製品の強度は平均値が高く,ばらつきは小さい方がよいという考え方に基づき,溶接強度をその平均値とばらつきの大小に分けて評価し,以下の結果を得た.
溶接強度の総合的な評価はきわめて複雑ではあるが次のような特徴的な点が検出された.
(1) 強度特性値として得られる計量特性値は,
η
1=10log
Vmη
2=10log1/
rVm-
Ve/
Veとした2指標をもとに,平均値とばらつきに分けて評価し,さらに寄与率に変換することにより明確に比較される.
(2) 評点や等級分類値は精密累積法により分析し,その結果を寄与率に変換,(1)の結果と対照して評価することができる.
(3) 溶接の熟練度の差は,外観検査の評点,疲労強さ及びそれらのぼらつきに大きな効果を与える.例えば応力繰返し数10
6では,疲労強さで約60MPa,η
2で約11~16dB(変動係数が3~6倍)熟練者の方がよいという結果を得た.
(4) 溶接部を直接調べることになる衝撃試験や曲げ試験は,溶接棒の違いの効果は大きいが,熟練度の差の検出力は大きいとは言えない.
(5) 外観検査や曲げ試験では,判定結果における判定者の違いが有意に出た.この個人差を除くための研究がさらに必要である.
これらの結果は通常の強度試験よりは,かなりの普遍性があると思うが,企業全体で行われている溶接作業全体をカバーするものではない.しかし,この結果を通して,多元的な強度評価という考え方の重要性とその結果の多様さはある程度明らかにされたと考える.今後,このような考え方が溶接関係者の間に導入されることを期待する.
本研究は,工業技術院が主催する機械金属連合部会の中で,計量研究所が担当する計測分科会試験評価技術研究会(現在の先端評価技術研究会)の共同研究の一環として,同研究会の出席者及びその所属機関の協力により実施されたものである.
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