日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
37 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 日比野 友子, 深田 順子, 鎌倉 やよい, 片岡 笑美子, 小森 和子
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_1-5_10
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,慢性腎臓病患者の食事療法自己管理行動アセスメント指標を開発することである。
    【方法】アセスメント指標として,強化の原理の枠組み,すなわち先行条件,食行動,結果,強化子に基づいて27項目を作成した。質問紙調査は,慢性腎臓病で外来に通院し,食事療法を行っている患者974名に実施された。調査票は455名から回収され,条件を満たした405名を分析対象とした。
    【結果】対象者は平均年齢63.9±13.9歳,男性64.7%であった。項目分析の結果によって24項目が選択された。探索的因子分析した結果,5因子が抽出され,強化の原理の枠組みと類似していた。構成概念間のモデル適合度は共分散構造分析を行い,GFIは .835であった。24項目全体のCronbachのα 係数は .81であった。
    【結論】開発した食事療法自己管理行動アセスメント指標の妥当性と信頼性が許容範囲であることが確認された。
  • 川田 智美, 神田 清子
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_11-5_22
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,不確かな状況を生きる骨髄異形成症候群(以下,MDSとする)患者がコントロール感覚を獲得するまでのプロセスを明らかにし,有効な看護支援のあり方を検討する,である。対象者は,白血病化する可能性を告知され,診断後3か月以上のMDS患者12名である。データは半構成的面接により収集し,修正版グランデッド・セオリー・アプローチにて分析した。その結果,本プロセスは〔コントロール感覚を揺るがされる衝撃を受ける〕から始まり【常に消えることのない不確かな状況がコントロール感覚の獲得を揺るがす】と【闘病を支える力がコントロール感覚の獲得を促進する】の間で動揺しながらも,〈気持ちの揺らぎを体験しつつ,自己の内面を見つめた時間経過が前向きな気持ちへの変化をもたらす〉を転換点とし,【不確かな状況のなかで獲得したコントロール感覚】へ至っていた。看護師は,患者が自己洞察する時間に寄り添い,プロセスを支援する必要がある。
  • 加藤 泰子, 高山 成子, 沼本 教子
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_23-5_33
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,DLBの高齢者が体験している病気や症状,苦悩,対応などを明らかにすることである。DLBと診断された8名の高齢者を対象に半構造化インタビューを行い,質的記述的手法に基づき分析を行った。その結果は,【会話力の喪失】【パーキンソニズムによる防ぎようのない転倒】【日常に入り込む幻視がもたらす多様性】という3つの困難と【自分の変化への試行錯誤】【自覚があるがゆえの悲嘆】【自覚に基づく困難への適応】と困難を体験するなかでのDLBの高齢者の思いに関する3つのカテゴリーが生成された。とくに,DLBの高齢者は生活のなかで会話や歩行に関する困難を体験し,その困難は“突然に起こる”という特徴があったこと,繰り返し出現する幻視は,DLBの高齢者によい影響と悪い影響を与えるなどさまざまな影響を与えていたこと,DLBの高齢者はDLBによる変化を自覚し記憶しているがゆえに,苦しみながらも受け入れてゆく心理が明らかになった。
  • 魚住 郁子, 山田 紀代美
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_35-5_43
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:青年期にある看護学生の発達課題である自我同一性の様相を明らかにすることと,自我同一性と友人とのかかわりを検討することである。
    方法:同一県内の看護学生を対象とし,宮下(1987),榎本(2003,pp.60-72)らが作成した尺度,対象者の属性などで構成した質問紙による調査研究を実施した。そのうち214名を分析対象とした。
    結果:本研究における看護学生の自我同一性を示すREIS:Ⅴの値は,他学部の女学生と類似しており,自我同一性の獲得が困難になっている状況を示唆していた。さらに,自我同一性と有意な相関が認められた10項目から,多重共線性を考慮し,友人に対する感情である【信頼・安定】【不安・懸念】【独立】【葛藤】を含んだ6項目との間で重回帰分析を実施した。本研究における看護学生の自我同一性には,友人への【信頼・安定】【独立】の感情が強い影響を与えていることが明らかになった。
  • 福本 環, 岩脇 陽子, 松岡 知子, 北島 謙吾
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_45-5_53
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      目的:性暴力被害者に対する看護支援に関する研究の動向を検討し,今後の看護実践への示唆と研究課題を明らかにする。
      方法:国内文献はキーワード「性暴力被害」とし『医中誌Web版』にて検索した52件を,外国文献はキーワード「rape victim」「sexual assault victim」「nurse」とし『PubMed』と『CINAHL』にて検索した39件を分析対象とした。年次推移別,研究内容別,研究方法別,研究対象別に分析した。
      結果:国内では看護者による具体的なケアを検討した内容はほとんどなく,総説が7割以上を占め,質的研究はみられなかった。これに対し,海外では日本より約20年早く研究が開始され,看護者や実際の支援場面が取り上げられており,量的研究約3割,質的研究約2割であった。
    結論:日本においては内閣府による性暴力被害者支援施策が進められており,看護者が主体となって支援することが求められている。看護者の支援内容を具現化する研究や,看護者へのケアに関する研究の必要性が示唆された。
  • 進藤 真由美, 大竹 まり子, 森鍵 祐子, 鈴木 育子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_55-5_64
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      病院看護部による病棟看護職への継続医療退院支援教育の必要性の認識に関連する要因を明らかにするために,全国の一般病床200床以上の322病院看護部の教育担当者を対象に郵送式無記名自記式質問紙調査を実施した。
      76.1%から81.7%の病院看護部で一般的退院支援教育が必要と認識されていたが,継続医療退院支援教育の必要性を認識している病院看護部は37.0%から46.3%であった。病院看護部の継続医療退院支援教育の必要性の認識には,病院がスクリーニングや退院後フォローアップを行っていること,看護職員配置基準が7対1であること,病院機能が一般病院以外であることが有意に関連した。
      以上より,継続医療退院教育実施の前提となると思われる病院看護部による病棟看護職への継続医療退院支援教育の必要性の認識を高めるには,地域の医療と連携・協働する機会を増やすなど病院態勢の整備が必要であることが示唆された。
  • ─ 基礎研究と臨床研究の視点より ─
    近藤 由香, 小板橋 喜久代
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_65-5_72
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:1987~2013年までに国内で報告された漸進的筋弛緩法に関する看護研究を基礎研究と臨床研究の視点より文献レビューを行い,それぞれの研究の動向と今後の課題を明らかにすることである。
    方法:1987~2013年までの文献を「医学中央雑誌Web版」を用いて検索した。
    結果:25の文献の分析の結果,基礎研究14件,臨床研究11件であった。基礎研究では,実験研究が少なく,介入期間もほとんどが当日~1,2週間であった。測定指標は血圧値,脈拍数,心拍変動,脳波などの生理学指標が主に使用されていた。臨床研究では,実験研究はみられず,介入期間はほとんどが1~2週間であった。測定指標には,主に睡眠評価尺度,術後早期ROM,疼痛VASなどの症状が使用されていた。
    結論:基礎研究ではランダム化比較試験の推進,基礎研究と臨床研究では対象数の増加と長期的効果の検証と看護師への教育・評価および臨床との共同研究の推進をはかっていく必要性が示唆された。
  • ─ A県における調査 ─
    西村 淳子, 太田 勝正
    2014 年 37 巻 5 号 p. 5_73-5_82
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,就業中の看護師の育児支援に関する制度や育児施設の整備状況と利用状況を把握するとともに,その利用に際しての改善要望や気遣いの現状を明らかにし,就業継続の課題を検討することを目的とした。就業中の育児中の看護師345名を対象に質問紙調査を実施した。調査の結果,提供が法律により義務づけられている育児支援制度においても整備されていないという回答があり,多くの制度に対する利用の厳しさが示された。また,制度・施設への改善要望は,残業の免除や短時間勤務制度,看護休暇や病児・病後児保育施設に対するものが高く,多くのものがこれを利用する際に気遣いを感じていた。さらに看護休暇においては,就学後の子どもをもつものの改善要望が高かった。これらにより,育児支援制度の周知の必要性や育児支援策を利用する際の職場環境の改善,看護休暇制度における対象年齢拡大の必要性が示唆された。
feedback
Top