日本看護研究学会雑誌
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30 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 森下 晶代
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_49-1_57
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,心筋症患者の日常生活上の困難に対するコーピングの様相を検討することである。研究は質的帰納的研究デザインであり,研究参加者は男性26名,女性4名の計30名,平均年齢54.4±2.06(SE)歳であった。参加者には半構成的面接を行い,面接内容はKrippendorffの内容分析の方法を参考にして分析を行った。分析の結果,心筋症患者のコーピングは【おのれをしのぐ努力をする】【人に頼り,頼られる】【一縷の望みに賭ける】【気持ちに折り合いをつける】の4つカテゴリーで表された。参加者は直面する困難や問題に対して孤軍奮闘し,人的・物理的な期待を通して問題解決を図る努力をし,解決に至らない困難や問題に対しては,考えることを避けたりあきらめたりすることで気持ちを処理していた。これらの結果から,看護者が個々の患者のコーピングに注目することにより,患者が心筋症と共に生きるための援助の手がかりを見出せることが示唆された。
  • 野澤 明子, 岩田 真智子, 白尾 久美子, 佐藤 直美, 稲勝 理恵
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_59-1_66
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,血液透析患者自己管理行動尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討することである。平成15年に透析専門病院に通院する維持期血液透析患者133人に調査を実施した。
     有効回答者数は129人で,年齢は59±11歳(平均±SD)であった。反応偏向項目,回答欠損状況による項目選定の後,因子分析を実施し,第1因子「食事療法と水分制限の遵守」22項目,第2因子「治療法の管理と合併症の予防」5項目,第3因子「身体と心理社会生活の調整」6項目の3因子が抽出された。各因子のCronbach α係数は,0.687~0.922で,尺度全体で0.919であった。また各因子および尺度全体は,予防的保健行動尺度と有意な相関関係が認められた。
     本尺度は,信頼性と妥当性がほぼ認められた。今後は,患者の食事や日常生活における自己管理行動を促進する看護援助の効果の評価指標として本尺度を活用することができると考える。
  • 國清 恭子, 齋藤 やよい
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_67-1_77
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,産褥早期の母親の出産体験におけるコントロール感覚を明らかにすることを目的とした。産褥早期の母親10名を対象に出産体験についての半構成的面接を行い,Berelsonの内容分析を用いて質的に分析した。その結果,コントロール感覚からみた出産体験には,【自分の力によって出産したという体験】,【子どもと力を合わせて出産したという体験】,【家族や重要他者の力を借りて出産したという体験】,【専門家の力を借りて出産したという体験】,【運や自然の力によって出産が支配されたという体験】,【霊的なものによって自分の出産が守られたという体験】があり,前者ひとつが内的統制に基づく体験で,それ以外は外的統制に基づく体験であった。出産体験の意味づけを促す援助として,外的統制を意識づける方法や,外的統制感の内的統制感への回復や強化を促す方法の有用性が示唆された。
  • 渋谷 菜穂子, 奥村 太志, 小笠原 昭彦
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_79-1_88
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     自己表現のタイプを,2次元モデルを想定して測定することを目的に,欧米で既に標準化されているRAS(Rathus Assertiveness Schedule)30項目の日本語版を作成し,その信頼性・妥当性を検討した。対象はA県下5病院に勤務する看護師213名である。有効回答は212名から得られ,すべてが女性であった。主因子法・Promax回転による因子分析の結果,次の4因子が得られ,それらは概念的枠組みに一致していた:「アサーティブ」「非主張的」「攻撃的」「消極的かつ攻撃的」の各自己表現因子である。因子負荷量などをもとに項目の整理を行った結果,20項目からなる日本語版RAS(RAS-J)を作成した。RAS-Jは,構成概念妥当性も高く,Cronbach’sαによる信頼性も高いことが確認できた。
     本研究では,看護師の自己表現について,2次元モデルに適合する結果が得られたが,今後,男性も含めるなど対象者を増加し,また,日本語訳も再検討し,RAS-Jの標準化を進めたい。
  • 中村 郷子, 古瀬 みどり
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_89-1_95
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,看護系大学学生の卒業研究における課題探求プロセスを明らかにすることである。対象者は平成15年度に看護系大学を卒業した11名で,半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリーを用いて分析した。
     その結果,卒業研究における課題探求プロセスとして,学生がなぜその課題に取り組もうとしたかに関する課題探求の動機カテゴリー,学生が研究課題を決定するためにどのような行動をとったかに関する課題探求行動カテゴリー,学生が課題探求をする上で指導者の存在をどのように捉えていたかに関する指導者の存在意味カテゴリーの3カテゴリーが生成された。学生が課題探求する上で,課題探求の動機と行動のそれぞれに指導者の存在が影響を及ぼしており,課題探求の初期の段階からの指導者の関わりを必要としていた。また,〈水先案内人としての指導者〉の関わりは学生の達成感を高め,より主体的な課題探求を促すことが示唆された。
  • 平賀 愛美, 布施 淳子
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_97-1_107
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,新卒看護師のリアリティショックの構成因子を明らかにし,その関連要因を検討した。対象は,東北地方の病床数500床以上の一般病院24施設に勤務する平成16年度新卒看護師408名とした。その結果,新卒看護師のリアリティショックの測定項目は62項目で,その構成因子として「職場の人間関係」,「看護実践能力」,「身体的要因」,「精神的要因」,「業務の多忙さと待遇」,「仕事のやりがい,楽しさ」,「業務への責任感」,「患者の死に関する対応」が抽出された。これらの因子は,KMO標本妥当性が0.92であり,累積因子寄与率は42.52%,Cronbachのα係数は0.67から0.92であり信頼性は確保された。また,新卒看護師は特に「精神的要因」,「看護実践能力」についてリアリティショックを感じていた。リアリティショックは,配属された病棟の種類,診療科の複雑さと離職願望とに影響を受けることが示唆された。
  • 平賀 愛美, 布施 淳子
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_109-1_118
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,新卒看護師とプリセプターのリアリティショックに関する認識の相違について検討した。対象は,東北地方の病床数500床以上の一般病院24施設に勤務する平成16年度新卒看護師とプリセプター各408名とした。その結果,プリセプターは,新卒看護師のリアリティショックについて配属された病棟の種類,診療科の複雑さと離職願望とに影響を受けると捉えていた。また,新卒看護師のリアリティショックとプリセプターからみた新卒看護師のリアリティショックを比較した結果,新卒看護師はリアリティショックについて「看護実践能力」,「身体的要因」,「精神的要因」をプリセプターより高く認識していた。しかし,プリセプターは新卒看護師のリアリティショックについて「職場の人間関係」,「業務の多忙さと待遇」,「仕事のやりがい,楽しさ」,「業務に対する責任感」,「患者の死に関する対応」を新卒看護師より高く認識していた。
  • 倉石 真理
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_119-1_127
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,脳卒中後機能訓練(A型)に通所している高齢在宅片麻痺者が,退院後どのような思いを経て自分らしさを獲得していくのか,そのプロセスを明らかにすることを目的とした。対象者5名にインタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果,彼らの自分自身に対する思いは【悪化への困惑】を軸として,前向きな思いと後ろ向きな思いの中で揺れ動いていた。つまり彼らの今後の思いは,病気悪化の捉え方により左右される。自分らしさの獲得は【死への意識】により妨げられる危険性もある。しかし,様々な経験を通して,その思いを前向きに対処しようとすることで,より深く自分を見つめなおすこととなり,さらには自分らしさを再獲得していくことにつながることが示唆された。また,自分らしさを一度獲得することで完了してしまうのではなく,常にカテゴリー間を流動的に移行していると考えられた。
  • 美ノ谷 新子, 福嶋 龍子, 杉宮 伸子
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_129-1_135
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     退院患者がスムーズに在宅療養生活に移行することを目的に,退院準備連絡票(以下連絡票とする)を用いた在宅療養支援システムを試行した。患者が入院中に看護師と共に退院後の療養生活をアセスメントして連絡票に記載し,自ら在宅介護支援センターへ送付する。連絡票に記された要望・課題に沿って在宅介護支援センターは対応する。この一連のルートを7事例に試行した。看護師は退院患者を地域へ繋げる有効な手段と認識して患者と連絡票を記載した。患者は困った時の対応を得るためのツールと考え,自ら判断し情報提供した。在宅介護支援センターは本人からの情報である連絡票の要望に基づき対応した。看護師は連絡票活用の全過程を通じて,患者の自己選択,自己決定を尊重した働きかけを行い,セルフケア能力を引き出す教育的支援を果たした。今後,連絡票の修正と運用面の見直しをはかり,事例数を増やし,連絡票の有用性を確実なものにしていきたい。
  • 折山 早苗
    2007 年 30 巻 1 号 p. 1_137-1_144
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     精神看護学実習での学生の学びの構造を明らかにし,効果的な教育方法の資料を得る目的で,実習を終えた学生9人の「学び」のレポートの内容分析を実施した。次に,内容分析によって得られたカテゴリを項目として,看護過程を採用する前26人と採用した後25人で質問紙調査を実施した。その結果,精神看護学実習では6コアカテゴリを抽出した。形成されたコアカテゴリは「患者理解」 「患者との関わり方」 「患者に合わせた看護技術」 「コミュニケーションスキルの活用の方法」「精神疾患患者の生活環境」「自己理解」であった。
     精神看護学実習における看護過程の効果として,ほとんどのカテゴリ得点の上昇を認めた。特に, 「レクリエーション療法の理解」「援助方法の理解」「自己理解」「患者との距離のとり方」に差を認めた。
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