日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
23 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
委員会報告
  • 田中 信彦, 益田 律子, 斎藤 繁, 村川 和重, 宇野 武司, 比嘉 和夫, 田口 仁士, 津田 喬子, 横田 美幸
    2016 年 23 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    日本ペインクリニック学会安全委員会では,2009年より学会認定ペインクリニック専門医指定研修施設を対象に有害事象収集事業を開始した.本稿では2013年の1年間を対象とした第3回調査の結果について報告する.第3回調査では,310施設中199施設(64%)から回答が得られた.第2回調査の結果と同様に,有害事象のほとんどが鎮痛薬・鎮痛補助薬の副作用,または神経ブロック・インターベンショナル治療の合併症であった.薬物に関しては,トラマドール・アセトアミノフェン配合錠によるスティーブンス・ジョンソン症候群,抗菌薬や中枢性筋弛緩薬によるアナフィラキシーショック,トラマドールや抗うつ薬によるセロトニン症候群が重大な有害事象として報告された.神経ブロック・インターベンショナル治療に関しては,肋間神経ブロック,腹腔神経叢ブロックや肩甲上神経ブロックによる気胸,硬膜外ブロック時のくも膜下注入や呼吸循環不全,そして感染性合併症といった神経ブロックに特有な有害事象が多く報告された.これらの副作用や合併症を再認識し,安全対策をさらに強化する必要がある.
話題
症例
  • 神山 彩, 中島 邦枝, 齋藤 繁, 田中 陽
    2016 年 23 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    [早期公開] 公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    塩酸チクロピジンを内服している症例に硬膜外ブロックを行い,急性硬膜外血腫を生じたので報告する.症例は80歳,女性.既往歴に心房細動,脳梗塞後の左不全麻痺があった.帯状疱疹後神経痛の症状の悪化があり,硬膜外ブロック目的に前医から紹介,転院となった.紹介状に抗凝固薬・抗血小板薬内服の記載はなく,家族も把握していなかった.実際には塩酸チクロピジンを内服していたが事前に確認できず,休薬しないまま入院当日にTh4/5から単回投与の硬膜外ブロックを実施した.約8時間後徐々に下肢の運動障害が出現し,温痛覚・触圧覚も消失した.その後Th10以下の対麻痺もあったが,温痛覚・触覚が一部改善するなど進行性ではなかったため経過観察とした.第3病日に胸腰椎MRIを実施し,Th2∼Th11レベルで血腫形成が確認された.外科的治療は行わず,経過観察となった.抗血小板薬内服症例での硬膜外ブロックでは穿刺前に十分な休薬期間をとることが必要であり,穿刺後は常に硬膜外血腫形成の可能性を念頭に置き観察することが大切である.また,脳梗塞,心房細動の既往のある症例や高齢の場合は,詳細な問診の実施とブロックの適用可否の十分な検討が必要である.
  • 小幡 良次, 小幡 由佳子, 白石 義人
    2016 年 23 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性.特発性脳脊髄液減少症の保存的治療中に,意識障害が出現した.頭部MRIで硬膜下血腫が認められ,脳槽シンチグラフィーで腰部からの脳脊髄液漏出が確認できた.意識障害が進行したため,全身麻酔で穿頭血腫ドレナージを行った直後に,自己血16 mlと造影剤4 mlの混合液(合計20 ml)で腰部硬膜外自家血パッチを行った.手術後,意識障害は改善し,頭痛もなくなった.手術直後の頭部CTでくも膜下出血に類似したhigh-density areaが認められたが,post-operative day(POD)1には消失した.POD 8まで保存的治療を継続し,POD 20に退院し,以後再発は起こっていない.進行する意識障害のある硬膜下血腫合併の特発性脳脊髄液減少症に対して,硬膜下血腫除去術先行の硬膜外自家血パッチの同時手術は有効であった.しかし,全身麻酔下の自家血パッチは危険を伴うため,覚醒後に症状と広がりを確認しながら行う必要があった.
  • 行木 香寿代, 亀山 泰人, 中村 里依子, 二階堂 祥子, 水谷 仁, 佐伯 茂
    2016 年 23 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.腹壁瘢痕ヘルニアに対する根治術が,硬膜外麻酔併用全身麻酔下に施行された.手術翌日,硬膜外カテーテルを抜去したところ,創部痛が出現したため硬膜外カテーテルを再挿入した.術後9日目にこれを抜去したところ,数時間後より右大腿部外側の痛みが出現した.術式,診察所見から医原性のmeralgia parestheticaを疑い,外側大腿皮神経ブロックを施行したところ痛みが改善したため確定診断に至った.同神経ブロックを1~2回/週の頻度で施行し,痛みは徐々に軽減し,術後約90日に創部周辺の違和感を残すのみとなり退院した.
  • 今井 美奈, 三枝 勉, 松本 園子, 山口 敬介, 光畑 裕正
    2016 年 23 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    舌痛症は器質的変化がないにもかかわらず,舌に慢性的な痛みやしびれが生じる疾患である.とくに更年期の女性に多く発症し,歯科治療後に発症することが多いが,原因は不明なことが多く難治性である.心因性の問題が大きく関与していると考えられている.疼痛は舌尖部から舌縁部に好発し,摂食時,睡眠時には軽減する傾向がある.今回,舌痛症の診断で西洋医学的治療を行ったが無効であった4症例に対して,証に合わせてそれぞれ四逆散合香蘇散(柴胡疎肝湯の方意),桂枝人参湯,加味逍遙散,四逆散を使用し,numerical rating scale(NRS)で0~3に痛みが改善した.このように難治性舌痛症に対しては証(漢方学的所見)に従う漢方を使用することにより,効果があることが示された.
  • 畔柳 綾, 服部 政治, 山縣 克之, 古井 郁恵, 樋口 秀行, 尾崎 眞
    2016 年 23 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    腸管皮膚瘻に膿瘍を形成し敗血症の危機にある患者に対し,脊髄くも膜下鎮痛法により洗浄ドレナージ管理を可能とし,重篤な皮膚感染を改善させた症例を報告する.症例は54歳の男性.直腸がんによる腸管皮膚瘻から皮膚感染が拡大し,肛門から臀部にかけ広範囲な皮下膿瘍が形成されたため洗浄ドレナージが必要となった.しかし静脈内持続フェンタニル100 µg/h投与下でも,激痛のため洗浄ドレナージ処置が困難であった.継続した洗浄ドレナージを必要としたため,0.5 %等比重ブピバカインを使用して脊髄くも膜下鎮痛を行った.ブピバカインとモルヒネを用いた脊髄くも膜下鎮痛処置により処置の際の痛みを和らげることができ,ドレナージ処置を連日行うことが可能になり,重篤な皮膚感染は改善した.
  • 遠藤 聖子, 宮澤 典子, 神藤 篤史, 簑島 梨恵, 坂本 典昭
    2016 年 23 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    2012年,成人の線維筋痛症(fibromyalgia:FM)に対しプレガバリンが投与可能となり,多くの患者で第一選択薬として使用されている.しかし小児期発症の若年性FM患者におけるプレガバリンの使用報告は少ない.今回若年性FM患者に対し,プレガバリンを投与し有効と考えられた2症例を経験したので報告する.
短報
記録
feedback
Top