歯科補綴物の作成を支援するCAD/CAMシステムにおいて歯牙形状を表現するためのソリッドモデル多層境界表現セル構造化モデル (MCCM) を開発した.MCCMの特徴をまとめると次のとおりである.
(1) 多層構造を持った物体の表現が可能である.
(2) 同じ層について横方向のFaceのデータを持たせていないので, 幾何表現データの大幅な削減が可能になる.
(3) Surfaceを曲面の複合体で表現することにより, 複雑な歯牙形状を表現することができる.
(4) MCCMでは, すべてのFaceは双3次Bézier曲面で表現されている.CCMでは3つのパラメータを使用してCellの内部もパラメトリックに表現しているが, MCCMでは境界形状のみを対象にしているので面形状を表す2つのパラメータを用いている.従って, 幾何表現的に考えるとCCMは空間占有モデルであるが, MCCMは境界表現型のモデルになる, 境界表現で問題となるFace, Surfaceの向きはFaceに付随するCellから容易に判定できる.これにより, 異なる層の境界形状のみが表現され, Surfaceイメージで操作することが可能になる.
(5) あるSurfaceとその内部のSurfaceの各頂点について対応関係を持たせることにより, あるSurface上のFaceとそれに対応する内部Surface上のFaceに挟まれた空間 (層の一断片) をMCCMのCellとして, その属性を持つことができる.生体などの柔構造の表現も可能となる.
なお本研究は, 通産省産業科学技術研究開発制度に基づく医療福祉機器技術研究開発プロジェクトとして, NEDOの委託により, (株) ニコン, 日立精工 (株), (株) ジーシーの3社で共同研究したものである.
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