日本看護研究学会雑誌
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35 巻, 1 号
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  • 土本 千春, 稲垣 美智子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_57-1_66
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,一人暮らしの2型糖尿病患者にとっての「家族」,について明らかにすることを目的とした質的因子探索研究である。研究参加者10名に非構成的面接を行い,継続的比較分析を行った。
      一人暮らしの2型糖尿病患者は《一人暮らしのきっかけ》から《一人暮らしの決意》をする一方,《自分で決める家族との距離》を設定していた。この《自分で決める家族との距離》は《療養生活の覚悟》の仕方および《一人の生活への思い》に関係し,患者は《一人の生活への思い》をより多く語っていた。《療養生活の覚悟》は《糖尿病の療養への思い》につながり,《自分で決める家族との距離》は《心のなかの家族の存在》と関係をもつ構造が描かれた。
      看護ケアとしては,家族との距離のとり方が一人の生活の受け止め方の良否および療養生活の覚悟を決めるうえで大きいため,この家族との距離感をどのように設定しているかを十分に理解したうえで,一人暮らしを支援していく必要性が示唆された。
  • ─ 患者心理推測から看護援助へ ─
    林 智子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_67-1_78
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      看護では「患者の立場に立つ」ことは重要だと言われているが,実証的には証明されていない。一方,心理学ではそれを“視点取得”といい,他者心理を推測する思考方法である。本研究の目的は,“否認”という無意識の患者心理理解における看護師の患者心理推測方法の特徴と看護援助との関連を検討することであった。141名の看護師を研究参加者とし,「人工肛門造設予定の患者と看護師が登場する場面」を刺激とした半構造化面接法でデータを収集した。その結果,看護師は患者の発言を推測の根拠とするが,否認からの患者の発言は,看護師の知覚を歪曲した解釈へと導き,楽観的心理という妥当性の低い患者心理を導く可能性を示唆していた。また,看護師は最初に推測した患者心理に対して,新たな情報が与えられても改良や修正という調整思考をしていない可能性が示された。さらに,患者心理と看護援助の関連では,楽観的心理の推測は妥当でない看護援助を導く可能性を示唆していた。
  • ─ 看護学生および看護教育機関における特徴 ─
    三國 裕子, 一戸 とも子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_79-1_88
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,看護学生および看護教育機関の看護学生の批判的思考態度の構造を明らかにすることである。対象は49校看護教育機関の最終学年の看護学生1,332人で,平山が作成した批判的思考態度尺度(4カテゴリー,33項目)を用いて質問紙調査を行った。715人から回答を得て,探索的因子分析と共分散構造分析を行った。
      その結果,看護学生全体の批判的思考態度は「探究心」「分析性」「思考への成熟性」「偏りのない心」の4因子,24項目から構成されていることが確認された。この因子構造に影響を与えているのは,臨地実習の主要な教育内容である看護過程であることが示唆された。また、看護教育機関ごとでは,2年課程専門学校は他の教育機関と批判的思考態度の構造が異なり,その要因として平均年齢の高さと職歴の影響が推測された。
  • 駿河 絵理子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_89-1_98
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      合併症がなく,正常分娩である28~40歳の初産の褥婦12名を対象とし,出産後のストレスがリフレクソロジー実施後に緩和されることを心理的反応と生理的反応から検討することを目的に,本研究を行った。15分間のリフレクソロジーの前後,安静の前後に,心理的反応は『日本語版POMS短縮版』を用い,生理的反応は唾液クロモグラニンAと唾液コルチゾールを用いて評価した。その結果,リフレクソロジー実施前後で『日本語版POMS短縮版』の「緊張-不安」と「抑うつ-落ち込み」は減少した。リフレクソロジーの実施により,心理的反応としては,リラックスができ,抑うつ状態が軽減することが明らかになった。リフレクソロジー実施群と安静群の比較では,リフレクソロジー実施群の唾液コルチゾールがより減少したことから,生理的反応としては,リフレクソロジーの実施によるストレス緩和の可能性が示唆された。
  • 高橋 方子, 布施 淳子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_99-1_105
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,訪問看護師による在宅療養高齢者の終末期医療に対する意思把握の方法を明らかにすることを目的とした。訪問看護師12名に対し,意思把握の現状について半構造面接を実施した。面接内容を逐語録に起こし,内容分析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。
      訪問看護師による意思把握は,意思把握の状況と方法の2側面から語られた。意思把握の状況は〈いつからが終末期かはっきりしない〉〈終末期の見通しがない〉〈状況は変化する〉〈意思を確認できない状況がある〉などの6つのカテゴリーが抽出された。
      意思把握の方法は〈本人や家族がどのように過ごしたいか,から把握する〉〈本人や家族の暮らしぶりから推測する〉〈日常のかかわりのなかで,本人や家族の気持ちに添って把握する〉など8つのカテゴリーが抽出された。訪問看護師は意思把握がむずかしい状況を認識し,それに対応した意思把握方法を用いていた。
  • 三枝 幸子, 細川 美香, 中澤 美樹, 舟越 和代, 三浦 浩美
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_107-1_116
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      初めて緊急入院をした子どもの母親の思いを明らかにすることを目的に,半構成面接法による質的帰納的研究を行った。乳幼児6名の母親の語りから,以下のことが明らかになった。子どもの発症で,母親は〔子どもの症状が改善しないことで生じる心配や焦り〕や〔医師の対応に対する納得や不信〕,そして〔家族の協力がある安心〕を感じていた。入院が決定すると〔入院する事実に直面した不安や安心〕や〔処置を受けることへの戸惑いと安堵〕を抱き,〔今後の見通しへの不安〕〔入院生活を予想しての心配〕もあるが,〔看護師の対応で安心〕したり,〔周囲の協力体制の重要性を認識〕していた。その後,退院まで,母親は〔子どもの症状の変化に一喜一憂〕しながら,一方で〔病院という環境下で生活することへの戸惑い〕や〔家族の協力がある安心〕を感じていた。そして〔今後の症状への対処に対する憂慮〕や〔看護師への要望や感謝〕もあった。この時期,〔自分の体調への気づき〕もあった。
  • 桑田 恵美子, 古瀬 みどり
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_117-1_125
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,緩和ケア外来で疼痛コントロールを行っているがん患者の家族が,どのようなケア行動をとり患者の闘病を支えているのか,を明らかにすることである。研究対象は,緩和ケア外来で疼痛コントロールを行っているがん患者10名の家族である。半構成的面接法による調査を実施し,“修正版グランデッド・セオリー・アプローチ”にて分析した。がん患者の家族のケア行動には,【がんの状態の把握】【療養生活を支える】【治療を支える】があった。これらのケア行動には,患者の日常生活に対する家族の認識である【がんと共生する患者のとらえ方】が関係していた。家族のケア行動には,心身の状態に波がある患者の療養生活を支えるケア行動と,回復を希求する患者の治療を支えるケア行動があることが明らかとなった。
  • ─ 3年課程看護専門学校学生を対象として ─
    西原 みゆき, 山口 桂子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_127-1_136
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は3年課程看護専門学校に在籍する看護学生の「子ども理解」評価尺度を開発し,その信頼性と妥当性を明らかにすることである。3年課程看護専門学校に在籍する1~3年次の看護学生1,456人を対象に調査を行った。項目選定後,因子分析,主成分分析を行い,その結果,【知的・情緒・社会機能の発達】【健康障害のある子どもの体験】【身体生理の特徴】【自律性】の4下位尺度,計30項目から構成される「子ども理解」評価尺度を作成した。30項目全体のKMO値は .94,Cronbach’s α係数は .921,4下位領域では .751~ .862で,内的整合性が確認された。本尺度は,3年課程看護専門学校の『小児看護学』教育における「子ども理解」からの視点での教育評価に有用であると考える。
  • 猫田 泰敏
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_137-1_143
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本報告は,教員と学生の間の双方向のコミュニケーションをICTで実現した通称“クリッカー”を看護教育において使用した報告例がわが国ではないことから,著者担当の1クラスの疫学講義で使用した教育実践の一端および学生の反応をまとめた。その結果,使用目的は5種類に分類され,具体的な使用例を紹介した。また,クリッカーを使用することが講義全般にかかわる学生自身の理解度評価に影響する可能性が示唆された。さらに,授業理解へ「役立っている」と88.7%が回答し,その理由(自由回答)として「クラスのメンバーの理解度がわかるから」「授業内容の理解度がすぐわかるから」「気軽に教員に自分達の理解度を伝えることができるから」等が上位を占めた。ほかの授業で「使ってほしい」と「どちらかといえば使ってほしい」を合わせると85.0%であった。以上より,学生は全般的にクリッカーの授業への導入に対して好意的である結果が得られた。
  • 酒井 桂子, 坂井 恵子, 坪本 他喜子, 小泉 由美, 久司 一葉, 木本 未来, 河野 由美子, 橋本 智美, 北本 福美
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_145-1_152
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      研究目的は,タクティールケアが及ぼす生理的・心理的効果を明らかにすることであった。
      健康な女性10名に,タクティールケア施術を25℃の室内でベッド上臥床し,背中10分,両足20分を行い,タクティールケア施術前後の生理的・心理的反応の変化を測定した。生理的反応の指標は,①体温・脈拍・血圧,②体表温度,③身体的自覚反応9項目5段階評価(実践記録を内容分析して抽出した自作調査表)を測定した。心理的反応の指標は,④気分・感情の状態を『日本語版POMS短縮版』で測定した。
      結果,タクティールケア施術前と施術直後,30分後,60分後を比較した結果,バイタルサインに変動はなかった。体表温度は,施術前と比較して有意な差があり,上昇した。足が最も変化が大きく,施術後60分温かさを維持した。自覚した身体的反応は,ほぼ全員が「気持ちいい」「眠くなった」「温かくなった」と回答した。POMSでは,「怒り-敵意」以外のすべての項目で有意差があった。
  • ─ 1994~2008年 ─
    渡部 節子, 長田 泉, 今津 陽子, 五木田 和枝
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_153-1_157
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      臨床現場に感染に対する個人防護具として手袋着用を推進するにあたり,その課題を明確にすることを目的に,1994~2008年までの15年間の文献を調査した。
      その結果,15年間に870件の文献が検索された。文献数の経緯としては,1994~1999年まで15~21件/年で横這い状態であったが,2000年を境に急激に増加していた。研究内容は,全体としては手袋使用による「アレルギー」が181件(20.8%)で最も多く,「扱い方」168件(19.3%)であった。推移としては「使用状況」の増加が著明で2008年には44件と最も多く,ついで「教育」に関して23件であった。今後はこれらの現状を受け,着用を促進させるような介入研究が必要となる。また,手袋未着用で引き起こされた感染(針刺し事故,MRSA感染,等)およびその感染に関連したコストの研究等,感染防護具としての手袋着用を経済的に判断する研究も重要である。
  • ─ コーピング研究から意味研究へ ─
    塚本 尚子, 舩木 由香
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_159-1_166
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,がん患者の心理的適応に関する研究の動向を概観し,今後の課題を展望することを目的とする。がん患者の心理的適応状態は1983年の報告以降,大きな変化はない。しかし,がん患者のとらえ方は,1970年代初めにストレス・コーピング概念が導入されてから,医療を一方的に受ける弱い患者像から主体的に治療に取り組む患者像へと変化してきた。その後,1990年代に「意味」の概念が取り入れられた。意味の探索によって,がん患者は自分らしさをつくり変え,意味を見出すことで心理的適応を果たしていく。こうしたプロセスはわが国の研究成果でも示されており,欧米での研究成果と一致していた。欧米の意味研究は,すでに関連要因の探索や介入研究へと進展しており,今後,わが国でもそうした方向性への展開が必要であることが認識された。
  • 古瀬 みどり, 松浪 容子
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_167-1_173
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      在宅人工呼吸療養者をケアする訪問看護師のスキルアップを目的としたセミナーを実施し,その効果を検証した。セミナーの内容は“家族ケア”“人工呼吸器管理”“呼吸リハビリテーション”“事例検討”の講義と演習である。人工呼吸療養者支援の困難感と受講内容の活用状況について,セミナー時と3か月後,6か月後にアンケート調査を行った。3回のアンケートに回答した訪問看護師11名を分析対象とした。セミナー後,“呼吸介助”と“家族への療養指導”“家族の相談”で困難感の軽減したものが多くみとめられた。受講内容の活用状況は“家族ケア”が最も良好であった。また,6か月後の評価で活用状況がよいのは“事例検討”であった。医療依存度の高い人工呼吸療養者の在宅療養を支援する訪問看護師のスキルアップを促進するには,“人工呼吸器管理”や“呼吸リハビリテーション”といった技術的な内容だけではなく,“事例検討”など問題解決能力を高めるための演習を取り入れことが有用と示唆された。
  • 大島 操, 赤司 千波, 柴北 早苗
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_175-1_181
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      介護付有料老人ホームと認知症グループホームでの終末期ケアおよび看取りの現状と,終末期ケアおよび看取りに対する看護職者の思いを明らかにするために,看護職者7名に半構成的面接を行った。その結果,『従来からの看取りへの取り組み方』『今後に向けた看取りへの取り組み方』などの【ホームでの看取りの現状】と,『緊急時の連絡体制』や『最期を迎える場所への本人と家族の希望』『ホームで実施した看取り』などの【ホームでの看護職者の体験】が示された。また,看護職者は,これまでの看取りの経験からの『看護職者が思う看取り』や『看護職者が提供したい看取り』から生じる【その人となりに沿った看取りをしたい】という思いと,『終末期ケア・看取りへの不安』を抱えながらも『終末期ケア・看取りの実現に必要なこと』『書面による意思確認への考え』を示し,【終末期ケア・看取りの体制づくりが必要】という思いを抱いていた。
  • 吉田 理恵
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1_183-1_194
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,患者の危険や損傷をもたらすという認識をはっきりともたない不確実さを伴う看護業務におけるリスクテイキング行動とその関連要因の検討を目的とし, 今回は個人属性,内的統制性およびリスク傾向性を関連要因とした。500床以上を有する総合病院に勤務する看護師907名(准看護師含む)を対象に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した。有効回答610名を看護業務におけるリスクテイキング行動の有無で分類し, 要因との関連を分析した。結果,全17項目のリスクテイキング行動が「ある」とする割合の平均は40.1%と高く,年齢や臨床経験,内的統制性,リスク傾向性との関連があった。以上より,看護業務におけるリスクテイキング行動は年齢が低いほどとりやすい一方で,業務中断や2人ですべき移動介助を1人で行うことなどは臨床経験とともに多くなることや,内的統制および日常生活での行動傾向が反映されることが示された。
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