日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
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23 巻, 1 号
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原著
  • Isao HARAGA, Kazuo HIGA, Shintaro ABE, Ken YAMAURA
    2016 年 23 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    ジャーナル フリー
    電子付録
    Staphylococcus spp., which are nonmotile, are the most frequently isolated pathogens from the catheter of epidural abscesses. The movement mechanisms of Staphylococci remain unclear. We hypothesized that increased bacterial concentration and catheter reciprocal movements correlated with deeper penetration of Staphylococci into the catheterized site. We investigated the correlations among bacterial concentrations on the needle puncture surface and epidural catheter insertion sites, catheter movement, and Staphylococcus aureus growth in deeper layers of the agar. Staphylococci grew in the deeper layers of the agar when bacterial concentrations on the needle puncture surface and catheter insertion sites were increased. When 5-mm reciprocal movements of the catheter were repeated every 12 h over a 72-h period, Staphylococci penetrated the 5-cm-thick agar, the average distance from the skin to epidural space in adults. This resulted in increased Staphylococci concentrations and minor repeated catheter-movements because of physical movements of patients, which may result in the migration of Staphylococci into deeper tissues from the skin surface.
症例
  • 滝本 佳予, 西島 薫, 森 梓, 金 史信, 小野 まゆ
    2016 年 23 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
    全身の痛みを中心とする多彩な症状を訴え心因性多飲を合併する患者に対し,薬物療法・認知行動療法と併せて行った,患者の語りの傾聴と対話を重視した診療が有用であった1例を報告する.症例は68歳の女性,全身の痛みを訴えて当科を紹介受診した.併存合併症として心因性多飲による低ナトリウム血症と意識混濁,むずむず脚症候群,過敏性腸症候群,睡眠障害,失立失歩があり,ドクターショッピングを長年続けた後の受診であった.患者の語りの傾聴と対話により,まず心因性多飲が改善した.次いで痛みの訴えを線維筋痛症・中枢感作性症候群と診断し薬物療法・認知行動療法を実施したところ,ドクターショッピングをやめ症状も軽減した.“説明不能な”痛みの訴えはペインクリニックではたびたび遭遇する.器質的原因が明確ではない疾患の症状を一元的にとらえ,診断治療を行う役目を果たすためには,患者との語り合いにも問題解決への可能性があることが示唆された.
  • 乙咩 公通, 高田 知季, 加藤 茂, 杉浦 弥栄子
    2016 年 23 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
    電子付録
    三叉神経痛の診断基準は患者の主訴によるが,くも膜下出血による高次脳機能後遺障害があり意思疎通が困難で,画像検査でも原因を特定できなかったため,三叉神経痛の治療に難渋した症例を経験した.症例は73歳,女性.主訴は摂食時の右側口腔内の痛み.問診,診察では痛みの詳細な性状は把握できず,頭部CT,MRIでも原因を特定できなかったが,経過から右三叉神経第3枝痛が疑われた.カルバマゼピンを中心とした内服薬と神経ブロックで加療したが,各治療の効果を評価するのは困難であった.痛みは寛解した期間もあったが,再燃を繰り返したため,試験的に開頭術を施行したところ2本の動脈が三叉神経に接触しており,微小血管減圧術を施行した.2本の動脈のうち,1本の存在は画像検査では明らかではなかった.手術は著効し,術後5カ月が経過した現在まで良好な経過を経ている.症例を省みると,本例のような意思疎通困難な患者では,表情などの身体表現をスコア化して痛みを評価する方法を用いていれば,各治療の効果をより正確に評価できた可能性がある.また,画像検査で明らかな原因がなくとも,難治性の三叉神経痛には,試験的な開頭術を考慮すべきことが示唆された.
  • 仙田 正博, 石川 慎一, 上川 竜生, 古島 夏奈, 倉迫 敏明
    2016 年 23 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
    頸部の神経ブロックでは,目的としない部位への薬液の広がりで合併症を生じる可能性がある.今回われわれは,変形性頸椎症に対する深頸神経叢ブロック直後より異常高血圧を示した1症例を経験した.患者は70歳の女性,主訴は左後頭部から上腕への痛みとしびれであった.治療として後頭神経ブロック,浅頸神経叢ブロック,腕神経叢ブロックを施行し,残った後頸部の痛みに計3回の深頸神経叢ブロックを施行した.3回すべてのブロック直後より著明な血圧上昇を示したため,以後の神経ブロックを中止した.星状神経節ブロック後の異常高血圧の報告は複数あるが,深頸神経叢ブロック後の異常高血圧の報告はない.交感神経や迷走神経に近い頸部の神経ブロックでは直後のバイタルサインの確認が重要である.
  • 木村 哲朗, 佐野 秀樹, 鈴木 興太, 中島 芳樹
    2016 年 23 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
    症例は透析療法中の49歳男性で,糖尿病・高血圧を有し,抗凝固薬を内服していた.末梢閉塞性動脈疾患により右前腕の血流が低下し,上腕-橈骨動脈バイパス術と尺骨動脈拡張術を受けたが,第4・5指の虚血と壊死が進行した.同部位の鎮痛目的で当科に紹介された.特に透析中の痛みが強かったため,透析直前に尺骨神経単回ブロックを行い,数時間は痛みが消失した.壊死境界が明瞭となり,末節部での切断術が予定された.周術期の鎮痛目的で持続神経ブロックを考慮したが,出血や感染の懸念から深部のブロックはためらわれ,持続尺骨神経ブロックを計画した.右前腕で尺骨神経近傍に超音波ガイド下にカテーテルを留置し,ロピバカインの持続投与を開始したところ,痛みは著明に軽減した.手指切断術中は,術野での局所麻酔とカテーテルからのロピバカインの追加投与で管理した.術後も持続ブロックを継続し,術後痛と創処置時の痛みに対応した.カテーテル留置期間は52日間であった.神経ブロックやカテーテル留置による合併症はなかった.抗凝固療法中の透析患者の手指壊死痛に対して,持続尺骨神経ブロックを行い安全に周術期管理できた.
  • 伊原 奈帆, 小杉 志都子, 橋口 さおり, 若宮 里恵, 西村 大輔, 森﨑 浩
    2016 年 23 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    49歳,男性.斜台原発脊索腫術後再発頸髄腫瘍摘出術が予定された.両下腿痛を主体としたがん性痛に対してオキシコドン徐放剤を30 mg/日,レスキューにオキシコドン速放剤5 mg/回を内服していた.術後内服困難となるため,術後はオキシコドン注射製剤による経静脈的自己調節鎮痛法(intravenous patient-controlled analgesia:IV-PCA)(持続投与24 mg/日,ボーラス投与1 mg/回)で術後痛管理を行った.術後24時間のオキシコドン注射製剤総使用量は,術前のオキシコドン剤1日使用量と同等であった.術後は,頸部の創部痛が主体であったが,numerical rating scale(NRS)2/10で推移し良好な鎮痛管理をすることができた.また過鎮静,嘔気・嘔吐,呼吸抑制などの副作用も認めなかった.3 post operative day(POD)にIV-PCAを終了し術前同様のオキシコドン内服を再開したが,剤型変更も円滑に行うことができた.オキシコドン注射製剤が使用可能になったことにより,術前からオピオイドを使用している患者の周術期管理がより円滑に行える可能性が示唆された.
  • 阿部 博昭, 住谷 昌彦, 穂積 淳, 大淵 麻衣子, 小暮 孝道, 山田 芳嗣
    2016 年 23 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は神経障害痛の発症の契機となり,薬物療法抵抗性であることが少なくない.有痛性CIPNは患者の日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)を著しく低下させるほか,抗がん剤の減量や休薬,中止を余儀なくさせるなどがん治療の阻害因子ともなるため,治療法の確立が望まれている.セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるデュロキセチンは糖尿病性ニューロパチーに対する第一選択薬であり抗うつ薬でもあるが,有痛性CIPNに対しても有効性が期待されている.わが国では適応疾患にかかわらず60 mgがデュロキセチンの1日投与上限量であるが,米国では抗うつ薬として高用量(120 mg)が承認され,その安全性が確立されている.有痛性CIPNに対する臨床試験として,高用量デュロキセチンを使用しその効果や副作用の発現を1例の患者について評価したところ用量依存性に鎮痛効果を示し,さらにADLとQOLの改善効果は内服中止後も持続した.副作用の発現は軽度の嘔気のみであった.今後の症例の追加が必要であるが,高用量デュロキセチンは有痛性CIPN治療の選択肢の一つになる可能性を示唆する.
  • Rie KOGA, Masako ISEKI, Rie ISHIKAWA, Tatsuya ENOMOTO, Yoshika TAKAHAS ...
    2016 年 23 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    電子付録
    An 83-year-old female patient suffered from herpes zoster in the left arm and developed complex regional pain syndrome-like symptoms, including drug-resistant pain and immobilization of the arm. A dramatic relief of the symptoms was achieved by limited-duration spinal cord stimulation for 1 week combined with physical therapy 40 days after onset, and the patient completely recovered. This clinical course suggests that intensive spinal cord stimulation treatment during the acute phase not only brought about a rapid palliation of pain, but it was also useful to enhance the effects of aggressive physical therapy without blocking any motor nerves.
  • 佐藤 慎, 笹川 智貴, 小野寺 美子, 国沢 卓之
    2016 年 23 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    [早期公開] 公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,頸髄損傷の既往を持つ患者の肩関節手術に対し,周術期の鎮痛法として超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックを施行し,周術期管理を行った症例を経験した.患者は交通外傷による頸髄損傷のため両上肢の母指先端にしびれを訴え,両横隔膜の軽度拳上と拘束性換気障害を認めていた.この患者に関節鏡視下肩関節唇縫合術が予定され,全身麻酔に超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックを併用した.薬液には0.5%ロピバカインを選択し各部位に15 ml投与した.全身麻酔は気管挿管を行い,セボフルラン,フェンタニル,レミフェンタニルで適宜維持した.術中の循環動態は安定し帰室直後のnumerical rating scale(NRS)は2で,術後著明な悪化を認めなかった.横隔神経麻痺は発生せず,上肢のしびれの増悪や運動制限も認めなかった.頸髄損傷患者の肩関節手術に対して超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックは,他のアプローチのような合併症を認めず安全に施行可能であり,痛み管理に有用である.
  • 玉川 隆生, 林 摩耶, 樋田 久美子, 米川 裕子, 深澤 正之, 安部 洋一郎
    2016 年 23 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    ジャーナル フリー
    腹部片頭痛は国際頭痛分類で小児片頭痛に分類されており,小児に発症することが多い疾患である.成人例も報告されているが,症例数が少ないためあまり認知されていない.そのため,診断や治療に難渋することがある.今回われわれは,国際頭痛分類の診断基準に準じて腹部片頭痛と診断し,発作痛に対してトリプタン・インドメタシンが著効して,バルプロ酸が発作予防に効果的であった成人例を経験した.成人腹部片頭痛はまれな疾患ではあるが,その症状は特異的で小児腹部片頭痛の診断基準を用い,発作に関する問診,他疾患の否定により診断が可能な疾患である.また,その治療は片頭痛の治療に準じて行うことで効果が期待できると考える.
  • 清水 雅子, 佐藤 八江, 中本 あい, 吉川 範子, 大平 直子, 立川 茂樹
    2016 年 23 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    ジャーナル フリー
    62歳,男性.自転車で転倒打撲後より体動時に右臀部痛が出現し,痛みで歩行困難になった.X線写真,CT,MRI,骨シンチグラフィで骨折や骨盤内腫瘍はなく,右L4/5椎間孔に軽度狭小があった.Freiberg testとPace testはともに陽性であった.冠動脈狭窄に対する抗血小板薬の内服継続が必要なため,消炎鎮痛薬内服やトリガーポイント注射で加療したが効果はなかった.梨状筋症候群の診断を目的に右坐骨神経ブロックを行ったところ,右臀部痛が著明に軽減した.右L4神経根ブロックでも同様の効果であったが右L4/5椎間孔に造影剤の通過障害はなく,梨状筋症候群と臨床診断した.抗血小板薬は周術期のみ休薬し,全身麻酔下に右梨状筋切離術を施行した.術直後から右臀部痛は軽減し,その後再出現することなく退院した.梨状筋症候群は坐骨神経が生理的狭窄部位である梨状筋部で圧迫を受けて生じるが,腰椎疾患や骨盤部腫瘤性疾患との鑑別が必要である.本症例は,身体所見と複数の神経ブロックによる評価で梨状筋症候群と臨床的に診断し,手術で痛みは軽快した.
  • 中村 里依子, 行木 香寿代, 松井 美貴, 山本 悠介, 石川 貴洋子, 佐伯 茂
    2016 年 23 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/06
    ジャーナル フリー
    電子付録
    症例は28歳,男性.肘部管症候群に対する手術後10カ月が経過しても創部周囲の痛みが改善しないため,当科受診した.初診時,手術瘢痕部とその周囲にしびれるような鋭い動作時痛があり,日常生活や仕事にも支障をきたしていた.ジセステジア,アロディニアのため皮膚に触ることもできなかった.患者は強い医療不信を抱いていたため非侵襲的治療から段階的に治療を進めていくこととした.最初に,直線偏光近赤外線照射,プレガバリンの内服を開始したが効果はなかった.そこで,メキシレチンの内服を開始したところジセステジアが軽減した.末梢性過敏を抑制するため,9%リドカイン軟膏を塗布したところ症状はさらに軽減した.患者—治療者の信頼関係が得られた段階で,腕神経叢ブロックを0.25%レボブピバカインで施行したところ約24時間の無痛が得られた.2回目以降はブロックで無痛状態が得られた段階でアロディニアが最も強い瘢痕部に0.25%レボブピバカイン6 mlを浸潤した.これにより,ブロックの効果が消失した状態であっても,今まで触ることができなかった前腕尺側部に触ることが可能となり,衣類の着脱も容易となるなどADLの著明な改善が得られた.
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