仙骨疲労骨折は運動選手や骨粗鬆症の高齢者でみられるが,今回50歳代男性で当初転移性仙骨腫瘍を疑った症例を経験した.患者は身長173 cm,体重100 kg(1年間で20 kgの体重増加).初診4カ月前にごみ収集の仕事を開始し,1日100~200回のごみ収集車の乗降を繰り返す.初診1カ月前ごろから尾骨部の痛みが出現し右臀部から下肢後面に痛みが広がり,歩行困難となり疼痛が強いため当ペインクリニックへ紹介された.腰椎MRI T1強調仙骨冠状断像で転移性仙骨腫瘍を疑い,A大学放射線科に紹介し骨生検を施行,疼痛に対して放射線科でオキシコドンが導入された.生検で骨髄炎が確認されたが,感染徴候はなく,オキシコドンの投与で経過を観察.初診後51日に撮影したCTで仙骨疲労骨折が判明.その後,疼痛は次第に軽減し,オキシコドンも減量中止でき初診後236日に終診となる.坐骨神経痛を伴う臀部痛患者では仙骨疲労骨折の鑑別も必要である.仙骨疲労骨折の診断では生活歴の把握も重要で,仙骨部を十分に撮影するMRI撮影が必須である.
思春期の四肢の痛みは,原因不明の成長痛と診断されることも多い.類骨骨腫は原発性良性骨腫瘍の10%を占める疾患で,ペインクリニックで遭遇することはまれである.17歳の女性が夜間覚醒を伴う左肘の痛みでペインクリニックを受診した.痛みは半年ほど前から徐々に増強し,近医でX線写真を撮影されたが原因不明であった.受診時にはnumerical rating scale(NRS)で9/10の安静時痛があり,肘関節の熱感と腫脹,軽度の伸展障害を認めた.痛みはロキソプロフェン内服でNRS 3/10まで軽減するが,6時間程度で再燃した.整形外科と連携し画像検査をしたところ,CTで上腕骨肘頭窩に石灰化を伴う約3 mmの骨透亮像が指摘され類骨骨腫が疑われた.類骨骨腫は整形外科により関節鏡下に掻爬され,痛みは消失した.類骨骨腫は若年に多く,典型的な症状は夜間増悪を伴い非ステロイド性抗炎症薬が著効する痛みである.診断は画像検査でなされるが,特に関節内類骨骨腫は診断が遅れることも多い.類骨骨腫はまれだが,思春期の痛みの重要な鑑別診断である.