目的: 多くの救急患者は疼痛を主訴としているが, 救急診療のなかで疼痛緩和療法 (ペインクリニック) についてはあまり論じられていない. そこで, 救急外来でペインクリニック的治療の必要性について検討した.
方法: 平成7年度に佐賀医科大学附属病院救急部に疼痛を主訴として来院した患者は全救急来院患者6,815名の30% (2,030名; 男974人, 女1,056人) で, その患者を本研究の対象として, 来院患者の年齢, 性別, 来院時刻, 疼痛部位, 疼痛原因疾患について分析した.
結果: 60%の疼痛患者は準夜と深夜帯に来院し, そのうち15歳以下の患者は準夜に最も多く, 16歳以上の患者は日中に来院する傾向が認められた. 疼痛部位については, 腹痛が最も多く, 上腹部痛は男性に, 下腹部痛は女性に多い傾向が認められた. 次に耳痛, 頭痛, 眼痛, 四肢痛が多かった. 疼痛を訴えた救急来院患者の14% (291名) では, 打撲などによる体の局部の痛みが最も多く, 次に頭痛, 脊椎症, 神経痛や癌性疼痛などであった. そのほかに尿管結石のような鎮痛を目的として来院する患者も170名いた.
結論: 痛みに年齢や性別, 来院時刻に特徴があり, ときとして身体的障害を起こし, 鎮痛薬中毒者や精神障害者として扱われていることもある. ペインクリニック対象の疼痛は緊急に処置しないと死亡するものではないが, 耐えがたい痛みのために時刻に関係なく来院する. 以上のことから, 救急外来にてペインクリニック的治療の必要性が感じられた.
抄録全体を表示