日本看護研究学会雑誌
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44 巻, 1 号
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  • 涌水 理恵, 齋藤 佑見子, 望月 梢絵, 黒木 春郎
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_25-1_38
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:COVID-19の感染拡大が続くなか,かかりつけ小児科医に定期通院する子どもの主養育者がオンライン診療の利用を希望しているのか否か,どのような意識を有しているかについて明らかにする。方法:A小児科に定期通院中の子どもの主養育者に質問紙調査を行い,量的/質的に分析を行った。結果:定期通院に不安を有する者は全体の67.7%を占め,オンライン診療利用経験のある者はない者と比べ不安が有意に高かった。オンライン診療利用者は34.6%で,開始時期は2020年の5,6月が多かった。オンライン診療利用満足度は高く,主な理由に【感染症罹患リスクの軽減】が挙げられた。未利用者は【対面で医師とやり取りする安心感】を理由に利用を躊躇する傾向にあった。結論:子どもの定期受診を主養育者が安心して継続できるよう,円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築,オンライン診療システム改善の必要性が示唆された。
  • 浅井 克仁, 籏持 知恵子, 南村 二美代
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_41-1_50
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:慢性心不全患者における病気認知の関連因子を明らかにするために,診療録調査及び質問紙調査を実施した。方法:The Common-Sense Modelを参考に研究の枠組みを作成し,背景因子,病気認知(B-IPQ),刺激,経験則(Heuristics)についてデータ収集を行った。160名を分析対象とし,B-IPQと刺激,経験則との単変量解析の後に有意差を認めた変数を独立変数とした重回帰分析を行った。結果:B-IPQには,「職業あり」(β=−.14),「安静時呼吸困難」(β=.17),「労作時呼吸困難」(β=.23),「倦怠感・易疲労感」(β=.21),「感情に関する指標(affective heuristic)」(β=.20)が関連していた(Adj R2=.43)。結論:症状の強さや病気に対する感情による影響の認識を確認し,適切な病気の認識ができるよう支援する必要性が示唆された。
  • 平間 あけみ, 一條 明美, 升田 由美子
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_51-1_60
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:優れた倫理的判断力を有する看護師は,どのような経験を基盤に現在の倫理的判断や看護実践に至ったのかを明らかにする。方法:①対象:臨床で働く看護師で,職位は問わず臨床経験が6年以上の倫理的判断力をもつ看護師7名,②期間:2016年11月〜2017年3月,③分析:半構造化面接で得たデータを質的統合法(KJ法)により分析した。結果:《心に刻まれている臨床経験》,《患者を理解し,患者の価値観や意思を尊重して支え最善を尽くす看護》,《内省および患者や周囲からの励ましと承認》,《患者と家族のために看護チームでの情報の共有》,《管理者としての自覚と責務》の共通項目が抽出された。結論:倫理的問題の経験が倫理的問題を考えるきっかけとなり,リフレクションを通して倫理原則を内在する患者中心の看護に気づき,倫理的知識としてチームで共有して,研究協力者個人と看護チームの2つの側面から患者中心の看護を実践していることが明らかとなった。
  • 坂根 可奈子
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_61-1_71
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,服薬自己管理が困難な在宅高齢療養者に訪問看護師が支援を行う看護プロセスを明らかにすることを目的とした。方法:訪問看護師19名に半構造化面接を行い,M-GTAの手法で分析した。結果:訪問看護師は【服薬に関わることが許される関係性を築く】よう関わり,【普段の服薬行動の様子をつかむ】ことから,【服薬に影響を与える要因を探索する】ための情報収集をしていた。そして【服薬自己管理ができていなかった原因を明確にする】アセスメントを行い,【生活スタイルに馴染む服薬自己管理の方法を模索する】支援をしていた。状況に応じて【その人を取り巻く関係者間のネットワークをリードする】役割を果たし,【服薬自己管理の支援を内省する】ことにより次の支援につなげていた。結論:訪問看護師が高齢療養者の服薬自己管理能力を予測的に把握し,これまでの生活に馴染むよう支援して,他職種の専門性と強みを理解して調整する役割を果たす重要性が示唆された。
  • 平塚 克洋
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_73-1_85
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,自己肝にて生存する思春期・青年期胆道閉鎖症患者が,どのようにして療養生活への関心を高め,自ら療養生活を整えていくのか,そのプロセスを明らかにすることを目的とした。方法:17〜25歳の患者9名を研究参加者としたインタビューから得たデータを,M-GTAを用いて分析した。結果:患者が主体となって自ら療養生活を整えられるようになるには,病気や治療の不確かさの中で,患者が現在の生活と将来への関心を高めつつ,生活調整の経験を積み重ねる必要があること,さらに,親が生体肝ドナーとなる可能性によって複雑化する親への感情,愛着の再確認がプロセスに果たす役割も明らかになった。結論:看護者は,患者が自ら療養生活を整えていくプロセスを見守る姿勢を持ちながら,プロセスの滞りを察知し,確率論的思考の導入,患者が現在コントロールできていることに目を向けられる促し等の看護を提供していく必要がある。
  • 無床診療所におけるエスノグラフィー
    小林 美雪, 小村 三千代
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_87-1_98
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,無床診療所における看護師の安全文化を明らかにすることを目的とした。方法:研究デザインはエスノグラフィーを用いた。研究参加者は,地方都市の耳鼻咽喉科の看護師5名であった。結果:無床診療所の看護師の安全文化として8カテゴリーと4テーマが見出された。〈流れを止めない手指擦式法と流れを止めてでもする石けん手洗い〉〈二人の目で確かめる〉からテーマ1「基本を守り続ける」が,〈柔軟性のある改善〉〈柔軟で前向きな姿勢〉からテーマ2「柔軟に改善し続ける」が,〈話しやすい関係〉〈共有されるミス〉からテーマ3「ミスを我がこととして受け止める」が,〈絶妙なフォロー〉〈一目でわかる黄色と白色のカード〉からテーマ4「互いの意図を読み取る」が抽出された。結論:無床診療所の看護師の安全文化の基本的仮定として,「安全を守る使命感」「安全を目指す志向性」「安全を支える相互信頼」「安全を高める暗黙の協調」が示唆された。
  • 中村 円
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_99-1_110
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:病棟看護師と退院調整看護師の退院に伴う意思決定支援に関する,それぞれの看護師の役割認識を明らかにする。方法:病棟看護師7名,退院調整看護師6名の計13名に面接調査を実施し,質的記述的に分析した。結果:病棟看護師の自己の役割認識は【患者・家族との関係性を活かした意向や希望の把握】等6カテゴリー,退院調整看護師に期待する役割認識は【意思の実現に向けた連携と調整】等4カテゴリーだった。退院調整看護師の自己の役割認識は【地域の関係者と病棟間の橋渡し】等5カテゴリー,病棟看護師に期待する役割認識は【病棟看護師の思考や判断の提示】等6カテゴリーだった。また両者の協働に向けた役割認識4カテゴリー,退院調整看護師がどちらの役割とも言及しない3カテゴリーが示された。結論:患者の療養生活と密接に関わる看護職の共通性を認識しながらも,相互の特性を活かし,補完し合う役割を発揮する必要性が示唆された。
  • 高橋 博子, 中西 純子
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_111-1_121
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:禁煙外来における熟練看護師は,禁煙支援のために,どのような技術をどのように使っているのか明らかにする。方法:禁煙支援歴5年以上の有資格看護師2名を対象に禁煙支援場面の参加観察と半構造的面接を行い,質的記述的に分析した。結果:〔患者の関心をひきつけ,分かりやすい説明を駆使し,患者を「分かる」へ導く技術〕〔目標のハードルを上げすぎず,ポジティブ思考へ後押しし,禁煙を続ける自信を強める技術〕〔禁煙動機を強め,且つ動機を弱める因子を減らす技術〕〔個々の体験世界や生活に合わせて柔軟に具体的に介入する技術〕〔賞賛と注意喚起で再喫煙のリスクを避ける技術〕他9つの禁煙支援技術が抽出された。結論:禁煙外来において,熟練看護師はニコチン依存症患者の特性を心得た上で認知の修正や自己効力感向上,再喫煙予防を意図して行い,限られた期間と受診回数の中で,受診回ごとに効果的に自在に禁煙支援技術を駆使していた。
  • 安東 由佳子, 奥田 鈴美, 青木 駿介, 小林 敏生
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_123-1_133
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,パーキンソン病(PD)患者の疾病自己管理状況および抑うつ症状の実態を明らかにすることを目的としている。方法:PD患者185名を対象に,無記名の自記式質問紙調査を実施した。有効回答率は95.7%であった。結果:抑うつ症状あり(K6得点≧5)は49.7%で,対象者の約半数が抑うつ症状を呈していた。疾病自己管理について,「PD薬の飲み忘れ」以外の服薬に関する実施率は高かったが,「症状変化の記録」「排便回数や量の記録」の実施率は低く,セルフモニタリング教育の必要性が示された。ADLおよび疾病自己管理の「好きなことや楽しいことの継続」「病気のことはくよくよせず楽観的に考える」が抑うつ症状と有意な負の関連を示した。結論:看護職は,疾病自己管理について指導する際に,趣味等,好きなことや楽しいことの継続を促すとともに,患者自身が自分の病気をどのように捉えているかについて,十分注意する必要があることが示唆された。
  • 佐々木 晶世, 榎倉 朋美, 柏﨑 郁子, 保下 真由美, 叶谷 由佳
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_135-1_144
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:看護学生の訪問看護師への就労意向の実態と課題を明らかにすること。方法:1自治体の看護師養成施設に在籍する学生を対象に実施された無記名自記式質問紙調査に回答のあった2,703名分のデータを使用した。調査内容は,看護学生の属性,進路,訪問看護師に関する仕事内容や就労への関心についてである。結果:訪問看護師にいつかなりたい者は,専門学校708名(37.0%),大学233名(30.0%)で,卒業後すぐになりたい者も専門学校18名(0.9%),大学8名(1.0%)存在した。また,多重ロジスティック回帰分析の結果,訪問看護師としての就労への関心には,学校種別にかかわらず,訪問看護師の知り合いがいること,在宅看護に関する実習を受講していること,訪問看護師の仕事内容を知っていること,が影響していた。結論:看護学生が訪問看護師としての就労に関心を持つためには訪問看護の実習を充実させる必要がある。
  • 杉村 鮎美, 光行 多佳子, 安藤 詳子
    2021 年 44 巻 1 号 p. 1_145-1_150
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
    目的:全国の呼吸器内科病棟(以下,RW)と緩和ケア病棟(以下,PCU)における呼吸困難ケアの実践状況と両施設の特徴を明らかにする。方法:全国のがん診療連携拠点病院のRWと20床以上を有するPCUの内,同意を得られた施設の看護師(RW112名,PCU92名)を調査対象とした。自記式質問紙の調査項目は背景とケア実践状況27項目で構成し,実践割合をχ2検定で比較した。結果:両群の背景に有意差は認められなかった。ケア実践状況は,タッチングや体位の工夫は両施設とも8割以上の実践率であった。一方,PCUは呼吸法や排痰援助を含む4項目が低く(p<.05),RWは環境整備や家族指導を含む11項目が低かった(p<.05)。結論:両施設は体位調整やタッチング等の基本的な呼吸困難ケアは提供できていた。しかし,RWは患者家族への指導,PCUは呼吸法の実践が低かったため,今後の取り組みが期待される。
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