日本看護研究学会雑誌
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34 巻, 4 号
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  • 門田 耕一, 田中 輝和
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_1-4_9
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     人工呼吸管理下における合併症であるVAP(人工呼吸器関連肺炎)の発症要因の一つは,口腔内細菌が肺内に播種されることによる。そこで口腔内細菌を減少させ,VAPを予防する目的で,希釈イソジン液を用いた有効かつ効率のよい口腔洗浄液の開発を試みた。新しい口腔洗浄液として30%グリセロール添加20倍希釈イソジン液(A液)を作成し,気管挿管患者の口腔ケアに使用し,口腔内細菌数の減少について,従来から用いられている原液のイソジン液(B液)と比較した。口腔ケア4時間後の口腔内細菌数は,口腔ケア前に比しB液では平均約55%に減少,A液では平均約34%にまで減少していた。さらに,A液では口腔ケア6時間後においても平均約59%に減少していた。A液を用いた口腔ケアが口腔内細菌を効率よく減少させるとともに,その効果を持続させ,VAPを有効に予防できる方法の一つとなり得ることが示唆された。
  • 菅原(阿部) 裕美, 森 千鶴
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_11-4_22
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,統合失調症者の病識のレベルを高める看護介入をするために,統合失調症者の病識に影響を与える関連要因を明らかにすることを目的とした。
     統合失調症者を対象者として病識評価尺度(SAI-J),服薬態度,HLC,病気・服薬に対する知識,病気・服薬に対する体験,精神症状,治療内容,主治医からのインフォームド・コンセント,自己効力感について調査した。このほかに半構造化面接を実施し,分析の結果,病気の認識,服薬経験,感情,受け止めなどが抽出された。各尺度の合計点とカテゴリについて共分散構造分析を行い,病識のパスモデルを作成した。「病的体験の客観視」がSAI-J,服薬体験に影響を与えており,服薬に関する感情が生じて服薬態度尺度の合計点に影響を与えていた。
     このことから,病的体験を客観視できるようにかかわり,服薬体験の表出を促すことが病識のレベルを高める看護であると考えられた。
  • 佐藤 志保, 佐藤 幸子, 塩飽 仁
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_23-4_31
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,採血を受ける子どもを非効果的群と効果的群に分類し,非効果的な対処行動をとる子どもの関連要因を明らかにすることである。小児科外来で採血を受ける3~6歳の子どもと保護者49組を対象とし,保護者による質問紙調査と採血場面の参加観察を行った。結果,非効果的群12名,効果的群35名に分類され,非効果的群は効果的群に比べて年齢が有意に低かった。また,処置室に入室するまでの子どもの行動と保護者の予測において情緒スコア,協力行動スコアが有意に高く,採血中に効果的な対処行動をとれない子どもは処置室入室前から落ち着かず協力的でない行動を示し,保護者も同様に予測していた。採血中の子どもの対処行動の影響要因には,採血前の保護者の情緒スコアの予測が抽出された。以上より,採血を受ける子どもに対して,採血前に年齢,処置室に入室するまでの行動,保護者の予測を把握することが重要であることが示唆された。
  • ─ 輸液ラインのある患者の寝衣交換技術の観察を通して ─
    新美 綾子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_33-4_44
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     新卒看護師が実施する輸液ラインのある患者の寝衣交換技術を看護教員と看護実践者が同時に観察する方法を通して,新卒看護師の看護技術に対する看護教員と看護実践者の評価の視点と到達基準を明らかにした。看護教員は技術面に焦点をあて,⑴教授内容である基本的な方法で行われているか,⑵患者を尊重した丁寧な実施であるか,⑶一人でやり遂げることができるかを評価の視点とし,看護技術を一人でやり遂げることを到達基準としていた。看護実践者は,臨床現場のやり方を基準に,⑴声かけなどの患者応対面はどうか,⑵患者に苦痛や危険がなかったかを評価の視点とし,臨床現場と同じ状態で患者に苦痛,負担なく安全にできることを到達基準としていた。さらに,看護実践者には,声かけと出来栄えにより看護技術全体の評価を決定づける傾向を認めた。また,看護実践者が評価の基準としている臨床現場のやり方を,看護教員は基本から離れている実施としてとらえる相違を認めた。
  • ─ 新卒保健師および新卒歯科衛生士との比較 ─
    鬼澤 典朗, 松永 保子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_45-4_53
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     早期離職率の高い新卒看護師の就労における疲労の実態を把握するために,新卒看護師,新卒保健師および新卒歯科衛生士の蓄積的疲労徴候を比較し,それぞれの蓄積的疲労徴候と離職願望との関連について検討した。
     方法として,新卒看護師139名,新卒保健師49名,新卒歯科衛生士45名を分析対象とし,蓄積的疲労徴候インデックス(CFSI: Cumulative Fatigue Symptoms Index)を用いて質問紙調査を行った。
     その結果,新卒看護師が新卒保健師や新卒歯科衛生士に比べてCFSIの平均得点が有意に高いことが確認された。また,特性項目群別の比較では,新卒看護師において身体的側面である「慢性疲労徴候」,「身体不調」と,精神的側面である「気力の減退」と「不安感」,および「抑うつ感」が有意に高いことが明らかとなった。さらに,離職願望と蓄積的疲労徴候との関連では,離職願望がない者よりも有意に疲労が強いことが確認された。
  • 藤野 成美, 岡村 仁
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_55-4_63
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,長期入院統合失調症患者の苦悩評価尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである。統合失調症患者50名を対象として,個人面接による質問紙調査を行った。苦悩評価尺度試作案は,25項目5段階のリッカートスケールとした。その結果,18項目が抽出され,「自尊感情の低下に伴う苦悩」「社会適応能力の低下から生じる将来に対する不安」「家族サポートの欠如」,「精神障害を抱えて生活する苦悩」4下位因子が抽出された。18項目全体のCronbachのα 係数は.82で,4下位因子は.7~.88であり,内的整合性が確認できた。今後は本尺度を活用することで,患者の苦悩の内容に応じた個別支援プログラムを構築することができ,苦悩緩和ケアに有用であると考える。
  • 吉田 えり, 山田 和子, 森岡 郁晴
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_65-4_72
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     卒後2~5年目の看護師の自己効力感とストレス反応との関連を明確にするために,質問紙調査を行い,有効回答者199名を解析した。
     自己効力感では,失敗に対する不安が高かった。看護師のストレッサーでは,人命に関わる仕事内容,技術革新が高く,医師との関係が低かった。職業性ストレスでは,自覚的な身体的負担度,心理的な仕事の負担(質・量)がストレスの原因であった。ストレス反応は疲労感が中心で,影響を与える因子は仕事や生活の満足度が低かった。
     重回帰分析では,仕事の困難さ,上司の悪口を同僚と言う,患者・家族との関係がストレス反応を高くし,仕事の裁量度,仕事や生活の満足度,心理的な仕事の負担(質),失敗に対する不安,同僚からの支援が低くする要因であった。失敗に対する不安には,上司はほめてくれる,が関連していた。
     卒後2~5年目の看護師のストレス反応は,上司がほめることで軽減できる可能性があることが示された。
  • 野口 英子, 當目 雅代, 金正 貴美, 竹内 千夏, 小笠 美春
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_73-4_82
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     新卒看護師の看護技術習得の現状と指導者,看護師長の期待を明らかにするために基礎的な看護技術45項目の調査を実施した。対象は2年目看護師92名,指導者98名,看護師長57名。その結果2年目看護師の57.6%は看護技術45項目のうち,採用時にすでに一人でできる技術が1つもなかった。また機会がなくできない技術が20項目以上ある者が16.3%いた。新卒看護師への期待において,指導者の48.0%,看護師長の33.3%は採用時すでに一人でできることに対する期待はなく,1年以内に一人でできることを期待していた。救命救急処置技術は,1年目で指導があればできることを期待していた。
     以上のことから,基礎教育課程では学内演習での技術教育を充実させていくことが重要である。また基礎教育と卒後教育を連携させた継続的教育プログラムの必要性が示唆された。
  • ─ 水俣病患者の語りを通して ─
    古賀 佳代子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_83-4_93
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     水俣病補償制度の申請に至るまでの心理的プロセスを明らかにすることを目的に,水俣病補償制度に認定申請した経験がある者に聴き取り調査を行った。その結果,水俣病補償制度の申請に至るまでの心理的プロセスは,【怒りや不安などの葛藤】【自己実現の模索】【新しい人生に向けての決心】の3つのカテゴリーと8つのサブカテゴリーに分類された。
     「申請する」は,ただ単なる補償してほしいという思いだけではなく,そこには,自分のいままでのつらい過去を認め,新しい未来に向けての決意という2つの意味が込められていた。また,「申請する」という行動変容に最も大きく影響していたのは,他者の支援(声かけ)と社会の動き(補償制度)であった。まだ何らかの補償を受けていない方に対して,表面上のみならず内に秘めた思いも汲み取り,その人の方向性を見出すことが保健師には求められる,と示唆を得ることができた。
  • 長谷川 美津子, 鈴木 加乃, 菊地 京子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_95-4_101
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,特定機能病院看護職(以後,看護職)と在宅看護関係者が参加する10回の事例検討会(以後,検討会)が看護職の退院支援活動に及ぼした効果を明らかにする。
    【方法】A特定機能病院で開催した検討会に参加した看護職125人を対象者とし,無記名質問紙調査法で行った。
    【結果】役立たなかった人は皆無であった。役立った項目は,「連携の必要性がわかった」92人(73.6%)が最も多く,次に「ケアの視点の拡大」82人(65.6%)であった。検討会後に行動が変化した項目は「退院支援のために積極的に患者・家族と接するようになった」が60%弱であった。変化のなかった13人(10.4%)と変化のあった112人(89.6%)の比較では,「連携の必要性」について前者群が有意に低かった(p< .01)。
    【結論】検討会は,看護職の退院支援に関する連携の必要性の理解やケアの視点拡大に有用であることが示唆された。
  • 髙瀬 美由紀, 寺岡 幸子, 宮腰 由紀子, 川田 綾子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_103-4_109
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,国外文献を通して,看護実践能力の概念を検証することである。文献検索はCINAHLとMEDLINEを用い,nurs*とcompeten*のキーワードを掛け合わせて実施した。対象出版年は2000年から2009年とした。その結果,60文献を抽出した。看護実践能力の概念は,Rogersの概念分析法を用いて検証した。その結果,看護実践能力とは,看護実践における専門的責任を果たすために必要な個人適性,専門的姿勢・行動,そして専門知識と技術に基づいたケア能力という一連の属性を発揮できる能力,と定義できた。しかし,看護実践能力の発揮レベルについては総意が得られておらず,認識の統一が必要である。また,看護実践能力の構造化や先行・帰結因子の探求が不十分であり,看護実践能力の概念を確立するためには,さらなる検証が必要とされている。
  • 大塚 有希子, 尾岸 恵三子
    2011 年 34 巻 4 号 p. 4_111-4_120
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,終末期の患者が食べることがもつ意味を明らかにすることを目的とした。入院中の終末期の患者3名を対象とし,個別事例を質的に記述する研究方法で行った。3事例を分析した結果,終末期の患者が食べることの意味として,〈深く味わい,心地よい思いに浸る〉〈食べることで,生きている自分を支える〉〈食を通して最期に向けて準備をする〉の3つが抽出され,終末期における食の意義と終末期の患者が食べることの意味を得られるように看護師が援助していくことの重要性が示唆された。
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