表2に各種の研磨終点検出技術の特徴をまとめる.
原理的には,静電容量式と光学式がウエハ上に残った膜厚を測れることから,ストッパ無しの層問絶縁膜平坦化(図1(a))や,被研磨材料の変化がトルク検出式では検知しにくいストッパ有りの層間絶縁膜平坦化(図1(b)),浅溝埋込み平坦化(図1(f))で有用である.
実績の点ではトルク検出式が,装置が市販されており,一部実用化されている点で他を引き離している.トルク検出式は被研磨材料の変化を検知する方式なので,用途は限定されるが,金属や多結晶シリコンの埋込み平坦化(図1(c),(d),(e))では,大きな問題なく使用できる.静電容量式と振動解析式は実際にウエハを研磨したデータが発表されているが,広く使用されるに至っていない.光学式は原理確認の段階にとどまっている.
空間分解能は光学式以外は総じて低く,ほぼウエハ全面の状態を平均的に評価することになる.従って,凹部と凸部の面積比率が異なると評価結果(例えば,トルク変化率や見かけ上の膜厚)が変わってくる.すなわち,品種ごとに条件出しを行わねばならない事態が生じる.逆に,空間分解能が高い場合はパタン形成されたウエハ上のどこを測っているかを正確に弁別出来るような機能が必要となる.
膜厚精度は光学式,特に分光反射率の測定やエリプソメトリによる方法が極めて優れており,0.1nmオーダの精度が得られる.他の方法はこれより1~2けた精度が低い.
トルク検出式の場合は,種類の異なるシリコン酸化膜どうしやシリコン酸化膜とシリコン窒化膜のように摩擦係数変化の小さい材料の組合せは不向きである。しかし,研磨剤や研磨布の変更,トルク測定の信号・ノイズ比改善などで適用領域を拡大できる可能性もある.静電容量式,光学式はそれぞれ導電材料,不透明な材料において精度良く膜厚を測ることができない.しかし,それらの材料がウエハ表面に存在するか否かを判別することは出来るので,被研磨材料の変化を検知して研磨終点を判定することは可能と考えられる.
以上より,トルク検出式は被研磨材料が研磨終点において変化する用途で広く使われて行くと思われる.更には,トルク検出式より広い用途で使用可能で分解能や精度の優れている光学式終点検出技術が重要になると考えられる.基本原理はおおむね出そろっているので,定盤や研磨布を貫いて光路を確保したり,リアルタイムで必要な情報を抽出したりする技術開発が求められている.研磨終点検出からは若干外れるが,研磨直後に製品ウエハを装置内で迅速に評価し結果を以降の研磨条件に反映させる手法も,研磨中に比べれば測定上の困難が少ないので,研磨工程のモニタリングを効率良く行う現実的手段のひとつと考えられる.
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