心臓の主たる機能は一刻も休まず必要量の血液を肺及び全身に送り出すポンプ機能である.この機能が何らかの原因で高度の障害を受けると,全身に十分な血液を送れなくなり致命的である.かかる病態に対し,近年機械的な手段で心臓ポンプ機能の一部ないし大部分を補助代行する補助人工心臓システム(Ventricular Assist System: VAS)が開発されてきた.
国立循環器病センターにおいても,かかる急性重症心不全患者の救命を目的として,独自のVASを開発し,臨床応用してきた.本稿においては,VASの概略を説明すると共に,当施設で開発したVAS用の駆動装置に付与した自動制御機構について解説する.
VASを作動させるCDUに,全身の循環と不全心の回復を安全,適正に,更に省人力的に行うための,自動心拍同期機構と補助量自動制御機構を開発し具備した。
自動心拍同期機構として,心電のT波トリガ方式を主,従来のR波トリガ方式を副とする機構を開発した.T波トリガ方式は心拍数が急激に変動しても,又不整脈であっても,頻回の調整を必要とせず,正確に心拡張期に送血し得た.補助量自動制御機構は,LAPとTFの定値制御を主体としており,前者は肺欝血の防止と不全心の前負荷の調節を容易にし,後者は全身への血流量を保障して全身循環を良好に維持した.補助人工心臓からの離脱操作は,本機構により自動的に行われ,高度心不全を適正に回復せしめ得た.
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