日本看護研究学会雑誌
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36 巻, 4 号
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  • 山﨑 松美, 稲垣 美智子
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_1-4_10
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,質的研究で明らかとなっている運動療法のとらえ方分類を一般化するために,運動療法を継続できる『2型糖尿病患者の運動療法とらえ方分類ツール』を作成することである。質的研究のカテゴリーより質問項目を作成し,内容妥当性を検討した結果,31項目の原案が作成された。296名の2型糖尿病患者に対し質問紙法と面接法による調査を実施し,面接によるパターン分類を基準とした基準関連的方法により,弁別力の優れた質問項目を選定した。最終的に5カテゴリー21項目の質問項目が採択され,ある程度の信頼性が確認された。また,面接でのパターン別に質問項目の得点比較と判別分析を行った結果,構成概念妥当性が検証され,パターン判別に対する有効性が示された。
     以上より,本ツールは2型糖尿病患者の運動療法のとらえ方を把握するのに有効であり,安定した運動療法継続を支援していくうえで,活用可能なツールであると判断できた。
  • ─ 看護者は産後の母親に対して不安に関する何を話しているのか ─
    武田 江里子, 小林 康江, 弓削 美鈴
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_11-4_18
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     目的:看護者が産後の母親とかかわる際に,母親の不安に関して話している内容と話す内容の必要性に影響している要因を明らかにすることである。
     方法:産後の母親とかかわる看護者98名を分析対象とした。属性・退院後の母親の不安に関する認識・経産婦への指導の必要性・入院中の母親にかかわる際に意識する内容(29項目)を調査内容とした。 
     結果:【かかわりの際に意識する内容】として「泣きに関すること」「自分のペースを大切に」「他家族との調整」「赤ちゃんに合わせた生活」の4因子,経産婦は「上の子との調整」が加わった5因子が抽出された。とくに「赤ちゃんに合わせた生活」について意識されており,経産婦についてはさらに「他家族との調整」が意識されていた。
     結論:「母親の退院後の不安」「指導の必要性」に関する看護者の認識は,かかわりの際に意識する内容に影響していた。看護者の属性は経産婦には影響要因となるが,初産婦に関しては影響要因ではなかった。
  • 土田 敏恵, 荻野 待子, 竹田 千佐子
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_19-4_27
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     3軸加速度センサを利用した手洗い学習システムの手洗い技術の習得と学習の継続性,および手指の細菌減少に影響する手洗い技術を明らかにすることを目的とした。中学生20名を,加速度センサシステム使用群(モニタ群)と手洗い練習機使用群(従来群)に無作為に割り付け,石けんと流水による手洗いを30分間練習し,練習前後と練習3か月後に手洗い手技,実施時間,手指の擦りあわせ状況(前腕の加速度),手洗い効果(細菌数減少値)を測定した。手洗い手技と実施時間は,両群とも練習前に比べて練習後,練習3か月後とも有意に数値が高くなり,手洗い技術の習得と学習の継続性を認めた。手指の細菌数減少値は,両群とも各期間において有意な差はなかった。前腕の加速度は,練習直後,練習3か月後ともにモニタ群のほうが有意に大きく,手指をしっかり擦りあわせていた。手指の細菌減少と手洗い技術には相関を認めず,細菌減少を促進させる手洗い技術は抽出できなかった。
  • 河野 由美子, 小泉 由美, 酒井 桂子, 久司 一葉, 岡山 未来, 坂井 恵子, 坪本 他喜子, 橋本 智美, 北本 福美
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_29-4_37
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     研究目的は,更年期女性を対象にタクティールケア(以後ケア)を実施し,生理的・心理的効果の有用性を検討することであった。対象者は研究協力公募で参加した45~55歳の女性12名。体温,脈拍,血圧,体表温度,自律神経活動(心拍変動のパワースペクトル解析)を生理的指標として,ケア介入前とケア終了直後,30分後,60分後を比較した。また,日本語版POMSを心理的指標として,ケア介入前とケア終了60分後を比較した。 
     結果,生理的指標において,脈拍数は終了直後,30分後,60分後で有意に減少した(p<.05)。前胸部と右外踝部の体表温度は,終了直後,30分後,60分後で有意に上昇した(p<.05)。副交感神経活動(HF)は,30分後,60分後に有意に活性化した(p<.05)。体温,血圧に有意差はなかった。また,心理的指標では,「緊張-不安」「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」の各項目得点は,ケア終了後に有意に低下した(p<.05)。「活気」の項目は変化しなかった。
  • 土田 美樹, 大竹 まり子, 森鍵 祐子, 鈴木 育子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳, 佐藤 千史
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_39-4_46
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は退院後も医療処置が必要な患者の退院支援における病院の組織的取り組みと病棟看護職の実践を明らかにすることを目的とした。その結果,次の4点が見出された。①退院支援部署を設置しているのは69.0%であった。②退院支援の実践は「対象の把握」「他部門との連携」「退院後を見据えた支援」「医療処置・ケアの指導」で構成されていた。③「看護職配置基準7対1」「退院支援部署を設置」「退院支援部署に看護職を配置」「リンクナースを配置」「病院全体の勉強会を実施」を行っている病院はそうでない病院に比べ,病棟看護職は退院支援を実践していた。④病棟で「退院支援部署とのカンファレンスを行っている」「訪問看護師・ケアマネジャーとの情報交換がしやすい」「退院後の状況把握がしやすい」場合は、そうでない場合に比べ,病棟看護職は退院支援を実践していた。以上より,病院の退院支援の組織的取り組みが病棟看護職の退院支援の実践につながることが示唆された。
  • 大村 光代
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_47-4_53
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,特養での看取りを実現する看護職の介護職に対する連携能力の因子構造とそのなかに潜在する因果関係を明らかにすることである。東海地方の看取りを実践している特養に勤務する看取り経験のある看護職90名が対象であった。今回の調査では,確認的因子分析によって看護職の介護職に対する連携能力の構成概念妥当性を確認した。また,連携能力のなかに潜在する因果モデルを共分散構造分析によって確認した。看取りを実現するための看護職の介護職に対する連携能力として,心理的協働が実践的協働に影響を及ぼしていた。本研究によって,先行研究による質的分析の結果が,特養の看取りにおける看護職の介護職に対する連携能力尺度として活用できることが示唆された。
  • 犬飼 智子, 兵藤 好美
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_55-4_64
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,看護師がどのように患者の転倒リスクをとらえ,転倒予防ケアを実施しているのか,転倒した場合にそこに至るまでの看護師の判断やケアはどのようになっていたのかを明らかにすることを目的とする。急性期病院において「転倒予防に関する委員会」に属する看護師11名に半構成的面接を行い,質的帰納的分析を行った。その結果,患者の転倒に影響を与える要因13カテゴリが明らかとなり,“転倒の発生と予防に影響を与える要因の構造”が導かれた。看護師は【症状に波がある】【1人で動く】患者を転倒リスクが高いととらえていた。転倒する場合,看護師の要因には【患者の流動的な情報の共有不足】【看護師間の転倒リスク評価の不一致】【観察の途切れ】【まだ大丈夫という判断ミス】【身体拘束に対する葛藤】があった。急性期病院における転倒予防には,看護師間の情報の共有によって転倒リスク評価の一致に努めることが重要である。
  • 高取 朋美, 秋元 典子
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_65-4_74
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,手術を受けた初発乳がん患者のレジリエンスを支える要因を明らかにすることである。
    【方法】手術を受けた外来通院中の女性乳がん患者3名から研究参加の同意を得て,術後7~11か月時点で半構造化面接によるデータ収集を行った。得られたデータをGiorgiによる記述的現象学的方法によって質的帰納的に分析した。
    【結果】治療を経験した初発乳がん患者のレジリエンスを支える要因は,①乳がんとその治療に関する情報を確定診断の前後および治療の前に得ること,②自分の性格や価値観,および自分のまわりの人を含めた外部環境を肯定的にとらえること,③乳がんという疾患を楽観的にとらえること,④家族や医療者を含む身近な他者と相互に影響しあうかかわり,であった。
    【結論】結果より,乳がん患者に疾患や治療に関する正確な情報を前もって提供することや,患者の性格や価値観を尊重してかかわることが必要な看護援助である,と示唆された。
  • 廣松 美和
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_75-4_85
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,周手術期実習において看護学生と患者の援助関係の形成に関する要因を探索することである。研究方法は,実習記録から相互作用のある場面を抽出し,思考・感情・行動の3側面と正木らの援助の発展を促進させる6要素で分析し,援助関係の形成要因を考察した。分析にはKrippendorffの手法を用いた。
     結果,看護学生の援助の発展を促進させる6要素を抽出し,さらに思考・感情・行動の特徴から援助関係の形成要因について以下の結論を得た。
    1 .6要素のうち「関心をよせる」「推し量る」「照合する」については思考・感情・行動を伴っており,相互作用の内容に沿う記述がみられ,援助関係の形成要因であるといえる。
    2 .「応える」は感情や思考を伴わない相互作用があり,援助関係の形成には消極的な内容であった。
    3 .「委ねる」「信頼する」は思考・感情・行動を伴わない相互作用があり,形成要因は存在しなかった。
  • 佐藤 千夏, 布施 淳子
    2013 年 36 巻 4 号 p. 4_87-4_97
    発行日: 2013/09/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,がん患者が治療方法を自己決定する場面における看護師が実践しているアドボカシーの因子構造を探索し,因子構造モデルを検証することを目的とした。がん診療連携拠点病院20施設に勤務する病棟看護師(小児科,精神科を除く)に郵送調査を実施し,同意の得られた512名のうち449名の有効回答を分析した。結果,探索的因子分析より,「患者の主体的な選択を促進するための支援」10項目,「患者が納得した選択をするための家族との仲介支援」7項目,「患者が病状を正しく理解するための支援」6項目の3因子23項目が抽出された。確認的因子分析より,3因子23項目で構成したがん患者が治療方法を自己決定する場面における看護師が実践しているアドボカシーの因子構造モデルの適合性が統計学的に支持された。
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