日本看護研究学会雑誌
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29 巻, 2 号
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  • 山口 真澄, 鎌倉 やよい, 深田 順子, 米田 雅彦, 山村 義孝, 金田 久江
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_19-2_26
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,入院中に安全な食事摂取量を評価し調整することを学習した幽門側胃切除術後患者が,退院後に食事摂取量を自律的に調整し,栄養状態を回復できているか明らかにすることを目的とした。
      対象は29名であり,入院後から術後3ヶ月まで,食事前後の体重増加量としての食事摂取量,食後の上腹部感覚と不快症状を自己記録した。退院後には運動量と歩数を起床から就寝まで生活習慣記録機にて自動記録し,栄養状態の評価として,体重及び上腕筋囲を用いた。
      その結果,食事摂取量と食事回数の推移から対象者は食事摂取量を自律的に調整できた。食事摂取量は段階的に増加し,退院時43%から術後13週目には93.8%まで回復した。運動量と歩数は漸次増加したが,体重は術後13週目に93.6%,上腕筋囲は94.6%であり,退院時から維持できた。
      以上から,対象者は退院後に運動量を増加させたが,栄養状態を維持し,これは食事摂取量を自律的に増加させた結果と考えられた。
  • 佐藤 幸子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_27-2_32
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      子どもの情動調整は社会性の発達と密接に関連しており,近年における子どもの社会性の発達に関連した問題を検討する際には,情動のアセスメントが重要である。今回はその基礎的研究として,健常児における肯定的・否定的情動に関する表情の表現について年齢別に明らかにすることにより,表示規則の獲得に関する示唆を得ることを目的に情動表現課題を行った。対象は保育所および小学校に通う子ども96名(年齢5.6±1.03)である。その結果,表情による表現は,年齢があがるにつれて縮小され,主観的には感じていても,その表現を抑制する働きが6歳ころより存在することが明らかになった。以上の結果から,表情においては表示規則が働くことを考慮し,子どもの情動をアセスメントする必要があることが示唆された。今後はこれらの結果をもとに,臨床的な問題を有する子どもの情動表現について検討していきたい。
  • 森本(川原) 淳子, 坂本 洋子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_33-2_41
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,看護師のステレオタイプの促進条件と情報処理過程について検討し,看護場面における認知的煩雑性がステレオタイプ的判断に及ぼす影響を明らかにするものである。看護教員養成課程及び臨床指導者講習の受講者115名を対象として,2(精神科ラベル)×2(認知負荷)の条件を配置し実験を行った。そして,刺激人物に対する「パーソナリティ印象」と「刺激人物の行動予測」「刺激人物に対する自己の行動意図」の3つの認知過程について回答を求めた。その結果,認知負荷高条件の方が,よりステレオタイプに基づく印象が形成された。また,認知負荷高条件では,刺激人物の行動予測と刺激人物に対する自己の行動意図について,ステレオタイプ認知を抑制していた。これらの結果より,看護場面におけるステレオタイプ認知には対人情報処理の異なる段階によってステレオタイプ的判断の自動過程と統制された過程が生じる可能性が示唆された。
  • 大釜 徳政
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_43-2_54
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,器質性構音・音声機能低下を抱える舌がん患者と患者を取り巻く社会環境との相互作用の視点から会話変容プロセスを理論化することを目的とした。手術療法を受けた舌がん患者32名を対象として半構造化面接を実施し,得られた資料を質的帰納的に分析した。この結果,対象者の会話変容プロセスは,《社会復帰背景の差異》から【意思疎通到達段階】,【会話効率・正確性促進段階】,【会話流暢性折り合い段階】という3段階から構成される会話段階モデルとして示された。これらの段階は基盤的環境,周辺的環境,職務的環境という社会環境と対応しており,各環境における対人関係ならびに活動範囲の拡大とともに段階も移行した。そして器質性構音・音声機能低下を抱える舌がん患者のリハビリテーション看護は,社会環境の差異および活動範囲を踏まえた会話段階モデルに沿って実践する必要があることが示唆された。
  • 白田 久美子, 吉村 弥須子, 前田 勇子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_55-2_61
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      手術療法を受けた食道がん患者の退院後の精神健康状態に影響する要因について検討することを目的とした。対象者は大阪市内の病院で手術療法を受け退院し1年以上経過した食道がん患者80名,期間2004年1月~5月,方法は半構成的な面接調査,調査内容は食生活や症状,GHQ28,診療録の情報も得た。倫理的配慮は研究参加の自由,匿名性,デ-タの機密性の保持を説明し同意を得た。統計学的解析はロジスティックモデルによりオッズ比(OR)と95%信頼区間(95% CI)を求めた。SAS Ver8.2使用。結果は平均年齢66.3歳,GHQ28総合点の平均5.1,最終モデルで有意差があったのは,身体の調子が良くない,体力がない,身体の動きが良くない,熟睡感がない,眠剤を服用,食生活全般に不満足,1回の食事時間が30分以上かかる,食物がつかえる感じ,感冒症状・疲れることが術後増えた,食欲がない,嚥下困難がある,吐き気があるであり,これらが精神健康状態に影響する要因と考えられた。
  • 冨澤 登志子, 平岡 恭一, 北宮 千秋
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_63-2_72
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究では,動機づけ,自己効力感,態度,行動療法的視点という4つの心理学的概念を用いて,糖尿病の食事療法という行動に影響を与える変数を総合的に検討し,相対的な変数の影響を示すとともに食事療法の実施に至る心理的構造を明らかにすることを目的とした。外来通院中の糖尿病患者に質問紙調査を行った。パス解析の結果「食事療法の実施度」に最も強いパスが認められたのは,「自己効力感」で,次いで「食事療法の工夫」であった。「態度」から「食事療法の実施度」への直接的パスは認められなかったが,動機づけ要因である「自己効力感」に対し,正の強いパスが認められた。
      以上より,食事療法の実施には,自己効力感が高めることが最も有効であり,自己効力感を高めるためには,態度の形成が不可欠であった。また工夫行動,つまり食事行動に結びつく刺激の抑制,遮断によっても,食事療法の実施度が促進されることが明らかになった。
  • 岡田 ゆみ
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_73-2_79
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,断酒会に通う長期断酒中のアルコール依存症者が,どのように断酒への意識を築いているのかを明らかにすることを目的とした。対象は,5年以上断酒している6人とし,参加観察と面接調査を行い質的帰納的に分析した。
      分析の結果,長期断酒体験で築かれた断酒への意識には,10のサブカテゴリーを含む3つのカテゴリー『定めた決まりで酒を断つ』『断酒を絶えず誓う』『断酒によって生まれる新たな意識』が抽出された。3つのカテゴリーは,仲間や家族など周囲の存在が背景にある中で,それぞれが相互に影響し合いながら繰り返される意識であった。また,長期断酒者が『定めた決まりで酒を断つ』意識の中で,必ずしも飲酒の危機に結び付いていない不安定な感情にも,あらかめじ定めておいた行動を早くとりながら断酒生活を維持していた事については,看護職者がアルコール依存症者の断酒を理解し,必要な支援を検討する上で示唆を得たといえる。
  • -役割ストレス認知及びその他関連要因との分析-
    佐野 明美, 平井 さよ子, 山口 桂子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_81-2_93
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      中堅看護師の役割ストレス認知,及び仕事意欲規定要因を経験年数の別から明らかにすることを目的に,500床以上の病院に勤務する経験3~8年目の看護師1104人(有効回答率73.7%)を対象に自記式質問紙調査を行った。結果,以下のことが確認された。
    1 .中堅看護師の役割ストレス認知の構造として「後輩・学生の指導育成」「リーダーシップの発揮」「自己啓発・積極的看護実践への取り組み」「組織活動への参加・取り組み」「職場の人的環境づくり」の5因子が確認された。
    2 .『現在の仕事に向ける意欲』の規定要因として,3~5年目では「役割葛藤(β=- .207 p< .001)」「同僚看護師の支援(β= .116 p< .01)」が,6~8年目では「職場の人的環境作り(β= .155 p< .01)」「能力評価(β= .124 p< .01)」が有意な要因として確認された。
    3 .『将来的な仕事に向ける意欲』の規定要因として,3~5年目では「役割曖昧(β=- .134 p< .01)」が,6~8年目では「組織的活動への参加・取り組み(β= .140 p< .01)」が有意な要因として確認された。
  • -ニードとコーピングの推移の特徴から-
    山勢 博彰
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_95-2_102
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究はCNS-FACE (Coping & Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings)を測定ツールとして用い,重症・救急患者家族のニードとコーピングの推移の特徴を明らかにし,その関係について因果構造をモデル化することを目的に行った。方法は,救命救急センター,ICU・CCUに入院した患者194名の家族211名を対象とし,日毎のニードとコーピングを測定した。その結果,情報,接近,保証のニードと問題志向的コーピングが経過に従って高くなる傾向が見られ,情緒的サポートと情動的コーピングは経過に従って低くなる傾向にあった。また,患者との相互関係上のニード,自己の安定性を維持するニード,情動的コーピング,問題志向的コーピングを潜在変数とする構造方程式モデリングを作成した。
  • 前田 修子, 滝内 陸子, 小松 妙子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_103-2_111
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,訪問看護従事者が,感染管理の知識・技術それぞれについて,どの程度必要と感じているか(以下,【必要度】),またどの程度不足を感じているか(以下,【不足度】),また訪問看護従事者の属性による,その差を比較・検討することである。訪問看護従事者193名を対象に郵送質問紙調査を行った結果,以下のことが明らかになった。
    1 .【必要度】の平均値が高かった項目は「手洗い」「うがい」「感染源・感染経路に関する知識」「気管内吸引」「感染管理に関する在宅療養者・家族への指導」等であった。属性により差がみられた項目はなかった。
    2 .【不足度】の平均値が高かった項目は「感染症新法に関する知識」,「CAPDの管理」「感染症発症に関する保健所との連携」「スタンダードプリコーションズに関する知識」等であった。年代では8項目において〔30歳代以下〕の方が平均値が高く,訪問看護経験年数では8項目において〔4年以下〕の方が平均値が高かった。
      今後は,【必要度】【不足度】の平均値が高かった項目を中心に組み込んだ,また対象の年代・訪問看護経験年数による特徴を反映させた教育プログラムを作成する予定である。
  • -医学文献およびMedlineとの比較から-
    片平 伸子
    2006 年 29 巻 2 号 p. 2_113-2_118
    発行日: 2006/06/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本調査の目的はわが国における看護文献の特徴を定量的調査から明らかにすることである。日本における代表的医学文献データベースである医中誌Webを用いて,1987年からの約15年間の看護文献の実数,医学文献に占める割合,記事区分別の推移,原著論文の抄録付与率を調査し,これを医学文献と比較した。また,海外との比較のため,同項目についてMedlineを用いて調査した。この結果,日本の看護文献は医学文献全体の中では3.9%と少ないが,実数,割合ともに増加していることが明らかになった。中でも会議録を除いた,研究論文の増加は顕著であった。これは日本における看護研究活動の活発化を示すものと考えることができる。しかしながら,医<br>学研究に比べるとその実数は少なく,原著の割合は低かった。
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