本研究結果を要約すれば次のとおりである.
(1)本理論による上軸トルクの計算値は実験値と比較的よい対応を示した.このことから天びん・針棒機構の運動に基づく節点力や加振力を推定する本理論の考え方は妥当であると考えられた.
(2)水平と垂直方向の加振力F
xとF
y恥は,基本調波におもに第2次調波が重畳して構成されている.そして供試ミシンの加振力んの大きさは加振力&の約2倍であり,これらは回転数の2乗に比例する.
(3)加振力F
yの低減に対する構成部材の軽量化の効果は,針棒(6),天びん(2),針棒クランクロッド(5),天びんささえ(3)の順に大きい.これに対してクランク(1)・(4)は加振力F
xの低減には寄与するが加振力F
yには逆効果である.
(4)本理論の動力学に基づき針棒(6),天びん(2)および針棒クランクロッド(5)をアルミニウム合金で従来の70~80%に軽量化した.この結果製造原価のわずかな上昇内で,加振力F
yを従来の70%程度に低減することができた.
本研究に成る低振動ミシンは,、昭和57年にLS2形高速本縫い工業用ミシンとして製品化された.送り機構の一部(送り台)軽量化も含めて従来機構のまま低振動化した新形ミシンの最高回転数は5000rpmである.そしてそのときの振動の大きさは2G程度である.これは従来のミシンが3G以上であったのに比べて30%以上の振動低減になる.また本研究は,今後,ミシンの無給油化や本体の軽量化を進めていく上での基礎になるものと考えられる.
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