日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
42 巻 , 2 号
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第42 回学術大会 特別講演
  • 砂川 正隆, 池本 英志, 福島 正也
    2017 年 42 巻 2 号 p. 1-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     鍼通電療法は、様々な症状に対して生体の調節機構を介して効果を発揮する。ここでは、鍼 通電療法の生理学的作用を、同じ電気刺激療法であるが鍼を使用しない経皮的電気刺激療法 (transcutaneous electrical nerve stimulation; TENS)ならび通電を行わない置鍼(円皮鍼)と比較した。
     TENSとの違いとして、鎮痛作用に関しては、鍼を刺入した局所における変化が起こりうること、 分泌される内因性オピオイドの種類が異なることが報告されている。
     置鍼との違いとして、オレキシン分泌に与える影響を検討した。オレキシン神経は、大脳辺縁 系、視床下部、脳幹などからの入力情報を統合し、摂食行動や情動行動、覚醒や睡眠、循環や呼吸、 緊急反応、内分泌系、鎮痛といった種々の行動や自律機能の調節を行っている。術後痛モデルと 脳挫傷モデルにおいては、鍼通電療法はオレキシンAの分泌を促進するが、慢性閉塞性肺疾患モ デルにおいてはオレキシンAの分泌亢進を抑制した。社会的孤立ストレスモデルにおいては、上 昇したオレキシンAの分泌が円皮鍼によって抑制された。無処置の動物に対しては置鍼群と電気 鍼群とで比較した場合、置鍼群でオレキシンAの分泌が有意に増加したことから、通電の有無が オレキシンの分泌に関して異なった反応をもたらす可能性はある。しかし病態モデルでは、必要 な場合には分泌を促し、分泌が過剰な場合には抑制的に作用しており、通電の有無に関係なく中 庸化作用が認められた。
     鍼通電療法でも刺入の深さや刺激強度、使用する経穴などを変えることによって得られる効果 はさまざまである。鍼通電療法の作用機序を明らかにするには、更なる研究が必要である。
教育講演
  • 山口 創
    2017 年 42 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿では皮膚と心の関係について紹介し、触れることが及ぼす生体への作用や心理的な意味に ついて考察した。まず皮膚が「露出した脳」といわれる理由について、生理学的な知見を紹介し、 境界としての皮膚について心理学的に論考した。次に触れることの作用について、皮膚上の神経 線維の点と、脳内ホルモンのオキシトシンの点から紹介し、それが相手との親密な人間関係の構 築や、癒しをもたらす作用機序について紹介した。さらに触れる際に重要な点として、触れる速 度や圧の重要性について指摘した。最後に、皮膚を入力と出力の両面から捉える必要性について 述べた。皮膚に触れることは通常は刺激の入力としての視点である。しかし一方で、皮膚は内臓 など身体内部や心の働きが表出される部位でもあるため、出力としての視点もまた重要である。 従って入力として皮膚に触れることを通じて、相手の内部状態を同時に把握し、触れて癒すといっ た多面的に皮膚を捉える態度が大切である点について述べた。
大会長育講演
  • - 組織選択性の意義と臨床の実際 -
    徳竹 忠司
    2017 年 42 巻 2 号 p. 17-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     「鍼麻酔」と呼称されていた時代から50年近くになろうとしている現在では、 「鍼通電療法」が 名称として一般的となっている。
     鍼麻酔に代表される鎮痛効果はそのままに、局所循環の促進あるいは自律神経反応を利用した 効果が確認され、鍼通電療法は鍼治療法の中の一角を占めるに至っていると考える。当初は極一 部の施術者が用いていた、筋パルス・神経パルス・椎間関節部パルス・皮下パルス・反応点パル スといった分類も知名度を高めていることを実感する。
     鍼通電療法の5分類の目的を理解し、症状に応用するための充実した情報収集能力を獲得した 者は、施術者としての活動の範囲が拡大すると考えている。その理由は、病態把握・臨床推論の 能力と高度な通電技術を獲得すると、異なる患者であっても、病態が同様であれば効果はあげら れる。つまり、再現性の高い臨床活動が出来るということである。
     日本にあるいくつかの鍼治療法の中で、鍼通電療法は最も歴史が短いものであるにも係わらず、 臨床現場での成績には短期間で進歩をとげている。5分類からも分かるように、かなり単純な発想 のため、適応できて有効な結果を導き出せる症状・病態には限りがあるかもしれないが、50年足 らずで現段階まで到達できていると言うことは、今後にさらなる期待が持てるものである。
     本稿では鍼通電療法の概論に加え、局所循環の促進をさらに効率よく引き出す通電法であるカッ プリングを意識した方法の紹介を行う。
シンポジウム 「エビデンスに基づく鍼通電療法の臨床の実際」
  • - 疾患の程度による鍼治療効果とその作用機序 -
    安野 富美子, 坂井 友実
    2017 年 42 巻 2 号 p. 25-33
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans, 以下ASO)は、四肢動脈に動脈硬化が進行し、狭 窄あるいは閉塞が生じ、その環流領域に循環障害を呈する疾患である。本症は超高齢社会の到来 と生活習慣の欧米化による食生活の問題や運動不足、ストレスの増加などから今後益々の増加が 予想されている。
     ASOの主症状は、冷感、間欠跛行で、重症化すると安静時痛、潰瘍や壊死も起こってくるが、 いずれも下肢動脈の循環障害に起因した症状である。
     本症に対する治療は重症度によって異なる。Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度では、主として保存療法が  行われるが、効果がみられず、外科的処置が行われることもある。
     一方、鍼治療は末梢循環障害の改善に効果があるとされているが、器質的疾患である ASOに対 しても鍼治療の効果があるのか、またその適応範囲と作用機序の一端を明らかにするために行っ た我々の研究について紹介する。
     鍼治療の効果を検討した対象は、ASO患者21例(Fontaine分類Ⅰ度1例、Ⅱ度17例、Ⅲ度2例、 Ⅳ度1例)で、鍼治療は、低周波鍼通電療法を主とした。評価項目は、冷感、間欠跛行距離、ペ インスコア、ABPIとし、鍼治療開始前と17回目の鍼治療前の時点で評価した。また、鍼刺激前 後の生体反応として、下肢の皮膚温測定(サーモグラフィ装置による計測)と血漿CGRP値の測 定を行った。
     その結果、Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度の症例では、冷感の改善、間欠跛行距離の延長、歩行時の疼 痛の軽減がみられた。Fontaine分類Ⅲ・Ⅳ度の症例では、症状の改善は得られなかった。ABPIは、 すべての症例で変化がみられなかった。鍼刺激による、時間経過に伴う下肢末梢の皮膚温は有意 な変化を示し、鍼刺激開始15分後から、抜鍼後15分後にかけて刺激前値に比し、有意な上昇を 示した。血漿CGRP値は、鍼刺激15分後に刺激前値に比し有意な増加がみられた。
     以上のことからASOに対する鍼治療はFontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度に効果的であり、その機序とし て末梢血管を拡張させ、循環を改善させることを示した。このことからASOに対する鍼治療の適 応は、Fontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度と考えられた
  • - とくに発汗反応への効果との比較について -
    緒方 昭広
    2017 年 42 巻 2 号 p. 35-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     頻度の異なる鍼通電刺激による精神性発汗反応の同定とその機構並びに中枢における統合機能 の検討を行った。 低頻度 (5 Hz) と高頻度 (100 Hz) の鍼通電により精神性発汗の減少を引き起こした。 しかし、その機序は発汗波の分析から異なることが判明した。5 Hzでは脊髄より上位の神経機構 に作用し精神性発汗が減少し、 100 Hzでは脊髄レベルでの機構により発汗減少が証明された。一方、 皮膚血流では、5 Hz、100 Hz両刺激共に有意に足底の皮膚血流減少が刺激後30分まで認められた。 手掌ではいずれの刺激でも増加傾向を示すものの有意な変化を示さなかった。微小神経電図法に よる汗腺の感受性の検討では、両刺激共に刺激前後における反応の変化は観察できなかった。よっ て今回刺激に用いた5 Hz、100 Hz通電では、脊髄および脊髄より上位の中枢機構において発汗減 少の差異が生じたものと考察される。
  • - 後遺症の改善と脳血流の増加反応について -
    山口 智
    2017 年 42 巻 2 号 p. 45-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
     脳血管障害はわが国の死因第4位であり、有病者数も110万人を超え、地域医療、特に在宅医 療において最も重要な疾患といっても過言ではない。近年、 その原因としては脳梗塞が年々増加し、 患者全体の約4分の3を占める程になってきている。
     当科においては後遺症である中枢性疼痛、痙性(痙縮)、肩手症候群等の西洋医学的に積極的な 治療法が少なく、リハビリテーションの阻害因子になりやすい患者が神経内科やリハビリテーショ ン科、脳神経外科等から診療依頼がある。鍼灸治療は個々の症状に対する治療とQOLの向上を目 的とした共通治療に大別し、特に鍼通電療法を基本に実施している。海外の報告や当科の臨床研 究の成果より、後遺症や合併症に対し、概ね期待すべき効果が得られている。また、鍼治療を早 期から開始することで、より有効性が高いことも示されており、急性期における鍼治療の有用性 についても、今後検討する必要がある。
     脳血管の神経支配は上頸神経節由来の交感神経や、翼口蓋神経節や内頸神経節、耳神経節由来 の副交感神経に加え、感覚神経である三叉神経の関与が明らかとなり、脳血管障害や片頭痛の臨 床に重要な役割を果たしている。鍼灸治療においても、顔面部からの刺激が極めて有効性の高い ことを痛感している。
     鍼刺激による脳血流の増加反応は、患者と健常者、さらに患者でもその程度により反応に差異 のある事が明らかとなり、こうした鍼治療による生体の正常化作用が伝統医療の特質と考えてい る。
原 著
  • - 厚生労働省の基本チェックリストのデータ分析 -
    近藤 宏, 西村 博志, 尾野 彰, 小川 眞悟
    2017 年 42 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう(以下、あはき)施術所に来所した高齢者に対して 基本チェックリストを用いて生活機能の状況を調査し、その特徴を分析し、介護予防・日常生活 支援総合事業対象者(以下:事業対象者)を把握することができるかを検討した。
    【方法】調査は、協力の得られた施術所の多施設で実施した。あはき施術所に来所した高齢者に調 査の事前説明をし、同意を得た1,288人を対象にアンケート調査を実施した。有効回答数は878人 (有 効回答率68.2%) であった。調査は、無記名自記式調査とした。調査項目は、 ①基本チェックリスト、 ②性別、③年代、④要介護度、⑤健康感、⑥介護予防への取り組み状況、⑦介護予防に関する相 談者とした。質問は、単一回答式または多肢選択式とした。集計と分析は、単純集計および要介 護認定を受けていない高齢者について基本チェックリスト項目と属性との関連性についてクロス 集計でまとめ、カイ二乗検定を行った。なお、有意水準は5%とした。
    【結果】要介護認定を受けていないあはき受療高齢者668人のうち、63.2%が事業対象者に該当す ると判定された。予防支援に関するプログラムが必要な生活機能は、うつ(55.7%)が最も多く、 次いで、認知機能(46.9%)であった。基本チェックリストと、属性(性別、年代、介護予防活動 状況)に関連性がみられた(P<0.05)。介護予防に関する相談者は、かかりつけ医が50.7%で最 も多く、あはき師に相談する者は3.3%であった。一方で、4割の者が介護予防に関する相談がで きる人がいなかった。
    【考察・結語】事業対象者を把握することが可能であることが明らかとなった。また、性別、年代、 介護予防活動の状況と基本チェックリストとの関連性があり、あはき施術所に来所する高齢者の 属性による生活機能の状況の特徴を捉えることができた。
  • - 台座灸、温筒灸、棒灸の比較 -
    和田 恒彦 , 全 英美 , 宮本 俊和
    2017 年 42 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】間接灸は火傷の可能性もあり温度特性について把握しておく必要がある。しかし先行研究 では1秒未満の詳細な温度変化を検討したものは見受けられない。そこで台座灸、温筒灸、棒灸 の温度特性について検討した。
    【方法】4㎜厚のシナベニア板上に置いた1㎜厚のアメゴムシート上に熱電対を施灸部位直下(0.00 ㎜)、直下から外方3.75㎜、7.50㎜、15.00㎜、30.00㎜、45.00㎜の6点に設置し、温度インターフェ イスを介してパーソナルコンピュータに温度データを取り込んだ。棒灸は、熱電対からの高さ20 ㎜と100㎜とした。0.55秒間隔で600秒間計測し、各灸6回測定した。
    【結果および考察】平均最高温度は台座灸55.9±5.0℃、温筒灸64.3±3.3℃、棒灸の高さ20㎜は 51.2±4.7℃、 100㎜は30.1℃±3.3℃だった。最高温度までの時間は、 台座灸160.7秒、 温筒灸154.5秒、 棒灸の高さ20㎜は126.7秒、100㎜は182.5秒だった。台座灸の温度曲線は漸増的に温度上昇後、 頂点付近は弧を描き、なだらかに温度下降をした。温筒灸は、台座灸よりも急激に温度上昇し、 頂点付近で少しゆるやかになり頂点から急激に下降した。棒灸の高さ20㎜は、漸増後、頂点はゆ るやかな弧をえがき、非常になだらかに直線的に温度は下降、高さ100㎜は非常になだらかに温度 上昇し、直線的に推移した。台座灸、温筒灸では施灸部外方7.5㎜以遠ではほとんど温度上昇がな かった。台座灸では最高温度付近で急激な温度変化があることがわかった。各種間接灸を使い分 けることにより、異なる刺激を与えることができる可能性が示唆された。
    【結語】高頻度の温度計測および施灸周囲の温度測定によりこれまで不明だった台座灸、温筒灸、 棒灸の温度特性をとらえることができた。
  • 宮地 裕久, 和田 恒彦 , 緒方 昭広 , 柿澤 敏文 , 宮本 俊和
    2017 年 42 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】鍼における目標深度への円滑な刺鍼を課題として、視覚障害の程度に関わらず効果をあげ られる反復練習の方法について検討した。
    【方法】はり師をめざす視覚障害学生を対象にした。対象者には、2週間にわたって刺鍼練習台を 用いた1日1本以上の目標深度15㎜への刺鍼練習を課し、練習では、視覚障害があっても自身で 深度を確認できるように、5㎜間隔の階段状目安駒を活用させた。練習前後の刺鍼操作により刺鍼 深度と刺鍼時間の測定と刺鍼動作の観察を行い、全盲群と弱視群を比較した。刺鍼練習台への15 ㎜刺鍼は3回実施し、15㎜に対する絶対誤差の平均値と、各回の刺鍼時間の合計値を算出した上 で比較した。またヒト前腕部への15㎜刺鍼は1回実施し、15㎜に対する絶対誤差と刺鍼時間を求 めた上で比較した。
    【結果及び考察】対象者は20名、うち全盲または光覚8名(以下、 「全盲群」 )、弱視12名(以下、 「弱 視群」)だった。測定時ごとの結果について全盲群と弱視群を比較すると、練習後の刺鍼練習台へ の15㎜刺鍼のみ弱視群は全盲群より有意に短時間で刺鍼した。練習効果について、刺鍼練習台や ヒトへの15㎜刺鍼では全盲群、弱視群とも練習前に対して練習後は有意な絶対誤差の減少を示し たが、刺鍼時間では弱視群のみ有意な短縮を示した。対象者は刺鍼ごとに触覚で深度を確認でき る目安駒を用いたことで、練習直後に結果のフィードバックを得られ、自身で評価しながら効果 的な反復練習を行うことができたと考えられる。一方で、練習後の刺鍼で練習前より時間を要し た対象者が全盲群に2名みられ、刺手の持ち替え回数の多さと、深度確認に多くの時間を費やし ていることを確認できた。
  • - JOABPEQ を用いた検討 -
    小林 信満, 山口 智, 高橋 啓介
    2017 年 42 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対する評価法として、日本整形外科学会腰痛評価質問票 (JOABPEQ)等が整形外科領域で広く活用されているが、LSSに対する鍼治療効果をJOABPEQで 評価したものはほとんど見当たらない。そこで今回、西洋医学的治療で期待すべき効果が得られ なかった難治性で慢性のLSSに対する鍼治療効果を、JOABPEQを用いて検討した。
    【方法】研究デザインは過去起点コホート研究、非盲検前後比較試験、セッティングは本学2施設 とした。対象は2012年1月~2016年11月に当科を受診したLSS患者でJOABPEQを実施できた 者とした。選択基準は他院・本院整形外科でLSSの診断を受け、西洋医学的治療で期待すべき効 果が認められなかった者、罹病期間3カ月以上、除外基準はJOABPEQの回答が十分でない者、鍼 治療中に他の治療が追加された者とした。鍼治療は1カ月間、週に1~2回の間隔で個々の病態 に応じて実施した。評価方法はJOABPEQで初回治療前と1カ月後の治療前に評価した。
    【結果】抽出された患者は9例(男性3例、女性6例)、年齢68.9±7.1歳(mean±S.D.) 、内訳 は神経根型5例、馬尾型2例、混合型2例であった。VASの変化は、腰痛では有意な変化は認め られなかったが、殿部・下肢痛としびれではそれぞれ改善傾向であった(P<0.1)。JOABPEQは疼 痛関連障害と歩行機能障害で一部向上した。
    【考察・結語】鍼治療により、殿部・下肢痛、しびれは概ね期待すべき効果が得られたが、QOLは 疼痛関連障害と歩行機能障害で一部向上がみられ、大半が維持されていた。このことは今回対象 となった症例が西洋医学的な治療で期待すべき効果が得られない難治性で慢性のため、このよう な成績が得られたものと考える。さらに治療期間が1カ月間と短期間であったため、疼痛やしび れは軽減したが、QOLは維持された状態であった。
  • - 需給の現状と業者の年収を中心に -
    藤井 亮輔 , 矢野 忠 , 近藤 宏, 福島 正也
    2017 年 42 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】あん摩マッサ-ジ指圧業の実態を需給の現状と業者の年収を中心に考察し当該行政の政策 検討の基礎資料に資する。
    【対象】全国から収集した鍼灸マッサージ業者102,831件から抽出した20,000件を調査の客体とし た。
    【方法】収集した業者名簿102,831件(施術所76,505件、出張専門業者26,326件)から層化二段 無作為法で抽出した施術所17,000件、出張専門業者3,000件に無記名式質問紙調査票を2016年10 月末に送付し同年11月18日までの回答を依頼した。
    【結果】未着票(21.0%)を除く 15,793 通が有効に着信し 4,605 人(29.2%)から回答を得たが、 うち769人(16.7%)は休業中か廃業していた。この未着率、 休業廃業率や取扱患者数等の結果から、 営業中のあん摩マッサージ指圧(以下、あマ指という)業者は44,040件、同業者が2016年10月 に扱った延べ患者総数は3,822,000人(雇用者を含む)、実働あマ指師総数は88,900人が算出され、 同月にあマ指師1人が扱った延べ患者数は43人(営業24日/月換算で1日1.8人)と推計された。 また、前年分年収(中央値)は視覚障害者の128万円に対し晴眼者は400万円で、前者の42%が 100万円以下の階層に集中していた。
    【考察】国民一世帯当たりの所得額の中央値を標準とすると2015年の同所得額(4,270,000円)は 月間90~120人分の施術料収入に相当する。この人数を充たすには概算で1日4~5人分の売り 上げが必要となるが、この格差(1.8人との差)は実働あマ指師の供給力余力の大きさを示す目安 と考えられる。一方、接骨院等の急増であマ指市場は供給超過にあり生活難に陥る視覚障害者が 急増している。よって、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あ はき師法という)の第19条1項による職業選択の自由の制限は必要かつ合理的範囲内であり需給 の現状からも許容されると考える。
    【結論】本研究により、あマ指師の供給力の余力幅が十分な規模にある実態と、晴眼者と比べて生 活難に陥る視覚障害業者が急速に増えつつある現状が明らかとなった。
報 告
  • - 「自覚症しらべ」による検討 -
    須藤 充昭 , 和田 恒彦
    2017 年 42 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】大企業を中心に視覚障害鍼灸マッサージ師をヘルスキーパーとして雇用するケースが増え てきているが、ヘルスキーパー導入の有用性について検討した報告は少ない。本研究は、大手出 版社子会社である株式会社九段パルス(ヘルスキーパーを専業で行う組織)の来院者(親会社お よび関係会社従業員)の鍼・手技療法の効果・有用性を労働疲労の指標である「自覚症しらべ」 を用いて検討した。
    【方法】25名(男性18名、女性7名)平均年齢は48.8±10.5 歳を対象に日本産業衛生学会産業疲 労研究会の「自覚症しらべ」(25項目、5群、5段階評価)を用いて、通常行っている40分の施術 (鍼・マッサージ)の前後に記入を依頼し、集計後、比較検討した。
    【結果】施術前には、「肩がこる」3.92±0.98、「目がつかれる」3.40±1.17、「腰がいたい」3.52 ±1.02の項目で平均3.40以上の相対的に高い値だった。施術の前後の比較では、 「頭がおもい」 「い らいらする」 「おちつかない気分だ」 「目がいたい」 「肩がこる」 「ねむい」 「やる気がとぼしい」 「不 安な感じがする」「ものがぼやける」「全身がだるい」「ゆううつな気分だ」「腕がだるい」「横にな りたい」「目がつかれる」「腰がいたい」「足がだるい」の16項目は有意に改善された。 (P<0.05)
    【考察】VDT作業や校正作業などに従事する従業員が多いためか、 「肩がこる」、「目がつかれる」 などの症状が強く、また施術の効果も高いことがわかった。また、だるさ感、ぼやけ感、ねむけ 感などの改善率が高いことは、鍼灸マッサージが従業員の疲労を回復させ、作業能率を向上させ る可能性を示唆した。
    【結語】「自覚症しらべ」による検討から、ヘルスキーパーによる鍼・手技療法が労働者の疲労回 復に効果があり、産業衛生分野で貢献しうることがわかった。
  • - 年末合同合宿参加選手への実態調査 -
    湯浅 安理 , 宮本 俊和, 森山 朝正 , 宮川 俊平
    2017 年 42 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【緒言】フィンスイミングは1枚の足ヒレ、 モノフィン(monofin;以下MF)、あるいは2枚の足ヒレ、 ビーフィンを足部につけて泳記録を競う競技である。本競技に関する調査は少なく、フィンスイ ミングによる外傷・障害の情報は限られている。
    【目的】本研究はフィンスイミング年末合同合宿参加選手を対象としたアンケート調査を行い、 フィ ンスイミングによる痛みの実態を把握することを目的とした。
    【方法】対象は、2009年12月27日から29日に行われたフィンスイミング年末合同合宿参加選手 とした。調査項目は、身長、体重、競技歴、練習時間、参加大会、フィンスイミング中・後の痛 みの有無(腰部、足関節、肩)、全身の痛みの部位とその詳細(練習休止期間、発症時の状況、発 症要因、診断名、対処法)とした。
    【結果】調査用紙は参加選手29名に配布し、29名中93.1%に相当する27名から回答を得た。フィ ンスイミングによる痛みを感じたことがあるのは 27 名中 25 名(92.6%) 、痛みは足関節 22 名 (81.5%)、腰部15名(55.6%)が多かった。詳細について記載のあった痛み57件中、足関節15件、 腰部12件が多かった。練習休止を要する痛みも腰部7件、足関節6件が多かった。発症時の状況 はMF競技・練習が47件と多く、発症要因はフィンの練習量増加20件が多かった。練習休止期 間が7ヶ月~1年と競技への影響が大きかったのは、MF使用時に発症した足関節の有痛性三角骨 障害であった。
    【考察】痛みの部位として足関節・腰部が多かったのは、大きく重たいMFを足部につけて足関節 の底背屈、体幹屈曲伸展を繰り返す競技特性によると考えられる。
    【結語】フィンスイミングによる痛みはMF使用時に多くみられ、 痛みの部位は足関節、 腰部が多く、 練習休止を要する痛みも足関節、腰部に多いことが明らかとなった。
  • 郡 拓也, 緒方 昭広
    2017 年 42 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】国内のあマ指師養成校における校内臨床実習評価の実態を明らかにする。
    【方法】あマ指師養成校88校(盲学校59校、専門学校23校、視障センター5校、大学1校)に 郵送によるアンケート調査を実施した。アンケートは校内臨床実習に関する1~6の領域、全23 問から構成される。
    【結果】88校中52校から回答を得た(回収率59.1%) 。指導内容について、臨床実習を通じて重点 的に習得させたい能力として、あマ指の技術、コミュニケーション能力、身だしなみ・接遇、問 診技術、衛生管理能力が挙げられた。成績評価対象項目は、身だしなみ・接遇、衛生管理、問診・ 検査・あマ指の技術、カルテ管理、コミュニケーション能力の各項目を網羅的に評価している学 校が約70~80%であった。また、それらの評価方法は目視・触察が最も多く、補助的に患者アン ケート結果や実技チェックを併用している。項目別評価について79%の学校が必要性を感じてお り、62%の学校で項目別評価基準を用いて実施している。また、71%の学校に評価チェックシー トのニーズがある。事前指導として、スムーズな導入や実技力の確認目的でオリエンテーション やあマ指実技試験が実施されている。また81%の学校で毎回の実習後に事後指導が実施されてい る。あマ指臨床実習評価に対する意見では、客観的評価の困難さ、統一した基準の必要性、進路 を見据えた臨床教育の必要性が挙げられた。
    【考察と結語】社会で求められているあマ指師像に対し、指導者が重点的に身につけさせたいと考 えている能力は適切にマッチングしている。あマ指治療の特性を考慮すると、客観的評価には限 界があると考えられるが、チェックシート等を活用した項目別評価を普及することで卒業段階で の均質化を図ることは重要と考える。
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