日本ペインクリニック学会誌
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22 巻, 4 号
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原著
  • 吉川 博昭, 酒井 大輔, 洪 景都, 榎本 達也, 中村 かんな, 光畑 裕正
    2015 年 22 巻 4 号 p. 495-497
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    【目的】仙腸関節由来の痛みの頻度は,腰下肢痛を主訴に来院した全患者の1~3割程度を占めると欧米で報告されているが,わが国での頻度に関する報告は村上らによるもの以外には見当たらない.今回,われわれはその頻度をカルテのデータから後方視的に検討した.【対象と方法】2013年1年間に腰下肢痛を主訴とした患者を対象とした.問診・理学的所見による臨床的診断で仙腸関節由来の痛みが疑われた患者に,後仙腸靱帯ブロックを行った.50%以上の痛みの緩和が得られた患者の痛みを仙腸関節由来と診断し,全腰下肢痛患者における仙腸関節由来の痛みの頻度を検討した.【結果】2013年に当科外来を受診した全腰下肢痛患者は459名であった.臨床的診断より仙腸関節が単独の責任病巣と疑われた患者100名のうち,後仙腸靱帯ブロックの効果が確認できたのは90名であった.後仙腸靱帯ブロックにより50%以上痛みが緩和し仙腸関節由来の痛みと診断した患者は55名で,腰下肢痛患者のうち仙腸関節由来の痛みの頻度は少なくとも12.0%(55/459)であった.【結語】当科外来を受診した腰下肢痛患者のうち,仙腸関節由来の痛みの頻度は少なくとも12.0%であった.
  • 平川 奈緒美, 長櫓 巧, 村川 和重, 樋口 比登実, 井関 雅子
    2015 年 22 巻 4 号 p. 498-506
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】わが国のがん性痛に対するインターベンショナル治療の現状を調べ,普及策を検討した.【方法】日本ペインクリニック学会指定研修施設(n=325)と緩和ケア・ホスピス施設(n=258)の代表者に,2011年のインターベンショナル治療の現状についてアンケート調査を行った.【結果】35.8%で回答があった.インターベンショナル治療施行施設は65.2%で,代表者が麻酔科所属の施設では76.5%,代表者が緩和ケア所属の施設では40.8%であった.施行しない理由は,薬のみで鎮痛可能28.1%,施行する医師不在25.9%,麻酔科医不足17.8%,合併症の心配9.6%,適応がわからない5.9%であった.硬膜外ブロック,トリガーポイント注射,星状神経節ブロックの施行頻度が高く,がん性痛に推奨度の高い腹腔神経叢・内臓神経ブロック,持続くも膜下ブロック,くも膜下フェノールブロックの,1年間における1施設あたりの平均施行回数は0.7~1.2回であった.【結論】インターベンショナル治療を施行していない施設は多く,とくにがん性痛に推奨度の高い治療の施行頻度が低かった.今後,インターベンショナル治療の有用性の啓蒙と教育システムの構築が必要である.
  • 明石 奈津子, 増田 豊, 安部 洋一郎
    2015 年 22 巻 4 号 p. 507-512
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】超音波装置の普及に伴い,超音波ガイド下星状神経節ブロック(SGB)が広く施行されるようになった.しかし,これまで効果や薬液の広がりについてランドマーク法SGBとの比較検討はなされていない.今回われわれは,それぞれのSGB施行後の薬液の広がり,臨床効果を比較検討した.【方法】造影剤を混合した局所麻酔薬を用いて,それぞれの方法でSGBを施行した.施行後,コーンビームCT撮影で造影剤の広がりを確認し,パルスオキシメータ(Radical 7TM,Masimo社,USA)で上肢末梢血流量の変化を計測した.臨床効果や合併症の有無も評価した.【結果】対象は17人(ランドマーク群9人,超音波群8人)であった.全症例でSGBは成功し,造影剤は頸長筋内をTh1まで拡散していた.また,SGB側の上肢末梢血流量の変化,臨床効果,合併症についても2群間で明らかな違いはみられなかった.【結論】本研究のランドマーク法SGBと超音波ガイド下SGBは,どちらも正確に手技が施行されており,両手法で施行側の上肢末梢血流量の増加がみられ,交感神経ブロックが成立していることが示された.
講座(特別寄稿)
話題
症例
  • 古谷 友則, 加藤 実, 鈴木 孝浩
    2015 年 22 巻 4 号 p. 525-528
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.4年前転倒し打撲した左膝に複合性局所疼痛症候群(complex regionalpain syndrome:CRPS)を発症し,脊髄電気刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)により寛解中,転倒し右前腕の打撲により右上肢CRPSを新たに発症した.薬物療法のみでは痛みは軽減せず,超音波ガイド下右斜角筋間アプローチ腕神経叢ブロックを併用し治療を行った.自発痛の低下など即時効果に加えて,手関節と指関節の可動域改善と,持続的な鎮痛効果が得られた.2回施行後に理学療法を開始,4回施行後に持続痛とアロディニアの消失,筋力改善を認めた.握力と可動域が改善し,日常生活において右手を使えるようになり通院終了となった.当症例では,痛みのため早期の理学療法の介入が困難だったが,神経ブロックにより痛みの軽減が得られたことで理学療法の介入が可能となった.また,末梢神経ブロックにより持続的な前腕からの痛みによる一次侵害求心性入力を遮断することで,中枢感作の改善が得られ,持続的な痛みの軽減が得られたと考えられる.
  • 江原 弘之, 中村 祐太, 林 摩耶, 上島 賢哉, 豊川 秀樹, 安部 洋一郎
    2015 年 22 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    歩行能力や日常生活動作(activities of daily living:ADL)が低下した腰下肢痛患者3例に対して,足漕ぎ車椅子Profhandを使用したペダリング運動でのリハビリテーションを実施し,その効果を検討した.腰下肢痛の原因疾患は,腰椎椎間板ヘルニア,あるいは腰部脊柱管狭窄症であった.ペダリング運動は,下肢への荷重負荷による痛みを起こさずに長時間運動を行うことができ,廃用症候群を改善することが可能であった.また,痛みの恐怖による回避行動が習慣となった患者の認識を変えることにも効果的であった.全例ともに,歩行能力やADLの改善が認められた.足漕ぎ車椅子は腰下肢痛患者の歩行練習導入前のプログラムとして有用である可能性がある.
  • 安部 真教, 中村 清哉, 比嘉 達也, 大久保 潤一, 垣花 学
    2015 年 22 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.
  • 菊池 元, 上島 賢哉, 明石 奈津子, 清永 夏絵, 安部 洋一郎
    2015 年 22 巻 4 号 p. 537-540
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    電子付録
    胆嚢がん術後再発で腹部痛の訴えのある80歳代の患者に,透視下内臓神経ブロックを予定した.脊椎の変形が強く,またがんによる痛みのため体位に制限があったが,バイプレーン透視を使用して正面像,側面像を同時に確認しながら行い,手技が骨棘に阻害されたときにコーンビームCTを使用して適切に針先の位置を修正することができた.コーンビームCT,バイプレーン透視は短時間で治療を行う必要がある患者や体位に制限がある患者,解剖学的に難易度の高い患者などのブロックに有用である可能性がある.
  • 山崎 裕
    2015 年 22 巻 4 号 p. 541-544
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    メサドンは2013年に臨床使用が開始されたオピオイド鎮痛薬で,他のオピオイド鎮痛薬で十分な痛みの緩和が得られないがん性痛に対して使用される.大量のオピオイド鎮痛薬が必要であった難治性のがん性痛患者において,メサドンに切り替えることで痛みが緩和され,副次的に薬剤費が大幅に軽減できた症例を報告する.症例は55歳,女性.1997年から乳がんの診断にて手術,化学療法,放射線治療などの治療を受けていた.2004年から皮膚転移部の痛みが強くなり,経口モルヒネ720 mg/日,フェンタニル貼付剤200 µg/hなどを使用したにもかかわらず,痛みの軽減は不十分であった.2013年よりオピオイド鎮痛薬をメサドンへ段階的に切り替えた結果,6カ月後にメサドン120 mg/日とフェンタニル貼付剤100 µg/hにて良好な痛み緩和が得られるようになった.その結果,1カ月あたりのオピオイド鎮痛薬に関する費用は約62万円から約24万円に削減することができた.メサドンは大量のオピオイドを要する患者において,痛みの改善と薬剤費軽減の両面で有用と思われた.
  • 吉武 美緒, 眞鍋 治彦, 久米 克介, 加藤 治子, 武藤 官大
    2015 年 22 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.生体肝移植後で免疫抑制剤を内服していた.左第5胸神経領域に重症の帯状疱疹を発症し,皮膚科で抗ウイルス薬による治療を行ったが高度の痛みが続き,当科を発症4日目に受診した.発症9日目からアセトアミノフェンに代えてトラマドール75 mg/日の投与を開始し,リドカインの点滴静注,ノルトリプチリンの内服により急性期の鎮痛を行った.皮疹の痂皮化後は浸潤ブロックを付け加えた.これにより徐々に痛みは軽減し,トラマドール中止後も痛みが遷延・再燃することなく経過した.臓器移植後の免疫抑制状態では,帯状疱疹罹患および帯状疱疹後神経痛への移行頻度が高くなるため,急性期の集中的な治療が必要であるが,選択肢が制限される.非ステロイド性抗炎症薬の効果が乏しく硬膜外ブロックなどの脊髄幹ブロックが禁忌である場合の急性期帯状疱疹痛に,トラマドールは有用であると考えられた.
  • 川口 慎憲, 筒井 紗也子, 吉川 晶子, 田邉 豊
    2015 年 22 巻 4 号 p. 549-552
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,重篤な開胸術後痛の患者に対しリドカイン点滴静注が有効であった症例を経験したので報告する.患者は79歳の女性で,右肺がんの診断で右肺下葉切除を受けた.その際に第6肋骨と肋間神経を切断した.術後20日目頃より痛みが増強し,非ステロイド性抗炎症薬,プレガバリン内服で改善が認められなかったため術後30日目に当院ペインクリニック外来を受診した.来院時の痛みの強さはnumerical rating scale(NRS)8/10で,手術創に沿った部位,とくに胸骨周囲の痛みが強かった.肋間神経ブロックで痛みは完全に消失したが,数時間で効果は消失した.内服薬を処方し肋間神経ブロックを数回行ったが痛みの改善効果は認めなかった.術後52日目よりリドカイン100 mgの点滴静注を開始したところNRSは3まで改善し,その効果は2日後まで持続した.再度同量のリドカインを投与したところ同様の効果を認めたため,本治療を継続した.60日目より硬膜外ブロックを併用したところ痛みはさらに改善し,90日目には痛みが完全に消失した.難治な開胸術後痛に対し,リドカイン点滴静注が有効であった症例を経験した.治療抵抗性の開胸術後痛に対して,リドカイン点滴静注を検討してもよいと考える.
  • 佐藤 泉, 間宮 敬子, 稲垣 泰好, 阿部 展子, 高畑 治, 岩崎 寛
    2015 年 22 巻 4 号 p. 553-557
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    プレガバリンが有効であった硬膜穿刺後頭痛(postdural puncture headache:PDPH)の3症例を経験した.症例は40~50歳代の女性であり,硬膜外麻酔施行時に1例では髄液の逆流,他の2例ではparesthesiaがみられた.術翌日から頭痛が出現し,術後3日目からプレガバリン75 mg/日の内服を開始した.頭痛の程度はプレガバリン150 mg/日で改善が認められた.PDPHの治療法として従来の補液,薬物療法,硬膜外自己血パッチに加え,プレガバリン150 mg/日は有用と考えられる.
  • 樋田 久美子, 境 徹也, 原 哲也
    2015 年 22 巻 4 号 p. 558-561
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.肺がんに対して放射線照射治療予定であったが,左大腿前面部痛のため治療に必要な体位保持が困難であり,治療が延期となっていた.当院放射線科でプレガバリン75 mg/日,トラマドール・アセトアミノフェン配合錠(TA配合錠)2錠/日が投与されたが,体位保持は困難であったため,当科紹介受診となった.脊椎MRIと身体所見から脊柱管狭窄症による左L3神経根症と考え,プレガバリンおよびTA配合錠の増量とプレドニゾロン5 mg/日の内服投与を開始し,痛みは軽減した.2日後に透視下腰神経叢ブロックを施行したところ痛みはさらに軽減して仰臥位での体位保持が可能となり,予定されていた放射線照射治療を行うことができた.脊柱管狭窄症による腰下肢痛に対して内服調整と神経ブロックを行い仰臥位での体位保持が可能となったことが,放射線照射治療を進めるための大きな役割を果たした.
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