SCLの安全装用のための日常管理,特に洗浄について検討するため,SCLを装用している86名の大学生に質問紙調査を行うとともに,現在使用中のレンズ付着細菌の検索,市販洗浄液(メニクリーン)の抗菌特性および人工的に表皮ブドウ球菌で汚染させたSCLに対する洗浄効果についての細菌学的実験を行って次の結果を得た。
1) 質問紙調査では,手指の消毒,洗浄の方法,煮沸消毒,ハイドロケア(蛋白除去剤)の使用,保存液の交換など,日常管理の実施状況について調査した。その結果,日常管理を指導通り,あるいはより良いと判断できる方法で行っていた者は少数であった。
2) 質問紙調査協力者のなかから無作為に抽出した31名について細菌学的検索を行ったところ,装用中のレンズから緑膿菌,表皮ブドウ球菌,グラム陽性球菌,グラム陽性桿菌,グラム陰性桿菌,真菌が検出された。保存ケース中の保存液についても同様の検索を行った結果,同種類の細菌がレンズより高率に検出された。
3) 供試市販洗浄液は,表皮ブドウ球菌に対して増殖低下作用と誘導期遅延効果を示したことから,殺菌作用を持ちあわせていることが推定された。
4) レンズ洗浄に関して9通りの方法による洗浄効果について細菌学的実験を行った。その結果,洗浄液量1.0ml,レンズをこする回数30回の方法の場合に最もよい洗浄効果がみられた。
5) レンズ使用経験年数の経過とともに洗浄をはじめとする日常管理法が粗雑化するので定期検診の場を利用し,SCLの日常管理法をチェックすることが大切である。
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