ぜい性材料の加工面及びその近傍に発生する欠陥群を,等周期等長平行き裂群として仮定し,加工面に仕上加工を行った場合の部材強度の変化を,有限要素法により応力拡大係数を求めて検討した.結果を以下に示す.
(1)等周期等長平行表面き裂群においては,一軸引張りの方向に1列にき裂が並ぶ場合にも,一様引張荷重下でき裂が直交している場合にも,き裂深さが分布周期の約20%より大きいときには,応力拡大係数は,き裂深さの変化には無関係に一定だった.したがって,材料の破壊じん性が常に一定とすると,そのような条件下で,部材強度は一定になると考えられた.そして,そのようなき裂群を有する部材の表面層を加工損傷の少ない加工法で除去する場合には,除去深さが一定の値になるまで,部材強度は一定で,その深さ以上の表面層除去を行った場合に初めて,強度が回復することが示された.
(2)部材表面近傍に,等周期等長平行内部き裂群がある場合,き裂の分布周期が短いほど,き裂が部材表面により接近するまで,表面側のき裂端の応力拡大係数は一定値を示し増加はみられなかった.そして,分布周期がき裂長さ以下になると,内部き裂の表面側の先端が進展して表面にまで達し,表面き裂群になった場合の応力拡大係数は,内部き裂の安定域での値とほぼ一致した.
今回の研究により,加工欠陥と部材強度の関係について,特徴的な傾向が得られたので,今後はセラミックを対象材料に,放電,研削,レーザ等の加工に,この結果を適用して実験を行う予定である.
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