日本ペインクリニック学会誌
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10 巻, 1 号
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  • 緒方 宣邦, 松冨 智哉
    2003 年 10 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    電位依存性ナトリウムチャネル (Naチャネル) は興奮性細胞が活動電位を引き起こすために不可欠な役割を演じているイオンチャネルであり, その名のごとく膜電位の変化によってゲートが開閉し, ナトリウムイオンを細胞内外の濃度差に応じて通過させ, それによって細胞膜の荷電状態を変化させる膜蛋白である. Naチャネルは従来は比較的種差や組織差の少ない“面白みに欠ける”イオンチャネルであると考えられてきたが, 最近の遺伝子クローニングにより, 多くのサブタイプの存在が明らかとなり, 機能的にもさまざまな細胞機能にかかわっていることが明らかとなってきた. 一方では, 新しい実験技術の開発により, そのチャネルポアや電位センサーなどに関するオングストロームオーダーの3次元立体構造すら明らかにされつつある. 最近のNaチャネル研究における重要なポイントは組織特異性をもつユニークなサブタイプの存在である. とりわけ末梢知覚神経節の小型侵害受容ニューロンに特異的に発現し, フグ毒テトロドトキシン (tetrodotoxin: TTX) に感受性をもたないTTX-非感受性Naチャネルは, 痛覚伝導機序あるいは病的疼痛の発現などに重要な役割を担っている可能性があり, 新しい鎮痛薬の開発などの面からも注目されている. 本稿では, まず最近のNaチャネル研究の進展について概説し, さらにTTX-非感受性Naチャネルを中心に, Naチャネルの疼痛発現への関与について紹介する.
  • 宇野 武司
    2003 年 10 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    局所麻酔薬による神経ブロックは, 急性痛の治療に劇的な鎮痛効果を発揮することから, 慢性の難治性疼痛の治療にも利用されてきた. しかし, 難治性疼痛の場合, 神経ブロックで痛みが和らいだとしてもやがて元の痛みが現れることが多い. 神経ブロックは侵襲手段であるため, 一時しのぎのために頻回に繰り返し実施すべきでなく, 他の鎮痛手段も利用して神経ブロックを行う回数は減らすべきであろう. 一方, 神経ブロックが, 難治性疼痛患者の痛みを和らげ, 身体的, 心理社会的な機能回復を促すのに役立つならば, 有意義なものとなるであろう.
    神経ブロックは, 難治性疼痛の診断や予後判定に利用されてきたが, 結果を単純に解釈すると, その後の治療が誤った方向に導かれるかもしれない. 結果の解釈に当たっては, 神経ブロックの感受性と特異性に影響を及ぼすさまざまな要因を考慮しなければならない. 神経ブロックは, 急性痛から慢性痛への移行を防止するために利用されてきたが, 本当にそのために役立っているのか今のところ明らかでない.
    ここでは, 難治性疼痛疾患の代表である複合性局所疼痛症候群と帯状疱疹後神経痛を取り上げ, おもに交感神経ブロックの役割について解説した.
  • 三浦 邦久, 門田 靜明, 宮崎 東洋
    2003 年 10 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    目的: 糖尿病性下肢病変の極期である diabetic foot (DF) 患者20名において下肢切断術が行われた際に, 得られた末梢神経の標本25例に対して, 電子顕微鏡を用いて超微細構造を病理組織学的に観察し, 末梢神経病変について比較検討した. 方法: 術中に切断近位端および末梢部の2ヵ所で組織内に埋没している神経幹を同定大別し, 末梢神経を摘出した. 標本は, ただちに2%グルタールアルデヒド溶液のなかに浸し, さらに脱水加工とトルイジン青および電子染色を施した後, 光学顕微鏡で全体像を把握, さらに超薄切標本を電子顕微鏡で観察した. 結果: DF内部の末梢神経病変は病理組織学的に, 糖尿病性神経障害, 虚血性神経障害, 混在型の3つに大別できた. また, 特徴的所見としては, 同一患者で数回切断されている例では切断部近位端に, 逆行性のワーラー変性像と虚血性神経病変の混在が認められた. 結論: 下肢切断端部で得られた末梢神経の生検標本の病理像を仔細に観察し, その病態を詳細に検討することにより, その後の末梢病変の進行予知に有用と考えられた.
  • 田中 明美, 津田 喬子, 竹内 昭憲, 笹野 寛, 前田 光信
    2003 年 10 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    慢性難治性疼痛に, 他の要因による疼痛や心的外傷が加わったことを契機にして薬物依存に陥った2症例の治療を経験した. 症例1は38歳男性, 指の再接着術後の断端痛による慢性疼痛を抱えていたが, 転院を契機に右上肢の痙攣を伴う疼痛性障害が増悪して薬物依存になった. 症例2は56歳男性, 椎間板ヘルニアの手術後の failed back syndrome として慢性疼痛を治療していたところ, 交通事故による頸椎挫傷後に上下肢の痙攣を伴う疼痛性障害を発症して薬物依存になった. 両症例とも過去の他院麻酔科治療歴から, 神経ブロック治療による除痛が困難であると判断して薬物依存を絶つことに治療目標をすえ, 交感神経ブロック療法に加えて心理療法により病状の理解と疼痛の認知を行い, 定期的に通院治療を続ける適正な痛み行動へと導いた. その結果, 両症例は慢性疼痛を受容して, 薬物に依存する行動がみられなくなった. 慢性疼痛患者の疼痛制御には, 心理テストの結果を踏まえた心理療法が適切に行われるべきである.
  • 硬膜外ブロック効果低下例を中心として
    内木 亮介, 横山 健至, 赤羽 日出男, 杉本 季久造, 島田 洋一, 小川 龍
    2003 年 10 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    難治性腰下肢痛患者の治療にエピドラスコピー (EDS) が用いられるようになってきたが, 現在のところ本法の施行時期についての明確な指標はない. 今回硬膜外ブロックの有効性が低下しながらも, 画像所見上病変の進行を示唆する変化を認めなかった3名の未手術患者に対してEDSを施行したところ, 症状の明らかな軽減が得られ, またその後の経過も良好であった, これらの症例に共通して認められた臨床経過の変化と画像所見との乖離は, EDS施行の指標の一つになりうると思われた.
  • 平川 奈緒美, 堤 智子, 香月 亮, 十時 忠秀
    2003 年 10 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    肺尖部ブラ切除術を受けた患者が, 術後の遷延した痛みの診断で複数の施設で治療を受け, 診断が遅れたパンコースト腫瘍の1症例を経験した. 37歳, 男性. 胸腔鏡下肺ブラ切除術を受けた後, 左前胸部および腋窩部痛のため, 複数の病院で薬物療法や神経ブロック療法などの治療を受けていたが, 疹痛コントロールが困難となり, 当院へ紹介された. 当院受診時の胸部X線では, 左肺尖部の胸膜肥厚が認められた以外に異常陰影を見つけることができなかった. 星状神経節ブロック, 硬膜外ブロック, 抗うつ薬などによりいったん痛みは軽快したが, 再び増強したため原因再評価を目的に, 胸部X線, 頸部と胸部のMRIなど施行したところ, 肺尖部腫瘍を認めた. 腺癌の診断で放射線治療, 化学療法の後, 左肺上葉切除および胸壁合併切除を行ったが, 術後9ヵ月後に腎および副腎への転移のため死亡した.
  • 祖父江 和哉, 津田 喬子, 竹内 昭憲, 伊藤 彰師, 藤田 義人, 真砂 敦夫, 勝屋 弘忠
    2003 年 10 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    脊髄電気刺激 (spinal cord stimulation: SCS) による疼痛治療は, 硬膜外ブロックや薬物療法等が無効な failed back surgery syndrome や complex regional pain syndrome (CRPS) に対して行われる. 脊椎手術後患者に対する電極留置は, 硬膜外腔癒着のため困難が予想される. 頸椎後方除圧術後の上肢CRPS type Iに対して頸椎レベルにSCS電極を経皮的に留置でき, 良好な終痛緩和が得られた症例を報告する, 症例は64歳, 男性. 第4・5頸髄髄内病変と頸椎脊柱管狭窄に対し第3-6頸椎椎弓形成術を施行後に, 左上肢痔痛とアロディニアが増強し, 硫酸モルヒネ内服でもコントロールできないため, 当院麻酔科を受診し, CRPS type Iと診断した. 薬物療法や神経ブロック療法等が無効であったため, SCSを施行したところアロディニアはただちに改善され, 硫酸モルヒネも漸減できた. また, 長期的効果も認められた. 頸椎手術後の上肢CRPS type Iに対し, 他の治療に反応が乏しい場合, 脊髄刺激電極留置は治療法の一つとして選択できると考える.
  • Functional MRIによる検討
    岩倉 健夫, 大城 宜哲, 宮内 哲, 時本 康紘, 福永 智栄, 柴田 政彦, 柳田 敏雄, 真下 節
    2003 年 10 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    右中足骨骨折後3週間のギプス固定により右足背部に allodynia を示した患者1名を対象として, allodynia 発現時の患側および健側への非侵害刺激, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激に対する脳賦活領域を functional MRIを用いて比較検討した. 健側への刺激では第一次体性感覚野と頭頂連合野が, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野が反応したのに対し, allodynia 発現時の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野, 島, 頭頂連合野, 前頭前野内側部, 前帯状回, 補足運動野など広い領域で信号の増強がみられた. allodynia は, 神経損傷後や組織障害後にみられる徴候の一つであるが, その痛覚認知機能はまだ明らかではない. 本症例でみられた腫脹, 皮膚温の上昇, allodynia などのCRPS type Iの症状は自然治癒したが, 初期にはCRPS type Iの症状がそろっており, 本症例でみられた allodynia はCRPS type Iと病態は共通している. 本研究によりCRPS type Iにみられた allodynia の痛覚認知機能を知るうえでの重要な知見が得られた.
  • 朴 基彦, 高雄 由美子, 香川 哲郎, 真田 かなえ, 森川 修, 尾原 秀史
    2003 年 10 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    舌痛症に対してメキシレチンを内服投与したところ hypersensitivity syndrome を生じた1症例を経験した. 症例は66歳, 女性. 9年前に受けた歯科治療をきっかけに舌に痛みが出現し, 当科へ紹介された. 星状神経節ブロックとともに抗うつ薬と抗不安薬の投与を開始した. ドラッグチャレンジテストによりリドカインとケタミンが有効であることが判明し, メキシレチンの内服を開始した. その後ケタミン持続点滴療法を併用し, 舌のしびれは残るものの痛みはほぼ消失した. しかし初診後69日目に掻痒感出現したため内服薬を中止. 71日目には顔面の著明な浮腫, 頭皮および体幹にも地図状の紅斑が出現し, 口腔内にも粘膜疹が認められた. 当院皮膚科に紹介し即日入院となり, ステロイドの点滴投与等による治療が開始された. 皮疹は徐々に軽快したが経過中に一過性の肝機能障害が認められた. 臨床症状, 臨床経過およびパッチテストによりメキシレチンを原因薬剤とする hypersensitivity syndrome と診断された. 疼痛治療にメキシレチンを使用する機会が増えてきているが, 開始後しばらくして全身症状を伴う重症皮疹を起こす危険性のあることを念頭に置いておくべきである.
  • 吉沼 裕美, 蓮見 謙司, 村山 隆紀
    2003 年 10 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    モルヒネの硬膜外持続投与からフェンタニルパッチによる鎮痛法へと切り替えを試みたところ, 退薬症候として著明な水様性下痢を呈した症例を経験した. 患者は46歳の女性で, 進行性子宮頸癌による右鼠径部痛と右下肢浮腫に対し硫酸モルヒネ (MSコンチン®) を処方され増量されてきたが, 200mg/日に達しても十分な鎮痛効果が得られないため当ペインクリニックを受診した. 最初に試みた腰部交感神経節ブロックは浮腫の軽減には有効であったが鎮痛効果は乏しかった. ついで塩酸モルヒネの持続硬膜外投与を開始し, 300mg/日まで増量することにより疼痛コントロールが得られた. 2カ月後に, 患者からの要望にこたえることと長期の硬膜外カテーテル留置による感染症対策を目的として, フェンタニルパッチへの切り替えを試みた. 初日はフェンタニルパッチ30mgを貼布し, 硬膜外モルヒネを100mg/日に減量した. その後24時間鎮痛効果に変化がないことを確認して硬膜外投与を中止したところ突然激しい水様性下痢が出現した. モルヒネの退薬症候を疑い硫酸モルヒネを内服させたところ下痢症状は速やかに消失した.
    わが国ではまだ今回のような下痢を主症状とする退薬症候の報告はないが, 今後フェンタニルパッチの普及に伴いさまざまな退薬症候が生じると予想される. フェンタニルパッチを用いた鎮痛法への移行を試みる際には, 綿密な観察を行い, 退薬症候が認められた場合には迅速かつ正確に診断し対処する必要がある.
  • 江木 盛時, 近井 高志, 福島 臣啓, 石津 友子, 田中 利明, 時岡 宏明, 香曽我部 義則
    2003 年 10 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    難治性電撃性会陰部痛を2症例経験し, 抗痙攣薬が著効したので報告する, 症例1:70歳女性. 脊椎麻酔下に膝骨切り術を施行した1カ月後より電撃性会陰部痛が出現した. 器質的疾患は認めなかった. 他院で非ステロイド系消炎鎮痛薬 (NSAIDs), オピオイド, 抗うつ薬を投与されたが無効, 仙骨硬膜外ブロックも無効であった. カルバマゼピンの内服が著効したが, Stevens-Johnson 症候群のため投薬中止となり, 痛みは元に戻った. その後, 各種ブロック, 抗痙攣薬以外の薬物療法に抵抗性であった. 抗痙攣薬は, クロナゼパムとゾニサミドが有効で, 現在ゾニサミドの内服によりVAS 3~4/10である. 症例2:52歳男性. 慢性膵炎のため入院中に電撃性会陰部痛が生じた. 器質的疾患は認めなかった. NSAIDs, オピオイドは無効であった. カルバマゼピンとアミトリプチリンの内服が著効したが, 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群のため投薬中止となり, 痛みは元に戻った. ゾニサミドの投与により疼痛消失し経過観察中である. 結語: 抗痙攣薬は, 難治性電撃性会陰部痛において有効な治療法である. また, 重篤な合併症が生じうることも念頭におく必要がある.
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 82-84
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 10 巻 1 号 p. 92-93
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
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