第2章に述べたように,機能は本質的に主観依存性を持つが,この章で見た多くの手法は,なるべくこの主観依存性を制限する方向で機能を取り扱うものである.
例えば入出力関係に機能を限定することは,エネルギー変換を考慮することはできても,審美性,例えば「心をなごませる機能」を忘れ去ることを意味している.さらに多くの場合,基本要素なる概念を持ち込んでいる.これは恐らく推論の効率性,階層性の導入などの点で有利なこともあるが,設計という観点でみたとき,ルーチン的な設計に限定してしまうという意味で必ずしも有効でない.
また,機能を論じるには,実は挙動や属性,あるいは実体といった概念を明確にする必要がある.特に挙動と機能の関係,挙動と属性の関係などまだまだ不明確な点が多い.
現在のところ,もっとも一般性のある形で機能を扱うには,VEで見たように「~を~する」という動詞とその目的語の形で表現すればよいようである.なぜならば,入出力関係に限定されず,また基本要素や階層性といった概念とは一応無関係に論じることができるからである.
次章では以上の議論をもとに,設計の視点から機能論構築を試みる.
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