SUS304の旋削実験における工具寿命の長い加工条件および工具寿命の評価についてまとめれば,本実験で得られた工具寿命の長い加工条件は,刃先の強いネガティブ形バイトに高じん性の工具材種P30を用い,切削速度50m/min,送り0.1mm/rev,切込み0.3mm,刃先ホーニング0.1mm,チップブレーカ幅1.5mmで切削剤を使用しない条件である.
さらに切削諸元のうち工具寿命には切削速度が最も大きく影響し,次いで送りに効果がある.切込みは摩耗寿命にあまり影響しないが,チッピングには顕著である.
このことは文献に紹介されている実験結果とも符合し,本実験の工具寿命評価方法が工具選定の有効な手法であることを裏付けるものである.従って,この方法によれば工具寿命判定に要する時間が大幅に短縮でき,手順通り行えばだれもが明確に結果を判定することができる.また,手順中で使っている累積度数表や累積百分率表は各企業で作成する工具寿命判定の基準表として使用できるであろう.
一方,特性値として扱っている工具摩耗量は,測定器が必要であったり,熟練を要したりして不適当な面がある.したがって今後はさらに簡略化した簡易な工具摩耗量の測定方法を検討してゆかなければならない.なお,本報は「機械と工具」に掲載された内容に,新しい実験結果を加えて考察したものである。
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