日本看護研究学会雑誌
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34 巻, 2 号
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  • 堀田 涼子, 市村 久美子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_21-2_30
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,回復期にある脊髄損傷者の障害受容についての看護師の捉え方を明らかにすることである。研究方法は,リハビリテーション病院等に勤務する看護師22名に対する半構成的面接を実施し,内容分析を行った。その結果,【障害とその影響についての認知】【自己から周囲への関心の拡がり】【過去から現在への視点の切り替え】【マイナス思考からプラス思考への転換】【自己の容認】【生活の再構築】【新たな価値観の確立】【受容の評価の困難さ】【受容の評価は主観的なもの】【非現実的な希望への固執による受容の困難さ】【受容は不可能】【回復期は受容過程の通過点】【期待と諦めとの間で葛藤し続ける過程】の13のカテゴリーが導き出された。参加者は,脊髄損傷者が障害を受容している状態像を明示すると共に,障害受容の可否を評価することの困難さや障害受容の概念自体への疑問を抱くなど,様々な角度から障害受容を捉えていることが示唆された。
  • 恩幣(佐名木) 宏美, 瀧川 薫, 岡 美智代
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_31-2_38
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,糖尿病腎症から透析となった患者における,障害受容の要因とその構造を明らかにすることである。
    【方法】原疾患が糖尿病腎症の外来通院中の慢性維持血液透析患者212名に対して,障害受容度診断検査を使用し,調査を実施した.分析方法は,障害受容度診断検査の結果を使い,探索的因子分析で因子を抽出し,確認的因子分析にて構造を確認した。
    【結果】有効回答数は150名(回答率70.7%)であり,男性105名,女性45名で平均年齢は63.41±9.56歳であった。探索的因子分析では,「障害と対峙できないことによる気持ちと行動」「障害があることでの負い目」「自尊心の低下」「他者との関係における行動」の4因子が抽出された.確認的因子分析では3因子構造となった。
    【結論】対象者の障害受容の因子は4因子であり,構造では3因子構造となった。
  • ─ 40℃と60℃の比較 ─
    加藤 京里
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_39-2_48
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では60度の蒸しタオルと40度の蒸気温熱シートの2通りの方法を用いて,後頸部温罨法による心身の変化を比較した。閉経後の女性12名に対し,蒸しタオル条件,温熱シート条件,コントロール条件の3回,日を変えて実験を行った。実験前後で快-不快と眠気スケールを記載し,表面皮膚温(後頸部,手掌,足背),足底深部温,前額部深部温,心拍変動解析,皮膚電気活動は連続して測定した。20分間の基準値測定の後,後頸部温罨法(コントロールは乾いたタオル)を10分間実施し,温罨法後の経過を20分間(計50分間)測定した。40℃と60℃の後頸部温罨法は,後頸部の皮膚温を最高で41℃まで上昇させるが,身体に有害となる温度には至らず安全な方法であることが示された。どちらの方法も共に眠気のある快をもたらし,下肢末梢の温度を高く保持した。更に40℃では,コントロール条件に比べ皮膚電気活動を有意に低く維持しストレスを軽減させることが示唆された。
  • 林 陽子, 森本 美智子, 神原 千比呂, 中村 珠恵, 谷村 千華
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_49-2_56
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,自覚症状ならびにストレス認知と心理的状態の関係を明らかにすることであった。対象は満20歳以上の入院患者81名であった。自覚症状の測定にはIPQの12項目にCMIを参考にした13項目を組み合わせて用い,ストレス認知の測定には病気関連不安認知尺度,心理的状態の測定にはHADSを用いた。まず自覚症状の因子妥当性と信頼性を確認し,自覚症状,ストレス認知,心理的状態の相関関係を確認した。次に従属変数を心理的状態とし,自覚症状が直接的またはストレス認知を介して影響するとする因果モデルを設定し,関連性を検討した。結果,自覚症状はストレス認知および心理的状態に影響を与えており,ストレス認知は心理的状態により強い影響を与えることが明らかになった。これは,看護師が入院患者の心理的な健康状態を維持するうえで,自覚症状のマネジメントのみならず,ストレス認知についても把握し,介入することの重要性を示唆している。
  • 山田 紀代美, 西田 公昭
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_57-2_64
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,地域在住の前期高齢者における日常記憶の実情とその関連要因を検討することである。名古屋市A区の選挙人名簿から無作為に抽出した前期高齢者を対象に,性,年齢,家族構成,教育歴,ADL(Activity of Daily Living),老研式活動能力指標,GDS(Geriatric Depression Scale)5得点,日常記憶(Everyday Memory Checklist: EMC)等を調査し,以下の結果を得た。有効回答は,男性315人,女性489人の804人であり,EMC平均得点は,男性7.97±5.11点,女性7.29±4.36点であった。EMC得点を従属変数に重回帰分析(ステップワイズ法)を行った結果,男性は年齢(β=.128, p<0.05),女性はGDS5(β=.200, p<0.001),知的能動性(β=-.122, p<0.01)が関連していた。
  • ―介護を行う配偶者の視点から―
    原沢 優子, 山田 紀代美
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_65-2_74
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,配偶者介護者が介護老人保健施設に通いながら夫婦としての生活を続けるプロセスを明らかにすることであった。配偶者が施設介護を受けている65歳以上の介護者9名を対象に,半構成的面接法を用いて質的帰納的に分析した。その結果,夫婦としての生活を続けるプロセスは二段階で構成されていることが明らかになった。第一段階は,自分自身の『動機を探索する』ことで,施設を利用してでも夫婦としての生活を続ける「覚悟を決める」意思決定のプロセス。第二段階は,介護生活の中で『生活する意欲を減退する要因』により「覚悟が揺らぐ」,『夫婦生活を持続する原動力』によってそれを乗り越え再度,「覚悟を決める」循環を繰り返す円環型プロセスであった。また,その 『両方に影響する要因』もあった。配偶者介護者は,このような生活を過ごしながらも,施設に入所している要介護配偶者と夫婦としての生活を続けていた。
  • 劉 筱丹, 阿曽 洋子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_75-2_84
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,看護の専門職的自律性測定尺度の中国語版を作成し,中国H省H市医科大学付属病院の臨床看護師450名を調査対象者として,信頼性と妥当性の検証を行なった。また,中国における職位および経験年数と自律性の関係を明らかにした。尺度の中国語版と日本語版では因子構造に違いがみられた。専門職的自律性の平均得点は,職位の高いものは専門職的自律性も高い傾向がみられた。また,経験年数が増えるにつれて,専門職的自律性の平均得点が上昇する傾向もみられた。
     中国においては,看護師の免許は2年毎の更新制であることに加え,高い業務上職位を得るためには,継続教育を受ける必要がある。このようなシステムが自律性の形成に寄与している可能性がある。経験年数増加に伴う自律性平均得点の上昇傾向は,仕事を続けやすい社会的背景が一因と考えられた。
  • ―看護教員養成講習会の学習経験の語りから(第1報)―
    山田 千春
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_85-2_96
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的;本研究の目的は,看護教員の看護教員養成講習会での学習経験の語りに表われる「看護教員としての自己」の様相を明らかにし,そこから講習会の教育的意義を検討することである。
    方法;15人の看護教員へ半構造化インタビューを行った.彼らの語りを自己物語と捉え,語りを引用しながら解釈を加え,その意味を読み解く質的研究デザインで分析した。
    結果;語りに表われた「看護教員としての自己」の様相から《学生に看護を教えることの意味を深めていく》,《看護職者としての歩みを問い直す》,《自分を支えている価値,信念を確認する》の3つの特徴が明らかとなった。また,この特徴から講習会には,教員の歩みを支えるキャリアの初期的教育の意義,看護職者としての成長を支える継続教育の意義,教員としての自己の尊厳を発現する教育の意義があるといえ,これらは「看護教員としての自己」の発展を可能にする教育的意義であると捉えることができた。
  • 生田 奈美可
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_97-2_107
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,配偶者を亡くした高齢遺族のスピリチュアリティの内容を明らかにすることである。配偶者を亡くした高齢遺族13名(女11名,男2名)に対し半構造化面接法を行い,質的帰納的に分析した。その結果,配偶者を亡くした高齢遺族のスピリチュアリティに関わる経験として,8つのカテゴリと20のサブカテゴリが見出された。配偶者の死の喪失感や痛みは,高齢遺族に,1)スピリチュアルペイン,を発動させ,2)存在の意味の探求,3)ひとりで生きる,という行動的探究を引き起こしていた。遺族は,このような人生の意味や目的を探求していくなかで,4)繋がりの実感,5)感謝の気持ち,6)自己を超越したものへの関心,7)超越した存在への故人の配置,という体験をしていた。最終的に,自己,他者,超越的なもの,故人との関係の調和を見出し,8)新たな「わたし」意識,を持つようになっていた。
  • ─ 保健師教育の方向性を探る ─
    金藤 亜希子, 宮腰 由紀子, 小野 ミツ
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_109-2_118
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】保健師教育の方向性の検討に資するため,他職種が捉える保健師像を明らかにする。
    【方法】保健師と連携経験のある計18人への半構成面接調査の内容を分析した。
    【結果】6職種の内容を統合した結果,22の大カテゴリーを得た。他職種は,従来の保健師は「前向きで受容的な態度を持つ」特徴を持ち,「住民と共に活動する身近な存在」であるため,保健師がいると「連携がスムーズ」になると評価していた。しかし「目的を見失い,意欲が空回り」している保健師の増加により,「住民や他職種と距離ができ」「連携しにく」くなったと危惧していた。今後は「先輩からの伝承や,職場での経験を積んで成長してほしい」と切望していた。
    【結論】他職種が捉える保健師像が明らかとなった。今後は,円滑な人間関係を築き,幅広い知識と責任感を主体的に培える保健師の育成が必要であり,教育・行政機関が相互にサポートする事が重要だと考える。
  • 沖中 由美
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_119-2_129
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,在宅で老いを生きる要介護高齢者の自己意識を明らかにすることである。研究協力者は,通所リハビリテーション利用者の男性7名,女性6名の要介護高齢者13名であった。調査は,半構成的面接法によりデータ収集を行い,継続比較分析を行った。その結果,在宅で老いを生きる要介護高齢者の自己意識として,【人生に立ちはだかる老い】【老いに立ち向かう力】【家族の絆と地域とのつながり】が見出された。要介護高齢者は,思い通りに動かない身体をもつ自分に回復の限界を感じていたが,老いる自分が人生を前に進んで生きていくことを諦めきれないでいた。一方,人生での成功体験や,同じ苦しみや痛みが通じ合う仲間との交流を通して,要介護高齢者は自分の老いに立ち向かって生きていた。在宅の要介護高齢者にとっては家が自己を支える基盤であり,家族や近隣者との関係性の深さが自己を安定させていたが脅かすこともあると考えられた。
  • ―アクションリサーチを用いて―
    小林 恵子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_131-2_142
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:子ども虐待に対応する保健師が主体的な支援ができるようになることを目指し,研究者が保健師とともに事例検討会を実践し,参加した保健師の意識と支援の変化を記述することである。
    方法:アクションリサーチを用いて,事例検討会を実施し,11名の変化を記述,分析した。
    結果:研究は①事例検討会の提案,②企画周知と実施,③評価とフィードバックという手順で進めた。検討会で保健師たちは互いに支援策を提案し合い,一歩前に踏み出す実践をするようになった。「問題」から「強み」に着眼するように検討したことにより,家族の見方や支援が変化した。これらは虐待予防の視点の高まりや支援ネットワークの広がりに影響を及ぼした。
    考察:このような変化はファシリテーターの参加者一人ひとりの思いの傾聴や参加者の相互作用を促進したことと,強みに着眼するよう思考枠組の変更を促し,一人ひとりのサポートをしたことによると考える。
  • 工藤 由紀子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_143-2_149
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     病棟で行われている複数クーリングの現状を明らかにし,今後の課題を検討することを目的に,看護師を対象に郵送法で調査を実施した。調査用紙の配布429名,回収314名(回収率73.2%),有効回答307名であった。複数クーリングの実施目的は「解熱」が最も多く263名(86.5%)であったが,自由記述では「科学的根拠を求める」という意見が最も多かったことから,複数クーリングは科学的根拠が曖昧なまま習慣的に実施されている現状が示唆された。また意識障害等のある患者に実施されている割合が45.7%に上ったこと,複数クーリング実施後の体温測定などの評価を行わないものが12.5%であったこと,複数クーリングによるインシデントが発生していることから,複数クーリング実施後の評価は看護師自身が必ず行うべきであることを啓発する必要がある。
  • 石田 芳子, 石川 千鶴子, 阿部 テル子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_151-2_161
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,多床室における間仕切りカーテン使用に対する患者の認識と使用状況を明らかにすることを目的とした。方法は,質問紙による無記名自己記入式の調査である。一般病棟4床室に入院している成人患者278名を対象に,カーテンの使用状況,カーテンを閉める理由,カーテンの開閉を思い通りにできているか,看護者に望むことについて調査した。有効回答235名のデータを分析した結果,夜間は約90%,日中は約25%の患者がカーテンを閉めていた。カーテンの閉め方は,終日閉めている患者は時間帯で差異を認め,一方夜間はベッド位置により差異を認めた。カーテンを閉める理由は,夜間は6カテゴリー,日中は5カテゴリーに分類され,コード数が最も多かった理由は【プライバシー】保持であった。患者にとって他者からの介入を拒みつつ個人の尊厳を守ることができるのはカーテン一枚で仕切られた空間であり,患者の個人空間に配慮した看護の重要性が示唆された。
  • 掛田 崇寛
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_163-2_170
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は甘味刺激による穿刺痛への鎮痛効果と下行性痛覚調節系に及ぼす影響を明らかにするため,Singlemasked blind による無作為化比較試験で検証した。実験は健康成人12名を対象に,24 %蔗糖水と蒸留水(control)の2つを準備し,クロスオーバーデザインによって被験者に無作為に割り付けた。指標には血清セロトニン,尿中セロトニン代謝物質,唾液中α-アミラーゼ,Profile of mood states,痛覚強度と味の心地よさの各主観的評価を採用して,甘味による鎮痛効果と下行性疼痛抑制系への影響を多角的に検討した。
     しかしながら,甘味刺激による穿刺痛への効果と下行性疼痛抑制系への賦活作用については,いずれも実証することはできなかった。ただし,甘味刺激下では無味に比べて穿刺痛の痛覚強度や唾液中α-アミラーゼ値がいずれも低値になるだけでなく,Profile of mood states や溶液の味の心地よさの各評価に関してはポジティブな情動的変化がもたらされた。よって,限定的ではあるものの,甘味刺激は成人の痛覚受容を抑制的に修飾する可能性がある。
  • 田中 裕二, 石井 トク, 江守 陽子, 尾岸 恵三子, 中野 正孝, 松田 たみ子, 三木 明子
    2011 年 34 巻 2 号 p. 2_171-2_175
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本学会誌の1巻1号(1978年;昭和53年)から29巻5号(2006年;平成18年)に掲載された原著論文364編の内容分析を行った。掲載された原著論文の研究領域を分析すると,「看護技術」が全体の19.5%,「看護教育」が15.7%であり,5年毎に分析を行ってもすべての年代でこの2領域が上位を占めていた。この理由としては,本学会の会員には看護ケアに必要な看護技術を研究対象とする教育者や研究者が多いことや,本学会の設立母体が教育学部ということも関係していると思われる。
     一方,研究デザイン別の論文数では,量的研究が192編,実験・準実験研究が118編と多いのに対して,質的研究は39編と少なかった。量的・実験的研究が主流であるとはいえ,研究領域が多岐に及んでいるところからも本学会誌は看護学全般の学術雑誌といえる。
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