日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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35 巻, 1 号
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
グラニュローマ
論壇
  • 四十坊 典晴, 山口 哲生
    2015 年 35 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは同時性あるいは異時性に全身の諸臓器(多臓器性)に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認める原因不明の疾患であり,その臨床経過はいずれの臓器病変においても自然軽快,増悪があり,多様である.2015年1月から新たに難病法が施行され,指定難病であるサルコイドーシスの診断基準が刷新された.サルコイドーシスの診断は従来どおり,組織診断群と臨床診断群に分け診断基準に則って診断することとした.また,厚生労働省による難病対策の改革に向けた取り組みにより,指定難病では重症度分類を加味した認定基準が義務付けられたため,新たなサルコイドーシスの重症度分類を作成した.
総説
  • 半田 知宏
    2015 年 35 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    受賞の契機となった研究を,3点に絞って紹介する.1)共刺激分子の遺伝子多型に関する研究: T細胞の活性化に関与する共刺激分子(CD80,CD86, CTLA-4)の一塩基多型(SNPs)について関連分析を行い,これらのSNPsがサルコイドーシスの発症には関与しない一方,CTLA-4のSNPsが気管支肺胞洗浄液のプロファイルに関連する事を示した.2)肺高血圧症に関する研究:心臓超音波で評価した結果,サルコイドーシスの5.7%の症例で肺高血圧症が認められ,全肺気量の低下と関連した.また,血清NT-proBNPがサルコイドーシスの心臓病変の検出において有用性が高い一方で,肺高血圧症の診断精度は低いことを示した.3)気流制限に関する研究:サルコイドーシスの8.8%の症例で気流制限が認められること,高齢,喫煙,stageⅣなどが気流制限の危険因子であることを示した.また,サルコイドーシスの気管支壁面積の測定と肺野のヒストグラム解析を行い,これらの指標が肺機能と相関することを示した.これらの研究を通じて,サルコイドーシスの病態における共刺激分子の関与,臨床管理上問題となる併存症の疫学や病態を明らかにした.
  • 澤幡 美千瑠, 杉山 幸比古
    2015 年 35 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは,未知の抗原に対する増幅され持続するTh1型肉芽腫反応と理解されているが,適切な動物モデルはなく,未だ病態・病因・発病要因は十分に解明されていない.当科で経験した連続症例588例の臨床像とその時代的変遷を検討したところ,若年群では胸郭内外のリンパ節病変がより多くみられる一方で,高齢群では,高Ca血症とともに多様な非リンパ系の胸郭外病変がみられた.胸部X線写真病期では,20歳代では男女ともに肺門部リンパ節腫脹がほぼ必発であったのに対し,この頻度は加齢に伴い一貫して減少した.診断時年齢分布は高齢化し,若年成人における発病を示す第一ピークが低下する一方で,閉経後女性にみられる第二ピークは一貫して保たれていた.臨床像の年齢による相違は,経気道的に侵入した原因抗原が胸郭内の所属リンパ節を介してリンパ脈管系をめぐる経路とともに,加齢に伴い変化する免疫制御機構を反映している可能性がある.多様な微生物への曝露,卵巣機能不全,ビタミンD欠乏等の中から発病に寄与する環境要因を明らかにし,予防・治療戦略を構築していく必要がある.
  • 北村 淳史, 滝口 裕一, 巽 浩一郎
    2015 年 35 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    肺サルコイドーシスの病理学的診断には,transbronchial lung biopsy(TBLB)による確定診断とbronchoalveolar lavage(BAL) による活動性診断などが従来行われてきた. 近年endobronchial ultrasonography guided transbronchial needle aspiration(EBUS-TBNA)が開発され日常臨床に普及している.局所麻酔下でリアルタイムに気管支内腔から縦隔リンパ節を描出し穿刺する手技である.細胞診検体と同時に組織検体も採取可能であり,肺癌のリンパ節ステージングやサルコイドーシスの病理診断において多くの有用性が報告されている.縦隔リンパ節腫大をみとめるサルコイドーシスでのEBUS-TBNAの診断率は70-90%と報告され,従来のTBLBに比較し高率であり,侵襲度や診断率からEBUS-TBNAが診断アプローチとして第一選択になりつつある.しし,EBUS-TBNAがサルコイドーシス診断に頻用されることによる新たな課題もある.EBUS-TBNAを行えばBALやTBLBは省略可能か,細胞診検体のみでも確定診断は可能かなどである.以上のような実臨床に沿った疑問点やそれに対する最新のエビデンスについて概説する.
  • PET検査の標準化について
    宮川 正男, 横山 らみ, 西山 香子, 望月 輝一
    2015 年 35 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    昨年,心臓サルコイドーシスによる不整脈の診断と治療についての合意声明が不整脈学会誌(Heart Rhythm)に発表された.画像診断基準として,従来の“ガリウムシンチでの心臓への集積”に加えて高度の画像診断法とされる“心臓PETにおける斑状の取り込み”および“心臓MRIにおけるガドリニウム遅延造影”が採用された.FDG PETについては,これまで本症に対する診断特異度の低さが問題とされてきたが,前処置として①少なくとも検査前12時間以上(可能であれば18時間以上)の絶食,②検査前日の5 g以下の低炭水化物食,③ヘパリン50単位/kg静注,④高脂肪食を組み合わせることにより特異度が上昇することが判明してきた.
  • 生物学的製剤への対応を含めて
    渡辺 彰, 菊地 利明
    2015 年 35 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    結核の減少を補うように非結核性抗酸菌症の患者数が増えている.非結核性抗酸菌は環境寄生菌であり,吸入曝露により慢性の呼吸器感染症を発症する.わが国の肺非結核性抗酸菌症の8割以上は肺MAC(Mycobacterium avium complex)症であり,線維空洞型と小結節・気管支拡張型の二つの病型があるが,後者が最近増えている.肺MAC症の薬物療法は,クラリスロマイシンをキードラッグとする多剤併用療法であるが,治癒は確実ではなく,排菌が停止しない若年例では,排菌源の主病巣の外科的切除も考慮される.近年進歩している生物学的製剤は,リウマチその他の免疫性炎症性疾患患者において劇的な改善を示す反面,抗酸菌症を含む感染症を併発させやすい.これまで,非結核性抗酸菌症患者への同製剤投与は禁忌とする考え方が強かったが,日本呼吸器学会の「生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き」では,一定の条件下での肺MAC症患者への同製剤投与には適応があるとした.
解説
  • 松井 祥子
    2015 年 35 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    IgG4疾患は,高IgG4血症と共に,全身の諸臓器に腫大や結節,肥厚性病変を認め,組織所見ではリンパ球,IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化が生じる疾患と定義されている.涙腺,唾液腺,膵臓,後腹膜,腎臓,前立腺,リンパ節,などに病変を認めることが多いが,まだその病因は明らかでない.一方,サルコイドーシスの肉芽腫性病変も,肺,眼,心臓,皮膚,神経・筋,肝・脾,腎,リンパ節など全身の臓器に及ぶことが知られている.両疾患は,その病理所見や病態が全く異なるものの,肺門・縦隔リンパ節腫大を認め,ステロイド反応性が良好,時に病変の自然消褪がある,などの臨床的特徴に類似点が見られる.サルコイドーシスの病因が解明されつつあるように,本疾患においても,病因や病態の解明が望まれる
  • 佐伯 敬子
    2015 年 35 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    IgG4関連疾患の腎病変の代表はサルコイドーシスと同様,間質性腎炎である.全身症状に乏しく,腎外病変の精査中,あるいは偶然に腎機能低下で発見されやすい点も類似する.IgG4関連腎臓病は中高年男性に好発し,血清IgG,IgG4, IgE高値,低補体血症を高頻度に認める.抗核抗体やリウマトイド因子もしばしば陽性となるが,疾患特異抗体は陰性でCRPは低値である.腎画像異常を認めやすく,造影CTでの多発性腎実質造影不良域が代表的病変だが,単発性腫瘤を示すこともある.診断には組織所見が重要で,IgG4関連間質性腎炎はリンパ球とIgG4陽性形質細胞の密な浸潤と花筵様線維化で特徴づけられ,腎サルコイドーシスのような肉芽腫性病変はみられない.多くの症例で中等量ステロイド内服により腎機能はすみやかに回復するが,治療前に腎機能低下が進行している症例では回復は部分的なため,早期発見,早期治療が望ましい.
  • 免疫学的異常を中心に
    森山 雅文, 中村 誠司
    2015 年 35 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)は,全身の諸臓器にIgG4陽性形質細胞の浸潤と高IgG4血症がみられる特異な疾患である.近年になって提唱された疾患概念ということもあり,その病態や発症機序については未だに不明な点が多い.本稿ではIgG4-RDの唾液腺病変における病態生理について解説する.
  • 高比良 雅之
    2015 年 35 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    IgG4関連Mikulicz病の初めての報告から10年を経て,IgG4関連眼疾患の知見を概観し,今後の課題を検討した.サルコイドーシスはIgG4関連眼疾患の除外診断のひとつである.眼サルコイドーシスの主病変は眼内が多く,この点でも両者の臨床像は異なる.IgG4関連眼疾患の病変は,涙腺,三叉神経周囲,外眼筋に多く,他にも視神経周囲,強膜,涙道など多岐にわたる.IgG4関連眼疾患での重要な鑑別疾患はMALTリンパ腫であり,両者はときに合併する.近年の日本でのある多施設調査(1,014例)では,眼窩リンパ増殖性疾患の22%はIgG4関連眼疾患であった.本疾患の治療の基本はステロイド剤の全身投与であるが,長期投与や再発の問題があり,眼科ではステロイド局所注射や涙腺摘出なども治療の選択肢となる.眼領域では,視神経の障害により視力,視野障害をきたし,失明に至るものも存在するので注意が必要である.
  • サルコイドーシス眼病変
    石原 麻美
    2015 年 35 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスはぶどう膜炎の原因疾患として最も多く,とくに高齢女性患者が多い.サルコイドーシスに特徴的な眼所見が複数あれば本症を疑うが,特異的な所見は存在しないため,結核など他の原因のぶどう膜炎や,眼内悪性リンパ腫との鑑別が難しい症例がある.治療の基本は局所治療(点眼,眼周囲注射)であるが,重篤な後眼部病変には全身治療(副腎皮質ステロイド内服)が必要な場合がある.薬物ではコントロールできない炎症や眼合併症に対して,最近では硝子体手術を選択する症例が増えており,消炎や視力向上が期待できる.本症は長い経過の中で寛解と再燃を繰り返すうちに,様々な眼合併症をきたし,quality of vision(QOV)やquality of life(QOL)を低下させる.自覚症状がなくても軽微な炎症が続いている可能性は常にあり,長期にわたる定期的な眼科受診が必要である.
  • 水野 可魚
    2015 年 35 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスの皮膚病変の臨床像は結節型,局面型,皮下型,びまん浸潤型の4大病型,および,その他の病型に分 類され,同一疾患とは思えないほど多彩である.そのため,皮疹を見逃さないように各病型の特徴を理解して診察にあた る必要がある.今回,皮膚病変の様々な臨床像を示し,皮膚病変を診察する上での注意点について述べる.
原著
  • 手技,診断成績を中心に
    水守 康之, 勝田 倫子, 中原 保治, 福田 泰, 大西 康貴, 加藤 智浩, 白石 幸子, 花岡 健司, 鏡 亮吾, 三宅 剛平, 横井 ...
    2015 年 35 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2016/02/08
    ジャーナル フリー
    近年,サルコイドーシス組織診断におけるEndobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration(EBUSTBNA) の有用性が報告されている.当院においても臨床的にサルコイドーシスが疑われる症例で穿刺可能な縦隔リンパ節 病変がある場合はEBUS-TBNAを検査の第1選択としている.当院におけるEBUS-TBNAの手技および成績について報告 する.対象は2012年4月~ 2014年12月に当院でサルコイドーシスと組織診断された57例のうち,縦隔・肺門リンパ節に対 してEBUS-TBNAが施行された42例.穿刺操作は介助者が行い,吸引ストローク時には穿刺方向をわずかに変化させなが ら穿刺した.穿刺針は40例で21G,2例で22Gを用いた.EBUS-TBNAによる組織学的診断感度は92.9%(39/42)と良好 であった.全例で組織検体を提出したが,診断がえられなかった3例のうち1例は不適切検体,残る2例はリンパ節組織が 採取されていたが,サルコイドーシスに特徴的な病理所見を認めなかった.EBUS-TBNAに伴う合併症は認めなかった. EBUS-TBNAによる病理組織診はサルコイドーシス診断に有用と考えられた.
症例報告
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