日本看護研究学会雑誌
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31 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • -鉄補給のためのレバー過剰摂取の問題点-
    赤瀬 智子, 小林 敏生
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_17-2_24
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      妊娠時の貧血は,胎児の発育異常や死亡等を生じる危険性の上昇が指摘されている。貧血時は,一般的に鉄分豊富なレバーの摂取が推奨されているが,レバーから鉄を補充すると,ビタミンA(VA)の摂取過剰となり,胎児発育に有害作用を起こす可能性があり,適正な栄養指導をする上で検討が必要である。今回,妊娠マウスに普通飼育餌,レバー,脱脂レバー,レバー油脂,VAの各々の含有餌を摂取させ,胎児死亡や異常の発生を観察した。その結果,一般的なレバー推奨量を毎日摂取すると,胎児へ量依存的な致死的で催奇形性的な影響があった。脱脂レバー群は,胎児発育に影響がなく,VA含有餌やVA同用量のレバーやその油脂群では,胎児の同器官に影響があった事により,主にレバー中のVAが重要危険因子である事が示唆された。妊娠貧血時の栄養指導は,レバー摂取に偏らず,多種の食材から鉄を摂取する事が適切であると考えられる。
  • -看護学生と専門学生における生活習慣・保健行動の比較-
    佐久間 夕美子, 叶谷 由佳, 石光 芙美子, 細名 水生, 望月 好子, 佐藤 千史
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_25-2_36
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,若年女性の月経周期に伴う症状に影響を及ぼす要因を明らかにすることである。対象は月経不順がなく,医学的知識をもつ看護専門学校生81名と非医療系の専門学校生94名とした。
      その結果,対象者は月経前期から月経期にかけて強くなる症状を経験していることが明らかになった。ストレス,起床時に疲労感がないことや良好な睡眠,適度な運動は症状が軽度である事と関連していた。また,最も医学的知識をもつ看護専門学校3年生の症状は軽度であった。さらに,看護専門学校生は睡眠時間が少なく喫煙や飲酒が多い一方,不健康な環境に対して食生活に配慮し運動などをよく行っていた。非医療系の専門学校生は次回月経開始日の予測ができず,保健行動も少なかった。このことから非医療系の専門学校生は月経知識だけでなく一般的な健康情報も不足していることが示唆された。以上より,知識や環境要因による月経周期に伴う症状への影響についてさらに検証していく必要がある。
  • ~体験の記述と解釈~
    田中 美穂
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_37-2_46
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,超高齢者へのインタビューと参加観察を通して入院・治療体験を記述し,彼等が必要としている看護を明らかにすることを試みた帰納法的研究である。慢性内科病棟に入院中の85歳以上の超高齢患者4名を対象としている。
      その結果,【病状や治療は馴染んだ身体感覚や生活体験を頼りに了解する】,【“たくす”という自己決定のかたち】,【「自分でやりたい」生活の営みを脅かされる】,【「…でも生きてかなきゃ」というきもち】という4つの体験の様相が明らかとなった。これらを意味解釈し,個々の高齢患者が独自の長い歴史や日常的な経験に沿って病を意味づけし,治療を了解していく手助けをすること,周囲との関係性や独自の価値観により成される多様な自己決定のかたちを見逃さないこと,個別性に富んだ老いのありように看護者や社会の価値を押しつけないことなどの看護が求められていることがわかった。
  • 玉田 章, 平野 真紀, 大塚 眞代, 奥田 淳
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_47-2_54
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      健康女子を対象にIncentive Spirometryを用いた呼吸訓練を行い,換気機能への影響を検討した。訓練は1日に4セット行うこととし,訓練回数が少ない群を1セット10回,訓練回数が多い群を1セット30回とした。各セット回数での訓練期間を2日,4日,6日,8日,10日間と設定した。訓練期間の初めと最後に電子スパイロメータで換気機能を測定した。その結果,1セット10回10日間群の肺活量と%肺活量および,1セット30回10日間群の最大呼気速度については訓練前よりも有意に増加した。訓練前後の差においては,肺活量と%肺活量で10回10日間群より30回10日間群の方が有意に低値であった。以上から,Incentive Spirometryを使用した呼吸訓練により換気機能の向上を期待する場合は,10日間以上の訓練が必要であること,肺活量の向上には必ずしも多くの訓練回数を必要としないことが示唆された。
  • 今堀 陽子, 作田 裕美, 坂口 桃子
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_55-2_63
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,看護師のメンタリングの特徴を記述し,メンターの存在が非管理職看護師の専門職的自律性の獲得に与える影響について「専門職的自律性測定尺度」を用いて検証することである。
      看護経験年数10年以上の非管理職看護師に質問紙調査を行い,有効回答の得られた610名を分析の対象としたところ,59.3%の看護師がメンターを有するという結果を得た。当時のメンターの職位は「非管理職看護師(スタッフ)」が45.9%,次いで「看護師長」が29.8%,「主任,副看護師長」が18.0%であった。メンターの有無別に「専門職的自律性測定尺度」を用いて専門職的自律性の獲得状況をみると,専門職的自律性の概念全体およびその下位次元である “内面認知・対応能力” 及び “状況認知能力” の平均値は,メンターあり群の方がなし群に比べ有意に高かった。メンターの職位別での専門職的自律性の獲得状況の比較では,顕著な差異は認められなかった。
  • 関 美奈子
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_65-2_72
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,代謝循環器系外来患者のアドヒアランスへの看護量を検討した。代謝循環器系外来看護の連携箇所を外来患者の受療経路から得点化し,看護が必要な量を換算する方法を考案,参加観察および記録した。調査施設として3病院を選定し,臨床研究倫理審査において研究承諾を得た。その結果,対象は,年齢が58.1±10.7歳(mean±SD,以下同じ),平均受診期間67.2ヶ月,計721名だった。その結果,看護が連携していた箇所数は平均2箇所,看護連携得点は1.9±0.6だった。外来看護量は2.6±1.0だった。Spearman順位相関係数を分析の結果,看護量は,対象一人当たりの一日の診療報酬点数と0.44(p<0.001)の有意な相関を示した。外来看護の業務は,診察補助だけが約26%で,約74%は診察補助と,検査室や他の診療科との連携を必要とした。
  • 中納 美智保, 青山 ヒフミ
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_73-2_81
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,新卒看護師の患者との関わり方の特徴を明らかにすることを目的として,卒後2年目の看護師18名を対象に半構成的面接による質的帰納的研究を行った。
      その結果,新卒看護師の患者との関わり方の特徴として【自分に焦点がある関わり方】,【患者に焦点が移りつつある関わり方】,【患者に焦点がある関わり方】,【援助につなげるための関わり方】,【援助としての関わり方】の5つのカテゴリーが見出された。新卒看護師は,患者との関わり方を変化させながら発展させていることが明らかになった。しかし,すべての新卒看護師が順調に関わり方を発展させるとは限らず,患者への関わり方が変化せず停滞する可能性や逆行の可能性も示唆された。これらの結果は,新卒看護師の患者との関わり方を含めた対人関係能力を示す一資料となり,新卒看護師の教育に活用できると考える。
  • -食道発声教室参加まもない参加者を対象に-
    辻 慶子, 間瀬 由記, 寺﨑 明美
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_83-2_95
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,喉頭摘出者の代用音声獲得に関する手術前から退院後の外来通院を通した看護介入についての手がかりを得るために,SHGの食道発声教室の初心クラスの喉頭摘出者が,失声というアイデンティティ表現の喪失にどのように取り組み,ライフスタイルを再編成しているのかを明らかにすることであった。食道発声教室初心クラスの参加者39名に面接調査を行い,逐語録を質的帰納的に分析した。ライフスタイルの再編成は【失声の意味づけ】【失声の影響】【食道発声獲得の希求】【発声練習の必要性の認識】【食道発声への取り組み行動】【日常生活上の取り組み行動】の6つのカテゴリーから構築されていた。看護者は喉頭摘出者自身の健康状態や生活を支援することはもちろんのこと,SHGに関する情報を提供することも看護者の役割である。
  • 浅野 美礼
    2008 年 31 巻 2 号 p. 2_97-2_103
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      水平整流式の無菌層流ユニットを備えた模擬バイオロジカルクリーンルームを設置し,その室内のベッド上に患者が生活している環境を設定した。その環境で無菌層流を風速0.3 m/sあるいは0.5 m/sで送ったときの患者周辺に生じうる気流の状況を,標準微粒子(直径0.506μm)を用いて調べた。患者が不在の状態では,風速0.5 m/sの設定のときは0.3 m/sより微粒子の運搬除去能力が高かった。しかし患者が存在するときには,風速0.5 m/sの設定の方が0.3 m/sのときよりも換気回数が低下し(p<0.05),微粒子の運搬除去能力が低下していたことがわかった。その理由は患者のダウンストリーム(患者下流側に生じる渦)による空気の滞留のためと考えられた。風速が大きくなると滞留する空間が拡大し,ゆえに換気能力が必ずしも大きくなるとは限らず,むしろ換気量が低下すると予測される結果が得られた。
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