日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
Online ISSN : 1884-6114
Print ISSN : 1883-1273
34 巻 , Suppl1 号
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
選択された号の論文の75件中1~50を表示しています
特別講演1
  • 蛇澤 晶, 木谷 匡志, 田村 厚久
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 23
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    肺に肉芽腫を形成する疾患は多く,結核症・非結核性抗酸菌症,真菌症などの感染性疾患が挙げられるほか, sarcoidosis(サ症)やWegener肉芽腫症,リウマチ結節,過敏性肺臓炎などの非感染性(もしくは原因不明の)疾患が含まれる. 肉芽腫の形態には疾患によって,壊死の有無や構成細胞などの点にある程度の違いがあるが,単一疾患の肉芽腫でも多様な形態を示し,他疾患の肉芽腫と類似する場合が少なからず存在する.そのため,肉芽腫の形態に疾患特異性を求めることは困難である. しかし,小葉構造や気管支,血管など,肺の解剖学的な要素と肉芽腫との関係を立体的・総合的に検討すれば,各疾患の特徴をより明確に捉えることが可能となる.サ症では気道・血管周囲の間質,胸膜,小葉間間質などのいわゆる広義間質に肉芽腫が多発し,リウマチ結節も広義間質および近傍の領域に認められやすいのに対して,抗酸菌症の気道散布性病変や亜急性過敏性肺炎では呼吸細気管支および近傍に肉芽腫が多発する.また,粟粒結核症の肉芽腫は小葉内でat randomな分布を示す. 末梢肺病変のみならず気道病変に留意することも肉芽腫性疾患の診断に有用である.気道壁に肉芽腫とともに潰瘍性病変が形成される所見は,サ症では非常に稀であるが,感染性肉芽腫性疾患では頻繁に観察される.また,Wegener肉芽腫症では肉芽腫性気管支軟骨炎を伴うことがある. また,肺結核症および肺MAC症,慢性肺アスペルギルス症などの有空洞症例でも,感染体の気道散布に伴って気道病変が形成されるが,各疾患によってその有り様に違いがある.結核症では,太めの気管支に炎症による閉塞が頻発するのに対して,肺MAC症ではこのような気管支閉塞が見出されることは少ない.また,慢性肺アスペルギルス症では,空洞から直接末梢に伸びる気管支がよく認められるが,両抗酸菌症でこのような気道を見出すことは稀である. 以上,肉芽腫性肺疾患の診断・病態理解のためには,小葉構造や気道などの解剖学的構造に照らした病理像を把握することが有用であることを述べた.他に,血管との関係に注目すべき疾患もある.本学会では,これらの点を強調しながら実際の症例を提示したい.また,これにより各疾患のX線所見を理解する際にも役立てば幸いである.
特別講演2
  • 萩原 弘一
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 24
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     近年,日本人肺の脆弱性が指摘されている.⑴薬剤性肺障害が他国(西洋や他のアジア人)より高頻度で見られ,高率に致死的な経過をたどること,⑵肺線維症を有する患者で他国より高頻度に急性増悪が起こり,高い致死率を示すと推定されることが典型例である.とくに,gefi tinibの肺障害は,疫学データがしっかりしており,民族差が明確に示されている.上記2つの病態以外にも,何らかのきっかけでびまん性肺胞障害を特徴とする肺障害が起こり,患者が重篤な状態に陥る,または死亡する病態が医療のさまざまな分野で見られるが,それらの中にも日本人で高率に発症していると推定されるものがある. 肺線維症合併患者への抗癌剤投与で見られる肺障害,照射野以外の肺に広範に広がる放射線肺臓炎,肺線維症合併患者の術後にみられる急性増悪,皮膚筋炎患者にみられる致死性急速進行性間質性肺炎などである. 薬剤性肺障害や特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子は多数あると想定されるが,その中でも特に強く関与する,すなわち,遺伝的効果の高い遺伝因子を1つ想定すると民族差を説明しやすい.この場合,遺伝因子の民族内頻度の差が,そのまま疾患頻度の民族差として現れる.日本人特異的肺障害は民族特異的な遺伝因子により引き起こされるのではないか.薬剤性肺障害や特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子は多数あると想定されるが,その中でも特に強く関与する,すなわち,遺伝的効果の高い遺伝因子を1つ想定すると民族差を説明しやすい.この場合,遺伝因子の民族内頻度の差が,そのまま疾患頻度の民族差として現れる. この作業仮説に基づき,全国30余りの医療機関の協力を得て,薬剤性肺障害または特発性肺線維症急性増悪患者検体の収集を行った.エクソーム解析を98名(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害36名,特発性肺線維症急性増悪45名,ザーコリ肺障害2名,ドセタキセル肺障害15名)に対して施行した.健常日本人のエクソームデータを対照として関連解析を行い,さらに疫学データへの一致確率を解析した.その結果,一つの遺伝子が候補として浮かび上がってきた. 本日は,この研究過程と,候補遺伝子の構造,機能と肺障害の関連の可能性,さらに特発性肺線維症自体への関連可能性に関して述べてみたい.
学会受賞講演
  • 半田 知宏
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 25
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     受賞の契機となった研究を,3点に絞って紹介する.1)遺伝子多型に関する研究:サルコイドーシス(サ症)の病態には,マクロファージによる抗原提示とT細胞の活性化が関与すると考えられている.ナイーブT細胞の活性化には共刺激分子の発現が不可欠であり,その代表的なものが抗原提示細胞に発現するCD80,CD86と,T細胞に発現するCD28,および抑制性に働くCytotoxic Tlymphocyte antigen︲4(CTLA︲4)である.また,CD24,CD40もCD28とは独立した経路でT細胞の活性化に関わる.これらの遺伝子の既知の一塩基多型(single nucleotide polymorphisms; SNPs)について,ケースコントロール関連分析を行い,CTLA-4,CD80,CD86,CD24,CD40のSNPsがサ症の発症には関与しない事,CTLA-4およびCD40のSNPsが気管支肺胞洗浄液のリンパ球プロファイルに関連する事を示した.また,Interferon regulatory factor 5(IRF 5)の4つのSNPについても検討を行い,そのハプロタイプの一つがサ症の疾患感受性に関与する事を示した.2)気流制限に関する研究:サ症では,拘束性肺機能障害に加えて閉塞性障害が見られることが知られているが,その危険因子や疫学は十分に明らかとなっていない.228例のサ症で肺機能検査,可逆性試験,胸部HRCTを施行し,8.8%の症例で気流制限が認められること,高齢,喫煙,stageⅣ,胸部HRCTでの気管支血管束の肥厚像が気流制限の危険因子であることを示した.また,オリジナル解析ソフトを用いてサ症43例の気管面積と気管支壁面積の測定,および肺野のヒストグラム解析を行い,気管面積と肺野濃度の指標が気流閉塞と関連することを示した.3)肺高血圧症に関する研究:連続246例のサ症を対象にドップラー心臓超音波で肺高血圧症の評価を行った.その結果,5.7%の症例で肺高血圧症が認められ,Total Lung Capacityの低下が独立した危険因子であった.また,29例の心臓病変,21例の肺高血圧症例を含む150例のサ症で血清NT︲proBNPを測定し,血清NT︲proBNPが心臓病変の検出において有用性が高い一方で,肺高血圧症の診断精度は低いことを示した.さらに,サ症に特異的な質問表であるSarcoidosis Health Questionnaire(SHQ)の日本語版を作成し,その妥当性を検証すると同時に,肺高血圧症がサ症の健康関連QOLに寄与することを示した.これらの研究を通じて,サ症の病態における共刺激分子の関与,肺高血圧症や気流閉塞といった臨床管理上問題となる併存症の疫学や病態を明らかにした.
シンポジウム1
  • 宮﨑 英士, 山口 哲生
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 26
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスは,原因不明の全身性(多臓器性)肉芽腫性疾患である.診断に際しての基本は,⑴非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を確認すること,⑵各臓器に特徴的な臨床所見を認めること,そして⑶サルコイドーシスに頻度の高い検査所見を認めることである.サルコイドーシスは多臓器性疾患であることから,診断には少なくとも2臓器に肉芽腫性炎症の存在を認めることが必要だとの見解もあるが,WASOGは,「一つの臓器病変において組織学的に類上皮細胞肉芽腫が確認できた場合,ほかの臓器でサルコイドーシスに特徴的な所見が得られれば,生検せずとも臓器病変として良いとする臓器評価基準」を示している(Sarcoidosis Vasculitis and Diff use Lung Diseases2014; 31; 19︲27).本邦では「サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き-2006」が広く活用されてきたが,新たな診断・管理技術の進歩,重症度評価を含めた「サルコイドーシス診療の手引き(仮)」への改訂作業が行われようとしている.そのようななか,この機会に多臓器性疾患であるサルコイドーシスを総合的に診断・治療・管理していく能力を向上させるために,本シンポジウムを企画した. 今回のシンポジウムでは,眼科領域,皮膚科領域,神経領域,および呼吸器領域を取り上げ(循環器領域は別シンポジウムで議論),臓器における本症に特徴的な症候,所見,および検査成績について解説いただき,さらに,治療適応と管理をしていく上で注意すべき点等について実地臨床に即して,ご講演いただくこととしている.加えて,呼吸器領域に関しては,「他臓器においてサルコイドーシスに特徴的な所見が得られた場合,組織診断を得る上での生検の有用性,すなわち肉芽腫の検出率」について,特に,EBUSの成績を中心に解説いただく予定である.本シンポジウムでは演者の先生方に教育的な講演をお願いしており,「参加者が専門外の臓器における診断に資する特徴的所見を理解し,それぞれの臓器病変の治療と管理のポイント,さらに予後について理解を深める」ことをアウトカムとしたいと考えている.
  • 石原 麻美
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 27
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスは多臓器疾患であるが,2004年度の全国調査によると,眼病変は肺病変に 次いで多く,発見時の自覚症状の中では眼症状が最も多い.自覚症状としては霧視,飛蚊症, 視力低下などが多いが,加齢のためと考え眼科受診が遅れることで,初診時に様々な眼合併症を 伴っていることがある.一方で,自覚症状がほとんどなく,他科からの併診で眼病変が発見 されることもある.眼は自覚症状が出やすい臓器ではあるが,これらの事情から発見された時に はすでに視機能低下が進んでおり,QOV(Quality of Vision)やQOL(Quality of Life)の低下を きたしている場合も少なくない.  サルコイドーシスは本邦のぶどう膜炎の原因疾患の中で最も多く,約11%を占めている.サルコイ ドーシス眼病変の特徴として,1.ぶどう膜を主とした眼内炎症(ぶどう膜炎)を呈する 2.軽快・ 増悪を繰り返しながら,数年〜十数年以上の慢性の経過をとることが多い 3.長期に続く炎症の ため,続発緑内障や黄斑病変(黄斑浮腫,黄斑上膜)などの眼合併症をきたし,視機能低下を招く ことが多い 4.「眼サルコイドーシス診断の手引き」に記載されている眼所見は,サルコイドー シス以外のぶどう膜炎でもみられる所見であり,6項目中2項目以上有していてもサルコイドーシス 眼病変と診断することはできない 5.眼内組織の生検は行わないため,全身検査所見,他臓器サル コイドーシス病変があってはじめて診断が可能になる 6.全身検査所見を満たさない,または 他臓器病変がないために診断がつかない「サルコイドーシス疑い例」が,原因不明のぶどう膜炎の 最多を占めている 7.眼所見だけでは結核,悪性リンパ腫などの他疾患との鑑別が困難な場合が ある 8.ステロイド剤に良く反応するが,一部にステロイド抵抗症例が存在する 9.治療のオプ ションとして,硝子体手術をはじめとした外科的治療を選択する症例が増えてきている,などが あげられる.  慢性の眼内炎症によるQOV,QOLの低下を防ぐためには,定期的な眼科通院・加療が大切で ある.他科の先生方にも眼科併診の必要性を理解していただけるように,本講演では特徴的な 眼所見や眼合併症,鑑別疾患,最近の治療など,サルコイドーシス眼病変についてわかりやすく 解説したいと考えている.
  • 水野 可魚, 岡本 祐之
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 28
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスにおける皮膚病変の発症頻度は胸郭内・眼病変に次いで高い.また,皮膚は 生検しやすい臓器であるため,サルコイドーシスの診断基準で大きな比重が置かれている組織学 的な類上皮細胞肉芽腫の確認を行うのに非常に重要な臓器である.しかし,その臨床像は同一疾患 とは思えないほど多彩であり,皮疹を見逃さないためには各病型の特徴を理解して診察にあたる 必要がある.皮膚病変は①結節性紅斑,②瘢痕浸潤,③皮膚サルコイドの3つに分類される. 結節性紅斑は両下腿伸側に出現する軽度の発赤を伴う有痛性の皮下硬結である.サルコイドーシス 以外の疾患(ベーチェット病など)にも出現し,組織学的にはseptal panniculitisの像を示し, 肉芽腫形成を認めない非特異疹である.瘢痕浸潤は陳旧性瘢痕部に肉芽腫反応が生じたもので, 瘢痕部が赤みを帯びたり,隆起が増強する.外傷を受けやすい膝蓋,肘頭,顔面に好発し,慎重に 診察すれば高頻度に発見できる病変である.顔面の皮疹は患者が自覚しているが,膝蓋や肘頭は 皮疹の存在に気付いていないことが多いため,患者の訴えがなくても必ず診察することが大切で ある.類上皮細胞性肉芽腫とともに偏光顕微鏡で重屈折性を示す異物が観察される.皮膚サルコ イドは組織学的に類上皮細胞肉芽腫を認める病変で,代表的なものは4大病型の結節型,局面型, 皮下型,びまん浸潤型である.結節型は最も頻度の高い皮膚病変で顔面,特に鼻周囲に出現する ことが多い.局面型は結節型に次いで多い病型で,主に環状を呈し,前額部の生え際に出現する 頻度が高い.皮下型は四肢に好発する病変で,表面皮膚は異常が見られないが,触診にて皮下の 病変が触知できる.びまん浸潤型は海外ではlupus pernioと呼ばれる病型で,わが国での頻度は 低い.暗紅色のび漫性に腫脹した凍瘡様病変で,指趾・頬部・耳介・手背・鼻背など凍瘡の好発 部位に発症することが多い.これら4大病型以外にも苔癬様型,結節性紅斑様皮疹,魚鱗癬様皮疹 などの病変もある.また,頻度は低いが乾癬様病変,疣贅様病変,白斑などが報告されている. 今回の講演ではこれらの多彩な皮膚病変の臨床像を供覧し,皮膚病変を診察する上での注意点に ついて述べる.
  • 滝山 容子, 西山 和利
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 29
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     神経・筋サルコイドーシス(サ症)は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とするサルコイドーシス 病変が中枢神経・末梢神経・筋に出現したもので,サ症の5〜13%にみられる.他臓器サ症に伴う 場合のほか,神経・筋サ症のみの孤発性や,画像・検査所見のみ陽性となる無症候性もある.  病変分布は広範囲に及び,中枢神経である脳・脊髄では,①実質内肉芽腫性病変(限局性腫瘤病変, びまん性散在性肉芽腫性病変,脊髄病変),②髄膜病変(髄膜炎,髄膜脳炎,肥厚性肉芽腫性硬膜炎), ③水頭症(慢性髄膜炎に起因),④血管病変(血管炎,脳室周囲白質病変,静脈洞血栓症),⑤脳症 がある.末梢神経では,脳神経障害(両側顔面神経麻痺,視神経障害が多い)と脊髄神経障害(多発 神経炎,多発性単神経炎,単神経障害,神経根,馬尾障害)がある.筋病変として,急〜亜急性 筋炎(近位筋力低下,筋痛),慢性ミオパチー(両側近位筋〜びまん性筋力低下・筋萎縮),腫瘤型 ミオパチー(筋肉内腫瘤)がある.  診断は上記臨床所見に加え,神経・筋組織で組織診断が得られた場合(Defi nite),他臓器病変の 組織診断と一定のサ症基本診断基準検査所見を満たす場合(Probable),組織診断はなく,他臓器の サ症臨床所見と一定のサ症基本診断基準検査所見を満たす場合(Possible)に分類される.診断に 際しては代謝,感染,腫瘍,自己免疫疾患等を除外する必要がある.髄膜,脳底部病変,視床下部・ 下垂体障害,両側顔面神経障害,頚胸髄病変などいくつかの好発部位はあるものの,症状・所見が 非特異的,広範囲に及ぶため,実臨床の場では原因不明の神経徴候に対し,必ず鑑別診断として 挙げられる.よって他の神経筋疾患の鑑別も含め,一般のサ症診断検査のほか,髄液検査(CD4/ CD8比,ACE,sIL︲2R等),筋電図・末梢神経伝導速度検査,造影MRI(脳・脊髄・筋),核医学 検査(Ga シンチ,FDG︲PET)等を行う.いずれも神経・筋サ症としての特異度は低く,病変部位, 病勢把握が主体である.確定診断は生検だが,侵襲性の問題から髄膜等,一部の組織以外は施行 不能のことが多く,肺・リンパ節・皮膚・筋等,可能な部位からの生検を行う.  治療は自然寛解もあり病勢によって選択される.1st lineはステロイドだが,再燃難治例の場合, 2nd lineとして免疫抑制薬(azathioprine,methotrexate,cyclosporine,mycophenolate mofetil (MMF),cyclophosphamide),さらには抗TNF︲α薬(infl iximab等)を用いる.末梢神経障害(small fi ber neuropathy)に対する免疫グロブリンの有効例も報告されている.
  • 北村 淳史, 滝口 裕一, 巽 浩一郎
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 30
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     肺サルコイドーシスの病理学的診断には,TBLBによる確定診断とBALによる活動性診断などが ある.しかしTBLBの診断率は40〜90%と報告により様々で,一定の確率で生じる気胸や出血の 合併症は避けられない.また腫大した縦隔リンパ節に対する診断アプローチは,全身麻酔を要する 縦隔鏡や胸腔鏡となり,診断率は90%以上と高いものの,その侵襲性から施行される症例は限定的 であった.  EBUS︲TBNAは,2004年に臨床応用例が報告され,その後の保険収載もあり,近年急速に日常 臨床に普及している.局所麻酔下で透視室内において,リアルタイムに気管支内腔から縦隔リンパ 節を描出し,縦隔の大血管を避けてリンパ節を穿刺する手技である.低侵襲ながらも縦隔鏡に匹敵 する高精度な質的診断法であり,細胞診検体と同時に組織検体も採取可能である.近年肺癌のリンパ 節ステージングやサ症の病理診断において多くの有用性が報告されている.縦隔リンパ節腫大を みとめるサ症でのEBUS︲TBNAの診断率は70-90%と報告され,従来のTBLBに比較し高率であり, 侵襲度や診断率からEBUS︲TBNAが診断アプローチとしてfi rst choiceになりつつある.  EBUS︲TBNAがサ症診断に頻用されることによる新たな課題もある.EBUS︲TBNAを行えば BALやTBLBは省略可能か,細胞診検体のみでも確定診断は可能か,22G針と21G針の診断率の 違いはどうか,などである.  我々の検討ではサ症が疑われた72例のうち52例 (72.2%) でEBUS︲TBNAで組織診断が可能で あった.診断がつかなかった20例のうち7例でTBLBで組織診断が可能であったが,その7例中 すべてEBUS︲TBNAの組織検体採取が不十分な症例であった.EBUS︲TBNAで組織検体が十分に 採取できて診断に耐えうる検体が提出できた場合は,TBLBは場合によっては省略可能なのでは ないだろうか.  以上のような実臨床に沿った疑問点やそれに対する最新のエビデンスについて議論したい.
シンポジウム2
  • 佐伯 敬子, 松井 祥子
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 32
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     IgG4関連疾患は,21世紀に本邦から発信された新しい全身性疾患の概念である.2001年 Hamanoらが,自己免疫性膵炎において血清IgG4の上昇と膵組織へのIgG4陽性形質細胞の浸潤を 報告した.その後,Yamamotoらも,シェーグレン症候群の亜型とされていたミクリッツ病に おいても同様の所見を認めたことを報告し,IgG4に関連する全身性疾患の存在が明らかになった. 2011年には,厚生労働省科学研究補助金難治性疾患克服研究事業の研究班が主体となり,この 一群の疾患を「IgG4関連疾患(IgG4︲related disease)」と命名して,その疾患概念と包括診断 基準を提唱した.また同時期に開催されたボストン国際シンポジウムでも,我が国の研究者が 中心となって,そのコンセンサスの作成に貢献した.  本疾患は,高IgG4血症と共に,全身の諸臓器に腫大や結節,肥厚性病変を認め,組織所見では リンパ球,IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化が生じる疾患と定義されている.罹患臓器は, 涙腺,耳下腺,顎下腺,膵臓,後腹膜,腎臓,前立腺,リンパ節,などが判明しているが,まだ その病因は明らかでない.  一方,近年病因が解明されつつあるサルコイドーシスも全身性疾患であり,肉芽腫性病変は, 肺,眼,心臓,皮膚,神経・筋,肝・脾,腎,リンパ節など全身の臓器に及ぶことが知られている. またその臨床症状はきわめて多彩なことも報告されている.  本シンポジウムでは,眼,顎下腺,呼吸器,腎臓など,サルコイドーシスでも病変が生じやすい 臓器を中心に,IgG4関連疾患の臓器病変の臨床的特徴やその病理所見を各シンポジストに解説して 頂くように企画した.  臓器別に細分化された医療の進歩がめざましい中,サルコイドーシスやIgG4関連疾患などの 全身性疾患の診断や治療には,種々の困難が生じうる.本学会は異なる分野の専門家が集まる 貴重な会であることから,本シンポジウムにおいても,各方面の意見交換により,IgG4関連疾患の 理解がさらに深まることを期待したい.
  • 高比良 雅之
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 33
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     涙腺唾液腺の対称性腫脹をきたすMikulicz病において血清IgG4上昇を伴うことが初めて報 告されたのは2004年(Yamamotoら)である.従って本年は,IgG4関連眼疾患(IgG4︲related ophthalmic disease)の発見からちょうど10年目に当たる.これを機に,IgG4関連眼疾患に関する 従来の知見を整理し,また今後の課題について考えてみたい.我々が初めてIgG4関連涙腺炎の 症例を経験したのは2005年であり,ひき続いて経験したIgG4関連涙腺炎の症例群を報告した. 涙腺の病理では,ときに線維化を伴うが,いわゆる花筵様の形態はとらない,閉塞性静脈炎は みられないなどの特徴がある.その後も眼領域の報告は相次ぎ,病変は三叉神経周囲,外眼筋にも 及ぶ頻度が高く,さらには視神経周囲,血管周囲,眼窩脂肪,強膜,涙道など多岐にわたることが 判明した.しかし,なかには確かに病理の診断基準は満たすが,血清IgG4は正常でかつ他臓器 病変を併発しないような病変もあり,これらはIgG関連疾患の範疇とは考えにくい.2013年に実施 された日本のある多施設調査によれば,約1000例の眼窩リンパ増殖性疾患のおよそ20%がIgG4 関連眼疾患であった.IgG4関連眼疾患の発症年齢の中央値は62歳であり,20歳未満の発症はなく, また発症頻度の男女差は無かった.眼領域に生じるIgG4関連疾患病変では,特にMALTリンパ腫 との鑑別が重要である.先の統計からMALTリンパ腫は全体の40%以上を占め,その少なくとも 10%以上はIgG4染色陽性であると推察される.2012年には,全身の諸臓器にわたるIgG4関連疾患を 包括する診断基準が本邦から報告され,また初回の国際会議(ボストン)では疾患の名称や病理に 関するコンセンサスが得られた.しかしこれらを改めて検証すると,眼領域病変としては妥当で ない点もあり,このほど眼領域に特化した診断基準も検討された.IgG4関連疾患の治療の基本は ステロイド剤の全身投与であるが,長期投与や再発の問題がある.特に症状が眼領域に限られる ような症例では,ステロイドの局所投与や外科的切除などの局所治療など,眼科としての治療 指針も検討されるべきである.
  • 松井 祥子
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 34
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスとIgG4関連疾患が,似ていることに気づいておられる呼吸器科医は多いのでは ないだろうか.  サルコイドーシスはTh1優位の肉芽腫性疾患であり,IgG4関連疾患はTh2優位の炎症性疾患と いうように,病態も病理像ももちろん大きく異なっている.  しかし呼吸器領域からの視点で両者の疾患を見ると,その類似点が目に付く.1)全身性疾患で ある,2)ステロイド反応性が良好,3)臨床症状に乏しい,4)時に病変の自然消褪がみられる, 5)肺門・縦隔リンパ節腫大の頻度が高い,6)胸郭内では気管支血管束に沿った多様な病変を形成 しうる,等々,両者の疾患は,臨床の表現型が似ている.  IgG4関連疾患は,その存在が知られてから,まだ10年余しか経っていないが,厚生労働省難治性 疾患克服研究事業 研究班(梅原班・岡崎班の合同班)によって,IgG4関連疾患の概念とその包括 診断基準(2011)が提唱されて以降,急速に疾患概念が広まった.包括診断基準(2011)には, 全身の病変に対して詳細な解説が付記されているが,基準そのものは全身の諸臓器病変を包括した 内容であるため,各臓器の診断に際して苦慮する場合がある.また診断ツールである血清IgG4が 保険適応になってから,多くの病態でIgG4が測定されたため,「あれもこれもIgG4かもしれない」, という混乱も生じつつある.  そのため,どのような所見があれば「IgG4関連疾患」を疑い検査を進めていけばよいかという, 各臓器の特異性を考慮した臓器別診断基準の要望が高まってきた.実地臨床に即した診断基準の 必要性が議論され,罹患頻度の高い臓器病変を中心に,すでにいくつかの臓器別診断基準も作成 されている.  IgG4関連呼吸器疾患の場合は,臨床像が類似し,症例数の比較的多いサルコイドーシス等との 鑑別が重要と考えられる.  今回のシンポジウムにおいて,IgG4関連疾患の呼吸器病変とその類似疾患について,サルコイ ドーシス学会員の皆様と意見交換できれば幸甚である.
  • 佐伯 敬子
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 35
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスは原因不明の全身性(多臓器)肉芽腫性炎症性疾患であるが,IgG4関連疾患も また原因不明の全身性(多臓器)炎症性疾患である.傷害臓器は両疾患で異なる点も多いが, 腎臓に関してはいずれも間質性腎炎(tubulointerstitial nephritis; TIN)が主病変であり,両者の 鑑別は臨床上重要である.  IgG4関連尿細管間質性腎炎(IgG4︲related TIN; IgG4︲TIN)は中高年男性に好発し,ほとんど の症例がIgG4関連の腎外病変(唾液腺炎,リンパ節炎,後腹膜線維症,自己免疫性膵炎など)を 合併する.全身症状は比較的乏しく,IgG4関連疾患の精査中あるいは偶然に腎機能異常,腎画像 異常で気づかれる.検査では血清IgG,IgG4, IgE高値,低補体血症を高頻度に認める.抗核抗体や RFもしばしば陽性になるが,疾患特異抗体は通常陰性であり,CRP は低値例が多い.腎画像 異常が多いのが他のTINと異なる点であり,造影CTで多発性の腎実質造影不良域を認めやすい. 組織学的には他のIgG4関連病変と同様にリンパ球とIgG4陽性形質細胞の密な浸潤と線維化を認め, 特徴的な花筵様線維化(storiform fi brosis)も認められる.その他,病変部と非病変部の境界が明瞭, 好酸球浸潤,腎被膜を超える炎症所見などもIgG4︲TINを示唆する所見である,一方壊死性血管炎, 肉芽腫病変,好中球浸潤はIgG4︲TINではほとんどみられず,これらの所見の有無は鑑別に有用で ある.治療としてはステロイドが有効で,0.5mg/Kg/日程度のプレドニゾロン内服でほとんどの 症例が治療開始1か月後には腎機能は回復する.しかし腎機能低下が進行した症例では一部の 回復にとどまるため早期発見,早期治療が望ましい.IgG4関連疾患ではステロイド減量に伴い再 燃が多い事が報告されているが,IgG4︲TINもステロイド減量に伴い腎,腎外病変の再燃が約20% にみられる.
  • 能登原 憲司
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 36
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     IgG4関連疾患(IgG4︲RD)の概念成立の過程で病理所見が重要な役割を果たしてきたが,これは 単に免疫染色で多数のIgG4陽性細胞を認めるという理由だけでなく,その組織像がユニークで あることが大きな理由である.自己免疫性膵炎(AIP)には1型,2型と呼ばれる2つの亜型の存在が 知られているが,その解明のきっかけとなったのは免疫染色抜きの組織学的解析であった.なか でも1型AIPにみられる花筵状線維化,閉塞性静脈炎は,2型AIPには認められない重要な所見と 考えられてきた.  花筵状線維化は炎症細胞浸潤と小型紡錘形細胞からなり,花筵状の錯綜配列を示し,さまざまな 程度の線維化を伴う病変である.“線維化”とはいっても,細胞成分に富みコラーゲンの乏しい 病変も含まれる.慢性炎症では線維化巣において細胞成分が乏しいことが殆どであるため,花筵状 線維化は通常の慢性炎症にみられる線維化とは異なる.閉塞性静脈炎は静脈が炎症性に閉塞する 所見で,細静脈に認められる.1型AIPにおいては細静脈にみられる組織像に特徴があり,より 大きな細静脈に起こり,また数が多いために従来から多くの研究者により報告されてきた.花筵状 線維化と閉塞性静脈炎はのちに,IgG4︲RDを特徴づける組織像として膵外のIgG4︲RD臓器病変を 解明していく上で重要な役割を果し,今日ではIgG4︲RDの病理診断の上で重要な所見と認識されて いる.  IgG4︲RDの組織像には臓器間での違いもあり,特に炎症の局在に注目するとそのことが明らかで ある.1型AIPでは膵小葉,膵管,静脈などの炎症に加え,膵境界部で膵実質を取り巻く帯状の 炎症がみられるが,この部分では花筵状線維化や閉塞性静脈炎が顕著である.臓器辺縁に炎症が 強いことはIgG4︲RDの1つの特徴で,傍大動脈炎や腎盂・尿管病変は類似の現象と捉えること が可能である.ところが,頭頸部領域の病変においては臓器辺縁の炎症所見を欠くことが多く, 花筵状線維化や閉塞性静脈炎の出現頻度も低い.なかでも眼科領域の病変は線維化を欠き,リンパ 増殖性病変のような組織像を呈することが多い.腎病変や唾液腺病変の組織像は1型AIPの小葉 病変と類似した像と解釈すれば理解しやすいが,1型AIPにみられるような組織像の多彩性はなく, 一見捉えどころのない組織像のようにみえる.唾液腺においてはリンパ濾胞の形成が目立つことも, 1型AIPとの違いである.  このような組織像の類似性と差異が何故生じるのか,今後の検討が必要である.
  • 中村 誠司
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 37
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     IgG4関連疾患(IgG4︲related disease: IgG4︲RD)は,全身の様々な臓器の腫大や肥厚を生じ, 高IgG4血症と罹患部への著明なIgG4形質細胞浸潤,線維化ならびに閉塞性静脈炎がみられる 特異な疾患群である.従来はMikuliçz病およびKüttner腫瘍と呼ばれていた涙腺・唾液腺病変は この疾患群の代表的なものであり,この疾患概念ではIgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4︲related dacryoadenitis and sialoadenitis: IgG4︲DS)と呼ばれている.IgG4︲DS,特にMikuliçz病は,以前は Sjögren症候群(Sjögrenʼs syndrome: SS)の亜型とも考えられていたが,最近では全く異なる 病態であることが示されている.私は以前からIgG4︲DSとSSの相違点について臨床的,病理組織 学的ならびに免疫学的に検討してきたので,今回のシンポジウムではその研究成果を解説する.  臨床的には,IgG4︲DSとSSは多くの類似点があるものの,IgG4︲DSの腺腫脹は持続性,乾燥 症状は軽度,自己抗体は陰性,血清IgG4濃度は高値,ステロイド反応性は良好であるが,SSの 腺腫脹は反復性,乾燥症状は重度,自己抗体は陽性,血清IgG4濃度は正常値,ステロイド反応性は ほとんどないという相違点があった.画像所見も異なり,特にIgG4︲DSの唾液腺造影像ではSSで 特徴的な点状陰影は全くみられなかった.  病理組織学的には,両疾患ともに腺内に異所性の胚中心(ectopic germinal center: eGC)を伴った リンパ球浸潤がみられるものの,SSでは導管周囲性の浸潤が特徴であるのに対し,IgG4︲DSでは 腺全体にびまん性に浸潤し,eGCの形成が著しいという特徴があった.  免疫学的には,腺内に浸潤するリンパ球を解析すると,SSの初期の病態ではTh1とTh17が, eGCの形成を伴う進展した病態ではTh2と濾胞性Th(Tfh)の浸潤が主体であり,段階的にT細胞 サブセットが変化することが判った.また,浸潤するB細胞にはIgG4陽性細胞はほとんどみられ なかった.一方,IgG4︲DSでは,全ての症例でTh2,制御性T細胞(Treg)ならびにTfhの浸潤が 主体であり,IgG4陽性細胞の浸潤ならびにIgG4の産生はIL︲4とIL︲10の発現と強い相関を示した. さらに,eGCとその周囲ではTh2によるIL︲21の発現が著明であり,IL︲21の発現はIgG4陽性細胞数 ならびにeGC形成数と強い相関を示した.さらに,Th2の浸潤部位にはマクロファージが著明に 浸潤しており,この浸潤マクロファージがTh2を活性化するIL︲33を産生することが判った.この ように,IgG4︲DSではマクロファージを介したTh2の選択的誘導が特異な病態形成に重要な役割を 担っていることが示唆された.  以上のように,2つの疾患の病態は大きく異なり,特に免疫学的には極めて対照的な相違点が 見つかった.SSは自己免疫疾患であるが,一方のIgG4︲DSの病因は自己免疫ではなく,アレルギーや 自然免疫を含めた感染症が関与する可能性がある.
ミニシンポジウム
  • 寺﨑 文生, 矢崎 善一
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 38
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     心臓サルコイドーシス(以下心サ症)の診断はしばしば難しいことがあり,現在,心サ症の 診断の手引きを含めてサ症の診断基準を改訂中である.また,日本循環器学会により,心サ症の 診断ガイドラインが作成中である.  近年,循環器領域にMRIやFDG PETが導入され,本症においても早期診断への有用性が期待 されている.しかしながら,MRIにおいてはT2強調画像の評価が,FDG PETにおいては心筋への 生理的集積の存在が問題となっている.特にFDG PETについては,撮像条件や前処置,陽性所見の 統一などがなされていなかったため,2013年に日本心臓核医学会によって心サ症のPET診断の ガイドラインがまとめられた.心サ症の治療はEBMに基づいた心不全や不整脈治療と免疫抑制 療法に分けられる.本症では高度房室ブロックに対するペースメーカー治療のみならず,心室性 不整脈による突然死予防や重症心不全に対する心室再同期療法などに対する特殊なペースメーカー 治療も積極的に導入されている.免疫抑制療法の主体は現在でもステロイドであるが,ステロイドの 投与量を調節するためのマーカーや画像診断は確立されていない.ステロイド以外の免疫抑制薬と してメトトレキサート(MTX)が使用され,steroid-sparing eff ectが期待される.本症に対する 免疫抑制療法の確固たるエビデンスは確立されておらず,他の免疫抑制薬については症例報告が 散見されるのみである.  今回のミニシンポジウムでは,心サ症のエキスパートにお集まりいただき,画像診断,不整脈, 免疫抑制療法の各領域から最新の知見や新たな考え方についてご講演いただく.
  • 宮川 正男, 横山 らみ, 西山 香子, 望月 輝一
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 39
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     心臓サルコイドーシスの診断ガイドラインは,1992年,平賀らによって作成された.国内外で 高く評価され,英訳されて現在に至るまで世界中で用いられている.2006年の改訂版「心臓サル コイドーシスの診断の手引き」においては,主徴候は,高度房室ブロック,心室中隔基部の菲薄化, ガリウムシンチでの心臓への異常集積,左室収縮不全の4項目とされた.副徴候として,造影MRIに おける心筋の遅延造影所見等の5項目が採用されたが,F︲18 FDG PETにおける心臓への異常集積は 付記として記載されたのみであった.  サルコイドーシスの診断におけるガリウムシンチの有用性は,40年以上前に報告され,これまで 広く活用されてきた.心臓への異常集積が認められれば,診断特異度は高いが,撮影するガンマ カメラのコリメータ特性の問題もあり感度が30︲40%と低いのが欠点だった.一方,FDG PETに ついては,ガリウムシンチに比べて感度が80︲100%と高い点が評価されている.近年のPETおよび PET/CTの急速な普及に伴い,本症診断におけるFDG PETの有用性について最近,世界中で多数の 報告が見られている.  これを受けて2012年4月から,心臓サルコイドーシスにおける炎症部位の診断について,初めて FDG PETに対して保険償還が認められた.比較的稀な疾患であるため国内では多施設共同臨床 試験による検討がなされていないが,診断能向上への貢献についてはほとんど異論がない.心臓 への生理的なFDGの集積のため,診断特異度が低いことに問題があるといわれてきたが,長時間 絶食や低炭水化物食などを含む適切な検査前処置によってかなり改善することが判明してきた. FDG PETによる心臓サルコイドーシスの診断が,今後広く普及することを想定して,日本心臓核 医学会において本年,その偽陽性を防ぐための前処置法や画像診断の注意点をまとめた手引きが 作成された.本講演の中で紹介して,FDG PETの心臓サルコイドーシス診断における有用性と 限界について述べたい.
  • 草野 研吾
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 40
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     サルコイドーシスは,全身性の肉芽腫性疾患であり侵される臓器は多岐に渡るが,古くから 心病変合併の有無が生命予後を規定する最も重要な因子であるとされている.同程度の心機能低下 でも拡張型心筋症よりも圧倒的に心サルコイドーシスの予後が不良であることは,心サルコイドー シスでは,高度房室ブロック,心室頻拍などの重症致死性不整脈の合併が重要であることを示唆 する.房室ブロックに対してはペースメーカが選択されるが,心室頻拍に対しては,選択される 内科的治療として,植込み型除細動器(ICD),抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,心機能 低下例では除細動機能付きペースメーカ(CRTD)の4つが選択される.除細動器(ICD/CRTD)を 植え込んだ拡張型心筋症との比較を行った検討では,拡張型心筋症に比べ,心サルコイドーシス では再発が多く,また除細動作動回数も圧倒的に多いことがわかり,突然死予防としての除細動器 埋込み術は重要であるが,作動回数の減少やQOL上昇を図るためにはのみでは不十分であることが 伺えた.従って,除細動器を植え込んだ上で抗不整脈薬やカテーテルアブレーションなどの追加 治療が重要であると考えられる.しかしアブレーションの問題点として,心サルコイドーシスに 合併した心室頻拍に対するアブレーションの長期成績をみた近年の報告では,やはり他の疾患に 比べ圧倒的に再発が多い.原因として,進行性の病気であること,アプローチしにくい外膜側に 心室頻拍のリエントリー回路があることが多いこと,多発性で左室だけでなく右室にも病変がある ことが多いことなどがあげられる.  今回のシンポジウムでは,近年のデバイス,アブレーション治療の進歩を紹介し,心サルコイドー シスに合併した不整脈への最新のアプローチをご紹介する.
  • 井手 友美, 肥後 太基, 日浅 謙一, 大井 啓司, 坂本 一郎, 向井 靖, 砂川 賢二
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 41
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     心サルコイドーシスは,時としてその診断が困難であることに加え,ステロイドによる副作用の 出現,ステロイド単独では炎症コントロールが困難な例も存在する.  当院では,2010年以降,九州大学病院ハートセンターで心サルコイドーシスと診断され,プレ ドニンによる加療のみでは不十分と判断した5名に対して,免疫抑制剤の併用を行った.5例のうち 2名は,メトトレキセートの併用によって炎症の沈静化を得ることができたが,3名はメトトレキ セートをアザチオプリンに変更した.これら3名のうち2名は,メトトレキセートでは十分な炎症 コントロールが得られなかったこと,1名はメトトレキセート服用によると思われる気分不良と 倦怠感の増悪により薬剤変更を行った.アザチオプリンによる加療を行った1例は,治療の経過中に 著しい炎症が2年あまり断続的に持続した結果,診断当時左室駆出率50%であったが,20%まで 低下し,急激な炎症とその後の繊維化のため左室の拡大が得られず,心不全治療に難渋している.  免疫抑制剤の使用については,いまだ試行錯誤ではあるが,併用開始の時期に関する指針および プレドニンによる治療抵抗性であるかの予測が必要であると考えている.
特別報告
  • 山﨑 理
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 42
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     平成26年5月30日公布・同27年1月1日施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」は, 難病患者の「良質かつ適切な医療の確保」及び「療養生活の質の維持向上」を目的とし,基本 方針の策定,公平かつ安定的な医療費助成制度の確立,調査研究の推進,療養生活環境整備事業 (難病相談支援センター等)の実施等が規定されている.  法律に基づき国が定める「基本方針」においては,難病の患者に対する医療等の推進の基本的な 方向や,医療を提供する体制の確保,医療に関する人材の養成,患者の療養生活の環境整備,福祉 サービスや就労の支援等関連施策との連携などが盛り込まれることとなっており,各種施策の 更なる充実が期待される.  また,法定化された医療費助成の費用に消費税の収入を充てることができるようになり,制度の 安定が図られている.対象疾病数も,従来の特定疾患治療研究事業の56から約300の「指定難病」 へと大幅に拡大され,うち既存疾病と一部の新規疾病に対して平成27年1月より先行的に適用 される.「指定難病」患者の認定は,専門的な知見を有する医師として指定される「難病指定医」 が作成する診断書に基づき,都道府県が行う.  概観すると,難病対策はこれまで「施策の谷間」であった.全国的には,昭和47年の「難病対策 要綱」の策定以来約40年にわたり予算事業として行われてきた特定疾患治療研究事業が,医療費 助成対象となる疾病が限られ患者の間に不公平感があることや,医療費助成等における都道府県の 超過負担が続いていること等,様々な課題が指摘されてきたところであり,このたび,法律に 基づく制度として,措置が講じられることとなった意義は大きい.  一方,公衆衛生としての保健医療行政施策は,どうしても疾病頻度の高いものが優先されやすい 傾向にある.しかし,難病患者本人及び家族が多大な苦しみを持ちながら,長期間の療養生活を 送っている状況にある中,本県においては,たとえ疾病頻度としては小さいものであっても,より 力を入れ,こうした方々を支援する必要があるとの考え方に立ち,全国に先駆け,様々な取組を 県独自に行ってきた経緯がある.  法律の基本理念には,「難病の患者の社会参加の機会が確保され,地域社会において尊厳を保持 しつつ他の人々と共生することを妨げられないこと」と謳われており,その実現に向け,まずは 当面の制度改正を円滑に乗り切ることが求められる.  抄録作成段階(8月)においては,国の指定難病検討委員会で「指定難病」の選定とその診断 基準等が議論されている段階であり,制度の運用等の詳細は示されていない状況である.平成27年 1月の新制度の施行まで準備期間が限られる中,患者や医療機関への周知,「難病指定医」の確保等, 様々な側面から,関係各位の御理解・御協力をよろしくお願い申し上げたい.
  • 四十坊 典晴, 山口 哲生
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 43
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     平成24年より日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会の診断基準改定委員会を中心に改訂に 向けて取り組んできた.“サルコイドーシスは同時性あるいは異時性に全身の諸臓器(多臓器性)に 乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認める原因不明の疾患であり,Tヘルパー1反応の亢進が 存在する”と定義し,新しい診断基準では①各臓器の診断の手引きの問題点と包括診断基準としての 意義について,②全身反応を示す検査項目について,再検討し,また,サルコイドーシスに重症度 分類を導入することとした.  サルコイドーシスの臓器病変として強く疑う所見を再検討し,心臓,眼病変,呼吸器系病変の 3つとし,呼吸器系病変の強く疑える所見として,両側肺門リンパ節腫脹(BHL)とリンパ路に 沿った肺病変とした.また,肺病変に関しては,“画像上典型的ではない肺病変,気管支病変,胸膜 病変では組織学的に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の証明があった場合にサルコイドー シスを強く示唆する臨床所見とする” 注釈を加えた.  その他の臓器に関しては“その他の臓器病変とサルコイドーシスの関連病態に伴うその他の臓器 病変”として15項目に分けて記載した.15項目に関しては,各臓器の診断の手引きとはせず,組織学 的に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めた場合にその当該臓器を,サルコイドーシスを 強く示唆する臓器病変として扱えるようにした.  組織採取が困難な臓器病変に関して,他の臓器において組織診断させていない場合の取り扱いに 関しては今後の課題である.  また,複数臓器病変を診断時に必要としたことに関して,同時期に複数の病変が出現する場合は 診断に問題はないが,診断から10年以内に新たに臓器病変が出現する可能性があり,2つ以上の 臓器に臨床症状が現れるのがかなり遅れて出現する場合(異時性)がある.診断基準は異時性に 臓器病変を出現する可能性も考慮できるものとした.  全身反応を示す検査項目に関しては,組織学的に診断されたサルコイドーシス症例を用い, Tヘルパー1反応の亢進の関連する検査所見の中で陽性率の高い項目の抽出をおこなった.また, 成人における結核の既感染率が著しく低下している現在の本邦において,ツベルクリン陰性の 意義を検討した.また,心サルコイドーシスに関して,保険適応があるFDG︲PETもガリウムシン チグラフィーと併記し,心サルコイドーシスの診断の可能性が拡がるようにした.  全身性疾患であるサルコイドーシスの重症度分類に関しては臓器病変数,治療の必要性の有無, サルコイドーシスに関連した各種臓器の身体障害の認定の程度をスコアー化して行うこととした.  詳細に関しては当日,新しいサルコイドーシスの診断基準と重症度分類として報告する.
ランチョンセミナー
  • 谷口 正実
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 44
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【概念,発症要因,臨床症状】EGPAの臓器病変は,強い上下気道の好酸球性炎症(好酸球性鼻茸と 重症喘息±好酸球性細気管支・肺炎)が基本にあり,さらに全身の好酸球性炎症と小血管炎に伴う 全身所臓器の虚血性変化が加わる.発症要因として,アレルゲン免疫療法やワクチン接種,抗ロイ コトリエン薬が疑われているが明らかな証拠はない.最近では,女性や(男女比は1:2に),高齢 者の発症が増えている印象がある.臨床症状では,先行する喘息が90%以上で認め,血管炎発症 時の多発性単神経炎をほとんどの例で認めるのが特徴である.心障害,副鼻腔・肺病変,消化管 障害,皮膚病変も軽度のものを含めると2/3に認める.気道症状は重症喘息と好酸球性細気管支肺炎, 鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎・中耳炎が多い.アトピー素因は強くなく,典型的なアレルギー性 鼻炎も多くない.腎障害は20%以下で軽微な例が多い. 【先行喘息の特徴】喘息は思春期以降発症が主であり,血管炎発症前から重症で好酸球増多が 目立つ.アトピー素因は半数以下にしか認めず,かつ強いアトピー体質はない.重症度をマッチ させた非EGPA喘息例と比較すると,平均総IgE値は同等(300台)であるが,特異的IgE陽性率や アレルゲン皮膚テスト陽性率は低い(38% vs 80%).血管炎発症前の気道過敏性は,喘息が重症 にもかかわらずむしろ軽微で,発症後にはEGPAが寛解状態下でもβ刺激薬吸入後の1秒量が低値 (持続的気流閉塞)を呈しやすい.EGPA発症後は,血管炎再燃の指標として末梢血だけでなく 喀痰の好酸球増多が有用とする報告がある. 【ANCAの意義】近年の海外報告や自験成績では,ANCA陽性率は高くない(30︲37%).ANCA 陽性例ではMPA様の病態,すなわち腎障害が有意に多く,陰性例では心障害が多い. 【予後】劇症型は数%以下であるが,治療抵抗性で極めて予後不良である.心障害は強い予後不良 因子であり,高齢発症も予後不良である.末梢神経障害は,従来療法に抵抗性で患者QOLを大きく 損なう.5年生存率は90%程度であるが,10年以降の生存率は70%以下で良好ではなく,治療薬に よる感染などが影響している. 【治療】基本治療はステロイドが必須で,中等症以上でIVCY併用とされているが,軽症でも IVCYを併用すると安定化しやすい.残存する心障害,神経障害にはγgl大量療法(IVIG)が 奏効しやすい.IVIGにはステロイド減量効果(半分量に減量可能か?)もあり,3番目の治療法 として推奨できる.最近では,抗IL5抗体の著効成績,さらにOmalizumab(抗IgE),rituximubの 奏効例が報告されており,近い将来,これら生物学的製剤の併用が,EGPAの予後をさらに改善 する可能性がある. 〔共催:帝人ファーマ株式会社〕
  • 渡辺 彰
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 45
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     わが国では,結核患者の順調な減少に反比例する形で非結核性抗酸菌症(以下,NTM症)患者が 増加している.しかも,従来みられた男性に多くて予後不良,かつ上葉優位で結核後遺症の形を 取ることの多い線維空洞型(FC型)よりは,先行病変に乏しく緩徐に進行し,かつ中高年女性の 中葉・舌区に多い結節・気管支拡張型(NB型)が増加している.原因菌の分布は各国間で微妙に 異なっており,わが国ではM.aviumとM.intracellulare(一括してM.avium complex;MAC)が NTM症の7〜8割を占め,次いで1割前後をM.kansasiiが占めている.M.kansasii症の治療は結核の 治療に準じて行って反応性は良好であるものの,NB型に多いMAC症では,診断も治療も困難な ことが多い.特に治療面では,同じ薬剤を投与しても,排菌がすぐ停止して順調な経過を辿る例 から治療が全く奏効せずに急速に進行して不幸な転帰をとる例まで様々であり,事前に治療反応 性や予後を見極めることは困難である.  わが国のNTM症の診断基準と治療基準は変遷を重ねてきた.診断基準は現在,2008年の日本 結核病学会のものが用いられているが,これは2007年のATS/IDSAの診断基準を受けて改訂された ものである.わが国では以前,contaminationやcolonisationを排除して診断を確実に行うために 診断基準を厳密にしていたが,一方で軽症例が見逃されやすくなっていた.これに対し現行の診断 基準は,確実な治療を行うために軽症例を極力拾い上げようとするものと言える.しかし,これに 伴って問題も発生している.診断基準から「臨床症状あり」の一項が外されたため,治療を開始 する時期の決定が難しくなったのである.診断確定=治療開始ではなく,治療をいつ開始するか? に ついては担当医の臨床判断に委ねられることになり,現場には困惑がある.  もう一つ,別の問題も起こっている.この10年来,関節リウマチや炎症性腸疾患,乾癬,その 他の免疫性炎症性疾患に対する治療薬としてTNF阻害薬を中心とする生物学的製剤がわが国にも 導入され,結核と共にNTM症の合併が目立つようになったのである.結核に関しては,生物学的 製剤投与前のスクリーニングと有所見例への抗結核薬予防投与で合併が抑えられるようになったが, NTMに関しては日本リウマチ学会が,有効な薬剤が乏しい等の理由でNTM菌検出例に対する TNF阻害薬の投与を原則禁忌としたこともあり,現場での困惑は大きい.これについては今春, 日本呼吸器学会が「生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き」を発行し,一定の条件を満たす 例では生物学的製剤の投与が可能である,と提案している.  セミナーでは,研究グループの菊地が開発したM.avium菌株のVNTR解析による治療反応性の 予測法を紹介するとともに,生物学的製剤使用時のNTM症への対応の在り方についても紹介する. 〔共催:第一三共株式会社〕
モーニングセミナー
  • 新海 正晴
    2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 46
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
     マクロライド系抗菌薬は,比較的有害事象が少なく,抗菌スペクトルも広い抗菌薬として広く 知られている.特にマイコプラズマ・クラミジア感染症においては第一選択薬であり,非結核性 抗酸菌症においてもキードラッグである.最初に実用化されたのは,エリスロマイシンで,フィリ ピンの土壌から分離された放線菌の一種,Saccharopolyspora erythraea から精製された.その後, 1990年代にクラリスロマイシン(CAM),ロキスロマイシン,アジスロマイシン(AZM)が紹介 された.  免疫調整作用は,免疫抑制をもたらさず,過剰免疫・過剰炎症を正常化すると定義される.マクロ ライド系抗菌薬は,抗菌作用のみならず,少量長期投与することにより抗炎症・免疫調整作用を 持つことが知られているが,その歴史は1960年代に重症喘息の治療に使用され,”steroid︲sparing”と 呼ばれた.その後,工藤先生によりマクロライド少量長期療法が紹介され,びまん性汎細気管支炎の 生存率が29%から88%に改善し,病態の類似性からCystic fi brosis (CF),気管支拡張症,閉塞性 細気管支炎,COPD増悪・ウイルス感染の予防などに応用された.In vivoでは,気腫化抑制や 線維化抑制作用なども報告されている.日本における多くの研究の結果,保医発0928号第1号 平成23年9月28日において,原則として,「クラリスロマイシン【内服薬】」を 「好中球性炎症性気道 疾患」に対して処方した場合, 当該使用事例を審査上認めると通知された.  欧米においても1998年のRoyal Brompton病院にてCFに対するマクロライド維持療法の報告が なされた.その後いくつかの臨床研究においてCF肺病変におけるマクロライド維持療法は,AZMが 主体となっている.AZMは,緑膿菌の感染にかかわらず肺病変の増悪を抑制し,緑膿菌が感染した CF患者の呼吸機能を改善させる.本作用はAZMの抗菌作用によるとの意見もあるが,筆者は, 前述の大規模なエビデンスは抗菌作用だけでは説明が困難と考えており,免疫調整作用も一部関与 していると考えている.共著者であるCAMの国際共同無作為二重盲検交差研究をとおして,今後, CF肺病変のマクロライド維持療法の有用性をより明らかにするにあたっては,研究期間・患者背景 (関与遺伝子,肺病変の病期)・介入時期などに考慮する必要があると考えている.その後,欧米に おいても,COPD増悪抑制,気管支拡張症増悪抑制,非好酸球性重症喘息などに対するマクロライド 維持療法を支持する大規模臨床研究が報告されている.  マクロライド系抗菌薬の抗炎症・免疫調整作用のメカニズムは,菌体毒素産生抑制などの菌に 対する作用,気道炎症抑制作用などの宿主に対する作用などが報告されている.我々もその一端が 転写の上流にあるERKのリン酸化抑制から開始するcell signaling modulationの可能性を示した. また,CAMは,NHBE細胞においてERKを抑制し細胞周期S期への移行を遅延させ細胞増殖に影響を 与え細胞保護作用をもたらしている可能性も示した.同様に,CAMはERKのリン酸化等を抑制し 喀痰制御も可能とする.呼吸器臨床の現場において,キードラッグと考えられるステロイドは免疫 抑制作用があり喀痰制御作用が弱く,しばしば感染症が問題になる.一方,マクロライド系抗菌薬は, 前述のように,免疫抑制作用を認めず免疫調整および喀痰制御作用を有し,臨床現場で使用しやすい.  以上より今後も欧米・日本において呼吸器疾患に対するマクロライド維持療法の活躍が期待される. 〔共催:大正富山医薬品株式会社〕
YIA選考演題
一般演題(口演)
一般演題(ポスター)
feedback
Top