薬物療法, 神経ブロック療法に抵抗性の腰下肢痛に対する硬膜外内視鏡手術 (エピドラスコピー) は, Saberski と Kitahata によって1995年に最初に報告された. 東京大学医学部附属病院では現在までに100症例以上のエピドラスコピーを経験し, 2004年6月にはエピドラスコピーの説明書と同意書を改訂し, 運用を行っている. 現行の説明書と同意書内のエピドラスコピーに伴う偶発症には, (1) 穿刺部痛, (2) 頭蓋内圧亢進症状, (3) 硬膜穿刺, (4) 神経障害, (5) 感染, (6) 出血, (7) アレルギー, (8) 心肺脳肝腎の臓器機能障害, が記載されている. また当院の手術成績として, 4%の頻度で病状の悪化する症例があることが記載されている. しかし, 具体的な偶発症の発生率を, 術中と術後に分けて記載, 説明する必要がある. 当院では, 術中偶発症として穿刺部痛, 腰痛, 下肢痛, 頭痛, 後頸部痛, 高血圧, 頻脈を各数症例, 術後偶発症として頭痛, 後頸部痛を2症例, くも膜下ブロック, 意識障害, 横紋筋融解症を1症例経験している. エピドラスコピーの偶発症は, 過去の硬膜外ブロックの偶発症の報告を参考にすべきである. さらにエピドラスコピーは新しい医療であり, 現時点では不測の偶発症が発生する可能性があることを説明する必要がある. 以上を踏まえ, 2005年5月, 当院でのエピドラスコピーの説明書と同意書の新改訂版を作成した. 多施設でのエピドラスコピーの成績, 偶発症調査を行い, より明確な情報を患者に提示する必要がある.
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