透析患者に腰部交感神経節ブロックを施行した後, 腸腰筋内出血・傍脊柱出血を生じ, 治療に難渋した症例を経験した. 症例は, 50歳代後半, 女性. 足趾皮膚潰瘍に対し腰部交感神経節ブロックが施行された. 翌日に退院後, 近医でヘパリン使用下に血液透析を施行された. ブロック後5日目に左大腿痛を訴え救急来院. 腹部CTで, 左腸腰筋内に出血を認めたため, 緊急入院となり, 安静下保存療法を行なった. 透析にはメシル酸ナファモスタットを使用していたが, 透析の度にHb値が低下し, 輸血を繰り返した. 塞栓術も考慮したが, 出血源の近傍より脊髄へ流入する血管が存在したため断念した. 以後も保存療法で経過観察し, ブロック後22日目からHb値は低下しなくなった. しかし, ブロック後37日目, 上部消化管出血を生じ, 再びHb値が低下した. 内視鏡下に止血したが, 腸腰筋内の再出血の可能性も否定できなかったため, MRI, 血管造影を施行したところ, 腸腰筋内の血腫は陳旧化しており, 再出血を疑う造影所見もなかった. その後の経過は安定し, ブロック後55日目に退院した. 透析患者は, 易出血性であるため, ブロックを行なう際は, 透析機関とブロックや透析に関する情報提供を行い, ブロック前後のACTを厳密にコントロールするなど, 出血予防に対する対策が必要と考えられる.
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