腰椎手術後に再度腰痛・下肢痛が出現する腰椎手術後疼痛症候群(failed back surgery syndrome:FBSS)の治療には苦慮することが多い.今回当院外来でFBSS患者での難治性腰下肢痛に対する後仙腸靱帯ブロックの有効性を検討した.2010年4月~2016年3月の6年間に当科に初回受診したFBSS患者64症例のうち,仙腸関節関連痛と認められた55症例について後仙腸靱帯ブロック後の数値評価スケール(numerical rating scale:NRS)の経時的変化,罹患期間,罹患部位,下肢痛の有無などについて検討した.初診時FBSSと診断した64例中,仙腸関節関連痛と認められた55症例について後仙腸靱帯ブロックのみで痛みが軽減した症例は85.5%(47/55)であった.罹患期間は中央値18カ月で,腰痛だけでなく下肢痛を伴う症例が68.1%(32/47)であった.NRSは経時的に有意に低下した.1回のブロックで50%以上のNRS改善を示した症例は53.2%(25/47)であった.後仙腸靱帯ブロックはFBSSの治療に対して有意に疼痛を軽減し,診断的ブロックとしても治療としても有効であり,FBSSには少なくない割合で仙腸関節関連痛が含まれていた.