日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
41 巻 , 2 号
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第41回学術大会 特別講演
  • - 和温療法の効果とその作用機序 -
    宮田 昌明
    2016 年 41 巻 2 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    和温療法は、60℃の乾式遠赤外線サウナを用いたサウナ浴を15分間施行した後、出浴直後に毛布による30分間の安静保温を追加する温熱療法である。深部体温を1℃上昇させる温熱刺激を治療に応用した和温療法の心不全、閉塞性動脈硬化症(ASO)、生活習慣病への効果とその作用機序について概説する。  和温療法の心不全に対する急性効果は、体温上昇に伴う末梢血管拡張作用により心臓に対する前・後負荷が軽減し、心拍出量が増加することによりもたらされる。慢性効果として、心・血管内皮機能や心不全症状の改善、心拡大や心室性不整脈や神経体液性因子、酸化ストレスの有意な減少、さらに自律神経の是正が認められる。後ろ向き研究であるが5年間の経過を検討し、和温療法は心不全死あるいは再入院を有意に抑制し、心不全患者の予後を改善することが示された。  我々は、動物実験により、和温療法が血管内皮における一酸化窒素合成酵素の発現を亢進させることを明らかにした。このことは、和温療法による慢性効果発現の重要な機序の一つが血管内皮機能の改善であることを示唆する。  ASOに対する和温療法の効果を検討するために、Fontaine分類I〜IV度のASO患者に、和温療法を10週間施行し、その結果visual analogue scaleで評価した下肢疼痛は有意な改善を認めた。歩行距離とABI(ankle brachial index)は有意に増加し、サーモグラフィーによる体表温度とレーザードプラ血流計による下肢血流量は有意に上昇した。さらに、下肢血管造影でも閉塞部位周囲での血管密度の増加を認め、皮膚潰瘍を有する症例では、潰瘍が縮小・治癒した。  また、生活習慣病を有する男性患者に対して和温療法を2週間施行し、血管内皮機能を改善させることを報告した。さらに、生活習慣病患者に和温療法を2週間施行し、生活習慣病患者の酸化ストレスを低下させることも明らかにした。
  • - 周波数の違いによる臨床の実際 -
    宮本 俊和
    2016 年 41 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    低周波鍼通電療法は、スポーツ分野で広く応用されている。鍼治療は、スポーツ動作の繰り返しによって生じる慢性のスポーツ障害の治療、スポーツ外傷・障害の予防、コンディションの維持など薬物療法より適応範囲が広い。  低周波鍼通電療法は、1970年代に鍼麻酔法として中国で紹介され、それ以降、諸外国で鍼鎮痛のメカニズムが研究されるようになった。また、骨格筋に対する研究では、一過性の筋疲労による筋力や筋持久力の低下を早期に回復することが報告されている。動物実験では、①筋損傷の修復を早める、②筋萎縮の進行を抑制する、③浮腫を抑制する効果があるなど、組織学的にも検証されつつある。スポーツ外傷・障害に対しては、大学スポーツ選手の外傷・障害の効果、腰痛に対する効果、肉離れに対する効果などが報告されている。このように低周波鍼通電はスポーツ分野で広く用いられている。  私たちは、スポーツ外傷・障害の低周波鍼通電療法を行なう際に、周波数を以下の3つに分類して治療を行っている。 (1) 1〜3 Hzは、筋肉が単収縮する周波数で筋の緊張緩和や神経痛などに用いる。また、疼痛閾値の上昇、免疫機能を高めるためには、合谷穴—孔最穴、足三里穴—三陰交穴など手指や足趾が収縮するような刺激をする。電流量は筋肉が収縮する程度の強さとする。通電時間は、通常15分程度とするが、鍼麻酔などによる全身の痛覚閾値の上昇を期待する場合は30分行う。 (2) 30〜60 Hzは、筋肉が強縮する周波数で筋疲労の軽減や腱炎などに用いる。アキレス腱炎や筋腱移行部に起こった肉離れなどで用いる。間欠的な刺激をする場合が多い。電流量は刺激した筋肉または腱が強縮する強さとする。持続的刺激以外に間欠的な通電刺激を行うことが多い。通電時間は15分程度とする。 (3) 100〜120 Hzは、筋収縮は起こらないが通電局所に刺激を感じる周波数である。関節部の痛みなどの局所鎮痛や腫脹の軽減などに用いる。電流量は、刺鍼部に刺激を感じる程度とする。持続的刺激以外に間欠的な通電刺激を行うことが多い。通電時間は15分程度とする。  本稿では、スポーツ外傷・障害の治療法を紹介するとともに、運動後の免疫力低下に及ぼす効果について紹介する。
教育講演
  • 藤井 亮輔
    2016 年 41 巻 2 号 p. 17-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    明治期の富岡兵吉に始まるわが国の病院マッサージ師は一貫して数を増やしたが、マッサージ診療報酬の引き下げ(1981年)で潮目が変わり、直近の統計でピーク期(1990年、7,040人)の4分の1を割り込んだ。EBM隆盛の医療界で医療マッサージの消滅を免れるには関連のエビデンスの構築が欠かせない。本稿は、その研究推進策の基調として昨年度の学術大会で企画された表題の講演に筆を加えたものである。  エビデンスは治療法等の有効性・安全性を示す客観的証拠とされ、その質は臨床研究のデザイン、すなわち、症例報告、ケースシリーズ、症例対照研究、コホート研究、ランダム化比較試験(RCT)、メタアナリシスの順で高くなるとされる。中でも、ランダム化された2群間の効果の有無を統計学的に比較するRCTは有効性の証明に威力を発揮する。  1980年代、優れた研究デザインの開発や医学情報の電子データベース化が進む中、「治療法を選ぶ際の根拠は正しい方法論に基づいた観察や実験に求めるべき」とのSackettらの主張を端緒にEBM(Evidence-based Medicine)の流れが形成され90年代後半以降の潮流となった。その理念は、①患者の問題を見極め、②その解決に必要な情報を探し、③得られた情報を吟味し、④どの情報を選ぶかを患者と共に考え、⑤その結果を評価するという行動指針である。EBMを実践する過程で患者に提供する医学情報は一般にRCTによる論文が推奨される。  この観点から筆者らは、1983年〜2015年までの医中誌Webに掲載されたマッサージ関連論文のレビューを行った結果をWebに公開し、良質の論文をA4紙1枚の構造化抄録(SA)にまとめて提供してきた。しかし、1万件を超える候補書誌のうちSAに採用された論文は30件、そのうち適切にランダム化されていたRCTは12件にとどまった。さらに、これらの論文の掲載誌情報から、当該研究の担い手の過半数が看護の領域に関わる人たちである可能性が高い。  このように、わが国ではマッサージ関連の質の高いエビデンスと研究の担い手が著しく不足している。その裾野を広げるため、斯界には日常臨床における症例観察の構築と臨床研究教育の普及を図るための戦略的な取り組みが求められる。
シンポジウム 「鍼通電療法の新たなる展望」
  • 徳竹 忠司
    2016 年 41 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    身体に刺入した鍼を電極として低周波通電を行い、痛覚閾値の上昇が起こったという新聞報道により、鍼鎮痛は世界的に知られるところとなった。  鍼通電(EA: Electro-acupuncture)による痛覚閾値の上昇は、生体が有している鎮痛機構の賦活によるものであることが解明され、一応の決着が付けられた。以降、EAは鎮痛効果以外に末梢循環促進・神経機能の調節・筋伸展性向上・自律神経反応など現代医学的観点から多方面での応用がなされるようになった。現時点で共通理解がされている分類は以下の通りである。 【①筋肉パルス】対象組織:骨格筋。目的:筋内循環促進。通電周波数:1 Hz~10 Hz。通電時間:15分程度。 【②神経パルス】対象組織:体性末梢神経。目的:神経機能の調節。通電周波数:通常1 Hz。通電時間:15分程度。 【③椎間関節部パルス】対象組織:脊柱の椎間関節部周囲。目的:循環改善・支配神経の閾値の上昇。通電周波数:通常1 Hz。通電時間:15分程度。 【④皮下パルス】:対象組織:皮下組織。現在のところ臨床的な効果のみの観察にとどまっている。通電周波数:通常30 Hz~50 Hz。通電時間:20分程度。 【⑤反応点パルス】目的:自律神経反応。現段階では解剖学的な組織分類に従うものではなく、経験的に施術効果が得られる通電方法を総称している。  EAの施術による効果を引き出すためには対象とする患者が訴える症状の病態把握が重要であるため、面接・身体診察による情報収集の能力が必要となる。本稿ではEAの総論について概説を試みる。
  • -顔面神経及び表情筋に対する非同期鍼通電療法-
    山口 智
    2016 年 41 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    本学における東洋医学部門の経緯は、1984年に第二内科の一部門として開設され、以来30年間にわたり医科大学において鍼灸医療の診療や研究・教育に従事してきた。特に学内の専門診療科と共同で診療や研究を推進し、伝統医療の科学化に着手している。  当科外来に他の診療科より依頼があった患者の頻度は、66.1%と来院患者の3分の2以上を占め、診療各科との連携が年々充実してきている。依頼診療科は、末梢性の顔面神経麻痺を専門とする神経内科や神経耳科が上位にランクされている。こうした依頼患者の疾患別出現頻度は、Bell麻痺が最も多く、次いで緊張型頭痛、肩こり症、非特異的腰痛、脳血管障害、Ramsay Hunt症候群等が高い。  末梢性顔面神経麻痺の原因は、Bell麻痺とRamsay Hunt症候群がその大半を占め、その他外傷や腫瘍、全身性疾患等である。評価法には、40点法(柳原法)やHouse-Brackmann法が広く専門医に活用されており、また、予後判定には電気生理学的検査であるENoGが最も重要視されている。 当科における鍼灸治療の方法は、多くの臨床研究の成果より病期や病態(麻痺の程度)によりそれぞれ治療法を選択している。発症早期は顔面神経を目標とした経穴に置鍼している。麻痺発症後2週間で麻痺の程度が軽度であれば顔面神経を目標とした鍼通電療法(1Hz, 10~15分)、麻痺の程度が重度であれば表情筋を目標とした置鍼、及び非同期鍼通電療法を実施している。さらに、後遺症の予防や治療に対しても非同期鍼通電療法を早期に開始している。 このように、専門診療科と連携し早期に鍼治療を開始することで麻痺の改善を早め、また、現代医療でも難治とされている完全麻痺や後遺症に対しても概ね期待すべき効果が得られている。一方、顔面神経を目標とした鍼通電刺激が予後判定に有用な手段となる可能性も示唆された。
原 著
  • 工藤 滋, 原 早苗, 岡 愛子, 和田 恒彦
    2016 年 41 巻 2 号 p. 43-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】坐骨神経鍼通電は臨床上有用な治療法であるが、その習得は容易ではない。そこで、視覚特別支援学校における坐骨神経鍼通電の指導の状況等に関する実態調査を行い、指導の困難さの要因を明らかにしていくこととした。 【方法】対象:専攻科理療科を設置している盲学校56校の鍼実技担当理療科教員56名。 手続き:郵送による無記名自記式質問紙法とした。 【結果】回答者は40名、回収率は71.4%であった。坐骨神経パルスを指導すると答えた者は7割を超えていたが、大部分の生徒が坐骨神経パルスを治療に使用できる、と答えた者は半数程度と少なかった。パルスの指導が難しいと感じる生徒の状況については、他のパルスがいずれも「時間がかかりすぎるから」であったのに対して、坐骨神経パルスでは「正確な刺鍼部位を触診できないから」であった。最も簡単だと感じるのは脊柱起立筋パルス、最も難しいと感じるのは坐骨神経パルスで、その理由は目的の組織を体表から触れられるか否かであった。坐骨神経パルスの刺鍼部位として指導している部位は担当している教員でばらばらであったが、その部位で指導している理由は決めやすさからであった。 【考察】坐骨神経パルスは、指導しているにも関わらず治療に使用できる状態にない生徒が多く、最も指導の工夫が必要な治療法であると考えられた。坐骨神経パルスは他のパルスと比べて、指導に際して生徒に求める事項が多く、特に刺鍼部位の触診に課題があるととらえている教員が多いことが明らかとなった。坐骨神経パルスを最も難しいと感じた要因は、2つの体表指標間を等分する刺鍼部位の決定方法にあると考えられた。パルスの難易度の意識に影響を及ぼす最も大きい要因は、目的の組織を体表から触れられるか否かという点であった。
  • - 燃焼部からの距離と加温範囲の検討 -
    和田 恒彦, 全 英美, 宮本 俊和
    2016 年 41 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】棒灸は治療家のみならず、セルフケアとしても用いられているが、火傷の過誤が報告されるなど、温度特性について把握しておく必要がある。棒灸の燃焼部からの高さ、経時的な温度変化、影響範囲について検討した。 【方法】4mm厚のシナベニア板上に置いた1mm厚のアメゴムシート上に熱電対(ST-50 理科工業)を燃焼部直下(0mm)、直下から外方3.75mm、7.5mm、15mm、30mm、45mmの6点に設置し、温度インターフェイス(E830 テクノセブン)を介してパソコンに温度データを取り込んだ。棒灸(温灸純艾條 カナケン)は、先端から熱電対までの高さを20、30、40、60、80、100mmと変えて10分間経時的に6回測定した。 【結果および考察】測定時の室温は24.5±2.5℃だった。測定点の平均最高温度は、高さ20mmでは44.1±4.7℃、30mmは38.5±2.6℃、40mmは36.2±4.5℃、60mmは29.4±2.9℃、80mmは26.8±2.3℃、100mmは25.6℃±3.1℃だった。高さの100mmの燃焼部からの水平距離では直下から3.75mmでは25.9±3.3℃、7.5mmは25.9±3.2℃、15mmは25.9±3.1、30mmは26.1±3.0℃、45mmは26.3±3.1℃だった。また、高さ20mmで直下と外方部の温度逆転が、260秒後に外方15mm、290秒後に7.5mm、310秒後に3.75mm、430秒後に30mm、600秒後に45mmとの間に見られた。灰による影響と思われる。 【結語】直下では燃焼部に近いほど最高温は高かったが、高さ100mmでは遠いほど温度が高く、経時的には水平距離と温度の関係の逆転もみられた。棒灸は燃焼部からの高さにより、上昇温度、刺激範囲を可変でき、術者が刺激を調節することができることが確認された。
  • 翁 良徳, 矢野 忠
    2016 年 41 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】肩こりに用いられる按摩手技の中から母指揉捏法と母指圧迫法の2種類を選択し、その効果について生体組織硬度と気分の両面から分析し、各手技の特徴を明らかにするとともに肩こりに対する効果的な手技について検討することとした。 【方法】①対象:肩こりを自覚している21人(男性10人、女性11人、年齢27~49歳)とした。これらの対象者を封筒法にて母指揉捏法を行う揉捏群、母指圧迫法を行う圧迫群、無刺激対照群の3群に分けた。②施術部位:母指揉捏法あるいは母指圧迫法を研究対象者の肩上部から肩甲間部にかけて左右5分ずつ合計10分間施術した。施術は側臥位にて行った。③評価指標:生体組織硬度測定、肩こりの評価(部位、性質、程度)、気分の評価とした。なお、生体組織硬度の測定部位は肩上部中央(肩井)とし、座位にて行った。④実験行程:介入群は介入前10分間、介入10分間、介入後10分間とし、5分間隔で肩上部の生体組織硬度を測定した。対照群も同様の行程とした。肩こりの評価は実験開始前に、気分の評価は実験終了後とした。 【結果】揉捏群と圧迫群で肩上部の生体組織硬度は低下したが、対照群では認められなかった。その効果は揉捏群でより大きかった。気分は揉捏群と圧迫群で施術後、陽性気分へ変化した。 【考察】揉捏群、圧迫群ともに対照群に比して生体組織硬度は低下し、気分も陽性気分へ変化したことから肩こりには母指揉捏法も母指圧迫法のいずれの手技も有効であることが示された。しかし、凝りに対しては母指揉捏法の方が、いい気分への誘導には母指圧迫法がより効果的であることが示唆された。これらのことから圧迫法を加味した母指揉捏法が適切な手技であると考えられた。 【結語】母指揉捏法は凝りの緩解に、母指圧迫法はいい気分を誘導するのに適した手技であることが示唆された。
  • - 筑波技術大学東西医学統合医療センター あん摩・マッサージ・指圧外来統計からの考察 -
    福島 正也, 成島 朋美, 周防 佐知江, 緒方 昭広
    2016 年 41 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター施術部門に新設された、あん摩・マッサージ・指圧外来(以下、マッサージ外来)の外来統計を元に、統合医療システムの中での自由診療によるあん摩マッサージ指圧療法の有用性と課題について考察した。 【方法】2015年4月から2016年3月までの12ヶ月間にマッサージ外来を受療した患者について、外来動態および患者特性に関する項目の調査を行った。 【主な結果と考察】1)患者数が増加していたことから、統合医療システムの中でのあん摩マッサージ指圧療法には、他の治療法とは異なる一定のニーズがあると考えられた。 2)鍼灸治療やリハビリテーションとの併用例がそれぞれ3割前後みられたことから、他の療法とあん摩マッサージ指圧療法の併用は、多様な患者ニーズへの対応や相乗的な治療効果が期待されるものと考えられた。 3)患者の傷病名および主訴の分析から、高齢者の運動器系疾患および脳血管障害後遺症において、あん摩マッサージ指圧療法の需要が高いと考えられた。 4)マッサージ外来運営上の課題として、人的コストが上がりやすい点が挙げられた。 5)医療ニーズや医療システムの変化に伴い、医療の中でのあん摩マッサージ指圧療法の有用性を再評価する必要があると考えられた。
  • - 治療頻度を考慮した検討 -
    林 健太郎, 徳竹 忠司, 濱田 淳, 宮本 俊和
    2016 年 41 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】肩こりに対する低周波鍼通電療法(以下 EAT)の影響を明らかにすることおよび肩こりの程度と関連する測定項目を検討すること。 【方法】対象者は、本研究の主旨と概要を説明し同意が得られ、頸・肩上部に1年以上肩こりを自覚している8 名(男3名、女5名、年齢30.9±5.5歳)で、除外条件に該当しない者とした。治療肢位は腹臥位、刺鍼部位は肩こりの自覚が強い頸部外側または後側と肩上部の僧帽筋の左右2部位ずつ合計4部位とし、筋肉の押圧や把握により愁訴が再現した部位とした。使用鍼は長さ50mm、太さ0.2mmの単回使用鍼を使用し、刺入深度は筋内に達する深さとし、1Hz、15分間のEATを行った。EATは1週間に2回(2~3日に1回の頻度)、2週間で合計4回行った。測定項目は、肩こりの程度(VAS)、筋硬度(肩井、肩外兪穴相当部位)、頸部側屈時の乳様突起-肩峰間距離および伸張痛の程度、圧痛の程度(風池、肩井、肩外兪穴相当部位)とした。測定は、同一の測定者が治療開始前、治療期間終了時、治療期間終了後7 日、14日に行った。統計処理は、一元配置分散分析、ダネット法、ピアソンの相関係数の検定、スピアマンの順位相関係数の検定で検定した。有意水準は5%とした。 【結果】肩こりおよび頸部側屈時の伸張痛の程度は、治療開始前と比べ治療期間終了時に有意に低下した。治療開始時の肩こりの程度は、頸部側屈時の伸張痛の程度と圧痛の程度(肩外兪穴相当部位)との間、治療期間前後の肩こりの程度の変化量は、筋硬度(肩井穴相当部位)と頸部側屈時の伸張痛の程度の各変化量との間に有意な正の相関を認めた。 【結語】肩こりを自覚する者に対してEATの治療頻度を考慮することにより肩こりおよび頸部側屈時の伸張痛の程度の軽減が認められた。頸部側屈時の伸張痛の程度は、肩こりの程度と相関が認められたことから、治療前後に肩こりの程度を聴取することで、伸張痛の効果判定となる可能性がある。
  • - 細菌汚染鍼モデルの製作 -
    仁平 龍, 菅原 正秋, 坂井 友実
    2016 年 41 巻 2 号 p. 81-83
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】一定量の汚染を付加した細菌汚染鍼モデル(以下、汚染鍼)を製作し、鍼の直径の違いによる汚染度の変化を調査した。 【方法】供試菌には、枯草菌芽胞Bacillus subtilisを用い、これにウシ血清アルブミンを添加し、攪拌したものを汚染液(10⁵cfu/100µL)とした。直径の異なる7種類の鍼を各10本用意し、鍼体の先端約20mmを汚染液に浸漬させたものを汚染鍼とした。汚染鍼に使用した鍼の種類は12・14・16・18・20・24・30号鍼の7種類とした。各汚染鍼に付着していた菌を回収し、寒天培地に塗沫後、培養した。菌の培養はインキュベーター内にて、35℃で48時間行い、コロニー数(Colony Forming Unit:cfu)を計測した。直径毎の平均値±標準偏差を算出した。 【結果】各汚染鍼の付着菌数(平均値±標準偏差)を以下に示す。12号鍼は19.8 ± 7.4 cfu、14号鍼は19.4 ± 5.3cfu、16号鍼は25.2 ± 7.4cfu、18号鍼は31.8 ± 7.6cfu、20号鍼は49.2 ± 17.9cfu、24号鍼は62 ± 20.6cfu、30号鍼は63.8 ± 22.6cfuであり、いずれも付着菌数は2桁であった。鍼の直径と付着菌数の間には強い正の相関関係がみられた(ピアソンの相関係数r = 0.734、P < 0.001)。 【考察】7種類の異なる直径の鍼を同一条件下で汚染し、鍼体に付着した菌数を調査した結果、鍼の直径が太くなるにつれ、鍼への付着菌数が増加するという相関関係が認められた。しかし、その一方でいずれの直径であっても付着菌数は2桁であり、菌数が大きく変化することはなかった。  以上のことから、B. subtilisにウシ血清アルブミンを添加し10⁵cfu/0.1mLの濃度の汚染液を作り、鍼を浸漬することで定量的な細菌汚染鍼モデルを製作することが可能であると考えられた。
報 告
  • - MRI撮影における仰臥位、腹臥位、左側臥位との比較 -
    望月 幸治, 柿谷 愛子, 河野 雄一, 丸山 功揚, 南 裕香理, 和田 恒彦, 徳竹 忠司, 濱田 淳, 宮本 俊和
    2016 年 41 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼施術での臓器損傷リスクを回避するためには人体の層構造の解剖学的な理解が必要である。体幹部における鍼施術の危険深度に対する検討はこれまで解剖遺体や生体に対しMRI、CTでの研究がなされてきた。しかし仰臥位が主であり臨床上行う腹臥位での検討は少なく、側臥位で検証している研究は見当たらない。  そこで、腰背部を仰臥位、腹臥位、側臥位でMRI横断面にて撮像し、腎兪、志室の経穴部の体表-腎臓間の距離および腹部内臓の位置や形態の変化を観察した。 【方法】被験者1名(男性:身長159cm、体重50kg、BMI19.8)に対しMRIにて腹部領域を仰臥位、腹臥位、左側臥位の3方向にて撮像し、腎兪、志室穴相当部位の体表から腎臓までの矢状面に平行な直線の距離を計測した。腎兪の位置を第2腰椎棘突起下方の陥凹部より外方3cmに、志室の位置を外方6cmとして計測した。また体位の違いによる体表面の輪郭、腹部内臓の位置の変化を観察した。 【結果】今回の被験者では腎兪の直下には腎臓がなかった。志室から腎臓までの距離は仰臥位では右 (37.0mm)、左 (39.1mm)、腹臥位では右 (35.0mm)、左(39.1mm)、側臥位では右 (39.7mm)、左 (43.2mm)であった。  また腎臓は移動し、形態も変化した。体表面の輪郭は腹臥位では前側がつぶれたまんじゅう型、側臥位ではお腹が垂れた三角おにぎり型に近づくなど形態の変化が認められた。 【結語】仰臥位、腹臥位、左側臥位の体位の違いにより体表-腎臓間距離、体表面の輪郭、腎臓の位置が変化をすることが分かった。
  • - JOABPEQを用いた検討 -
    小林 信満, 山口 智, 高橋 啓介
    2016 年 41 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【緒言】腰痛や腰下肢痛に対する評価法は数多いが、本邦整形外科の領域においてはJOABPEQが広く用いられている。筆者らはすでに非特異的腰痛に対する鍼治療効果をRDQやSF-36、JOABPEQを用い鍼治療の有効性について分析した。そこで今回は腰下肢痛を主訴に他院整形外科より鍼治療依頼があった腰部脊柱管狭窄症(LSS)の患者にJOABPEQを用いてその効果を評価し、専門診療科との連携についても考察した。 【症例】80歳、女性。主訴: 右腰下肢痛(下腿外側~足背)。現病歴: X-5年に右腰下肢痛が出現。他院整形外科受診しLSSと診断され湿布、運動療法等で症状は緩解。その後良好に経過していたが、X年8月より右腰下肢痛が出現し同整形外科受診し同様にLSSを指摘され、NSAIDs等処方されたが期待すべき効果が得られず、症状改善を目的に同整形外科より当科紹介受診。初診時現症: 身長151㎝、体重57㎏。下肢神経学的所見: 右母趾背屈筋力4/5、他正常。体幹運動時痛: 左回旋・後斜屈時 右殿部痛。右大殿筋・中殿筋の緊張と圧痛。SLR、FNS、Kemp徴候(-)。腰部MRI: L3, 4椎体前方すべり症、L2/3~L5/S1の脊柱管狭窄に右L4/5椎間板ヘルニア(LDH)の合併。鍼治療方法: 下肢の痛覚閾値上昇と殿部筋群の過緊張緩和を目的に右L5/S1直側、大殿筋、中殿筋、殷門、陽陵泉、崑崙に置鍼10分、週1回の頻度。評価法: JOABPEQとVASで治療開始前、治療開始1, 3カ月後。 【結果】JOABPEQは疼痛関連障害43→100、腰椎機能障害75→83、歩行機能障害43→86、社会生活障害59→86、心理的障害42→66と5項目中4項目で20点以上改善した。VASは腰痛46㎜→0㎜、下肢痛46㎜→13㎜と低下した。 【考察・結語】本症例は臨床症状及び画像所見よりLSSの神経根型にLDHが合併したものである。鍼治療により疼痛の改善と共にJOABPEQの向上も示された。以上より、JOABPEQは腰痛のみならず腰下肢痛に対する鍼治療の評価法としても有用性の高い可能性が示された。また、整形外科領域で用いられている評価法を活用することは医療連携を推進するための一助になるものと考える。
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