日本ペインクリニック学会誌
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12 巻, 4 号
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  • 鈴木 勉, 矢島 義識, 成田 年
    2005 年 12 巻 4 号 p. 365-373
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    ペインクリニックで使用する薬物には依存性を有するものが多く含まれている. そこで本稿では, 世界保健機関の依存性薬物の分類に従い, 鎮痛薬, 鎮痛補助薬, 催眠薬などの依存性について述べる. 精神依存に関しては多くの場合, 中脳辺縁ドパミン (DA) 神経系の活性化に伴ったDA受容体刺激が本質的な役割を果たしているが, DA神経系だけでは説明できない依存性薬物もある. また, 身体依存に関しては, 中枢抑制薬ではγアミノ酪酸 (GABA)AおよびN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 受容体がおもに関与し, オピオイド鎮痛薬ではNMDA受容体, β受容体やα2受容体の関与が示唆されている. しかし, 依存性の機序については未知の面が多く, 今後の研究成果に期待するところが大きい.
  • 明石 祐史, 馬場 剛, 齋藤 豪, 川股 知之, 山川 康, 水沼 正弘, 荒川 穣二
    2005 年 12 巻 4 号 p. 374-379
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    目的: 腟式手術は皮膚切開創を伴った開腹操作がないために術後痛は比較的軽度であると認識されている. ところが, 術後内臓痛を主体とした疼痛により管理に難渋するケースが今なお多い. 今回われわれは, 病棟医という視点から腟式子宮全摘出術の疼痛管理の実態を調査し, 術後痛および術中, 術後の疼痛管理について再検討することとした. 方法: 2002年1月から2004年8月に2施設において施行された128例を対象とし脊椎麻酔単独群と持続硬膜外鎮痛法群に分け, 術後鎮痛薬投与回数・帰室後初回鎮痛薬投与までの時間・visual analogue scale (VAS), Prince Henry pain scale (PHPS)・疼痛部位・副作用の出現について比較調査した. 結果: 術後鎮痛回数は持続硬膜外鎮痛法群1.8回, 脊椎麻酔群3.7回であり有意に前者で少なかった (p<0.05). VAS, PHPS等の他項目に関しても有意に持続硬膜外鎮痛法が有利であることを示した, 結語: 腔式子宮全摘出術は一般に認識されている以上に術後痛が強く, 安定した術後鎮痛効果を得るためには持続硬膜外鎮痛法が有用である.
  • 伊藤 之一, 木村 智政, 小松 徹
    2005 年 12 巻 4 号 p. 380-384
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    疼痛患者の初診時に心理テストである Hospital Anxiety and Depression Scale (HAD尺度) を行い, その結果から治療効果が予測可能か, また病悩期間は抑うつや不安の程度と相関するか検討した. 対象は当院ペインクリニック外来初診患者50例で, 患者背景は男女各25例, 平均年齢は57.1±18.8歳であった. 疾患は帯状庖疹痛14例, 腰下肢痛11例, 頸肩腕部痛9例, 神経痛7例, その他9例であった. 治療効果は著効10例, 有効15例, 不変16例, 悪化0例, 不明9例であった. 初診時の抑うつや不安の程度は治療効果および病悩期間と相関関係がなかった. 初診時のHAD尺度による抑うつや不安が強いほど難治性であるとはいえず, また病悩期間が長いほど抑うつや不安が強くなるともいえない.
  • ロピバカインおよびブピバカイン単独との比較
    高田 正史, 福崎 誠, 寺尾 嘉彰, 山下 和範, 高田 美和子, 安藤 優子, 藤永 有博
    2005 年 12 巻 4 号 p. 385-389
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    目的: 鏡視下肩腱板縫合術において, ロピバカインとモルヒネ併用による肩関節内注入を行い, ブピバカインおよびロピバカイン単独の場合と術後鎮痛効果を比較検討した. 方法: 全身麻酔下に鏡視下肩腱板縫合術が予定された39名を対象とし, 無作為に3群に分け, 終刀直後に0.5%ブピバカイン10ml+生食0.1ml (A群, n=12), 0.75%ロピバカイン10ml+生食0.1ml (B群, n=14) もしくは0.75%ロピバカイン10ml+モルヒネ1mg (C群, n=13) のいずれかを注入した. 術後, 安静時の visual analogue scale (VAS値, 100mm), 鎮痛薬 (ブプレノルフィン) 使用量を帰室後30分, 1, 2, 4, 6, 12, 24時間後にそれぞれ測定した. 結果: VAS値に関して, 24時間後にB群およびC群はA群より有意 (p<0.05) に低かった. ブプレノルフィン使用量も術後6~24時間においてB群およびC群ではA群より有意 (p<0.01) に少なかった, しかし, いずれもB群とC群間で有意差を認めなかった. 結論: 鏡視下肩腱板縫合術後の肩関節内注入にはブピバカインよりロピバカインが有用で, ロピバカインは単独でも長時間の鎮痛効果が期待できるが, モルヒネ併用による鎮痛効果の増強はない.
  • 河原 邦枝, 岡田 貴禎, 西原 文夫, 富田 行成, 志賀 達哉, 吉川 大輔, 大竹 哲也, 国元 文生
    2005 年 12 巻 4 号 p. 390-392
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    肺癌の側頭骨転移によって顔面神経麻痺を発症した症例を経験した. 症例は62歳の女性で顔面神経麻痺を主訴に来院した. 白血球とCRPの上昇を認め, 胸部単純X線写真で腫瘍陰影が発見された. 精査の結果, 肺癌の側頭骨転移による顔面神経麻痺と診断した. 腫瘍の転移で顔面神経麻痺を起こすことはまれであるが, 症状が典型でない患者の場合, 転移を疑って精査することが重要である.
  • 今町 憲貴, 串崎 浩行, 土井 克史, 齊藤 洋司
    2005 年 12 巻 4 号 p. 393-395
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    われわれは周術期に使用した弾性ストッキングにより浅腓骨神経の圧迫性神経障害を生じた症例を経験した. 患者は45歳, 女性. 卵巣腫瘍のため硬膜外麻酔併用の全身麻酔下で腹式単純子宮全摘術が施行され, 手術, 麻酔ともに問題なく終了した. 術後55日目に, 左足背のしびれのため当科に紹介となった. 左足関節部に圧迫痕と色素沈着があり, 圧迫痕部の浅腓骨神経の走行部位に叩打痛が認められた. 問診により, 手術の翌朝, 弾性ストッキングのホール部分がずり上がり左足背で強く絞まっていたことが明らかになった. 本症例は周術期に使用したストッキングによる浅腓骨神経の圧迫性神経障害が最も疑われた. ビタミンB12の内服治療を行い, 約1ヵ月後, 症状は消失した.
  • 平山 徹, 香曽我部 義則
    2005 年 12 巻 4 号 p. 396-399
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    脳内出血, 脳梗塞後に発症した中枢性疼痛の患者に対して, 硬膜外脊髄電気刺激療法 (SCS) が著効を示した症例を経験したので報告する. 症例は60歳代の女性, 4年前に, 右脳内出血をきたし, 血腫除去術を受けた. その3カ月後に, 脳梗塞により左半身不全麻痺, 続いて3週間後に右半身不全麻痺をきたし, 右上下肢と右眼窩部に灼熱痛とアロディニアがみられるようになった. 頭部CTでは, 右側頭葉と被殻領域に低密度領域 (梗塞巣) がみられ, 脳血流SPECTで両側の視床領域に血流低下を認めた. その後各種疼痛治療を受けたが効果はなく, 2002年9月, 激痛(VAS100/100mm)を訴えて当科に紹介された. リドカイン, チアミラール, モルヒネ, ケタミンを用いたドラッグチャレンジテスト(DCT)では, ケタミンにのみ著効を認めた. しかしながら, 嘔気のためにケタミンの点滴投与による治療は拒否した. そこでケタミンが著効を示す場合に効果の可能性が示唆されているSCSを頸椎C4~C6レベルで試みた. 効果は良好で, 痛みはVAS20/100~30/100mm程度に軽減した.
  • 笹野 信子, 津田 喬子, 祖父江 和哉, 徐 民恵, 富田 幸恵, 勝屋 弘忠
    2005 年 12 巻 4 号 p. 400-403
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    おもに破骨細胞の活動を抑制するパミドロン酸二ナトリウムを従来の治療法に抵抗する難治性のCRPS type I症例に投与し, 疼痛の軽減を認めたので報告する. 症例は30歳, 女性. 8年前に交通事故で左足関節を挫傷後CRPS type Iを発症した. 各種神経ブロック, 腰部交感神経節ブロック, 硬膜外腔挿入電極による脊髄刺激などを行ったが, すべての治療法に抵抗した. パミドロン酸60mg/日を経静脈的に3日間連続投与したところ, 投与終了2~3週間後よりVASの低下を認め, 関節可動域(ROM)の改善も認めた. 従来の治療法に抵抗するCRPS type Iの疼痛軽減に, パミドロン酸二ナトリウムは有効となる可能性がある.
  • 水野 樹, 有田 英子, 花岡 一雄
    2005 年 12 巻 4 号 p. 404-407
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    慢性腰下肢痛に対して, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるパロキセチンの経口投与が有効であった3症例を経験した. 症例1は, 64歳, 男性. 木から転落し第1腰椎粉砕骨折による両下肢不全麻痺に対して脊椎前方固定術および腸骨移植術後, 右下腿と両足の慢性疼痛と抑うつ症状を認めた. 仙骨ブロックを施行後, パロキセチン10mg/日を経口投与したところ疼痛は軽減し, 次いで20mg/日に増量し, 疼痛はさらに軽減した. 症例2は, 65歳, 男性. 第4-第5腰椎間, 第5腰椎-第1仙椎間の椎間板ヘルニアおよび第5腰椎変性すべり症による慢性腰痛・両下肢痛と抑うつ症状を認めた. 仙骨ブロック, エピドラスコピー施行後, パロキセチン10mg/日を経口投与したところ疼痛は軽減し, 続いて30mg/日まで増量し, 疼痛はさらに軽減した. パロキセチンによると思われる勃起障害を認めたが投与を継続した. 症例3は, 74歳, 男性. 第4-第5腰椎レベルの腰部脊柱管狭窄症による慢性の右腰下肢痛と抑うつ症状を認めた. パロキセチン20mg/日を経口投与し, 疼痛は軽減した. しかしパロキセチンの副作用と思われる記憶減退, 健忘を認めたため, 減量, 中止したが, 再度腰痛が増強し, パロキセチン20mg/日を再開した. 3症例とも高齢男性であり, 尿閉の副作用を有する三環系抗うつ薬を避け, パロキセチンを投与した. 抑うつ症状を伴う慢性腰下肢痛においてはパロキセチンが用量依存性に有効となる症例がある. パロキセチンの副作用として, 勃起障害, 記憶障害, 健忘を認めることがある.
  • エピドラスコピーに伴う偶発症について
    水野 樹, 関山 裕詩, 折井 亮, 鎮西 美栄子, 矢島 直, 林田 眞和, 有田 英子, 花岡 一雄
    2005 年 12 巻 4 号 p. 408-417
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    薬物療法, 神経ブロック療法に抵抗性の腰下肢痛に対する硬膜外内視鏡手術 (エピドラスコピー) は, Saberski と Kitahata によって1995年に最初に報告された. 東京大学医学部附属病院では現在までに100症例以上のエピドラスコピーを経験し, 2004年6月にはエピドラスコピーの説明書と同意書を改訂し, 運用を行っている. 現行の説明書と同意書内のエピドラスコピーに伴う偶発症には, (1) 穿刺部痛, (2) 頭蓋内圧亢進症状, (3) 硬膜穿刺, (4) 神経障害, (5) 感染, (6) 出血, (7) アレルギー, (8) 心肺脳肝腎の臓器機能障害, が記載されている. また当院の手術成績として, 4%の頻度で病状の悪化する症例があることが記載されている. しかし, 具体的な偶発症の発生率を, 術中と術後に分けて記載, 説明する必要がある. 当院では, 術中偶発症として穿刺部痛, 腰痛, 下肢痛, 頭痛, 後頸部痛, 高血圧, 頻脈を各数症例, 術後偶発症として頭痛, 後頸部痛を2症例, くも膜下ブロック, 意識障害, 横紋筋融解症を1症例経験している. エピドラスコピーの偶発症は, 過去の硬膜外ブロックの偶発症の報告を参考にすべきである. さらにエピドラスコピーは新しい医療であり, 現時点では不測の偶発症が発生する可能性があることを説明する必要がある. 以上を踏まえ, 2005年5月, 当院でのエピドラスコピーの説明書と同意書の新改訂版を作成した. 多施設でのエピドラスコピーの成績, 偶発症調査を行い, より明確な情報を患者に提示する必要がある.
  • 2005 年 12 巻 4 号 p. 418-421
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2005 年 12 巻 4 号 p. 422-424
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
  • 2005 年 12 巻 4 号 p. 425-431
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
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