日本看護研究学会雑誌
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31 巻, 4 号
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  • 松田 光信
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_15-4_25
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      目的:本研究の目的は,多職種のチームによる心理教育を受けた入院中の統合失調症患者が,服薬についてどのように受け止めているのかという主観的経験を記述することである。
      研究方法:対象者は,北陸地方と近畿地方にある民間単科精神病院の精神科急性期治療病棟に入院し,心理教育を受ける統合失調症患者8名(女性5名,男性3名)であった。データ収集方法は,半構成的インタビューとし,分析方法には,Grounded Theory Approachを参考にした継続的比較分析を用いた。
      結果:統合失調症患者の主観的経験による「服薬の受け止め」は,『対立カテゴリー』で説明され,それに関連するものに『病気の受け止めカテゴリー』と『将来見通しカテゴリー』が見出された。今後の課題は,本研究結果に基づいて,臨床的有用性の高い心理教育プログラムを開発することである。
  • 今西 誠子
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_27-4_39
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,処置時の心理的混乱行動成立のメカニズムをそのときの子どもと医療者の関係性から解明し,緩和の指針を得ることである。本研究に同意を得た4~10歳の子どもとその家族,その子どもに関わった医療者に,参与観察及び半構造化面接を行い,現象学的解釈法により分析した。結果①子どもと医療者の意識の志向性のズレがあること②そのズレが子どもに尊重されない苦しみを生じさせ,心理的混乱行動として表されていたこと③医療者の意識の志向性が子どもの想いや苦しみに向けられるか否かで,心理的混乱行動の増減を左右することが分かった。関係の相互作用,循環性,固有性の特性から,医療者の意識の志向性が処置優先に向けられる場合,「強制・抑圧の関係」に,医療者の意識の志向性が子どもの想いや苦しみに向けられると「協力・援助の関係」を成立でき,それが心理的混乱行動の緩和につながることが示唆された。
  • 中村 百合子, 山崎 登志子, 糠信 憲明, 大沼 いづみ
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_41-4_48
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,統合失調症患者のSOCの特徴を理解し,生活環境の違い,年齢,婚姻の有無,生活満足度,喫煙などが,SOCにどのように関連するかを明らかにすることである。対象者は,慢性期にある入院患者90名とデイケア通所中の統合失調症患者72名,合計162名である。調査方法は,基本属性,日本版SOCスケール13項目,健康水準,生活満足度の自記式質問紙調査を使用し分析を行った。その結果,統合失調症患者のSOC総得点は低値で,入院群の方がデイケア群よりSOC総得点は高かったが,有意差は認められかなった。このことから,生活環境の違いはSOCの影響要因ではなかったことが考えられる。重回帰分析の結果,統合失調者症患者のSOCに関連していた要因は,健康水準,生活満足度,年齢であった。以上のことからSOCを高めるには,日常生活動作の自立や拡大,心身面への健康度等の健康水準を高める援助が必要である。
  • ─ 妻が夫を介護する夫婦と夫が妻を介護する夫婦における分析 ─
    堤 雅恵, 小林 敏生, 宮腰 由紀子, 田中 マキ子, 広瀬 春次, 澄川 桂子, 涌井 忠昭
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_49-4_57
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      要介護高齢者に対する有効な睡眠ケアを考える上での根拠となる知見を得るために,要介護高齢者の睡眠・覚醒パターンの実態を把握し,睡眠・覚醒パターンに影響を及ぼしている要因について,特にアクティビティケアへの参加頻度に着目して検討した。Y県にある介護療養型医療施設の入所高齢者76名(男性17名,女性59名)を対象とし,看護・介護職員の観察による59日間の睡眠日誌から得た睡眠データから算出した睡眠指標と睡眠に関与すると考えられる要因との関連について検討した。その結果,睡眠指標と年齢,Barthel Index得点,HDS-R得点,アクティビティケアへの参加頻度との間に関連がみられた。これら4項目を独立変数とした重回帰分析を行ったところ,アクティビティケアへの参加頻度が最も多くの睡眠指標に関与していた。以上より,アクティビティケアへの参加が睡眠・覚醒パターンに望ましい効果を与えることが示唆された。
  • 田中 美智子, 長坂 猛, 矢野 智子, 小林 敏生, 榊原 吉一
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_59-4_65
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
       健康成人女性11名を対象とし,腹式呼吸を行っている間に,循環反応や自律神経系がどのような反応をするのかに加え,ストレス時に見られるホルモンの分泌が抑制されるか,また,覚醒感に関与しているセロトニンの分泌は促進するのかという点を検討する目的で行った。腹式呼吸時の循環反応は通常の呼吸と同様の経過を辿った。実際の心拍数は経過とともに減少し,血圧の上昇を示したが,有意な変化ではなかった。RR間隔の時系列データを周波数解析すると,腹式呼吸時は副交感神経優位となった。尿中セロトニン濃度は腹式呼吸及び通常の呼吸で変化が認められなかったが,腹式呼吸では尿中のノルアドレナリン濃度,アドレナリン濃度及びコルチゾール濃度の有意な低下が認められた。腹式呼吸はコントロール実験として行った通常の呼吸と同様,生体に対してストレッサーにはなっておらず,リラックスした状態を維持できる呼吸法であると考えられた。
  • 片岡 三佳, 小澤 和弘, 市江 和子, 岩満 優美
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_67-4_74
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,看護系大学に勤務する助手のバーンアウトに影響する要因を,個人属性,教員特性および職務満足感との関係から検討することである。1165名を対象に,対象者の背景,MBI( Maslach Burnout Inventory)改訂版尺度について質問紙調査を行った。回収549名(回収率47.1%)のうち528名の回答を分析した結果,1)性別,年齢,臨床の経験年数,助手としての経験年数,所属,領域との一致度による関係性は認められなかった。2)個人属性では学歴,教員特性では入職時の自主性,教育研修の受講に有意差がみられた。3)教育活動,社会的活動,研究活動および助手の職務全般に対する主観的な満足感が有意に関連し,満足感が高いほどバーンアウトに陥りにくい傾向がみられた。助手個人の職務に対する準備性と職務に対する満足感を得られることが重要となり,それらを視野においたサポートの必要性が示唆された。
  • 渡辺 千枝子
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_75-4_85
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      少子高齢化,認知症老年者の増加,介護保険の開始,女性の就業の増加や生活形態の変化等,介護をめぐる社会環境が変化し,それによって介護に対する意識も変化している。本研究の目的は,認知症高齢者を介護する嫁の介護の意識変容のプロセスを明らかにし,看護実践に生かす方向性を見出すこととする。対象者は,2年以上在宅で介護している認知症高齢者を介護する嫁7名で,グラウンデッド・セオリーで分析した。このプロセスは,16の概念と6つのカテゴリーで構成される。介護者としての嫁の存在を完全に否定できない意識は,嫁自身の中にも存在していると考えられる。在宅で介護継続を促進するためには,近親者・専門職等を含めた嫁の周囲の反応や関わり方が,嫁の介護意識の変容に影響を与えていることが明らかになった。社会規範と自分の人権を守ろうという意識の中で揺れ動く嫁の感情に配慮できる専門職の理解と社会的感覚を磨く必要がある。
  • -感情労働・Sense of Coherence・ストレス反応の関連-
    岩谷 美貴子, 渡邉 久美, 國方 弘子
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_87-4_93
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,クリティカルケア領域の看護師が行う感情労働とストレス反応の関連,Sense of Coherence (SOC) とストレス反応の関連を明らかにすることを目的とし,組織的なメンタルヘルス対策に向けた基礎的資料となるものである。A大学病院のクリティカルケア領域の看護師70名を対象に,看護師の感情労働測定尺度(ELIN),日本語版SOCスケール,日本版一般健康調査(GHQ)を含む質問紙調査を行った。その結果,ELINとGHQ間には有意な関連はなかった。しかしながら,SOC低群のみにELINの下位概念である探索的理解とケアの表現が,GHQの要素のうつ傾向と有意な正の相関関係にあった。また,SOCスケールとGHQは有意な負の相関関係にあった。これらより,SOCはストレス認知,ストレス反応に関連し,精神的健康度の改善にSOCが寄与する可能性が示された。
  • 及川 正広, 武田 利明
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_95-4_100
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究では,抗がん剤漏出による皮膚傷害の質的変化について検索するため,実験動物(ラット)を用いた基礎的研究を実施した。使用した抗がん剤は,起壊死性抗がん剤であるマイトマイシンとエクザール®,炎症性抗がん剤に属するランダ®,非壊死性抗がん剤に属するロイナーゼ®を選択し,肉眼的,血液生化学的,組織学的に検索した。その結果,マイトマイシンの皮膚傷害は,皮膚深層に傷害像が強く認められ肉眼的に観察されにくい。さらには,傷害が持続し組織の再生も弱い。エクザール®の皮膚傷害は,表皮から皮筋組織にかけ広範囲に傷害が生じ,急速に潰瘍を形成し顕在化するが時間の経過ともに再生像も確認できる。ランダ®とロイナーゼ®は,エクザール®やマイトマイシンに比べ皮膚傷害が弱いという知見が得られた。
      以上から,抗がん剤の血管外漏出時には,看護師は組織内部の皮膚傷害について把握し,患者のケアを行う必要性が示唆された。
  • 江口 裕美子, 湯沢 八江
    2008 年 31 巻 4 号 p. 4_101-4_110
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      手術看護は,語る者によって様々で曖昧であると考えられる。その要因の1つとして手術室看護師の業務内容にあるのではないかと予想する。今回,手術室看護師を対象に調査用紙にてその業務に関する意識を調査した。その結果,手術室看護師は多くの手術室看護師の業務を重要な業務と意識し,それはやりがいに関係していた。特に,危機管理や患者に対する不安軽減のための業務に関しては,重要さややりがいの思いが強く,既存の手術看護の概念と類似していた。器械出し看護業務に対しても自分達の重要な業務としていた。やりがいに影響する内容としては,基礎教育や職場の人間関係ではなく,医療・看護に興味があることと手術室看護師の業務が重要な業務であると思っていることであった。この結果から,手術室看護師はその業務を自信と責任をもって行っていると主張できる段階に到達していることと,やりがいを得られるような卒後教育の必要性の示唆を得た。
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