日本ペインクリニック学会誌
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19 巻, 4 号
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原著
  • 平井 絢子, 住谷 昌彦, 大淵 麻衣子, 小倉 信, 相川 和之, 小暮 孝道, 関山 裕詩, 山田 芳嗣
    2012 年 19 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
    【背景】2008年国際疼痛学会の定義により,椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで生じる脊髄神経根症(Rad-P)は神経障害痛に分類されるが,帯状疱疹後神経痛などの従来からの神経障害痛(cNeP)に比しNSAIDsへの反応性が高く,臨床的にはその病態が異なる可能性が示唆される.そこで,cNePとRad-Pの相違を,マギル疼痛質問票日本語版(MPQ)を用いて,患者の訴える痛みの性質の観点から評価した.【方法】cNeP群362人とRad-P群100人を対象にMPQを調査し,MPQの20要素について因子分析を行った.得られたMPQの要素から2群を効率よく分類できるか判別分析を用いて検討した.【結果】因子分析では両群ともMPQの20要素中それぞれ14要素が抽出され,そのうち11要素が共通していた.抽出された要素を用いた判別分析では,両群の判別率は41%であり,痛みの性質から2群を分類できなかった(p=0.99).【考察】異なる痛みの性質は異なる病態に起因すると考えられている.MPQで評価したRad-P患者の痛みの性質はcNePと類似しており,その病態はcNePと同様であることが示唆された.
  • 荻野 祐一, 小幡 英章, 肥塚 史郎, 戸部 賢, 関本 研一, 齋藤 繁, 木村 裕明
    2012 年 19 巻 4 号 p. 465-469
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
    FiRST(fibromyalgia rapid screening tool)は,線維筋痛症(FM)を効率よく検出するために開発された問診表で,6項目の「はい・いいえ」で答える簡単な問診からなる.われわれは,原著者から許可を得たのち,FiRST日本語版を作成した.当科ペインクリニック外来において日本語版を用いたアンケート調査を行い,全71名の慢性痛患者から回答を得た.原著と同様,6項目中5項目以上陽性(「はい」と答える)をCut-off値とすると,FiRSTの6項目すべてにおいて,FMと他の慢性痛疾患群との群間比較で有意差を認め,感度は100%(11/11名),特異度は74.4%(51/60名)であった.FiRSTの6項目の問診は,線維筋痛症の実体をよく表していると考えられた.
  • 梶山 誠司, 加藤 貴大, 濱田 宏, 河本 昌志
    2012 年 19 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下肺癌手術を受けた98名の患者を対象に,ロピバカイン(1.5 mg/ml)とフェンタニル(2 μg/ml)を用いた患者自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)とモルヒネ(1 mg/ml)を用いた静脈内患者自己調節鎮痛(IVPCA)の術後鎮痛効果と副作用について後ろ向きに検討した.安静時においては,痛みに関する視覚アナログスケール(VAS)が30 mm未満の症例が大部分を占めていたが,体動時においては,手術当日のVASがPCEA群で48.5 mm,IVPCA群で60.3 mmと,体動時痛が認められた.副作用は,嘔気・嘔吐が最も多く,PCEA群18%,IVPCA群25%で差がなかったが,鎮静度(sedation score)はIVPCA群で有意に高かった.今回,肺癌VATS術後の体動時痛に対し,十分な鎮痛効果が提供されていなかった可能性があることが示された.
  • 木下 真佐子, 橋爪 圭司, 渡邉 恵介, 林 浩伸, 古家 仁
    2012 年 19 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    【目的】髄液漏出の検出にRI脳槽造影やCT脊髄造影が用いられるが,両者の直接比較はない.国際頭痛分類基準を満たす特発性低髄液圧性頭痛18症例で両検査の所見を比較した.【方法】対象は男/女=8/10,平均年齢41.7歳,特に誘因なく典型的な起立性頭痛を発症し,造影脳MRIにて全周性硬膜増強を認め,硬膜外自家血パッチで治癒し,特発性低髄液圧性頭痛と診断された.RI脳槽造影は腰椎穿刺してインジウム111を投与し経時的にカウントし,CT脊髄造影はイオヘキソール10 mlを髄腔内注入し全脊椎CTを撮影した.【結果】RI脳槽造影で間接所見(早期膀胱集積,上行遅延)は全症例でみられたが,直接所見(傍脊椎集積)は12症例(検出率67%)であった.CT脊髄造影では,傍脊椎集積を認めなかった6症例を含め全症例で造影剤の硬膜外貯留を認め,その部位は主に頸・胸椎であった.RI脳槽造影は,腰・仙椎の正常神経根鞘を検出した場合があった.【結論】CT脊髄造影による硬膜外貯留の証明は,現に今,漏出している髄液瘻の存在を意味する.典型的な髄液漏出の診断には,RI脳槽造影よりもCT脊髄造影が鋭敏であった.
  • 平田 和彦, 比嘉 和夫, 廣田 一紀, 岩下 耕平, 崎村 桂子, 池田 真由美, 検見崎 裕, 柴田 志保
    2012 年 19 巻 4 号 p. 482-489
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    非急性帯状疱疹(皮疹発症30日以上)の痛みの治療での三環系抗うつ薬の使用状況を明らかにするために,痛みが軽減していた内服量を非急性帯状疱疹の58症例で後ろ向きに検討した.当科を受診前に,抗うつ薬を26%が,抗痙攣薬を5%が内服していた.当科では88%の患者がアミトリプチリンまたはノルトリプチリンを,10-150 mg/日内服していた.58%の患者が抗痙攣薬のガバペンチンかバルプロ酸を内服していた.
    アミトリプチリンの服用量の中央値は初回の10 mg/日(四分位範囲,以後略10-20 mg)から4週間後に50 mg/日(22.5-93.8 mg)に増量し,平均の痛みの強さは視覚アナログスケール(VAS)で66.5 mmから23.2 mmに軽減した.ノルトリプチリンの服用量の中央値は初回の10 mg/日(10.0-20.0 mg)から4週間後に30 mg/日(21.3-50.0 mg)に増量し,平均の痛みの強さはVASで60.6 mmから27.9 mmに軽減した.非急性帯状疱疹の痛みは三環系抗うつ薬で軽減するが,三環系抗うつ薬の認容量は個人差が大きく,至適投与量は症例ごとに違いがある.
  • 橋爪 圭司, 渡邉 恵介, 木下 真佐子, 藤原 亜紀, 古家 仁
    2012 年 19 巻 4 号 p. 490-496
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    【目的】むちうち症が,外傷による髄液漏出に起因するとの主張がある(外傷性脳脊髄液減少症).診断はRI脳槽造影が重視され,腰・仙椎での漏出が報告されている.特発性脳脊髄液減少症では,CT脊髄造影による診断の報告があり,頸・胸椎での漏出が多い.髄液漏出に関するRI脳槽造影とCT脊髄造影の比較はほとんどない.むちうち関連障害41症例で,両検査所見を比較した.【方法】交通外傷などの後に諸症状に病悩する41症例(男/女=19/22,平均38.0歳)を対象に,RI脳槽造影(111-インジウム1 ml使用)とCT脊髄造影(イオヘキソール10 ml使用)を行い,所見を比較した.【結果】RI脳槽造影で傍脊椎集積が20症例(49%)で認められ,19症例が腰・仙椎部であった.しかしCT脊髄造影では硬膜外貯留は1症例も認められず,傍脊椎集積と部位や形態が一致する神経根鞘や嚢胞が認められた.【結論】むちうち関連障害41症例の49%で傍脊椎RI集積が認められたが,CT脊髄造影所見と比較した結果,活動的な髄液瘻の存在は否定的であった.
  • 中村 隆治, 大下 恭子, 仁井内 浩, 田口 志麻, 中布 龍一, 佐伯 昇, 福田 秀樹, 濱田 宏, 河本 昌志
    2012 年 19 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    プレガバリンは本邦での製造販売承認から日が浅く,投与法や効果に対する知見が不足している.当科では新規にプレガバリンを投与する際のプロトコール(従来の鎮痛薬を可能な限り中止し,開始量75 mg/日とする)を作成した.今回,これに基づくプレガバリン投与による痛みスコアの変化と副作用の発生状況を後方視的に検討した.対象は2010年8月から11月にプレガバリン処方を開始した帯状疱疹後神経痛の11患者とした.投与前と維持量での痛みスコア(0-10)は持続痛で3[0-8]と3[0-7],発作痛で4[0-9]と2[0-7]であり,発作痛が有意に減少した(中央値[最小-最大]).維持投与量は中央値300 mgで,決定理由は増量不要4例,ふらつき4例,体重増加2例,むくみ1例,眼症状1例(中止),上限量到達1例だった(重複あり).帯状疱疹後神経痛に対して,発作痛を低下させる効果が確認された.一方,副作用のために最高用量まで増量ができない患者が11例中5例あったため,投与開始時は少量から始め,増量が必要であれば慎重にすることが望ましいと考えられた.
症例
  • 御村 光子, 本間 英司, 枝長 充隆, 宮本 奈穂子
    2012 年 19 巻 4 号 p. 503-507
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/03
    ジャーナル フリー
    脊髄刺激装置植込術後にも強い痛みが残存する場合や経過中痛みの部位に刺激が得られなくなる場合がある.このような状況で新たにリード線を挿入し痛みの部位すべてが刺激で被覆された結果顕著な鎮痛効果を得た3症例を紹介する.下肢の複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS),腰椎手術後の腰下肢痛,腰部脊柱管狭窄症の3症例であった.いずれも脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)が行われていたが,CRPS症例においては経過中に痛みの部位に刺激が得られなくなり,腰椎手術後,脊柱管狭窄症の2症例では強い腰下肢痛がSCS開始後にも残存していた.3症例において抗菌薬投与下に新たなリード線を追加しトライアルを行ったところ,残存する痛みが1/2以下となった.後日トライアルに基づいて脊髄刺激装置植込術を行い満足しうる鎮痛効果を得た.感染のリスクを低下させるためトライアル期間を1日間としたが,SCSを経験した症例では短期間であっても効果を適切に評価できる可能性が高い.脊髄刺激装置の機能的進歩もあるため,SCSにより十分な鎮痛効果が得られなくなった症例においても新たにトライアルを行う意義がある.
  • 原田 紳介, 太田 周平, 小川 賢一, 新堀 博展, 寺田 祥子, 後藤 隆久
    2012 年 19 巻 4 号 p. 508-511
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/03
    ジャーナル フリー
    くも膜下鎮痛法に合併した遅発性髄液漏により皮膚障害を生じ,カテーテル感染に至った1例を報告する.57歳の男性.直腸がん術後再発による左下肢痛に対し,くも膜下鎮痛法を行った.硬膜外腔カテーテルポートを代用し,硬膜外針で硬膜を穿刺後,カテーテルをくも膜下腔に留置した.良好な鎮痛が得られたが留置8週間後に髄液漏で皮膚障害を生じ,9週間後,経皮的にカテーテルが感染し抜去した.現在,髄液漏に対する確立された治療法はないが,本症例では感染を防ぐために入院下でより積極的な髄液漏対策を行うべきだった.また,髄液漏のリスクを最小に抑える専用デバイスの開発が,感染リスクの軽減に必要である.
  • 小原 洋昭, 田畑 麻里, 有島 英孝, 廣瀬 宗孝
    2012 年 19 巻 4 号 p. 512-515
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/03
    ジャーナル フリー
    項部と両肩の痛みを主訴に紹介され,神経ブロックや内服治療にて一時的に症状の軽減がみられていたために,診断が遅れたがん性髄膜炎の1症例を報告する.54歳の女性で,乳がん術後8カ月目より項部から両肩にかけての痛みが出現し,外科にてMRI,CT検査を施行するも転移を疑わせる所見がないため当科紹介受診となった.初診時には項部と両肩に痛みがあったため後頭神経ブロック,トリガーポイント注射を施行したところ症状の軽減がみられ,また不眠もあったがチザニジン塩酸塩とロフラゼブ酸エチルの内服にて良眠が可能となっていた.しかしその3週間後より頭痛の増悪,耳鳴,複視が出現したため脳外科紹介となり,髄液検査にてがん性髄膜炎と診断された.がん性髄膜炎は画像診断にて指摘できなければその診断は髄液検査によってのみ確定されるが,どちらも検出率はさほど高くない.そのため症状が進行性で,治療に抵抗性の場合は悪性腫瘍の存在を念頭に置き,髄膜刺激症状の有無を入念に診察する必要がある.
  • 齋藤 朋之, 橋本 雄一, 立川 真弓, 島崎 睦久, 新井 丈郎, 奥田 圭子, 斎間 俊介, 安達 絵里子, 奥田 泰久
    2012 年 19 巻 4 号 p. 516-518
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/03
    ジャーナル フリー
    神経障害痛に対する各治療ガイドラインで第一選択薬であるプレガバリンの通常初回投与量は150 mg/日とされる.主な副作用に浮動性めまい,傾眠,浮腫および体重増加などがあり,強く発現した場合はその投与の継続を中止せざるを得ない場合も少なくはない.今回,他施設にて150 mg/日の投与が開始されたが,副作用のために投与が中止された4症例に対して,当科ペインクリニック外来において再度75 mg/日から開始して,その後に重篤な副作用は発現せずに継続および増量投与が可能となった症例を経験したので報告する.特に副作用が生じやすい高齢者などでは,初回は少量投与で開始し,徐々に増量する方法が推奨される.
  • 坂本 昇太郎, 高雄 由美子, 上嶋 江利, 柳本 富士雄, 前川 信博
    2012 年 19 巻 4 号 p. 519-522
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/03
    ジャーナル フリー
    術前5日前の凝固系検査では異常のない患者に硬膜外麻酔併用全身麻酔を行った際,硬膜外穿刺部から多量の出血を認めた症例を経験した.術直後の凝固能検査では,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は正常値であったが,プロトロンビン時間(PT),トロンボテスト(TT),ヘパプラスチンテスト(HPT)が異常値を示しており,これらの結果より,出血はビタミンK依存性凝固因子である第VII因子の低下が原因であると疑われた.本患者は,術前よりイレウス症状を呈しており,長期の絶食,セフェム系抗生物質の投与が行われていた.これらの要因が重なり,ビタミンKが欠乏したと考えられた.凝固障害の原因判明後,ただちにビタミンKおよび新鮮凍結血漿投与が行われ,出血傾向は改善され,後遺症を残すことはなかった.長期の絶食患者に抗生剤を投与する際にはビタミンK欠乏に注意が必要である.
  • 伊藤 昌子, 渡辺 弘道, 金子 裕子, 井上 由実, 肥川 義雄
    2012 年 19 巻 4 号 p. 523-526
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
    左下肢切断後に発症した幻肢痛に対して,硬膜外ブロックと坐骨神経パルス高周波療法が奏効した症例を経験したので報告する.症例は73歳女性,下肢閉塞性動脈硬化症を罹患し膝下で左下腿切断術を受けた.術直後より下腿の断端痛と幻肢痛が出現した.薬物療法でも痛みのコントロールがつかず,術後15日目に持続硬膜外ブロックを試みたところ痛みは回数,程度ともに軽減した.その後超音波ガイド下に局所麻酔薬による坐骨神経ブロックを施行し効果を認めたので5日後に坐骨神経に42°C180秒のパルス高周波療法を行った.それにより断端痛と幻肢痛は完全に消失した.
  • 大路 牧人, 境 徹也, 樋田 久美子, 澄川 耕二
    2012 年 19 巻 4 号 p. 527-530
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    プレガバリンは神経障害痛に対して有用な薬剤であるが腎機能障害患者における使用法は確立していない.今回われわれは,高度肝腎機能障害を有する患者において急性帯状疱疹痛に対するプレガバリンの使用を経験した.症例は65歳の男性,3年前に肝移植術,2年半前より腎硬化症で慢性腎不全,半年前より慢性拒絶反応で肝不全となり免疫抑制療法中であった.6日前に帯状疱疹の診断で入院し,帯状疱疹痛の軽減目的に当科を紹介受診した.プレガバリンを25 mg/日で開始し痛みは軽減したが,8日目に浮動性めまいと平衡感覚障害が出現し投薬を中止した.10日目より腎機能の悪化のため透析導入となった.透析により副作用は減弱したが痛みが増強し,18日目よりプレガバリンを12.5 mg/日で投与を再開した.痛みは軽減し副作用も軽度であった.しかし,徐々に意識障害が出現したため,プレガバリンの投与を中止した.中止後に意識障害が肝性脳症によるものと判明した.プレガバリンは腎排泄性であり,腎機能障害患者では障害程度に応じて用量をきめ細かく調節する必要がある.また,肝機能障害患者ではプレガバリンの副作用と肝性脳症の鑑別に留意する必要がある.
  • 米本 紀子, 森本 昌宏, 白井 達, 岩元 辰篤, 柴 麻由佳
    2012 年 19 巻 4 号 p. 531-534
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    硬膜外ブロック施行後に,脊髄虚血,くも膜下出血,硬膜外血種の発症をみた.ブロック施行5時間後,突然の腹痛と進行する両下肢麻痺を自覚し救急外来を受診したが,MRI上硬膜外血腫による脊髄圧迫所見はなく,髄膜嚢胞内の血液貯留よりくも膜下出血が疑われた.腹痛発症5時間後には腹痛と下肢の脱力感は軽快し帰宅した.
    2日後に両下垂足が残存していたため胸腰椎MRIを撮影したところ,複数箇所にわたる少量の硬膜外血腫とくも膜下出血,Th12~L1レベル脊髄内の虚血様変化を確認した.また頭部CTでも少量のくも膜下出血が疑われた.25日後,MRI上硬膜外血腫や脊髄の虚血様変化,くも膜下出血は消失したが下垂足は残存した.
    本症例では脊柱管内の血流変化により出血性静脈梗塞を生じたと考える.発症早期の脊髄虚血はMRIでの診断は困難であるが,拡散強調像では陽性所見がみられるので脊髄虚血を疑う場合には必要と思われる.
    頻度は少ないものの,硬膜外ブロック施行時にはこれらの合併症の出現に留意し,神経症状を慎重に評価すべきと考えられた.
  • 中尾 浅香, 田口 仁士, 新宮 興, 増澤 宗洋, 大石 敬子, 中尾 みどり
    2012 年 19 巻 4 号 p. 535-539
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    著者らは1999年から痛みの緩和が困難ながん性痛に「くも膜下ベタメタゾン投与法」を施行してきた.今回,2年で計18回2クールのくも膜下ベタメタゾン投与法を施行した症例を経験した.患者は70歳男性で,第12胸椎悪性腫瘍に伴う腰下肢痛があり,放射線や薬物治療は無効で寝たきり状態となった.ベタメタゾンの腰部くも膜下投与を2回行ったところ,痛みは半減し,3回施行後からさらに痛みが減弱して補助具での歩行が可能となった.5カ月間の治療後も1年以上の優れた鎮痛が得られた.しかし,同腫瘍が増大して右下肢痛の増強と歩行困難が生じた.第2クールを開始したが,2~3日の鎮痛効果しか得られず,ADLが低下して全身状態も悪化した.不十分な効果は,腫瘍の増大と脊椎の支持性低下によると考えられた.この方法は,がん病変の進行による効果減少の問題はあるが,合併症や副作用は観察されず,第1クール治療後には長期間の良好な痛みの緩和と活動性の改善が得られており,脊椎腫瘍によるがん性痛に対して病期によっては有効な鎮痛法の一つとなりうる可能性を持っている.
  • 長尾 嘉晃, 柳本 富士雄, 大杉 聡宏, 藤井 あかり, 二木 美由希, 村川 和重
    2012 年 19 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    [早期公開] 公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    本邦における脊髄刺激発生装置(IPG)は腹部に植え込むのが一般的である.臀部へのIPG植え込みは,手術の侵襲度,患者のQOL,美容の点から優れており欧米では積極的に適応されている.しかし日本人の臀部は小さく,坐骨高も低く解剖学的な観点より適さない方法と考えられていた.今回,2010年に本邦での適応が認められた世界最小のIPGであるEon MiniTMを臀部に植え込み,脊髄刺激療法による痛みの管理を行った症例を経験したので報告する.症例は41歳女性で10年前に腰椎椎間板ヘルニアの手術を行い,その後痛みが再燃したため神経ブロックや薬物療法による治療を行ったが,鎮痛効果が乏しく脊髄刺激療法を適応することとなった.既婚者で挙児希望であり,美容面も考慮して,腹部への植え込みを回避し臀部へのIPG植え込みを行った.10カ月経過した現在も,臀部の植え込み部の違和感なく高い鎮痛効果を認めている.高性能で小さなIPGの出現により,日本人においても臀部へのIPG植え込みによる脊髄刺激療法を積極的に行うことが可能となった.
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