日本看護研究学会雑誌
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32 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 長瀬 睦美, 澤田 愛子
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_17-4_28
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,喉頭全摘出術を受けて失声した患者が代替コミュニケーション手段を獲得する過程を,彼らの体験や思いに焦点をあてて明らかにし,彼らへの看護的支援の示唆をえることを目的とした。データの収集は半構成的インタビューで行った。研究対象は喉頭ガン・下咽頭ガン等の治療のために喉頭全摘出術を受けて失声した在宅療養中の6名であった。データは質的研究手法により分析した。結果,3つのメインカテゴリーと9つのカテゴリー,31のサブカテゴリーを抽出した。喉頭摘出者は,失声によって様々な体験や思いを余儀なくされているが,彼らを取り巻くサポートは十分であるとはいえないのが現状である。今後は,発声会の役割を充実させ,家族,そして医療関係者との連携を強化し,社会的なサポートシステムを確立していくことが重要であり,看護師等の医療関係者の一層の介入が望まれる。
  • 村上 美華, 梅木 彰子, 花田 妙子
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_29-4_38
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,外来通院中の2型糖尿病患者を対象として自己管理を促進する要因,および阻害する要因を明らかにすることを目的とした。研究方法は,質的記述的研究である。研究参加者は糖尿病患者16名で,半構成的面接調査を行った。
     その結果,糖尿病患者の自己管理を促進する要因は,【糖尿病と向き合う】【自己管理の実行を意識化する】【取り組んだ効果を実感する】,医療者や同病者などと【支援環境を形成する】であった。反対に,患者の自己管理を阻害する要因は,【糖尿病と向き合えない】【糖尿病である自分自身や生活が重荷になる】【支援環境が広がらない】であった。
     糖尿病患者が主体的に自己管理を継続できるために,看護者は糖尿病と向き合えるように支援すること,実施した効果を実感できるように働きかけること,負担感や孤立感を緩和することが重要である。
  • 松下 年子, 岡部 惠子, 天野 雅美, 内野 聖子, 吉岡 幸子, 安藤 晴美, 大野 明美
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_39-4_50
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     就業看護師の大学院修士課程の入学ニーズ調査を実施した。その結果,対象2232名中15.0%,330名が入学意志を持ち,3.3%の73名が「すぐにでも入学したい」と回答した。入学意志がある者の希望する修士課程は,領域ではがん看護学44.2%,コースではCNSコース89.1%が圧倒的に多く,78.8%が学業と就業の両立を望んでいた。また92.4%の者が入学に伴う何かしらの不安を持ち,その内容は経済面56.7%,学業と仕事の両立49.4%,学力45.5%,入学試験についてが44.2%であった。26.6%の者が大学院入学を通じて解決したい現場の課題をもっており,入学意志に寄与する因子としては,解決したい現場の課題があること,CNSコースを希望していること,大学院に意義があると評価していること,母性看護学領域を希望していないことがあげられた。以上の背景を踏まえて教育体制を構築する必要性が示唆された。
  • 田口 豊恵, 岡 啓太, 岡本 文代, 小山 恵美
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_51-4_57
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     〔目的〕
     侵襲の大きい手術を受けた患者を対象に低照度補光を実施し,術後のサーカディアンリズムの調整効果を検証することである。
     〔対象及び方法〕
     心臓血管系の手術患者を対象とした準実験研究である.患者の負担を減らすため,波長成分を考慮したLED光源の光照射装置を低照度条件で用いた.補光は,術後1日目より,昼間4時間,計12時間にわたって実施した。補光と術後サーカディアンリズムの関連性については,深部体温とメラトニン血中濃度で評価した。
     〔結果〕
     患者の深部体温は,補光開始1日目よりも2日目でより24時間周期に近づき,あてはめ度もよくなる傾向が示された。また,Friedman法を用いて,時間経過に伴うメラトニン分泌量を比較したところ,P<0.0001にて有意差がみとめられた。
     〔まとめ〕
     低照度補光は,侵襲の大きい手術を受けた患者のサーカディアンリズムを調整できる可能性が示唆された。
  • 出口 睦雄
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_59-4_65
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー

    【目的】 男性看護師の職務ジェンダー意識と職務ジェンダー意識に関わる要因および職務満足の関係を明らかにする。
    【方法】 愛知県下10の精神病院に勤務する看護師を調査対象とし質問紙調査を実施した。男性看護師127人を分析対象とした。
    【結果】 看護拒否の体験が多く,メンターがいない者に職務ジェンダー意識が強いことが示された。また職務ジェンダー意識が強いほど,職務満足因子の「専門職としての自律」が低かった。
    【結論】 今後,男性看護師を増加させることにより,男性看護師の職務ジェンダー意識が払拭され,職務満足感が高まると期待される。それにより専門職としての看護師の位置づけがより一層強固なものとなるであろう。
  • 片山 陽子, 太湯 好子, 小野 ツルコ
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_67-4_76
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,在宅移行期の療養者の医療ニーズを医療的ケアの内容をもとに分類し,医療ニーズ別に介護者の介護準備態勢の特徴を明らかにすることであった。分析対象は,医療ニーズの高い療養者の介護者145名であった。分析は医療ニーズを医療的ケアの習得の困難性と,実施頻度から介護者が実施する3群(対症療法的医療ケア群,定時的医療処置群,断続的医療処置群)に分類し,一元配置分散分析と多重比較を実施した。その結果,医療ニーズにより,主観的な介護準備状況は「介護スキル準備性」が異なること,介護の意味づけは「自律的意味づけ」が定時的医療処置群と比較して断続的医療処置群が強いこと,ソーシャルサポートは「手段的サポート」が,定時的医療処置群と比較して対症療法的医療ケア群に多いことが明らかとなった.以上のことから,療養者の医療ニーズの差異を認識したうえで,介護者の介護準備態勢を判断し支援することの必要性が示唆された。
  • 石岡 薫, 一戸 とも子, 阿部 テル子, 齋藤 久美子, 小倉 能理子, 西沢 義子, 工藤 せい子, 會津 桂子, 安杖 優子, 小林 ...
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_77-4_87
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     患者指導における指導技術評価ツール作成の基礎資料を得ることを目的として,看護者が患者指導において心がけていることの自由記述の分析から,指導技術の抽出と患者指導技術の構造化を試みた。対象者は,A県内の300床以上の総合病院10施設の看護者986名であり,そのうち477人の自由記述を分析対象とした。結果として,患者指導技術に関する1,073のコードが得られ,類似の内容を分類し52のサブカテゴリーと12のカテゴリーが抽出された。これらは先行研究の患者指導技術と対応していた。先行研究と12のカテゴリーから患者指導の構成要素として《情報収集・アセスメント》《計画立案》《実践》《評価》《環境》《看護者の態度》を抽出し,これらを指導過程に関するものと指導全体に関わるものに位置づけ患者指導技術の構造を導いた。
     本研究の結果は,患者指導における指導技術評価ツール作成の基礎資料として活用できるものであると考える。
  • 大堀 昇, 湯沢 八江
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_89-4_99
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,経皮的冠動脈ステント留置術後に抗血栓薬を処方されている患者に関して,適切な服薬行動がとれているのかを確認し,留置したステントのタイプによって服薬行動に違いがあるのか,また医療者からの説明,あるいは患者の病状の受け止めが,どのような服薬行動と関連しているのかを明らかにした。
     その結果,服薬行動は全体的に適切であり,留置したステントのタイプによる服薬行動の違いはみられなかった。
     薬の必要性の理解には,薬剤師と看護師の説明が関係しており,薬の理解には,主治医と看護師の説明,薬の飲み方の理解には主治医と薬剤師の説明,内服作業の面倒さには薬剤師と看護師の説明が関連していた。また患者の病状の受け止めと服薬行動との関連はみられなかった。
     服薬の受容,経済的負担感,服薬忘れに対する看護師の説明の強化が,適切な服薬行動を促すための今後の課題である。
  • -語りの分析から-
    岩﨑 みすず, 水野 恵理子
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_101-4_109
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     統合失調症患者の地域生活において家族の支援は重要であり,今後,高齢化する親に代わってきょうだいの存在が注目される。本研究では,統合失調症患者のきょうだいの体験を明らかにすることと,支援の方向性への示唆を得ることを目的として,きょうだいへの半構成的面接を思いと対応に注目して分析した。
     長い経過を経ても,病気と患者の受け入れに対する葛藤を抱えてアンビバレントな心的態度が認められ,患者のきょうだいであることを不名誉に感じることが,他者に配慮する姿勢につながっていると考えられた。しかし,患者を抱えた負担感を持ちながらも,患者のニーズとともに,自身のニーズの充足に対処しており,体験をとおして自分の存在や生き方に新たな価値観を見出していた。きょうだいが抱えるアンビバレンスの理解と,きょうだいのニーズを的確に把握して,医療や社会資源とのつながりが保てるように支援していく必要性が示唆された。
  • 大崎 瑞恵, 大竹 まり子, 赤間 明子, 鈴木 育子, 小林 淳子, 佐藤 千史, 叶谷 由佳
    2009 年 32 巻 4 号 p. 4_111-4_119
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,地域中核病院の看護部における看護職対象の退院支援教育の有無と病棟看護職の退院支援の知識・行動との関連を検討することを目的とした。一次調査では215病院の看護部長に退院支援教育を問う質問紙調査を行った。二次調査では一次調査の結果から退院支援教育プログラムの多い病院と無い病院を抽出し,病棟看護職を対象に退院支援に関する知識と行動を問う質問紙調査を行った。教育プログラムの多い病院の看護職を教育あり群,無い病院の看護職を教育なし群とし検討した結果,教育あり群は教育なし群よりも介護保険関連と介護支援専門員資格試験対策の研修に多く参加し,介護力,経済的問題の有無,介護保険認定の有無,利用している制度・社会資源を入院時に情報収集していた。また,教育あり群は教育なし群よりも退院支援の院内連携を行い,介護保険を患者や家族に紹介し,更正医療についての知識を問う設問に多く正解していた。
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