日本看護研究学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 川内 健三, 天谷 真奈美
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_1-2_11
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     研究目的は,精神障害者の療養生活を支援する病棟看護師が,地域への移行や地域生活の安定に向けた訪問看護を実施するなかで感じる困難について明らかにすることである。精神科病棟で3年以上経験し,かつ現在,精神科病棟に所属して精神科訪問看護を行っている看護師15名に対し半構造化面接を行い,Berelsonの内容分析にて分析した。
     その結果,病棟看護師は病棟看護と訪問看護による発想の開きから生じる困難,訪問看護に関する病院組織の不十分な実施支援態勢からくる困難,限られた時間や空間で迅速な判断を1人で行う困難,精神障害者が地域生活をするうえでの特質に基づく困難を感じていた。
     このような困難をもつ看護師の支援には,精神障害者の地域生活に触れ,地域での支援方法を学ぶ機会を設ける,病院組織の看護部門主導の訪問看護実施体制の確立等で困難の軽減につなげることが必要と考える。
  • ─ 母子健康手帳交付時から3歳児健康診査時までの検討 ─
    佐藤 幸子, 遠藤 恵子, 佐藤 志保
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_13-2_21
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     母子健康手帳交付から3歳児健康診査まで母親315名を対象に追跡調査を行い,母親の虐待傾向に及ぼす特性不安,うつ傾向,子どもへの愛着の影響を明らかにした。母子健康手帳交付時の母親の特性不安は新生児訪問時の子どもへの愛着やうつ傾向に影響を及ぼし,また,母親のうつ傾向は子どもの愛着に影響していた。それが乳児健診時の子どもの愛着やうつ傾向に影響し,母親の虐待傾向に影響していた。乳児健診時母親の虐待傾向は,1歳6か月児健診時のうつ傾向や子どもの愛着に影響し,子どもの行動とともに母親の虐待傾向に影響を及ぼしていた。1歳6か月児健診時の虐待傾向は3歳児健診時のうつ傾向や子どもの愛着に影響し,母親の虐待傾向に影響を及ぼしていた。以上の結果より,母子手帳交付時の母親の特性不安の高さから継続的に子どもの虐待傾向に影響していることが示唆された。
  • 熊谷 理恵, 野澤 明子
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_23-2_34
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     臨床試験に参加した12名の急性白血病患者を対象に,臨床試験の意味,臨床試験参加の意思決定プロセス,およびその要因と構造を明らかにする目的で,半構成的面接を実施し質的帰納的に分析した。
     その結果,臨床試験参加の意思決定は【衝撃的な出来事に対する反応】【衝撃的な出来事に対する行動】【生存への希望の探求】【保有している白血病に対する認識】【生命を揺るがす緊迫感】【身近にいる献身的な存在】【意思決定への洞察行動】【臨床試験に対する肯定的認知】【臨床試験に対する否定的認知】【決断への奮起】【臨床試験参加への処決】の11のカテゴリーで構成されていた。また臨床試験参加の意思決定のなかで,対象者は臨床試験に対して最良法と認める,治癒する唯一の方法,他者のために貢献できるという意味や価値を見出していた。
     急性白血病患者が置かれた状況を見つめ,臨床試験に対する価値の転換が行えるように看護支援することの重要性が示唆された。
  • ─ 自己決定理論の視点から ─
    佐藤 美佳
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_35-2_46
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】自己決定理論を礎に,看護学生の友人関係への動機づけの程度と自律性欲求,有能さの欲求,および学習動機づけとの関連を明らかにし,自律的動機づけを支援する教育方法の示唆を得る。
    【方法】看護学生を対象に自記式質問紙調査を実施し,分析・考察した。
    【結論】①看護学生は,看護系以外の大学生より自律的な友人関係への動機づけをもっている。②看護学生は,看護系以外の大学生・短大生より自律的な学習動機づけをもっている。③友人関係への自律的な動機づけは,自律的な学習動機づけの要因となる。④自尊感情を先行要因とした自律性欲求の自己決定は,自律的な学習動機づけの要因となる。⑤看護学生の自律的な友人関係への動機づけは,自尊感情や自律性欲求からは直接的に影響を受けない。⑥仮想的有能感は友人関係への動機づけ,および学習動機づけを低くする要因となる。⑦仮想的有能感は自律性欲求の独立の先行要因となる
  • ─ QOL, 自尊感情との関連 ─
    山下 亜矢子, 折山 早苗, 渡邉 久美
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_47-2_57
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,薬物依存症患者の生活背景,QOL,自尊感情を分析することで,断薬継続を可能とする援助のありかたについて示唆を得ることである。研究方法は,薬物依存症患者69名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し,郵便法による回収を行った。分析方法は断薬期間を3年未満群と3年以上群の2群に分類し,比較を行った。 
     その結果,断薬継続には年齢が高いこと,入院回数が多いこと,配偶者またはパートナーの存在があること,治療を継続していることが明らかとなった。WHO QOL26得点では,断薬に伴いQOL得点が高まっていなかった。下位項目得点では,断薬3年以上群で「ボディ・イメージ」「余暇活動への参加と機会」が高く,「社会的支援」が低くなっていた。以上より,薬物に依存していた生活からの脱却を行った後でも,生活のしづらさが継続していた。早期から疾患の受容を促進していくことと社会的支援の充実が,断薬継続には必要であることが示唆された。
  • 隅田 千絵, 細田 泰子, 星 和美
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_59-2_67
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:看護系大学生の臨地実習におけるレジリエンスの構成要素を明らかにする。
    方法:臨地実習を終了した看護系大学4年次生12名に対し,半構成的面接を実施し,質的記述的に分析した。
    結果:看護系大学生のレジリエンスとして【信頼する他者から学生が受ける支援】【学生の内面的な強み】【学生が主体的に実行すること】の3つの構成要素が抽出された。これらはGrotbergの示した外的サポートを表す「I Have」,内的強さを表す「I Am」,問題解決スキルを表す「I Can」の3つの側面に共通した結果となった。
    結論:看護系大学生は信頼する他者からの支援を受け,学びを得るために意欲や目標をもって行動し,感情の自己調節を行いながら他者と協調することによって主体的に問題解決しており,臨地実習における困難を乗り越えていることが明らかとなった。学生のレジリエンスを引き出すためには,学習環境の調整の重要性が示された。
  • ─ 中堅看護師を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを通して ─
    髙栁 智子, 泉 キヨ子
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_69-2_77
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,回復期にある脳卒中患者のベッド・車椅子間の移乗において,見守りを解除し自立に移行してよいと看護師が臨床判断を行う際の手がかりを明らかにすることである。3施設の回復期リハビリテーション病棟に勤務する中堅看護師17名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施し,質的帰納的に分析した。手がかりは,【認知能力】【移乗動作能力】【移乗に対する患者の思い】【睡眠薬の内服状況】の4カテゴリーに分類された。臨床判断に迷う患者は,【見守りに強いイライラ感を呈する患者】【スタッフ間で見守り解除の意見が分かれる患者】【見守り解除により移乗以外の行動も単独で行う心配がある患者】であり,【迷うときは見守り続行】が原則であったが,【転倒を想定した見守り解除】も行われていた。看護師は,生活の場でリハビリテーションを展開する専門職として,独自の視点から臨床判断を行っていることが明らかとなった。
  • 瀬山 留加, 武居 明美, 神田 清子
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_79-2_86
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,進行がん患者の家族が抱える苦しみを明らかにし,必要な看護支援の検討を行うことである。進行肺がんおよび悪性脳腫瘍患者の家族23名を対象として半構造的面接法によるデータ収集を行い,Krippendorffの手法を参考に質的帰納的分析を行った。その結果,進行がん患者の家族が抱える苦しみは,【患者が難治性のがんに侵されている現実を認知することで生じる苦しみ】【迫りくる患者の死を認知することで生じる苦しみ】【太刀打ちできないがんを患う患者と向き合い続けることで生じる苦しみ】【家族・社会システム内の不調和に伴う苦しみ】からなることが明らかとなった。進行がん患者の家族の苦しみは,受け入れがたい現実や逃れられない環境に起因するため認知的対処による処理が困難な苦痛であった。そのため,看護師は早期から家族とののパートナーシップを形成し, 十分な傾聴によって苦しみを癒すことの必要性が示唆された。
  • 加悦 美恵, 平原 直子, 野村 志保子
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_87-2_94
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,看護ケアで頻繁に行われる仰臥位から側臥位への体位変換において,看護者の手の触れ方と動作の関連を明らかにすることである。被験者は女子看護学生11名で,方法は発色フィルムを用いて看護者の手の圧力を測定し,肘,体幹の屈曲角度ならびに鉛直方向の動きの割合を測定した。患者役の主観的反応も得た。結果,看護者は第3指を中心に指先に力を入れて体位変換していた。さらに,指関節ごとの圧力分布をみると指先に力を入れるパターン,指根に力を入れるパターン,手掌全体で触れるパターンがみられた。指先パターンでは, 体幹屈曲角度および肘屈曲角度が他に比べ小さく,鉛直方向に重心を移動させる割合は高かったことから,看護者は患者に密着せず腕を伸ばして指先をひっかけるようにして手先に圧力が発生していた可能性が考えられた。患者役の主観的反応は指先パターンで不快感や不安感が強まっていた。以上より,看護者の体幹や肘を伸展させたまま体位変換すると指先に力が入りやすいことが推測された。
  • 馬場 薫, 齋藤 深雪, 田中 幸子, 丸山 幸恵
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_95-2_104
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,専門看護師の職場環境の実態と,経験年数および職場環境と職務満足との関連を明らかにすることである。
    【方法】2010年に病院に勤務する専門看護師を対象とし,職場環境と職務満足,基本属性をたずねる項目からなる質問紙調査票を実施し,専門看護師102名を分析対象とした。
    【結果】職位は管理職が43.1%,普段1か月の時間外労働時間は50時間以上が19.6%であった。職務満足の平均点は89.8±10.5点であった。専門看護師認定後の経験年数が5年以上の者は,5年未満の者より有意に職務満足が高かった。また,管理職を兼務する者,代休を取得できている者,専門看護師としての役割が期待されている者,職務上の権限が与えられている者はそうでない者より有意に職務満足が高いことが明らかとなった。
    【結論】専門看護師の職務満足を高めるために,組織的位置づけや役割の明確化,権限の付与や代休の確保の必要性が示唆された。
  • 森田 祐代
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_105-2_117
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,24時間対応型訪問看護を提供している訪問看護ステーションにおける電話等の対応と緊急時訪問の実態を明らかにすることを目的とした。24時間対応を実施している2つの訪問看護ステーションにて3か月間の記録(訪問看護申込書・指示書,看護計画書・報告書,緊急時対応・訪問記録)からデータ収集と分析をした。緊急時訪問は述べ119件であった。対象者の7割が配偶者または子どもと同居,介護保険利用で健康相談を申込み理由とし医療処置の指示を受けていた。緊急時電話相談は主として日中の本人からの身体症状に関する相談であり緊急訪問で処置を実施し安定という結果を得ている。また,脳血管疾患またはがん末期で医療処置を必要とする家族からの身体症状に関する相談が多い。安心して在宅で生活できるよう支援するためには起こりうるトラブルや不安を予測し事前に予防することや,家族に対する指導を行うことが必要であることが示唆された。
  • 吉良 いずみ
    2013 年 36 巻 2 号 p. 2_119-2_127
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:便秘症状によるQOLへの影響を測定する疾患特異的尺度である,日本語版The Patient Assessment of Constipation Quality of Life(PAC-QOL)の信頼性と妥当性の検証を目的とする。
    方法:17の医療機関を受診した便秘症状を有する20歳以上の男女394名に質問紙を配布し,得られた180名の回答のうち有効であった140名の回答を分析対象とした。
    結果:Cronbach’s α係数は0.92であり,各項目のκ係数も概ね0.41以上であった。構成概念妥当性の検討では,因子分析の結果,原版とは異なる因子構造がみられ,表面妥当性の検討では質問項目の理解や回答に困難があったとする意見が多かった。
    結論:日本語版PAC-QOLは,信頼性は認められたが妥当性には課題が残った。日本語版PAC-QOLの使用に際しては,質問項目の記載内容を検討する必要がある。
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