日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
37 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • ─ 実践共同体における相互作用に焦点をあてて ─
    鈴木 亜衣美, 細田 泰子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_1-2_11
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,救急領域に勤務する新人期看護師の技能習得に影響を及ぼす経験のプロセスを,実践共同体における相互作用に焦点をあて明らかにすることである。救急領域に新卒時から継続して勤務しており,看護基礎教育前後で職業経験のない卒後4年目の看護師15名に対し半構成的面接を行い,修正版Grounded Theory Approachで分析を行った。
      救急領域に勤務する新人期看護師は,恐怖や技能不足から《救急の場での努力が空回りする》が,〈エネルギーを獲得する〉ことと〈自己を肯定する〉ことで空回りから脱出し,〈自信を獲得する〉ことで《救急領域の一員としての自覚が芽生える》ようになっていた。そして《救急領域での視野が拡大する》経験で,技能習得に能動性が生まれていた。
      救急領域での新人期看護師に対する看護技術教育は,相互作用が積極的にもたらされる実践共同体づくりが重要であると示唆された。
  • ─ 急性増悪との関連 ─
    山本 かおり, 秋原 志穗
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_13-2_23
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      COPDの急性増悪の多くは上気道感染が原因となっていることから,COPD患者の感染予防行動と急性増悪の関連,およびそれらに影響する要因を明らかにすることを目的に研究を行った。2011年に関西圏の2施設に通院するCOPD患者77名を対象に質問紙と診療記録よりデータ収集を行った。その結果,感染予防教育を受けた経験のある患者は全体の約4分の1であり,教育機会の少なさが懸念された。感染予防行動に影響する要因には独居と感染予防の態度が確認され,独居は感染予防行動の阻害因子であった。良好な態度は行動を促進する因子で,態度を高めることが感染予防行動を導くと考えられた。急性増悪に影響する要因には年齢,ADL,手洗いが確認された。手洗いをしている人ほど増悪リスクが低く,手洗い実践が増悪予防につながる可能性が示唆された。COPD患者に対して,手洗いを含めた感染予防教育のより一層の充実と実践の推進が求められる。
  • ─ 乳幼児虐待の発生予防を目指して ─
    唐田 順子, 市江 和子, 濵松 加寸子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_25-2_37
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は乳幼児虐待の発生予防のために,産科医療施設(総合病院)に勤務する看護職者がどのように「気になる親子」に気づき,情報提供ケースとして確定していくのか,そのプロセスを明らかにすることを目的とした。看護職者25人を対象としたインタビューで得られたデータを,M-GTAの手法で分析した。結果,プロセスは,看護職者が病院を訪れるすべての親子に対し【多様な場面や方法でリスクを探る】ことで,リスク因子や【気になるサインに気づく】。さらに,継続的に情報を得て【リスク状況を明確にする】。長く続く子育てを認識し,【長期的な視座に立ち子育てを見据える】ことで「気になる親子」として〈チームで結論を出す〉。最後に【同意のハードルを越える】ことで情報提供ケースと確定する。「気になる親子」の判断には【長期的な視座に立ち子育てを見据える】必要があり,看護職者が長期的な視座をもつためには他機関からの情報提供が不可欠である。
  • 岡本 亜紀, 谷垣 靜子, 長江 弘子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_39-2_48
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究では包括型地域生活支援プログラム(ACT)を受けた精神疾患を有する本人の家族を対象に,半構造化面接法によるインタビューを行った。質的記述的研究デザインを用いた縦続比較的コード化とカテゴリー化を行い,家族の思いの全体像を示した。結果,[寄り添う人々がいることを感じる]ことにより[ありのままでいよう]と変化する過程が明らかにされた。その具体的な変化は,[忘れられない苦しみ]や[老いていくことの不安]がありながらも,家族自身に[寄り添う人々がいることを感じる]ことで,[誰にも言わずに耐えてきた本人の悲しみを感じる]共感的な思いが生じ,さらに[こころの病気だからと理解していく],[こころの病気に諦めをつけていく]ことで,[生活のための薬を続けてほしい]という思いや[こころの病気の人と在る]という思いの過程であった。家族支援として,家族の思いを肯定的に変化させる関係形成への示唆が得られた。
  • ─ 看護管理者が周囲との調整をはかりながら自殺に遭遇した看護師の支援を構築していく体験 ─
    寺岡 貴子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_49-2_61
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,精神科病院で患者の自殺に遭遇した看護師に対して看護管理者が支援を構築していくプロセスを明らかにすることである。10名の看護管理者を対象に,半構造的面接を実施した。面接内容をデータとし、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析を行った。自殺に遭遇した看護師を看護管理者が支援していくプロセスには,【誠実に向き合う姿勢】を保ちながら,看護師の【感情の和みへの導き】を意図したかかわりや,【自殺による影響の見極めと管理的な対応】を模索するという側面があり,それと並行して【自殺の再発予防に向けたシステムの改善】に取り組み,最終的には【看護師の成長の促進】をはかることが示された。しかし,一方では,自殺に遭遇した看護師やその周囲のスタッフに対して十分に管理的支援を提供できないことに葛藤を抱き,【戸惑いながら支援に向かう】という様相も語られていた。
  • 清原 智佳子, 古賀 明美, 藤田 君支
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_63-2_70
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究はC型慢性肝炎患者の疲労感とQOLを明らかにし,身体活動量や関連要因の検討を行った。C型慢性肝炎患者75名を対象に,疲労感尺度(FIS),肝疾患特異的QOL尺度(CLDQ)の質問紙調査と身体活動量を測定した。疲労感が強い者は身体領域の疲労が強く,病態の進行によりQOLが低下した。FIS,CLDQはともに有意な相関を示し,身体活動量は平均歩数6,479歩,運動量160±112 kcal/day,運動強度2.6±1.7 METs/dayであった。身体活動量は,3 METs未満が80%と運動強度は多くが低値を示した。関連要因は,「65歳以上群」「就業なし群」「Alb値3.8未満群」「Plt値13.1万未満群」がFISは高値を示し,CLDQは低値を示した(p< .05)。C型慢性肝炎患者では,疲労や病態の進行を考慮しながら身体活動を高めることが重要であることが示唆された。
  • ─ スムーズな移行を促す新たな教育方法の示唆 ─
    谷口 初美, 山田 美恵子, 内藤 知佐子, 内海 桃絵, 任 和子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_71-2_79
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】新人看護師のリアリティ・ショックの現状を理解し,大学から臨床へのスムーズな移行を促す看護基礎教育のあり方を探ること。
    【研究方法】A大学を卒業後,A大学の附属病院に就職した新人看護師10名を対象に,質的研究の記述的現象学を用い実施した。本研究はA大学医学部とA大学病院看護部の倫理委員会の承認を得て実施した。
    【結果】新人看護師のリアリティ・ショックの要因として,①求められる能力のハードルが高すぎ,何もできない自己に対するショック,②職場における先輩との人間関係がクローズアップされ,基礎教育のときから臨床現場に即した看護ケア,high riskケアと接遇の必要性が明らかになった。
    【考察】安全で質の高い臨床実習を保障するため先進国が実施している大学と臨床が協働で取り組むシミュレーション教育のシステム構築の必要性が示唆された。
  • 土井 まつ子, 篠田 かおる, 橋本 真紀代, 高橋 知子
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_81-2_89
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,感染対策の向上を目指した包括的な支援プログラムによる支援を中規模の医療機関1施設に対して実施し,支援の効果を評価することである。
    【方法】支援時の会議録と視察記録,環境調査,看護職に対する質問紙調査の結果を分析して,支援の効果について評価した。
    【結果・考察】1年間の支援により,院内に感染対策チーム(ICT)が発足して組織横断的な活動が実施されるようになり,A病院の看護職の感染予防行動実施への意識が高められた。これらの結果から,われわれが考案した支援プログラムによる支援の効果が明らかになり,調査用紙の質問項目が支援や感染対策の評価指標として有用であることが示唆された。今後は施設数を増して検討し,支援プログラムと評価指標の有効性を検証していくことが必要である。
  • 前田 祥子, 鹿村 眞理子, 水田 真由美, 岩根 直美, 坂本 由希子, 池田 高治, 古川 福実
    2014 年 37 巻 2 号 p. 2_91-2_101
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】SLE患者のボディイメージに関する知見を明らかにする。
    【方法】Cooperの「統合的文献レビュー」の方法論を用いた文献レビュー。「SLE」「systemic lupus erythematosus」「body image」を含む文献を検索し選定。文献は言語的要約と単純なコード分類を実施した。
    【結果】ボディイメージに関する記述のある文献は24件であった。選定文献はそれぞれ「療養体験」3件,「HRQOL」8件,「外見」5件,「セクシュアリティ」4件,「療養と支援」3件,「発達段階」1件の6項目に分類された。「HRQOL」は尺度開発に関するものとQOL低下に関するものが多く,「外見」は外見変化と外見懸念,「療養と支援」は治療効果,ソーシャルサポート,プライマリ・ケアに関するものがあった。
    【結論】SLE患者は外見上の問題に多くの困難さやニードがあり,ボディイメージが療養生活に及ぼす影響が示された。
feedback
Top