日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
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24 巻, 1 号
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原著
  • 千葉 聡子, 伊達 久, 千葉 知史, 渡邉 秀和, 滝口 規子, 北村 知子, 山城 晃, 綿引 奈苗
    2017 年 24 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】腰仙部神経根パルス高周波法(lumbosacral nerve root pulsed radiofrequency:LS-PRF)では,当該神経の刺激に伴う筋収縮,すなわちtwitchが出現することがある.LS-PRF施行時のtwitchと造影所見との関連,鎮痛効果を調査した.【方法】対象はLS-PRFを施行した283名で,針先と神経の位置関係を造影所見により評価しtwitchの有無との関連を調査した.LS-PRF前と2~4時間後の痛みを11段階の数値評価スケール(numerical rating scale:NRS)で調査し,短期的鎮痛効果を評価した.単神経根症に対してLS-PRFを施行した症例に対しtwitchの有無による2~4週間後の中期的鎮痛効果を評価した.【結果】神経線維や神経鞘が造影される針先の位置のほうが,周囲に造影剤が広がる位置よりもtwitch発生率は有意に高かった.twitchの有無による2~4時間後の痛み減少度や2~4週後の鎮痛効果に有意差はなかった.【結論】LS-PRF時の針先はより神経に近いとtwitchが出現しやすいが,twitchの有無による短・中期的鎮痛効果に有意差はなかった.
  • 近藤 裕子, 廣瀬 倫也, 前田 剛, 鈴木 孝浩
    2017 年 24 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】緊張型頭痛患者における,低反応レベルレーザー星状神経節照射(SGL)の僧帽筋血流改善作用および筋緊張緩和作用について評価した.【方法】緊張型頭痛患者16名を対象に,SGL施行前後における僧帽筋の血流量変化と筋硬度変化を近赤外分光法(NIRS)と筋硬度計を用いて測定した.【結果】SGL施行前後の比較において,総ヘモグロビン濃度はSGL施行後に統計学的に有意に低下したが,組織酸素化指数(TOI)と筋硬度に有意な変化はみられなかった.【結論】総ヘモグロビン濃度とTOIの推移より,SGLは僧帽筋のうっ血を改善する可能性が示唆された.しかし,SGLによる血流改善は筋緊張緩和をもたらさなかった.
  • 有働 幸紘, 柴田 純平, 久米 健, 新居 憲, 河田 耕太郎, 西田 修
    2017 年 24 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】慢性腰痛患者における痛みの破局思考の強さに影響する因子について複数の問診票を用いて検討した.【対象】3カ月以上続く慢性の腰痛または腰下肢痛を訴えた18名.【方法】年齢,性別,痛み強度(VAS),痛みの性状(SF-MPQ),痛みによる日常生活動作への影響(PDAS),不安・抑うつの評価(HADS),ストレス対処能力(SOC)を評価項目として,痛みの破局思考の強さ(PCS)に対する相関係数(rs)を評価し,さらに重回帰分析を行った.【結果】PCSと有意な相関を示したのは,VAS(rs=0.50,P=0.03),PDAS(rs=0.49,P=0.04),HADS(rs=0.88,P<0.01),SOC(rs=-0.71,P<0.01)であった.重回帰分析の結果,PCSに影響していたのは年齢(回帰係数=0.29,P<0.01),HADS(回帰係数=0.42,P<0.01)とSOC(回帰係数=-0.34,P<0.01)であった(調整済みR2=0.86,P<0.01).【結論】慢性腰痛患者の痛みの破局思考に関連する因子として,不安・抑うつとストレス対処能力が重要である可能性が示唆された.
  • 山縣 克之, 澤村 実紀, 小森 万希子, 尾崎 眞
    2017 年 24 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】われわれは,慢性痛患者のQOL障害を視覚アナログスケール(VAS)に基づいて評価する手法として,patient's impaired QOL-VAS(PIQ-VAS)を考案し,その有用性を検討した.【方法】慢性痛患者58例を対象に横断調査を行い,PIQ-VASと痛みVAS,健康関連QOL尺度SF-8,うつ病スクリーニングツールPHQ-2との関連性を検討した.【結果】PIQ-VASは痛みVASとの間に高い正の相関を,SF-8全下位尺度項目との間に中程度の負の相関を示した.PIQ-VASを従属変数とした変数減少法による重回帰分析では,SF-8各下位尺度項目のうち,独立変数としてRE[日常役割機能(精神)]とBP(体の痛み)が選択された.うつ病が疑われた群(PHQ-2スコア6点中3点以上,n=12)のPIQ-VASは,それ以外の群よりも有意に高値を示した.【結論】PIQ-VASは,慢性痛患者のQOL障害についておおまかな評価が可能であり,精神面での状態評価の意義も含む簡便なツールであることが示唆された.課題として,対象患者数を増やし,治療経過との関連性を調査することが必要と考えられた.
  • 福本 倫子, 渡邉 恵介, 橋爪 圭司, 木本 勝大, 藤原 亜紀, 篠原 こずえ, 川口 昌彦
    2017 年 24 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    種々の内服治療,神経根ブロックや交感神経節ブロック(熱凝固法)ではコントロールできない発症6カ月以内の重症帯状疱疹痛に対する一時的脊髄刺激療法(temporary spinal cord stimulation:temporary SCS)の有効性を後ろ向きに検討した.temporary SCSを行った帯状疱疹痛患者は32例(男性14例,女性18例)で,平均年齢は72.0±8.0歳,発症からtemporary SCS導入までの期間は中央値55.5日(12~165日)であった.32例中20例(62.5 %)でtemporary SCS治療前後の視覚アナログスケール(VAS)値または数値評価スケール(NRS)値に50 %以上の減少があった.有効であった20例中16例について1年以上経過観察したが,14例(87.5 %)は効果が持続していた.重症帯状疱疹痛に対するtemporary SCSの有効性は高く,帯状疱疹後神経痛への移行を予防する可能性が示唆された.
症例
  • 田中 源重, 城戸 晴規, 森本 賢治, 藤原 俊介, 桑村 歩, 南 敏明
    2016 年 24 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/10
    [早期公開] 公開日: 2016/12/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    症例は70歳の男性.Failed back surgery syndromeによる腰下肢痛に対して,脊髄刺激装置の植え込みを施行した.1年間は有効であったが,その後,効果が減弱したため使用していなかった.17年後に刺激装置よりやや頭側の皮膚が壊死となった.金属アレルギーの検索は行っていないが,刺激装置が尾側に移動し,エクステンションの物理刺激が皮膚壊死の原因と考えられた.刺激装置の植え込み後も,鎮痛効果や硬膜外腔の電極の移動の有無を確認する以外に,皮膚の定期的な診察が必要である.
  • 榎本 澄江, 寺田 哲, 木村 理恵, 林 映至, 新井 丈郎, 奥田 泰久
    2016 年 24 巻 1 号 p. 35-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/10
    [早期公開] 公開日: 2016/12/02
    ジャーナル フリー
    吃逆とは,間代性で不随意な横隔膜の痙攣様収縮で,吃逆が48時間または1~2カ月以上持続もしくは発作が再発するものは難治性吃逆と定義されている.今回,当科に紹介された難治性吃逆患者8例の治療を経験したので報告する.横隔神経ブロックと薬物療法で対応して,8例中,吃逆が消失5例,軽減1例,不変2例であった.横隔神経ブロックとバクロフェンは難治性吃逆の治療に有効であることが示唆された.
  • 中尾 謙太, 森本 賢治, 兵田 暁, 藤原 俊介, 南 敏明
    2017 年 24 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹はまれに運動神経障害を合併することがある.今回,抗ウイルス薬を発症早期に投与されたにもかかわらず,右上肢運動麻痺をきたしたが,集学的治療により早期に回復した症例を経験したので報告する.症例は,69歳,男性.右C5,C6領域に痛みを伴う皮疹が出現し,右上肢帯状疱疹と診断され,抗ウイルス薬の内服治療を受けたが,発症1週間後に右肩の挙上・外転困難が出現したため当科紹介受診となった.理学所見として,徒手筋力テストで,右側三角筋1,上腕二頭筋3と著明な低下を認めた.帯状疱疹に合併した右C5,C6神経根障害と診断し,くも膜下ステロイド注入療法,持続硬膜外ブロック下に理学療法を入院下に行った.入院期間は4週間で,退院後も通院加療を継続し,発症21週間後に筋力は正常に戻った.帯状疱疹による分節性運動麻痺の機能予後は良好であるが,その期間は1~2年かかると報告されている.発症早期にくも膜下ステロイド注入療法,持続硬膜外ブロック下に理学療法を行うことで,機能予後の改善と麻痺期間の短縮が期待できると考えられた.
  • 城戸 晴規, 駒澤 伸泰, 宮崎 有, 兵田 暁, 藤原 俊介, 南 敏明
    2017 年 24 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹(herpes zoster:HZ)は知覚神経の障害を主に引き起こすが,炎症が脊髄前角や前根に波及すると運動神経障害を生じる.今回,腹筋の運動麻痺を伴った胸神経領域のHZの診断補助に超音波検査が有用であった,3症例を経験したので報告する.症例1は76歳,男性.X日に右腹部にHZが出現し,近医で鎮痛薬を処方されたが痛みが強く,X+28日に当科を受診した.症例2は75歳,女性.Y日に右側腹部にHZが出現し,近医で鎮痛薬を処方されたが痛みが強く,Y+29日に当科を受診した.症例3は72歳,男性.Z日に右側腹部にHZが出現し,近医で鎮痛薬を処方されたが痛みが強く,Z+80日に当科を受診した.3症例ともに病側側腹部の膨隆と超音波画像で病側腹筋群の筋層の菲薄化を認めたため,腹筋の運動麻痺を伴った胸神経領域のHZと診断した.HZによる胸神経領域の運動麻痺は頻度が低いと報告されている.四肢の麻痺は診断が容易であるが,胸神経領域の麻痺は見逃されやすい可能性がある.腹部帯状疱疹関連痛では運動麻痺に随伴する腹部膨隆や超音波画像での腹筋菲薄化に注意する必要がある.
  • 宮崎 有, 駒澤 伸泰, 城戸 晴規, 兵田 暁, 藤原 俊介, 南 敏明
    2017 年 24 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録
    小児の複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対して末梢神経ブロックを施行し,症状改善を認めた症例を経験したため今回報告する.症例は13歳,女性.転倒による右足関節の捻挫に対し,近医でギプス固定を受けた.その後3カ月間受診せず,両松葉杖での免荷歩行をしていた.ギプス脱後,再度3カ月間受診をせず,右足部の腫脹,痛み,運動障害を認めたため,総合病院整形外科を受診し,CRPSと診断された.入院のうえ加療するも痛みによりリハビリテーション困難となり,当院ペインクリニック科に紹介となった.持続硬膜外麻酔を施行するも,リハビリ中の体動による抜去を繰り返したため,持続坐骨神経ブロック,大伏在神経ブロックを併用し,症状の改善を認めた.さらに病院関係者だけでなく両親および学級担任を含めた心理社会的サポートを追加することで,運動療法を継続でき寛解を得た.小児のCRPSに対して心理社会的なサポートおよび末梢神経ブロックと運動療法の併用は有効な可能性がある.
  • 小畑 ダニエル, 藤井 洋泉, 香曽我部 義則, 梶木 秀樹
    2017 年 24 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    上肢のしびれと痛みを主訴に来院し,感覚障害に加え運動神経障害がみられた症例を経験した.器質的疾患を疑ったが,それを疑わせる所見はなかった.後に下肢の神経障害も出現し精査を行った結果,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と診断された.多発性単神経障害の鑑別診断を行う際には,本症候群を含めた全身性疾患を念頭に精査を進めることが大切である.
  • 溝渕 敦子, 植松 弘進, 大迫 正一, 博多 紗綾, 藤野 裕士, 松田 陽一
    2017 年 24 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    症例1は56歳,女性.右肩腱板断裂修復術後から右肩の痛みと関節可動域(ROM)制限が1年9カ月残存し,薬物治療や神経ブロック治療を行っても改善しなかった.右肩甲上神経にパルス高周波療法(PRF)を施行したところ,ROM制限は著明に改善し,痛みも徐々に軽快した.症例2は79歳,女性.約9年前の人工膝関節置換術(TKA)後から左下腿と膝の痛みを自覚し,膝の屈曲制限が残存していた.左伏在神経にPRFを行ったところ,直後から良好な鎮痛が得られ,膝関節の屈曲制限も著明に改善した.1カ月後に痛みが再燃したため,再度伏在神経にPRFを行い,痛みは消失した.症例3は73歳,女性.5年前のTKA後から左下腿前面にアロディニアが出現し,治療抵抗性であった.左伏在神経PRFを施行し,直後からアロディニアは軽快した.3症例ともPRF直後から鎮痛効果があり,6カ月以上効果は持続している.従来の治療で改善しなかった遷延性術後痛に対し,末梢神経PRFが有効であった上記3症例について文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 愛枝, 住谷 昌彦, 榎本 有希, 穂積 淳, 阿部 博昭, 井上 玲央, 山田 芳嗣
    2017 年 24 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    乳がん治療期の疼痛に乳房切除後痛症候群が知られている.痛みによる不動化により,可動域制限や痛み・浮腫などのCRPS様症状が遷延し治療に難渋した症例と,薬物療法に加え運動療法・認知行動療法により不動化を解除し痛みが改善した症例を経験した.がん治療中の痛みへの早期の運動療法・認知行動療法を含めた包括的・積極的な介入は痛みの改善だけでなく,上肢機能改善や心理面での改善をもたらし,患者のQOL改善と社会復帰に貢献すると考えられた.
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