日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
38 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 山端 美香子, 近藤 松子, 石川 和枝, 天野 芳子, 近藤 真紀子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_59-1_71
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
    目的:プロミン開発以前に,ハンセン病患者に繰り返し生じた外傷の原因とその対処を明らかにする。
    方法:回復者10名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した。
    結果:外傷の原因は,【警告としての痛みの消失】【身体内部から崩壊】【貧困による労働重視】【傷の汚染・不潔な衛生環境】【素人による不適切な処置】【迷信】等の9個,対処は[万年傷に対する自己流処置方法の獲得][手ぬるい処置では治癒不能][重症度による治療者のランク分け][四肢の萎縮・切断による苦しみからの解放][労働不耐・免除による手足残存]等の6個のカテゴリーで示され,繰り返し生じた外傷の全容は,傷の悪化を誘発する負の連鎖,万年傷をもち貧困のなかを生きる日常,貧困を生き延びる代償としての障碍の3コアカテゴリーで図示された。
    考察:差別をもたらした重度重複後遺障碍には,貧困,医療・公衆衛生・社会生活基盤の不備,強制労働等の社会的要因が関与した。
  • 中山 登志子, 舟島 なをみ
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_73-1_83
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
    研究目的は,実習指導者の教育ニードアセスメントツールを開発することである。質的帰納的研究成果である実習指導者の望ましい状態7側面を下位尺度とし,これに基づき質問項目の作成・尺度化とレイアウトを行い,内容的妥当性の検討を経て7下位尺度49質問項目からなる尺度を作成した。この尺度を用いて実習指導者1,309名を対象に調査を実施した。質問紙回収数は753(回収率57.5%),有効回答726を分析した。項目分析の結果に基づき35項目を選定した。Cronbach’s α信頼性係数は .937,再テスト法における相関係数は .769(p< .001)であった。また,因子分析の結果7因子が抽出され,これら7因子は質問項目の基盤とした7側面におおむね対応していた。さらに,既知グループ技法の結果は,「看護実践能力の程度」「実習指導に対する自信の程度」別の尺度総得点に有意差を認めた。これらは,開発した教育ニードアセスメントツールが信頼性・妥当性をおおむね確保していることを示す。
  • 山田 光子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_85-1_91
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
    目的:入院中の統合失調症患者のセルフスティグマと自尊感情の関係性を明らかにする。
    対象と方法:Y県3個所の精神科病院に入院中の統合失調症患者約104名に,セルフスティグマ尺度(PDD),自尊感情尺度(SE),抑うつ尺度(CES-D)を用い調査を行った。
    結果:有効回答は97名(93.3%)で,男性51名(52.6%)女性46名(47.4%),就業経験のある者91名(93.8%),平均年齢52.9(±13.5)歳,平均発病年齢27.5(±11.5)歳,平均罹病期間25.0(±14.7)年,平均入院期間6.1(±7.2)年だった。各尺度の平均合計得点はPDD 30.5(±8.7)点,SE 31.9(±8.9)点,CES-D 14.3(±10.3)点であった。パス解析の結果,セルフスティグマは抑うつ状態と自尊感情の関連性があることを示した。
    結論:セルフスティグマは,自尊感情に直接的に影響を及ぼさず,抑うつ状態を介して自尊感情に影響を及ぼすと示唆された。
  • 松田 佳子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_93-1_100
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,夫側から立ち会い出産の満足感に影響を及ぼす要因および夫の妻への親密性との関連を明らかにすることである。対象は,妻の出産に立ち会い有効回答が得られた174名(26.6%)とした。結果,夫の立ち会い満足感には,出産中の妻への支援,出産中の妻から夫への反応,出生児との接触が影響を及ぼす。また夫の立ち会い満足感と妻への親密性には関連があることが明かとなった。このことより,夫の立ち会い満足感を高めるために助産師は,妻にとってより効果的と感じる支援内容を夫へ説明し,妻へ提供できるようサポートすること,そして妻から夫へ感謝の気持ちを表出させるようかかわることが重要であることが示唆された。
  • 松谷 ひろみ, 原 祥子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_101-1_111
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
    中山間地域に暮らす後期高齢者の文化的視点を含めた個人エンパワメントの様相を明らかにすることを目的とし,エスノグラフィーを用いて,A町B地区の後期高齢者9名と保健師等へ半構成的面接を中心としたデータ収集,分析を行った。
    中山間地域に暮らす後期高齢者は日々の暮らしのなかで【老いに伴う自分の変化や地域の変化への気づき】をしていた。そして【老いと上手に付き合っていくための方法】を見出し,【地域の中での自分の役割の創出】をしており,それは『地域の一員としての自分を示し続ける』ことであった。また【老いていく自分の支えるとなるもの】と【老いていく自分と変わりゆく地域をなじませる】ことは,相互に影響し合い,それぞれが『地域の一員としての自分を示し続ける』ことを推し進めていた。看護職者として,後期高齢者が力を発揮し,個々にあった形で地域の一員としての自分を示し続けていけるように支援していく重要性が示唆された。
  • 福良 薫
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_113-1_125
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
     本研究は,身体障害を抱えた脳卒中患者の生活の再構築を支援する具体的な看護介入を検討することを目的とした。研究対象者は,初発の脳卒中により麻痺をはじめとする身体機能障害をもつ者とした。脳卒中患者の体験を患者の語りを通して探求した予備調査をもとに,看護介入プロトコルを作成した。研究参加の協力が得られ,退院までかかわった7事例は全員男性で,年齢は49歳~70歳であった。入院中の面接はプロトコルに従って行われ,1人あたり3~6回で,1回の面接時間は5~111分であった。対象者たちの「語り」は,ネガティブな感情の表出から,介入の回が進むにつれ人生における罹患の意味づけをする内容に変化していた。また,研究者に向けて発せられた「語り」は,聴く者の存在により心の整理をしているとみてとれた。これらから作成したプロトコルは,生活の再構築に向けた看護介入として有用であると考えられた。
  • 田中 久美子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_127-1_137
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本の専門看護師(certified nurse specialist:CNS)が役割を獲得するまでの内面的成長プロセスを明らかにすることを目的に行った。研究協力を得られた11名のCNSを対象に半構造化面接を行い,その内容を質的に分析した。
     その結果,対象者のCNSとしての内面的成長プロセスは,時間軸に沿って,①コンフリクトの時期,②精製の時期,③創出の時期,④発展の時期の4段階に分類することができた。対象者は,当初曖昧な役割認識のなかで悩み,周囲に支えられながら,自分自身のCNSとしてのあり方を深くかえりみる作業を繰り返し,やがて役割獲得の感覚を得ていた。そこまでにおおむね3年の月日を要していた。その後も経験と努力を積み重ね,6~10年という時間をかけて,自分なりの確固としたCNSの役割を獲得していた。
     この成長プロセスを通して,CNSの大学院教育のあり方の検討,初任者のCNSに対するサポートの必要性,組織とCNSの関係の構築の必要性に関して看護の示唆を得た。
  • 曽山 小織, 吉田 和枝, 米田 昌代
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1_139-1_150
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2016/01/07
    ジャーナル フリー
     子育てする母親とそれを支援する祖父母との間には,子育て方法に関する世代間相違があると指摘されている。本研究の目的は,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との関連を明らかにすることである。調査方法は無記名自記式質問紙調査であった。妊婦の母親651名に調査票を配布して,有効回答数は180名であった。分析は単純集計とχ検定を用いた。対象の平均年齢は57.1±5.5歳で,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との間に関連が認められたのは,おしゃぶりの使用,沐浴後の湯冷ましの使用,離乳食を大人が噛み砕いて子どもに与えること,果汁開始や断乳の時期,三歳児神話,または性別役割分業意識であった。赤ちゃんが泣きやまないときの粉ミルクの使用に対する意識と祖母の子育て経験との間には関連が認められなかったが,初孫か初孫以外かとの間には関連が認められ,孫の誕生が粉ミルク使用に対する意識を変化すると示唆される。
feedback
Top