開胸術後の創部痛で紹介されたが,悪性疾患による痛みであった2症例を報告する.【症例1】68歳の男性で,左腎癌術後の創部痛はいったん消失したが,手術創にほぼ一致した部位に痛みが再発し,増強してきたので当科を紹介された.脊椎の叩打痛,圧痛はなかったが,腰椎エックス線写真で第12胸椎の椎体高がやや減少しており,椎弓根の陰影が不鮮明であった.造影MRIで,第12胸椎の椎体に腫瘍があり,脊柱管内に浸潤し,左第12胸神経根を圧迫していた.【症例2】65歳の男性で,右気胸術後の創部痛が遷延し,当科を紹介された.胸部エックス線写真で,痛みのある部位周囲の肋骨が不鮮明であった.CTで右第3肋骨が融解していた.生検で肺原発の腺扁平上皮癌と診断された.
手術後に創部痛が遷延,再燃した場合は,悪性疾患の既往がある患者では常に再発・転移を念頭において診察に当たらなければならない.また,悪性疾患の既往がない患者でも痛みの経過が通常の創部痛と異なる場合は悪性疾患の検索が必要である.
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