目的: 変形性膝関節症は中高年層に多い慢性疾患で, 治療期間も長期にわたることから, その薬物療法においてNSAIDs内服による副作用や頻回の関節内注入による化膿性膝関節炎あるいはステロイド関節症などに悩まされる場合も少なくない. われわれは変形性膝関節症の薬物療法に副作用の頻度が少ない漢方薬を取り入れている. 今回, 変形性膝関節症の疼痛に対してNSAIDsと漢方薬の鎮痛効果について比較検討を行なった.
対象と方法: 変形性膝関節症で痛みを訴える患者 (67例)に, NSAIDsおよび漢方薬を投与し, retrospective に3群に分類した. A群 (n=10): NSAIDs群, B群 (n=29): 漢方薬群, (C群 n=28): NSAIDs+漢方薬併用群. NSAIDsはプロピオン酸を中心に5種類, 漢方薬は漢方の『証』に従い,『利水剤』を中心に12種類が投与された. 痛みの改善度をペインスコアで評価し, 3群間で比較した.
結果: ペインスコアはA群 (5.5±2.8), B群(2.0±2.2), C群 (3.0±2.5) で, A群に対して, B群およびC群で有意にペインスコアの改善を認め, B群・C群間には有意差を認めなかった.
結論: 本研究は変形性膝関節症における漢方薬の有用性を示している.
抄録全体を表示