一性の喪失」の4つのカテゴリーで,介護サポートは情緒的,道具的,ネガティブの3つのカテゴリーで構成された。予期悲嘆は,「嫌気と孤独」,「成就感」,「感謝」,「否認」,「後悔」,「過剰関与」,「諦め」の7因子で構成されていた。予期悲嘆との相関分析の結果は,非死喪失と介護サポートが予期悲嘆の質と強さに影響を与えることが示された。更に,「家族のきずなの喪失」と「嫌気と孤独」が介護者の健康に悪い効果をもつことが示された。著者は,予期悲嘆の適応的側面に注意を向ける必要のあること,非死喪失が予期悲嘆とは別の尺度として構成される必要があること,非死喪失及び予期悲嘆が介護負担と同様,介護者の健康に重要な影響を及ぼすこと等を論じた。
  • 國方 弘子, 中嶋 和夫
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_67-1_71
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,統合失調症患者の社会生活技能と自尊感情の因果関係を明らかにするために,地域で生活する患者61名の縦断データを用いて,社会生活技能と自尊感情の因果関係モデルを作成し,モデルのデータへの適合を検討した。結果,統合失調症患者の高い社会生活技能は自尊感情の高さを規定するが,高い自尊感情をもっていることが統合失調症患者の社会生活技能を良好にするわけではないということが示された。本研究の成果は,統合失調症患者がより良い自尊感情を得るには,社会生活技能を高めたり維持することが有効な方法の一つであるというエビデンス(evidence)を得たことであるが,今後,統合失調症患者の自尊感情が変容するプロセスについて質的な研究が必要である。
  • 石橋 照子, 岡村 仁
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_73-1_78
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      精神疾患患者のイレウスに気づいた看護師13名の観察した内容から,イレウスの早期発見および対処につながる観察ポイントを明らかにした。看護師が患者のイレウスに気づいたプロセスは<ハイリスク状態><ハイリスク要因の付加><気づく前に観察された症状><気づいた時に観察された症状>の4つの段階を持つフローチャートに表すことができた。各段階における早期発見につながる観察ポイントとして,①イレウスの既往,下剤の常用,腹部手術の既往がある患者は意識して腹部症状を観察する,②内服薬の増量もしくは追加,発熱・脱水,活動量の低下がみられた時は,イレウスの可能性を予測して観察する,③精神情緒状態の変化,いつもと違う行動,日常よく見かける身体症状に対して,見方を変えて観察する,④客観的に視診や聴診,触診を確実に行い,イレウスの鑑別に必要な詳細で正確な情報の観察,報告をする重要性が示唆された。
  • -看護職者の問題の認識と看護に影響を及ぼす要因の分析から-
    田渕 康子, 宮崎 文子
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_79-1_88
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,子宮内膜症患者の看護における現状と課題を明らかにすることである。対象は,婦人科看護の経験のある130人の看護師で,子宮内膜症患者の看護に関する独自の質問紙と性役割パーソナリティーを測定するための日本語版BSRIを用いた。本研究により導かれた結果は,1)多くの看護師は子宮内膜症を治りにくい,深刻な病気と捉えていた。一方で妊娠との関係や,治療法選択の困難さに対する認識は低かった。2)看護職者は月経時の下腹部痛や不妊など子宮内膜症の症状を捉えていた。しかし,月経時以外の下腹部痛や排便時痛への認識は低かった。3)多くの看護職者は,不妊を子宮内膜症患者の問題と捉えていたが,不妊の心理的な問題への認識は低かった。4)子宮内膜症患者の看護に影響を及ぼしていたのは,看護職者の年齢,婦人科看護の経験,性役割パーソナリティであった。
  • 藤崎 郁, 西山 佳奈
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_89-1_96
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      交通事故遺族に対する援助のあり方を検討するために,セルフヘルプ・グループの活動に参加し,観察と聞き取り調査を行った。遺族の多くは事故後に様々な二次被害を被っており,その発生源も多様であった。遺族たちは真相究明をしたり,関連する情報を調べる等の積極的行動をとる中でグループの存在を知り,結果的に精神的サポートを得ていたが,医療者から情報提供を受けた人はいなかった。当事者同士の集まりであるセルフヘルプ・グループは,時に落ち込む契機になったり,人間関係の難しさもあるなどの否定的な面も持ち合わせていたが,全般には,「前向きな力をもらえる場」や「当事者同士で情報を共有し共感し合える場」として機能していた。また,引きこもりがちな遺族が外出をするきっかけとなったり,広く社会に被害者保護を訴えたり,法的な整備を要求したりといった社会的活動を促進する契機ともなっており,「社会との架け橋」としても機能していた。
  • 小野 美喜
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_97-1_105
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      障害をもつ患者を自宅退院に導くためには,患者家族の相互作用の中でいかに看護師が働きかけるかが重要である。本研究は,回復期リハビリテーション病棟において,自宅退院に困難を感じた患者家族の自宅退院への援助プロセスを明らかにすることを目的としている。看護師12名を対象に半構成的面接を行い,事例に対する援助過程について聞き取りを行った。データは逐語録におこしグラウンデッドセオリー法にて分析した。
      その結果,看護師は【自宅生活の安全性分析】と【家族間緊張の感受性】能力を常に働かせながら介入していた。【ADL獲得介入】では,「目標ADLへの挑戦」をしながら患者を支援し,患者の落ち込みがみられた時に「無理をしないADLへの転換」をしていた。そして同時に患者家族に対して【生活の意思決定介入】を積極的に行っていた。これらの能力と介入は,患者と家族を安全な自宅生活に導くために重要であると考える。
  • 山本 多香子
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1_107-1_117
    発行日: 2006/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,その人がこれまで健康時に行っていた朝の身だしなみの方法に合わせ,その人がどこまでできるか確かめ,実施する形態の,集中的なモーニングケアが,高齢者の日常生活に及ぼす効果を明らかにするものである。介護老人保健施設利用者5名に協力を得て,半構成的インタビュー,参与観察による質的(定性的)データと,携帯型の活動量計「アクティグラフ」の利用による活動量測定に関する量的(定量的)データを用いて分析をおこなった。その結果,高齢者の生活内容に【刺激を受ける】【気持ちが安定する】【意欲を取り戻す】の3つの変化を及ぼし,昼寝の時間の減少傾向と夜間の睡眠時間の増加傾向が読み取れ,療養生活における生活態度が良い方向に変容している点を裏付けることができた。
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